リバーシ!

文月

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十四章 デュカとリゼリア

10.ただ、カッコ悪いのが嫌なんです。

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(side ナラフィス)


 ‥でも、夜だけ来る異世界人はヒジリだけじゃない。
 寧ろヒジリはこっちの出身だし、誰かの協力なしで「肉体ごと」異世界を行ったり来たり出来る勢いだし‥
 桔梗の通勤(?)スタイルは寧ろ、ミチルだ。
 じゃあ、桔梗ポジはミチルじゃない? って話になると‥一気に話が「奇跡の恋再び」‥から、喜劇に変わってしまいそうだ。

 そもそもね、ラルシュもメレディア王再来って言うのはおこがましい‥役不足なわけよ。ラルシュは、悩みがちだけど、別に「自分は何者なんだ‥」って悩んで病みがちにはなっていない。
 だけど、メレディア王の場合と今じゃ状況が違う。メレディア王の場合、外的要因‥「前例がなくって」右も左もわからず聞こえてくるのは兄弟姉妹の風評被害だけって状態‥が性格設計に大いに貢献してるよね。
 今は、研究こそは進んでいないが、皆が魔法使いやらリバーシのことを知っているし、(多少は恐れられてはいるが)昔の比ではないだろう。
 一代目と今では状況が違う。
 だからといって、外的要因が違うだけで、ラルシュとメレディア王が根本的には同じ人間‥とは思えない。
 なんでもかんでもこじつけるのは、良くない。

 というか‥、メレディア王って状況もさることながら、元々の性格が‥ちょっと独特なんだよな。
 きっと、さ。メレディア王が現在によみがえることはないって思った。
 ‥絶対彼はこの世に未練なんてない。
 前世はさんざん奇異な目で見やがって‥今尚晴らすことのできない恨みを、「今」現在によみがえって晴らしてやる‥とかいうタイプじゃない。
 むしろ、死んで肉体から自由になって、今頃ほっとしてるだろう。桔梗さんとほのぼの微笑みあってる‥そんな気がする。

 僕たちは今回、ホントに偶然「真のデュカとリゼリア」を知ったわけだけど、その事で僕たちがすべきこと‥この昔話の登場人物たちが僕たちにしてほしい‥って望んでる何かがあるわけでは無いと思う。
 ただ、魔法は尊い特権階級の「特別な力」ではなく、好奇心を刺激され狂わされた‥哀れな科学者が生み出した「不自然な呪われた力」ってことを‥我々が再認識しなければいけないって話なんだと思うんだ。いわば、我々に対する警告だったんじゃないかな‥。

 尊いとは程遠い魔法、不自然で悲しい王‥。
 僕らは魔法を利用しつつ、分からないこと、都合の悪いことにずっと蓋をし続けて来た。
 向き合えばよかったのに、怖いものだって恐れ、逆に「特別なもの」だって神聖視し、真実から目を背け続けて来た。
 僕らは、ずっと見当違いなことに振り回され過ぎて来たんだ。
 

「ヒジリには、何か遺伝子的な‥その‥悩みがあるの? 」
 遺伝的な病気って言葉に過剰反応したヒジリに「将来の王子妃に遺伝的な病が?! 」って過剰反応した僕が、だけど「女性だし」「プライバシーの問題かもだし」ってことを一応考慮して‥ためらいがちに聞くと、ヒジリは驚いた顔をした。
「え? 」
 って‥絶句した。
 あの顔は「なに、今更お前がそれ聞く? 」って顔だった。
「遺伝子的‥ではないけど、生まれながら俺は世界の災厄ですけど? 」
 って、‥呆れたような声。
 ‥あ、そうだったね。
 あんまりヒジリが普段から「アレ」だから‥忘れかけてた。
 アレって‥別にアホって意味じゃない。能天気でも、無責任でもない。
 ‥寧ろ、ヒジリは周りに「十分すぎるほどスマートに」「気を配って」いるんだ。
 周りにって、城の人。メイドだとか、ラルシュたちの侍従だとか。
 怖がらせないように、‥ラルシュたちにかっこ悪い思いさせないように‥迷惑かけないように。だからといって、威張ったり、逆に卑屈になったりしないように。
 ‥ヒジリはミチルのことを参考にしながら「ちょうどいい態度」で彼らと接しているんだ。

 (ヒジリのその気配り‥苦労があるから)周りはヒジリに対して緊張しないで済んでいる。
 僕さえも、さっきみたいに「そういえばそうだったね」「そんな話、あったね」って忘れてたくらい‥ヒジリは周りに気を配ってきたんだ。

 そういえば‥眠っているヒジリがここに運び込まれた時は、メイドたちが恐れて世話係すら決まらない日々が続いたって聞いたことがある。だから、ラルシュが何も出来ないけどせめて‥ってこまめにお見舞いに来てて、それに付き添っていたメイドたちが徐々に「どうやら、眠っている間は平気らしい」って認識し始めて‥、やっと交代で世話をするようになったらしい。
 皆怖がりすぎてただろ‥って、今のヒジリを見てたら笑い話みたいに思うけど‥「世界の災厄」って聞かされてたら、そりゃ怖がりもするよな‥。
 それこそ、眠ってるだけの「幼いヒジリ」が、先入観が生んだ「いもしないバケモノ」に見えてたわけだ。
 結果、ヒジリは何もしてないのに恐れられて、嫌われていた。
 何をしても(学生時代。ヒジリは普通にいるだけでいじめられていた)何もしなくても、だ。
 
 風評被害って言葉がある。
 先入観、噂、嘘‥
 あの時「吹かせた」風は‥きっと御伽噺の中の風の様に‥「いい奴」なんかじゃなかった。

「ヒジリは‥苦しい‥よね」
 ポツリとつい‥そんな言葉が口から零れ落ち‥すぐ反省した。
 苦しいに決まってる。苦しくないわけがない。
 自分が悪いわけじゃないのに、生まれながら嫌われてて‥苦しくないわけがない。
 恐れられて、幼い頃から‥それこそ、本人の事知りもしないのに幽閉が決定して、(幽閉される前に)悪者に攫われそうになって、眠らされて‥、死にそうになって、やっと目覚めたのに‥また狙われてる。
 苦しくないわけがない。
 だのに、ヒジリは落ち込んでばかりいない。
 空元気かもしれないけど、明るく前向きに‥自分が出来ることをしようとしてるし、自分の運命を恨んでいない。
 ラルシュやサラージ‥城の人間を嫌っていない。

 ヒジリは僕をちょっとびっくりしたような表情で見て、次に「う~ん」って考える仕草をして、
「苦しい‥って訳じゃないです。寧ろ‥面倒くさい。面倒くさいって言い方はよくない‥けど、なんか、ことが大きすぎて自分ではどうすればいいか分からない時って‥考えること放棄したくなりますよね。
 今までね。「自分のことは自分でする」が俺のポリシーだったし、実際そうしてきたんです。それが当たり前だったんです。だけど、当たり前だったのは‥俺の周りの全てが「何とか自分で出来る」事しかなかったからだったんです。そうなるように、両親が‥そうしてくれていたからなんですよね」
 ヒジリがポツリと呟く。
 「自分のことは自分でする」いかにもヒジリらしいシンプルなポリシーだ。地球では当たり前だけど、この国の多くの貴族にとっては当たり前じゃない。僕は「自分でやらなくても実はいいんだけど、自分でやった方が楽だから自分でする」って感じかな。
「今思えば、両親のおかげで、僕の心配事や「自分でしなければいけないこと」は単純だった。
 ‥そういえば、奨学金を貰っている友人もいたけど、俺はそれを「大変だな」って思わなかった。「そういうのもあるのか」って思っただけだった‥」
 ヒジリがしゅん、とした表情をする。
 とにかく、「ヒジリは両親のおかげで」自分の事自分でしてればいい状況だったってヒジリは言葉を続けた。
「例えば、試験で点数をとらなくちゃいけなかったら勉強するし、欲しいものがあって、でもお金が足りなくって買えなかったらバイトする。
 逆上がりが出来ないなら練習する‥って、そういうことはなかったな。結構なんでも器用に出来てた。それはナラフィス先生だって同じでしょ? 
 地球での俺の生活はゆる~く、快適だったんです」
 僕は相槌を打った。
「俺の存在は、平凡で小さくて、その他大勢でしかなかった。時々「もう少し俺のこと見てくれよ」って悔しく‥歯がゆくなるくらい平凡だったんです。だけど、おかげてのびのび暮らしてこれたんです。
 だのに、こっちでの俺は‥なんか姿かたちからして、まるで俺じゃないみたいです。
 人の目とか、俺の発言の人に与える影響力とか‥大きくって、‥今までとあんまりにも違い過ぎて‥戸惑うし‥
 何よりも、全部面倒くさい。時々、「俺のことなんていいから、お気になさらずに! 」っていいたくなっちゃう位です」
 はは、って自嘲気味な微笑を浮かべる。
 だいぶ溜まってるな~って思った。
 ヒジリは、人に注目されることになれてない。気にするなって言う方が無理だろう。生まれた時から「それが日常」なラルシュたち王族とは違う。
 だのに、
「だけどね、俺の気持ちはここの人たちには関係ないんですよ。ここの人たちにとって重要なのは「俺が危険か危険じゃないか」だけ。
 だから、俺は危険じゃないよ、って思ってもらえるようにそれだけを心掛けてる」
 ヒジリは文句なんて言わない。泣き言も恨み言も言わない。
 疲弊しながら迷いながら、きっと「自分の出来る速さで」着実に「自分がやるべきこと=皆を安心させること」をやり遂げるだろう。

 ヒジリは、弱くなんかない。
 無責任でもない。
 だけど、正義の味方でもない。
 自分が犠牲になってでも人々の幸せを‥ってタイプだって思ってた。‥元々はそうだったかも、だけど今は‥。
 ヒジリは強くなった。
 昔よりちょっと強くなった。
 自分が何かしなければって、気負いがなくなった。
 自己を犠牲にしないといけないって‥脅迫概念からも解放された様だ。

 自己犠牲でその場を乗り切ろうってするのは‥そういえばラルシュだ。だけど、ラルシュは自己を犠牲にしても人々の幸せをって思ってるわけでは無いんだ。ラルシュは「目標実現の過程でコミュニケーションが面倒で自分で全部やってる」に過ぎない。
 ラルシュとは違って、ヒジリは優しい。
 優しさが、ヒジリを強くしたんだ。
 
「人にいい様に見せようなんて考えても、人は自分が思う程他人のことなんて見てない。
 誤解されたくないって言葉を重ねれば重ねるほど言い訳がましく聞こえる。
 人の為に‥って考えても、それがホントに人の為になっているかなんてその人しか分からない。所詮自己満足だ。
 感謝されなくて「なんだこの人礼儀がなってないな」って思うのが嫌だったら、はなからしなければいい。それでも「そうしないと自分の気持ちが治まらない、気持ちが悪い」って思うなら、「自分の為に」すればいい。その結果拒否されたら、自分の責任で「おせっかいだった~」って落ち込んで、その人に謝ればいい。

 結局ね。
 俺ごときの小物に「人の為のなにか」なんて出来ない。
 だけど、人は俺にそれを期待する。当たり前に。
 恐ろしいお前をこの世界に生かせてやってるんだから、「当たり前に」人の為に「何かをしろ」って平気で言ってくる。
 何かをして、その結果、「周りを巻き込まないなら」俺が死んでもそれは仕方ない、って思うんだろう。
 ‥そんな奴らの為に、なんで俺が「何かをして」「死んでやらないといけないのか」って思う。
 やってられるか! って全部投げたくなったことも確かにあった。

 俺はね。
 だけど、俺に対して好意的に接してくれる友達‥ラルシュ様やサラージ様、ナラフィス先生やミチル、メイドさんたちにそんな無責任で投げやりな俺は見せたくないんだ。
 失望させたくない、彼らの為に何かを‥とかじゃなくて、彼らにそんな無責任な自分を見せたくないんだ。
 
 かっこ悪いから」

 ヒジリは、カッコ悪いことが嫌なだけっていうんだ。
 ‥ツンデレだよね。
 優しいから、って認めないんだ。
 認めたらきっとそれは「押し付け」になるってわかってるから。
 だから、押し付けにならないように、自分の為にする、‥カッコ悪くならないように、情けなくならないように、自分の為っていうんだ。自分の為に戦って‥努力して‥結果、それがヒジリの愛する人の為(限定)になるって信じているんだ。
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