魂色物語

ガホウ

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第二章 魔法の衆と禁じられた書

第十一話 幻覚の森

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 森の中を進んでいると周りの木々が邪魔をして世界樹がどの方角にあるのかが分からなくなってしまった。おれは今一度確認するために木をよじ登ってみる。そこから見える景色は360度どこを見渡しても森が広がっていた。しかし、その中でも世界樹は異様な存在感を放っている。方角を確認したらおれは木から降りた。

「どうだったんだいディール?」
「世界樹はあっちの方だ」

 おれは世界樹があった方角を指さす。しばらく歩いていると段々辺りが暗くなってきた。おれたちは野宿することにした。

「今日は魔物が出なくて運が良かったね」

 レイが木の枝で焚き火をつつきながら聞いてくる。

「そうだなー、何匹かは見かけたけど全部避けてきたからな。なんせ図鑑でも見たことない奴もいたから対策法が無いうちは戦わないに越したことないさ」

 おれはレイの袋から魔法の燭台を取り出してみる。

「やっぱりこれ使い物にならなそうだよな。火をつける必要がないって言ってもそんなに明かりが欲しい時なんてないだろ」
「洞窟とか行ったら必要になると思うよ」

 おれはいまいち納得できないまま魔法の燭台を片付けてから眠りについた。

 朝を迎えるとおれたちは再び世界樹を目指して出発した。今日も魔物を避けながら進んで何事もなく一日を終えるかと思ったが日が傾き始めた頃に異変が起きた。

 木々の間から人のようなシルエットが見えた。おれは気になってゆっくりと近づくとその人影は走ってどこかへ行ってしまった。おれは走り去った人影に見覚えがあった。あれは……嘘だろ。

 おれは急いでさっきの人影を追いかける。夢中で追いかけていると気づけば少しだけ開けた場所に出た。そこにはさっきの人影もいた。その正体を見ておれは驚愕した。そこには3年前に死んだはずの母さんの姿があった。いや、母さんだけじゃない父さんに妹のルリア更には村の皆の姿まであった。おれはすぐさま母さんの所に駆け寄り抱き着く。

「何でこんな所にいるんだよ……皆死んだんじゃなかったのかよ……」

 信じられないような状況におれは泣いてしまった。しかし、母さんは何もしゃべらない。

「今までどこで何してたんだよ……何で迎えに来てくれなかったんだよ……」

 おれが家族と一緒にいるとレイが突然やって来ておれを引っ張って家族の元から引き離した。

「何すんだよレイ!」
「君の方こそ何をしているのさ!急に走ったと思ったらこんな場所に来るなんて」

「何って……目の前に皆が……家族がいるじゃないか」
「家族って……ここには魔物しかいないよ!目を覚ましてよ」

 レイの言っていることが何一つ理解できないでいたがそんなおれを見てレイが思い切りおれの頬をひっぱたいた。

「君の家族はあの日に亡くなったんだよ。現実を見るんだ!惑わされちゃ駄目だよ」

 レイの言葉におれは後ろを振り返るのが怖くなった。あの日の現実を受け入れてしまったら例え現実ではないとしても皆が消えていなくなってしまうと思ったからだ。だけどおれが決心して振り返るとそこには魔物の姿だけがあった。それも大勢だ。

 どうやらおれは幻を見せられていたらしい。おれは慌てて剣を構えるが目の前の魔物たちは見たことない奴らばかりだった。この前のゴブリンとは違う。こいつらはウォーバットのような翼を持っているがデカさが違う。人型の魔物で大人と同じぐらいの大きさだ。その肌は真っ黒で筋肉質、薄暗い中で緑色の目が光る。魔物たちはぶら下げた舌をユラユラとさせながらこちらに近づいてきた。完全に囲まれてしまった。

 おれは魔物に一太刀浴びせようと斬りかかったが簡単に振り払われてしまい全く歯が立たない。レイも魔法の小瓶に入った火で応戦したが効いている様子はなかった。

「どうしよう、もう追い詰められちゃったよ。何か策はないのかい?」
「策も何もこんな魔物はおれも知らないんだ。どこが弱点か分からない」

 魔物たちとの距離が少しづつ縮まっていく。魔物たちが襲い掛かってきた。もうダメだ!そう思った時、間一髪の所で魔物たちが一斉に倒れた。何が起こったのか理解できていない内におれたちは謎の力に押し倒されてうつ伏せになってしまい腕は木々から伸びてきたツタで縛られてしまった。

 倒れた魔物を見てみるとすべての魔物の頭部に矢が突き刺さっていた。人並外れた正確さをもつ弓矢使い…………まさか!

「こんな場所に人間がいるなんて珍しいわね。うっかり迷い込んだわけではなさそうだけれど」

 背後から声が聞こえてきた。おれは確認しようと何とか身体を動かそうとしたら顔のすぐ真横を矢が通過して地面に刺さった。

「変な動きをしたら構わず撃つ。私たちの質問にだけ答えなさい」

 ここで殺されるわけにはいかない。おれは小声でレイに話しかける。

「レイ、ここは返答任せるぞ。おれだと変なこと言いかねないからな」
「任せておいて。交渉は貴族の得意分野さ、最善を尽くすよ」

 背後の声がおれたちに質問をする。

「あなた達は一体何者かしら?」
「僕たちは旅をしているだけの子供でクレッセントベルトを越えてロオの街から来ました。名前は僕がレイ・ジェオールでこっちの人はディール・マルトスといいます」

「ここにいる理由は?」
「…………エルフのみなさんに危険が迫っていることを教えに来たんです」

「私たちがエルフということを知っているのか。だが生憎危機が迫っていようと私たちだけで解決するからお構いなく」
「話だけでも聞いた方がいいと思いますよ」
「まさか人間は1000年前の条約を忘れてしまったのか。まあいいすぐに楽にしてあげよう」

 静寂の森の中で弓を引き絞る音が微かに聞こえてきた。死が迫ってくる感じがする。死にそうな目に合うなんて今日だけでもう何度目なんだ?諦めかけていると背後で詳しくは分からないがエルフ同士で話し合う声が聞こえてきた。

「何?本当に女王がそうおっしゃったのか」
「はい、この人間たちを連れてくるように命を受けました」

「あなた達は運がいいわね、今からエルフの里に連れて行きます。そこの二人を運びなさい」

 どうやら死は免れたみたいだがピンチなのは変わっていないようだ。エルフの里に行けるのは好都合だがこれじゃまるで罪人みたいじゃないか。腕に巻き付いたツタを取ろうともがいていると段々と足音が近づいてきて魔法をかけられてしまった。

「おとなしくしなさい。 ”スランバ”【昏睡】」

 これは眠りのまほ…………zzz。おれたちはエルフの魔法によって眠らされてしまった。
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