28 / 38
第二章 魔法の衆と禁じられた書
第十三話 魂色の適正魔法
しおりを挟む
エルフの里を見回った次の日の早朝、というよりほぼ夜明けともいえる時間におれたちの泊まる部屋の扉をドンドンと叩く音で目が覚めた。扉の向こうからエルリシアンの声が聞こえてくる。
「いつまで寝てるのかしら?早く修行するわよー」
おれはボサボサの髪を適当に直しながら扉が壊される前に急いで扉を開けた。
「まだ夜明けの前なんですけど……」
「何言ってるの?もう朝じゃない、普通のエルフはもうみんな狩りや警備に出てる時間よ」
忘れてた。確かエルフは活動時間が夜明けから陽が沈む直前までという人間とは少しだけ異なるというのが描いてあったはずだ。おれは枕に抱き着いて眠っているレイをゆすって起こした。
「起きろーもう時間だとよー」
「……まだ夜じゃないか、もう少し眠らせてよ……zzz」
「エルリシアンがもう来てるんだよ。早くしないと怒らせちまうぞ」
おれがそう言うとレイはすんなり起きて支度を始めた。準備を終えたおれたちはエルリシアンの後について行ってエルフの里内を移動した。
連れてこられたのは幹の外側の広い空間で日の出の陽の光が良く差し込む場所だった。それにしても地面のツタはどれだけ踏んづけてもびくともしない。流石は世界樹といったところだな。
「ここはエルフの警備隊が使っている訓練所よ。ちなみにあなた達を捕まえてきたのが警備隊」
あの時女王の近くにいたメレスっていうエルフの声を何処かで聞いた事あると思ったらおれたちを捕まえた張本人だったのか。
おれが勝手に納得しているとエルリシアンはどこかから木製の肩から足先まである長さの杖を取り出した。
「人間の魔法使いは杖を使うって聞いたんだけど本当なの?」
おれはそういうのに詳しくないのでレイが彼女の素朴な疑問に答える。
「僕の知っているエイリレ王国の宮廷魔導士は確かに杖を使ってたね」
「やっぱり、人間はとても真面目なのね」
そう言うと彼女はまず杖と魔法の関係について教えてくれた。しかし、彼女は話始めるとどんどん熱が入っていき途中から何を言ってるのか分からなくなってしまったがおれの分かる範囲でまとめてみた。
まず杖を使う最大のメリットは正確性。杖を介して魔法を使うほうが成功しやすく、それに加えて単純に魔法の火力が上がったり複雑な呪文を唱えたり出来るようになるらしい。
これだけ聞いていると良い所しかない気がするがエルリシアンの解説によるとデメリットとしていくつか挙げていた。1つ目が弓を使うエルフにとって邪魔だからだそうだ。2つ目に杖を介すことで消費される魔力が多くなってしまい持久戦に向いていない点。最後に杖自体が利用者にとって合わない可能性があるからと言っていた。
説明を終えたエルリシアンは持っていた杖を上に投げた。
「という訳で杖は使わずに魔法が使えるようにしましょう。これはもう要らないわね」
そう言うと上に放り投げられた杖はパンッと弾けて杖から色とりどりの花に変化して散った。
「魂色によって使うことが出来る魔法は”適正魔法”と呼ばれているの。私の場合は緑の魂色だから適正魔法は風属性とかね」
なるほどな。魔法の中にもいろんな種類や属性があるってわけだ。おれが感心しているとエルリシアンは早速手本を見せてくれた。
「そしてこれが風属性の魔法よ。見づらいからしっかり見ておいて」
エルリシアンが左手を前に出した。
「”フーラン”【突風】」
エルリシアンが呪文を唱えると彼女の手の先にあった植物で出来た人形が真っ二つにスパッと切れた。魔法の威力は凄まじいし何より戦闘中にあんなのを撃たれたら躱せない。おれは頭の中で早速対策を考えてみたがいい案が思いつかなかった。
エルリシアンはどんなもんだいといったドヤ顔で他の植物人形を魔法で吹き飛ばしたり切りつけていた。彼女が満足し終わったタイミングでおれたちは盛大な拍手を送った。すると彼女は満足げにしていた。
「今のが基礎的な属性の魔法ね。ところであなた達の魂色は何色なの?」
やっぱりこの質問が来てしまったか……しかし、嘘をついたところでどうしようもなさそうだったし何よりカミオン帝国の脅威がないのでここは正直に話すことにした。
「僕は橙色だけど。橙の魂色の適正魔法は何?」
「人間で橙って珍しいわね、人間には普通色しかいないと思ってたんだけど」
それを聞いたレイが小声でおれに話してきた。
「もしかしてアルテザーン地方じゃ人間って舐められてるのかな?」
「そりゃあヒトよりもエルフとか龍のほうが強いんだから舐められるだろ」
エルリシアンはおれたちがコソコソと話しているのもお構いなしに橙の適正魔法について教え始めた。
「橙の適正魔法は他の魂色と比べても特殊で仲間を助ける補助魔法が得意なの。補助魔法っていうのは例えば仲間や自分自身の力や素早さ、守りを底上げして本来のポテンシャルを越える能力を引き出すことが出来るようになるわ」
「レイの橙の魂色って凄いんだな」
「僕も知らなかったよ。もしかするとロイドドラゴンと戦ったあの時の謎の力の正体は魔法だったのかもしれないね」
「確かに!じゃあレイはもう魔法を使ったことがあるってことか」
「それなら話は早いわね、後は補助呪文について学んでコツを掴みさえすればって感じ!次、ディールの魂色は何?」
「おれは……青だ」
おれがそう言うとエルリシアンは目を丸くして驚いていた。驚く姿は母親そっくりだな。
「青色なんて私の知る限り聞いたことないわ」
「やっぱりな、サンアスリムでも知っている人に会ったことない。命は狙われたけどな」
「それは何というか、災難ね。でももしかするとネウィロス様なら何か知ってるかも!こうなったら今すぐにでも聞きに行かなきゃ。修行は中断してさっさと行くわよ」
おれたちは昨日からずっと彼女に振り回されている気がする。あのフィリスよりも強引だ。エルリシアンとともにネウィロスと呼ばれるエルフの元に向かった。
「ネウィロス様、お聞きしたいことがあるのですがお時間大丈夫ですか?」
「ああ!エルリシアン王女か。よいところに来た、今まさに新しい植物薬の調合に成功したのだ」
そう言うと白い髭が今にも地面につきそうな程伸びた老爺のエルフが大きな金属製の大釜から紫色の液体を取り出してガラスの瓶に入れた。なんだかヤバそうな液体だ。
「これは耀桜の葉っぱにロイドドラゴンの尻尾、ヒポポタマス・パトリアーチの髭。あとは星百足の毒を入れて完成じゃ。これを飲めば虫除けの効果が現れるぞ!」
「なんだか凄そうなものをたくさん入れといて虫除けかよ!」
おれはついつい突っ込んでしまった。しかし、おれの一言で老爺がこちらの存在をようやく認識した。
「おやおや、人間の客人とは珍しいの。坊主よ、たかが虫除けと侮るでないぞ。このアルテザーン地方には坊主が想像する何倍もの大きさを持つ虫型の魔物がうじゃうじゃおるんじゃぞ」
「凄いのは分かりましたよ。それよりもエルリシアン、聞きたいことがあるんだろ」
「そうだったわ。ネウィロス様、そこの黒髪の彼の魂色が青色らしいのですが何か知りませんか?エルフで一番の知恵をもつあなたならと思いここに来たのです」
「ほう、青色とな!聞いたことないの…………」
ネウィロスの返答におれが少しばかり落ち込んでいるとレイが肩に叩いて励ましてくれた。
「しょうがないさ、サンアスリムの歴史の本にだって載っていなかったんだから。多分ディールが世界で初めての青なんだよ」
「でもな……何も分からない事ほど怖いものはないぜ」
するとおれたちの会話を聞いていたネウィロスが大釜をかき混ぜながら何かを思い出したようだ。
「そこのサラサラ髪の坊主、良いことを言うたぞ!ワシらが知らないのなら歴史を調べれば良いのじゃ」
「ですがネウィロス様、私の読んだことがあるアルテザーンの歴史書には青の魂色について書かれてなどいませんでしたよ」
「恐らく世界に流通している歴史書は何者かによって偽の情報が所々に入っておる。しかし、真の歴史を示した歴史書があるなら話は別じゃ。それになら載っているかもしれん」
おれたちは正直話についていけなかった。どうやらエルフの特技は会話の中で人間を置いていくことも含まれているらしい。
「いつまで寝てるのかしら?早く修行するわよー」
おれはボサボサの髪を適当に直しながら扉が壊される前に急いで扉を開けた。
「まだ夜明けの前なんですけど……」
「何言ってるの?もう朝じゃない、普通のエルフはもうみんな狩りや警備に出てる時間よ」
忘れてた。確かエルフは活動時間が夜明けから陽が沈む直前までという人間とは少しだけ異なるというのが描いてあったはずだ。おれは枕に抱き着いて眠っているレイをゆすって起こした。
「起きろーもう時間だとよー」
「……まだ夜じゃないか、もう少し眠らせてよ……zzz」
「エルリシアンがもう来てるんだよ。早くしないと怒らせちまうぞ」
おれがそう言うとレイはすんなり起きて支度を始めた。準備を終えたおれたちはエルリシアンの後について行ってエルフの里内を移動した。
連れてこられたのは幹の外側の広い空間で日の出の陽の光が良く差し込む場所だった。それにしても地面のツタはどれだけ踏んづけてもびくともしない。流石は世界樹といったところだな。
「ここはエルフの警備隊が使っている訓練所よ。ちなみにあなた達を捕まえてきたのが警備隊」
あの時女王の近くにいたメレスっていうエルフの声を何処かで聞いた事あると思ったらおれたちを捕まえた張本人だったのか。
おれが勝手に納得しているとエルリシアンはどこかから木製の肩から足先まである長さの杖を取り出した。
「人間の魔法使いは杖を使うって聞いたんだけど本当なの?」
おれはそういうのに詳しくないのでレイが彼女の素朴な疑問に答える。
「僕の知っているエイリレ王国の宮廷魔導士は確かに杖を使ってたね」
「やっぱり、人間はとても真面目なのね」
そう言うと彼女はまず杖と魔法の関係について教えてくれた。しかし、彼女は話始めるとどんどん熱が入っていき途中から何を言ってるのか分からなくなってしまったがおれの分かる範囲でまとめてみた。
まず杖を使う最大のメリットは正確性。杖を介して魔法を使うほうが成功しやすく、それに加えて単純に魔法の火力が上がったり複雑な呪文を唱えたり出来るようになるらしい。
これだけ聞いていると良い所しかない気がするがエルリシアンの解説によるとデメリットとしていくつか挙げていた。1つ目が弓を使うエルフにとって邪魔だからだそうだ。2つ目に杖を介すことで消費される魔力が多くなってしまい持久戦に向いていない点。最後に杖自体が利用者にとって合わない可能性があるからと言っていた。
説明を終えたエルリシアンは持っていた杖を上に投げた。
「という訳で杖は使わずに魔法が使えるようにしましょう。これはもう要らないわね」
そう言うと上に放り投げられた杖はパンッと弾けて杖から色とりどりの花に変化して散った。
「魂色によって使うことが出来る魔法は”適正魔法”と呼ばれているの。私の場合は緑の魂色だから適正魔法は風属性とかね」
なるほどな。魔法の中にもいろんな種類や属性があるってわけだ。おれが感心しているとエルリシアンは早速手本を見せてくれた。
「そしてこれが風属性の魔法よ。見づらいからしっかり見ておいて」
エルリシアンが左手を前に出した。
「”フーラン”【突風】」
エルリシアンが呪文を唱えると彼女の手の先にあった植物で出来た人形が真っ二つにスパッと切れた。魔法の威力は凄まじいし何より戦闘中にあんなのを撃たれたら躱せない。おれは頭の中で早速対策を考えてみたがいい案が思いつかなかった。
エルリシアンはどんなもんだいといったドヤ顔で他の植物人形を魔法で吹き飛ばしたり切りつけていた。彼女が満足し終わったタイミングでおれたちは盛大な拍手を送った。すると彼女は満足げにしていた。
「今のが基礎的な属性の魔法ね。ところであなた達の魂色は何色なの?」
やっぱりこの質問が来てしまったか……しかし、嘘をついたところでどうしようもなさそうだったし何よりカミオン帝国の脅威がないのでここは正直に話すことにした。
「僕は橙色だけど。橙の魂色の適正魔法は何?」
「人間で橙って珍しいわね、人間には普通色しかいないと思ってたんだけど」
それを聞いたレイが小声でおれに話してきた。
「もしかしてアルテザーン地方じゃ人間って舐められてるのかな?」
「そりゃあヒトよりもエルフとか龍のほうが強いんだから舐められるだろ」
エルリシアンはおれたちがコソコソと話しているのもお構いなしに橙の適正魔法について教え始めた。
「橙の適正魔法は他の魂色と比べても特殊で仲間を助ける補助魔法が得意なの。補助魔法っていうのは例えば仲間や自分自身の力や素早さ、守りを底上げして本来のポテンシャルを越える能力を引き出すことが出来るようになるわ」
「レイの橙の魂色って凄いんだな」
「僕も知らなかったよ。もしかするとロイドドラゴンと戦ったあの時の謎の力の正体は魔法だったのかもしれないね」
「確かに!じゃあレイはもう魔法を使ったことがあるってことか」
「それなら話は早いわね、後は補助呪文について学んでコツを掴みさえすればって感じ!次、ディールの魂色は何?」
「おれは……青だ」
おれがそう言うとエルリシアンは目を丸くして驚いていた。驚く姿は母親そっくりだな。
「青色なんて私の知る限り聞いたことないわ」
「やっぱりな、サンアスリムでも知っている人に会ったことない。命は狙われたけどな」
「それは何というか、災難ね。でももしかするとネウィロス様なら何か知ってるかも!こうなったら今すぐにでも聞きに行かなきゃ。修行は中断してさっさと行くわよ」
おれたちは昨日からずっと彼女に振り回されている気がする。あのフィリスよりも強引だ。エルリシアンとともにネウィロスと呼ばれるエルフの元に向かった。
「ネウィロス様、お聞きしたいことがあるのですがお時間大丈夫ですか?」
「ああ!エルリシアン王女か。よいところに来た、今まさに新しい植物薬の調合に成功したのだ」
そう言うと白い髭が今にも地面につきそうな程伸びた老爺のエルフが大きな金属製の大釜から紫色の液体を取り出してガラスの瓶に入れた。なんだかヤバそうな液体だ。
「これは耀桜の葉っぱにロイドドラゴンの尻尾、ヒポポタマス・パトリアーチの髭。あとは星百足の毒を入れて完成じゃ。これを飲めば虫除けの効果が現れるぞ!」
「なんだか凄そうなものをたくさん入れといて虫除けかよ!」
おれはついつい突っ込んでしまった。しかし、おれの一言で老爺がこちらの存在をようやく認識した。
「おやおや、人間の客人とは珍しいの。坊主よ、たかが虫除けと侮るでないぞ。このアルテザーン地方には坊主が想像する何倍もの大きさを持つ虫型の魔物がうじゃうじゃおるんじゃぞ」
「凄いのは分かりましたよ。それよりもエルリシアン、聞きたいことがあるんだろ」
「そうだったわ。ネウィロス様、そこの黒髪の彼の魂色が青色らしいのですが何か知りませんか?エルフで一番の知恵をもつあなたならと思いここに来たのです」
「ほう、青色とな!聞いたことないの…………」
ネウィロスの返答におれが少しばかり落ち込んでいるとレイが肩に叩いて励ましてくれた。
「しょうがないさ、サンアスリムの歴史の本にだって載っていなかったんだから。多分ディールが世界で初めての青なんだよ」
「でもな……何も分からない事ほど怖いものはないぜ」
するとおれたちの会話を聞いていたネウィロスが大釜をかき混ぜながら何かを思い出したようだ。
「そこのサラサラ髪の坊主、良いことを言うたぞ!ワシらが知らないのなら歴史を調べれば良いのじゃ」
「ですがネウィロス様、私の読んだことがあるアルテザーンの歴史書には青の魂色について書かれてなどいませんでしたよ」
「恐らく世界に流通している歴史書は何者かによって偽の情報が所々に入っておる。しかし、真の歴史を示した歴史書があるなら話は別じゃ。それになら載っているかもしれん」
おれたちは正直話についていけなかった。どうやらエルフの特技は会話の中で人間を置いていくことも含まれているらしい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
霊力ゼロの陰陽師見習い
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる