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十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル
1.学者失格。
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(side ナラフィス)
気が付くと‥
ヒジリのこと明らかに「ひいき目」で見てしまっている自分に気付いた。
それは‥良くない。
ひいき目は、先入観だ。
「いいように‥いいように」見てしまう、呪いの先入観だ。
僕は、学者失格だ。
学者は「先入観にとらわれず」「見たまま」対象物を見なければいけない。
勿論「先入観をもっているからこそ気付くこと」もあるだろう。医者だって知識があるから患者の病気に気付ける。だけど、生半端な知識量しかないと見誤る‥それが一番怖い。
学者って言うのは、知識を常に吸収しながら「これはホントにそうなんだろうか」って常に疑いの目を向けていないといけないような職業だと思う。
対象物に対して、既存の知識が当てはまるか‥それとも全く新しいものか‥観察する。
面倒なことではない。それは楽しいことだし、‥半ば癖の様になっている。
先入観自体を持つことは悪くない。だけど、ひいき目はいけない。
対象物に対する公平な判断力を失わせるかもしれない。
ひいき目は‥良くない。
僕がそのことに気付いたのは、「ヒジリの学習経過」をラルシュに報告しようとペンをとった時だった。
驚くほど、まともな報告文が書けなかった。
ヒジリの問題点を書こうとしては「だけど、それも彼女の魅力」って弁解したり、「こう書いてしまったら悪いように見えるけど、彼女だったら‥そう悪い風にも見えないんだよな~」ってヒジリを「庇ってしまう」自分がいて‥
「おいおい、僕は‥どうなってるんだ。大丈夫か」
って思ったんだ。
我に返った‥というか、落胆したよね。
まさか自分が‥って思ったよね。
それが恋じゃないことは、でもこんな自分にだってわかる。
だって僕が好きなのはマリアンちゃんだから‥とか青いことは言わない。
そもそも、マリアンちゃんのことを‥僕はどう思っているんだろうか。
僕は詩人でも作家でもないから自分の気持ちを言葉で言い表すのは下手だし、画家みたいに、自分の気持ちを絵で表現することも出来ない。
僕の「対象物への愛情表現」は、理解と把握だ。
対象物を正しく分析し、理解する。
その際、「対象物に対する自分の気持ちの温度」で、対象物に対する自分の気持ちを知るは‥よくある。
面白いって感じたら気持ちの温度が上がるし、興味がないって思ったら‥気持ちの温度も下がる。
僕は学者である以前に一人の男だから、マリアンちゃんを見てたら「可愛いな、髪を触ってみたいな」って思うことだってあるし、知的関心をもっているわけでもないのに気持ちの温度が上がってるって感じる。「肌はどんな感触だろうか? 」っておおよそ、知的ではない好奇心を持つことだってある。
だけど、それが恋かと言われると「よくわからない」。もしかしたら、代わりがきくものかも‥って考えてしまう。
マリアンちゃんは、「僕の好みの容姿で」、「僕の好奇心を満足させて」「話してて面白くって」、「貴族的な素養」も問題ない。マリアンちゃんはまさに「僕の理想に合致している」んだ。だけど、「そんな女の子」なら、別にマリアンちゃんじゃなくてもいいんじゃないかなって思う。
僕は‥割と面食いだから、僕の理想の顔であるマリアンちゃんは「かなり可愛い部類」だと思うし、他の条件も甘いわけじゃない。マリアンちゃんは結構「イケてる女子」で、マリアンちゃんレベルはそんなにたくさんいるとは思わないけど、いない訳でもないと思う。
希少価値が低いから嫌だって言っているわけでは無いし、希少価値が高ければいいってもんでもない。
ヒジリは「他にはいないレベルの美人」だし、魔力量だとか質だとか魅力満載だ。だけど、僕の好みの容姿じゃないし、仕草だって男っぽくって「ドキッとする」って要素ゼロで、貴族的な素養もないし、天然で「話してて面白い」けど、頭脳明晰か‥っていわれるとそうでもない。馬鹿じゃないってのは分かるけど、そこまでだ。‥でも、そこまでの頭脳しか持ってないから興味ないって言ってるわけでは無い。
ヒジリと話したって僕の気持の温度が上がるわけでもない(つまり、女子として関心を持っているわけでも、対象物として関心を持っているわけでもない)のに、ヒジリのことを好ましいと思っている。
ラルシュやサラージに対する感情‥つまり、友情か? って思ったけど‥それも違う。
僕にとって友達とは、相互に利用価値があって然りだし、尊敬の感情があることが前提だ。
相手から常に新しい発見があり、また、相手に常に新しいことを伝えられる。
学び取る喜びと、教え、また討論し、理解を深め合える喜び。
お互いに学び教え合う立場って奴だ。
ヒジリからだって学び取ることはあるし、実際に今ヒジリの家庭教師をしているんだからヒジリに教えてるんだけど‥それが僕のいう「お互いに学び合う立場」じゃないっていうのは‥分かっていただけると思う。
つまり、ヒジリに対して僕は友情でも愛情でもない‥分析し難い好意を感じて、ひいきしてるってことだ。
まったく意味が分からない。
‥これが、インフルエンサーの人心掌握術って奴か。恐ろしい。
恐ろしいけど‥興味深い。
力による服従‥とは違う。
論破され、説得され‥、知識に圧倒され‥るのとも違う。
相手を性的に魅了するチャームとも違う。(もっとも違う)
‥この正体不明の影響力‥これは‥なんて表現したらいいのだろう。
この気持ちが理解できない。
これは‥気持ちが悪い。
だけど‥分析できないから気持ち悪いのに‥ヒジリに対して僕の感情は驚いたことに「嫌じゃない」。
僕はこの気持ちの正体を知りたいって思うけど、‥どんなに分析しても分かるような気がしない。
正体が分からないまま、今日もヒジリと同じ時間をただ何となく過ごすのを楽しみにしている自分を、でも職務放棄だとも「学者失格」だとも思わない。
学者だからこそ、
自分が今、彼女に「影響」をうけてるって気付いた。(天才肌の直感型、しかも脳筋だからそう深く考えこまないサラージや、ヘタレなくせに割とロマンチストなラルシュだったら絶対気付かないだろう)
学者だから、
僕はこれから改めて彼女を冷静に観察、分析することが出来る。
‥学者だのに
僕はこれからも「好意的に」彼女のことを判断することを変えることは出来ないだろう。
だけど、‥僕は彼女を信頼しているんだ。あの、理解できない彼女の魅力が、いつかこの国を救うんじゃないかって‥期待してるんだ。
気が付くと‥
ヒジリのこと明らかに「ひいき目」で見てしまっている自分に気付いた。
それは‥良くない。
ひいき目は、先入観だ。
「いいように‥いいように」見てしまう、呪いの先入観だ。
僕は、学者失格だ。
学者は「先入観にとらわれず」「見たまま」対象物を見なければいけない。
勿論「先入観をもっているからこそ気付くこと」もあるだろう。医者だって知識があるから患者の病気に気付ける。だけど、生半端な知識量しかないと見誤る‥それが一番怖い。
学者って言うのは、知識を常に吸収しながら「これはホントにそうなんだろうか」って常に疑いの目を向けていないといけないような職業だと思う。
対象物に対して、既存の知識が当てはまるか‥それとも全く新しいものか‥観察する。
面倒なことではない。それは楽しいことだし、‥半ば癖の様になっている。
先入観自体を持つことは悪くない。だけど、ひいき目はいけない。
対象物に対する公平な判断力を失わせるかもしれない。
ひいき目は‥良くない。
僕がそのことに気付いたのは、「ヒジリの学習経過」をラルシュに報告しようとペンをとった時だった。
驚くほど、まともな報告文が書けなかった。
ヒジリの問題点を書こうとしては「だけど、それも彼女の魅力」って弁解したり、「こう書いてしまったら悪いように見えるけど、彼女だったら‥そう悪い風にも見えないんだよな~」ってヒジリを「庇ってしまう」自分がいて‥
「おいおい、僕は‥どうなってるんだ。大丈夫か」
って思ったんだ。
我に返った‥というか、落胆したよね。
まさか自分が‥って思ったよね。
それが恋じゃないことは、でもこんな自分にだってわかる。
だって僕が好きなのはマリアンちゃんだから‥とか青いことは言わない。
そもそも、マリアンちゃんのことを‥僕はどう思っているんだろうか。
僕は詩人でも作家でもないから自分の気持ちを言葉で言い表すのは下手だし、画家みたいに、自分の気持ちを絵で表現することも出来ない。
僕の「対象物への愛情表現」は、理解と把握だ。
対象物を正しく分析し、理解する。
その際、「対象物に対する自分の気持ちの温度」で、対象物に対する自分の気持ちを知るは‥よくある。
面白いって感じたら気持ちの温度が上がるし、興味がないって思ったら‥気持ちの温度も下がる。
僕は学者である以前に一人の男だから、マリアンちゃんを見てたら「可愛いな、髪を触ってみたいな」って思うことだってあるし、知的関心をもっているわけでもないのに気持ちの温度が上がってるって感じる。「肌はどんな感触だろうか? 」っておおよそ、知的ではない好奇心を持つことだってある。
だけど、それが恋かと言われると「よくわからない」。もしかしたら、代わりがきくものかも‥って考えてしまう。
マリアンちゃんは、「僕の好みの容姿で」、「僕の好奇心を満足させて」「話してて面白くって」、「貴族的な素養」も問題ない。マリアンちゃんはまさに「僕の理想に合致している」んだ。だけど、「そんな女の子」なら、別にマリアンちゃんじゃなくてもいいんじゃないかなって思う。
僕は‥割と面食いだから、僕の理想の顔であるマリアンちゃんは「かなり可愛い部類」だと思うし、他の条件も甘いわけじゃない。マリアンちゃんは結構「イケてる女子」で、マリアンちゃんレベルはそんなにたくさんいるとは思わないけど、いない訳でもないと思う。
希少価値が低いから嫌だって言っているわけでは無いし、希少価値が高ければいいってもんでもない。
ヒジリは「他にはいないレベルの美人」だし、魔力量だとか質だとか魅力満載だ。だけど、僕の好みの容姿じゃないし、仕草だって男っぽくって「ドキッとする」って要素ゼロで、貴族的な素養もないし、天然で「話してて面白い」けど、頭脳明晰か‥っていわれるとそうでもない。馬鹿じゃないってのは分かるけど、そこまでだ。‥でも、そこまでの頭脳しか持ってないから興味ないって言ってるわけでは無い。
ヒジリと話したって僕の気持の温度が上がるわけでもない(つまり、女子として関心を持っているわけでも、対象物として関心を持っているわけでもない)のに、ヒジリのことを好ましいと思っている。
ラルシュやサラージに対する感情‥つまり、友情か? って思ったけど‥それも違う。
僕にとって友達とは、相互に利用価値があって然りだし、尊敬の感情があることが前提だ。
相手から常に新しい発見があり、また、相手に常に新しいことを伝えられる。
学び取る喜びと、教え、また討論し、理解を深め合える喜び。
お互いに学び教え合う立場って奴だ。
ヒジリからだって学び取ることはあるし、実際に今ヒジリの家庭教師をしているんだからヒジリに教えてるんだけど‥それが僕のいう「お互いに学び合う立場」じゃないっていうのは‥分かっていただけると思う。
つまり、ヒジリに対して僕は友情でも愛情でもない‥分析し難い好意を感じて、ひいきしてるってことだ。
まったく意味が分からない。
‥これが、インフルエンサーの人心掌握術って奴か。恐ろしい。
恐ろしいけど‥興味深い。
力による服従‥とは違う。
論破され、説得され‥、知識に圧倒され‥るのとも違う。
相手を性的に魅了するチャームとも違う。(もっとも違う)
‥この正体不明の影響力‥これは‥なんて表現したらいいのだろう。
この気持ちが理解できない。
これは‥気持ちが悪い。
だけど‥分析できないから気持ち悪いのに‥ヒジリに対して僕の感情は驚いたことに「嫌じゃない」。
僕はこの気持ちの正体を知りたいって思うけど、‥どんなに分析しても分かるような気がしない。
正体が分からないまま、今日もヒジリと同じ時間をただ何となく過ごすのを楽しみにしている自分を、でも職務放棄だとも「学者失格」だとも思わない。
学者だからこそ、
自分が今、彼女に「影響」をうけてるって気付いた。(天才肌の直感型、しかも脳筋だからそう深く考えこまないサラージや、ヘタレなくせに割とロマンチストなラルシュだったら絶対気付かないだろう)
学者だから、
僕はこれから改めて彼女を冷静に観察、分析することが出来る。
‥学者だのに
僕はこれからも「好意的に」彼女のことを判断することを変えることは出来ないだろう。
だけど、‥僕は彼女を信頼しているんだ。あの、理解できない彼女の魅力が、いつかこの国を救うんじゃないかって‥期待してるんだ。
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