フォーカス 一番暑かったあの夏

貴名 百合埜

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夏空  1 

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「うち、もう駄目かもしれん…」



ついさっきまで、あんなに元気に走り回っていたくせに。

はしゃぎすぎたせいで、船酔いしたらしい夏向は今にも死にそうな声で俺に訴えかけてきていた。


俺達は今、女木島めぎしまに向かうフェリーの上にいた。

予備校の授業日程の関係で、夏休みも残り少なくなった今日1日久しぶりのオフになった。

夏向はもともと撮影の為に女木島に行く予定だったから、それに同行って形で初めて丸一日中のデートになった。

そのせいか夏向のテンションは朝から高く、ずっとしゃべっていた。
もっとも俺も人のことは言えないけど。
二人ともずっと笑顔だった。

思ったより多くの乗客を乗せて、小さめのフェリーフェリーは出航した。
フェリーは小型の為、波の影響を受けやすくどうしても多少の揺れがある。

その中で必要以上に動いて、しかもファインダーを覗いてあっちここっちで撮影をしていたためか、とうとう船酔いを起こしてしまったようだった。



外部デッキのベンチで俺の太ももを枕代わりにして横たわって、わざと辛そうな表情を夏向は作っていた、
でもその目は笑っている。

「今日1日飯抜いてたら治るやろ」

「うちから食べる事を取ったら、何も残らんよ?」

「それは確かにそうかもしれん。でも気持ち悪いんやろ?」

「また意地悪言うし。島に着くまでに回復するもん」

ぷくっと夏向は頬を膨らませた。



高松港から女木島までは4キロほとで、20分ほどで到着する。

まだまだ夏を思わせる青空が広がっている。
今日も気温は30度を越える予想になっていた。

本当に今年の夏は暑い!

女木島周辺の海は比較的澄んでいて波も穏やかで、人気のある海水浴場もある。

近場で快適な島の海水浴場に向かう学生達が多くフェリーに乗っていた。



船内放送が流れだした。

まもなく女木島へ到着するようだ。

さっきまで不調を訴えていた夏向も元気よく立ち上がった。

その姿をみて、思わず笑ってしまう。
やっぱり元気やったな。

「着いたらなんか食べたい。うち今日は朝食べてないんよ、だから船酔いしたんよ」

「はいはい、わかりました」



フェリーが方向転換を始めた。大きくエンジン音が響く。その振動が体に伝わってきた。

もうすぐ女木島に到着するようだ。
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