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十四章 デュカとリゼリア
7.デュカとリゼリア ④
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(side ラルシュ)
「‥じゃあ、二人は本能的に「これはダメな感じ」って分からなかったの? 」
そんなこと‥
ナラフィスに聞いても仕方が無いのは分かっているが‥聞かずにいられなかった。
ナラフィスは、ふふっと
予想に反して、
ふふっと笑った。
「きっと、デュカには分かっただろうけど、その理由は分からなかった。今までそんな研究をしてきた人間がいなかったから、分かりようが無かったんだ」
感覚的に嫌な感じする、ってことで片付けられてたってことかな?
まあ‥魔法の仕組みだとか、違和感の理由とかそういうのが学問として調べられるようになったのは「平和な時代」になってからだ。
それまでは「いかにして新しい魔法を見つけるか」とか「攻撃魔法の威力のあげ方」の方が重要だった。きっと、この頃は今よりもっとそういう傾向が強かったんだろう。
「なぜか「触れただけでも」違和感がある。‥不快だ。だけど、責任感の強いデュカは「それでも使命だから」って気にしない振りをした」
‥出来るものなのか?!
結構、「合わない」って肉体的に苦痛を感じるけど‥。
魔法使いの私にはわかるけど、きっと、リバーシのナラフィスには分からないんだろうな。「我慢できるような」違和感だろうっておもうんだろうな‥。
あの違和感は‥なんて表現すればいいだろう。
人によって違うらしいが、ある人は「魔力酔い」といい、「酒を飲めない人が無理やり酒を飲まされたような苦痛」って言った人もいた。‥私は、両方とも経験がないから同意は出来なかったが、そこにいた魔法使いの友人たちは「そうそう」「そんな感じ」って言い合っていた。
私は‥
昔魔力切れで倒れた時、心配した幼い頃のサラージが強制的に「魔力点滴」をしてくれようとしたことがあって‥あの時の記憶が全てかな‥。
溺れるかと思った。
あと‥呼吸困難。
とにかく‥いっそ殺してくれ、って程、苦しかった。
魔力が合わないのと、量が合わないのダブルだ。‥あのあと、少しの間サラージを見ただけで震えが止まらなかった。(それ程だったんだ)
魔力点滴は患者側が自発的に自分の量で吸引しないとダメなもんなんだ。しかも、人→人が出来るのは、(魔力的に)特別な関係の人とだけなんだ。
サラージみたいに、供給側が「一方的に」「いっぺんに大量に」なんてのは‥問題外で、私はすんでのところで助けられたのを覚えている。(遠い目)
「そうして生まれた二人の子供だったが‥最初の一人を除いて、「普通じゃない」子供だった。
勿論、差別的な意味合いではない。
個性で済まされる違いじゃなかったんだ。
身体の機能や、見た目の問題でもない。
‥全く新しい個体が生まれた、と言ってもいい。
一人は「夜も眠らない魔力が異常に高い子供」一人は「不思議な力を使い、そしてその不思議な力にしか興味のない子供」だった。
不思議な力というのは、魔法のことだ。
人々はその、見たことも聞いたこともない‥未知の力を恐れた」
「魔法が‥なかった? 」
私が驚くと、ナラフィスが頷いた。
「魔法とリバーシ。
これこそが、禁忌の子供の生み出されたことによってつくられた悲劇だった」
‥目の前が真っ暗になった気がした。
魔法が‥太古の昔からあったわけでは無く、突然変異‥それも、禁忌の近親婚によって生まれたなんて‥。
その後、二人は子供を何人か産んだが、その子供たちは「普通じゃない」子供のいずれかのパターンの子供ばかりだった。
「‥ちなみにこの記録は「名もない男」の記録だ。
男は、デュカとリゼリアを交配一代目と記している。
一代目
男、魔力在り、火属性、王族
女、魔力在り、水属性、王族
と記録されているだけで、名前の記載ははないが、間違いなくデュカとリゼリアのことだろう」
交配記録。
「男によると、王族同士の交配というのに意味があるらしい。僕たちと地球人は身体の作りがそもそも違うから、地球の言葉とは同じものをささないが‥分かりやすいので遺伝子という言葉を使おう。
遺伝とは、親から受け継がれる性質ということらしい」
「遺伝子‥」
親から受け継がれる‥というと、きっとデュカとリゼリアは同じ様に暮らしていなくても、きっと「同じようなものを親から受け継いでいた」んだろう。
「結論から言うと、王族は、他の平民や貴族と遺伝子的に「違う」異種族なんだ。
ごく一般的な平民の持っている遺伝子をHhとする。(大文字表記が優性遺伝子、小文字表記が劣性遺伝子)
この場合の優性遺伝子は「表面に出て来る性質」で、劣性遺伝子は「表面に出てこない性質」ということとする。
魔法使いはMh、Mm
魔力を持っている一般人はHm(魔力はあるが魔法は使えない)
リバーシはRr、Rm、Rh
リバーシの遺伝子は魔法使いの遺伝子より強く、リバーシの遺伝子(R,r)がある者は全員リバーシになる。
と、仮定したところで、
デュカとリゼリアの子供(交配二代目)が生まれる前の平民、貴族の遺伝子パターンは、HhかHmで、王族は全て、Hmmだった。
HhとHhが交配した場合、子供の遺伝子は、必ずHhになり、HhとHmが結婚した場合も、子供は、HhかHmになる。HmとHmが結婚した場合は、子供が全てHmになる」
「確率の問題だね」
私が確認をとると、ナラフィスが頷いた。
「王族はHmmの遺伝子を持っているから、Hmと結婚した場合は、全員Hm(父親の遺伝子)m(母親の遺伝子)になる。あの頃の王族は魔力を持っている貴族としか結婚しなかったからね。
魔法を使うわけでは無いが、魔力持ちの方が、見た目が良い者が多く、寿命が長い傾向にあり、「器用」だったんだ。‥つまり、スキルが使えたって話だね」
デュカとリゼリアが結婚して、血が濃すぎる故、mが優性遺伝子Mとなった子供が産まれ、全く別の突然変異遺伝子Rrが産まれた。因みに、Rは、Mの変異株だと考えられている」
mの優性遺伝子が産まれた‥ということは、mが表面に出て来る性質になるということだ。つまりそれが魔法使いだ。
そして、Rrも同様だ」
Mを持っている子供は魔法使い、Rを持っている子供はリバーシ。
話しについていけなかった。
言っていることは分かるけど‥話していることが無茶苦茶過ぎて気分が悪い。
なんだそりゃ、実験動物か?
「その地点では、王家で「やっぱり近親婚は良くない」っていって、それ以降はそんなことが無いように‥で済ませれば‥まだよかったんだろう。だけど、その名前の無い男は、デュカとリゼリアに「この子どもたち(魔法使いとリバーシ)は和平のしるしの紫の瞳をしていませんね」って言葉巧みに騙して‥子供たちを連れ去り、次の交配の実験体にしたんだ」
もう‥聞いていられない、って思った。
その結果、その男と交友があった貴族を中心に‥魔法使いやリバーシが産まれるようになった。
だけど、そう人数がいるわけでもないから、平民を中心とした人々はそのことに随分経つまで気付かなかった。
そして、魔法は「当たり前に」浸透していき、魔法を持つ貴族たちは魔法を正当化するために、新しい‥全く出鱈目で「自分たちに都合のいい」デュカとリゼリアの話を作り出した。
つまり、あの御伽噺は、魔法が一般的にひろがってから作られたお話ということになる。
「‥信じられない‥」
ショックでしばらく話すこともできなかった私が、何とか喉から絞り出した言葉がこれだった。
今のような社会がもともとはそんなマットサイエンティストによってつくられていたなんて‥
マットサイエンティストの野望と偽り‥そういうものから始まった悲劇の歴史‥。
だけど、‥もしかしたら、そのマットサイエンティストも、何か別の「大きな力」‥運命というものにそそのかされて‥操られていただけなのかもしれない。
なにか、人智を超えるものの存在に、だ。
もしかしたらあれは、生命の進化の為に必要な‥さだめ(必要悪? 犠牲? )だったのかもしれない。
今回は‥一体どんな運命を我々は受け入れないといけないのだろうか‥。
どんなさだめを我々は課されるのだろうか‥。
「‥じゃあ、二人は本能的に「これはダメな感じ」って分からなかったの? 」
そんなこと‥
ナラフィスに聞いても仕方が無いのは分かっているが‥聞かずにいられなかった。
ナラフィスは、ふふっと
予想に反して、
ふふっと笑った。
「きっと、デュカには分かっただろうけど、その理由は分からなかった。今までそんな研究をしてきた人間がいなかったから、分かりようが無かったんだ」
感覚的に嫌な感じする、ってことで片付けられてたってことかな?
まあ‥魔法の仕組みだとか、違和感の理由とかそういうのが学問として調べられるようになったのは「平和な時代」になってからだ。
それまでは「いかにして新しい魔法を見つけるか」とか「攻撃魔法の威力のあげ方」の方が重要だった。きっと、この頃は今よりもっとそういう傾向が強かったんだろう。
「なぜか「触れただけでも」違和感がある。‥不快だ。だけど、責任感の強いデュカは「それでも使命だから」って気にしない振りをした」
‥出来るものなのか?!
結構、「合わない」って肉体的に苦痛を感じるけど‥。
魔法使いの私にはわかるけど、きっと、リバーシのナラフィスには分からないんだろうな。「我慢できるような」違和感だろうっておもうんだろうな‥。
あの違和感は‥なんて表現すればいいだろう。
人によって違うらしいが、ある人は「魔力酔い」といい、「酒を飲めない人が無理やり酒を飲まされたような苦痛」って言った人もいた。‥私は、両方とも経験がないから同意は出来なかったが、そこにいた魔法使いの友人たちは「そうそう」「そんな感じ」って言い合っていた。
私は‥
昔魔力切れで倒れた時、心配した幼い頃のサラージが強制的に「魔力点滴」をしてくれようとしたことがあって‥あの時の記憶が全てかな‥。
溺れるかと思った。
あと‥呼吸困難。
とにかく‥いっそ殺してくれ、って程、苦しかった。
魔力が合わないのと、量が合わないのダブルだ。‥あのあと、少しの間サラージを見ただけで震えが止まらなかった。(それ程だったんだ)
魔力点滴は患者側が自発的に自分の量で吸引しないとダメなもんなんだ。しかも、人→人が出来るのは、(魔力的に)特別な関係の人とだけなんだ。
サラージみたいに、供給側が「一方的に」「いっぺんに大量に」なんてのは‥問題外で、私はすんでのところで助けられたのを覚えている。(遠い目)
「そうして生まれた二人の子供だったが‥最初の一人を除いて、「普通じゃない」子供だった。
勿論、差別的な意味合いではない。
個性で済まされる違いじゃなかったんだ。
身体の機能や、見た目の問題でもない。
‥全く新しい個体が生まれた、と言ってもいい。
一人は「夜も眠らない魔力が異常に高い子供」一人は「不思議な力を使い、そしてその不思議な力にしか興味のない子供」だった。
不思議な力というのは、魔法のことだ。
人々はその、見たことも聞いたこともない‥未知の力を恐れた」
「魔法が‥なかった? 」
私が驚くと、ナラフィスが頷いた。
「魔法とリバーシ。
これこそが、禁忌の子供の生み出されたことによってつくられた悲劇だった」
‥目の前が真っ暗になった気がした。
魔法が‥太古の昔からあったわけでは無く、突然変異‥それも、禁忌の近親婚によって生まれたなんて‥。
その後、二人は子供を何人か産んだが、その子供たちは「普通じゃない」子供のいずれかのパターンの子供ばかりだった。
「‥ちなみにこの記録は「名もない男」の記録だ。
男は、デュカとリゼリアを交配一代目と記している。
一代目
男、魔力在り、火属性、王族
女、魔力在り、水属性、王族
と記録されているだけで、名前の記載ははないが、間違いなくデュカとリゼリアのことだろう」
交配記録。
「男によると、王族同士の交配というのに意味があるらしい。僕たちと地球人は身体の作りがそもそも違うから、地球の言葉とは同じものをささないが‥分かりやすいので遺伝子という言葉を使おう。
遺伝とは、親から受け継がれる性質ということらしい」
「遺伝子‥」
親から受け継がれる‥というと、きっとデュカとリゼリアは同じ様に暮らしていなくても、きっと「同じようなものを親から受け継いでいた」んだろう。
「結論から言うと、王族は、他の平民や貴族と遺伝子的に「違う」異種族なんだ。
ごく一般的な平民の持っている遺伝子をHhとする。(大文字表記が優性遺伝子、小文字表記が劣性遺伝子)
この場合の優性遺伝子は「表面に出て来る性質」で、劣性遺伝子は「表面に出てこない性質」ということとする。
魔法使いはMh、Mm
魔力を持っている一般人はHm(魔力はあるが魔法は使えない)
リバーシはRr、Rm、Rh
リバーシの遺伝子は魔法使いの遺伝子より強く、リバーシの遺伝子(R,r)がある者は全員リバーシになる。
と、仮定したところで、
デュカとリゼリアの子供(交配二代目)が生まれる前の平民、貴族の遺伝子パターンは、HhかHmで、王族は全て、Hmmだった。
HhとHhが交配した場合、子供の遺伝子は、必ずHhになり、HhとHmが結婚した場合も、子供は、HhかHmになる。HmとHmが結婚した場合は、子供が全てHmになる」
「確率の問題だね」
私が確認をとると、ナラフィスが頷いた。
「王族はHmmの遺伝子を持っているから、Hmと結婚した場合は、全員Hm(父親の遺伝子)m(母親の遺伝子)になる。あの頃の王族は魔力を持っている貴族としか結婚しなかったからね。
魔法を使うわけでは無いが、魔力持ちの方が、見た目が良い者が多く、寿命が長い傾向にあり、「器用」だったんだ。‥つまり、スキルが使えたって話だね」
デュカとリゼリアが結婚して、血が濃すぎる故、mが優性遺伝子Mとなった子供が産まれ、全く別の突然変異遺伝子Rrが産まれた。因みに、Rは、Mの変異株だと考えられている」
mの優性遺伝子が産まれた‥ということは、mが表面に出て来る性質になるということだ。つまりそれが魔法使いだ。
そして、Rrも同様だ」
Mを持っている子供は魔法使い、Rを持っている子供はリバーシ。
話しについていけなかった。
言っていることは分かるけど‥話していることが無茶苦茶過ぎて気分が悪い。
なんだそりゃ、実験動物か?
「その地点では、王家で「やっぱり近親婚は良くない」っていって、それ以降はそんなことが無いように‥で済ませれば‥まだよかったんだろう。だけど、その名前の無い男は、デュカとリゼリアに「この子どもたち(魔法使いとリバーシ)は和平のしるしの紫の瞳をしていませんね」って言葉巧みに騙して‥子供たちを連れ去り、次の交配の実験体にしたんだ」
もう‥聞いていられない、って思った。
その結果、その男と交友があった貴族を中心に‥魔法使いやリバーシが産まれるようになった。
だけど、そう人数がいるわけでもないから、平民を中心とした人々はそのことに随分経つまで気付かなかった。
そして、魔法は「当たり前に」浸透していき、魔法を持つ貴族たちは魔法を正当化するために、新しい‥全く出鱈目で「自分たちに都合のいい」デュカとリゼリアの話を作り出した。
つまり、あの御伽噺は、魔法が一般的にひろがってから作られたお話ということになる。
「‥信じられない‥」
ショックでしばらく話すこともできなかった私が、何とか喉から絞り出した言葉がこれだった。
今のような社会がもともとはそんなマットサイエンティストによってつくられていたなんて‥
マットサイエンティストの野望と偽り‥そういうものから始まった悲劇の歴史‥。
だけど、‥もしかしたら、そのマットサイエンティストも、何か別の「大きな力」‥運命というものにそそのかされて‥操られていただけなのかもしれない。
なにか、人智を超えるものの存在に、だ。
もしかしたらあれは、生命の進化の為に必要な‥さだめ(必要悪? 犠牲? )だったのかもしれない。
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