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四章 物語の主人公
15. 愛ゆえに分かるっていう‥自己防衛。
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「なんてね‥驚きました? 」
桜子はふふ、って笑って、
「あ、石を持ってこれに触ればいいんですか? 」
検査機に触れた。
「微かに、‥緑」
「おや、緑ですね。宝石の原石に近い感じですね! 流石お母さん! 子供さんともども、才能を伸ばしませんか?! 」
アララキの部下二人が交互に、
驚いたように桜子を見て、ちょっと興奮した声を出す。
勧誘がヒートアップした‥。
まだ何か言いたげな正樹は、狐につままれたような顔をして、桜子を見た。
検査機を見ながら無邪気に微笑む桜子を見て、桜子が、さっきまでの桜子と変わったのが分かったんだろう。
そして、それは
アララキも同じだった。
「サカマキ? 」
黙ってあの場を離れ、辺りを歩き回りながら、サカマキを探す。
影を伝って桜子の外に出て、鳩に戻っているんだろうか?
立ち止まって、全身の神経を集中させて、サカマキの気配を探る。
目をつぶると鳥の鳴き声が聞こえて来た。
‥サカマキは、今 鳥ではない。
サカマキは、樹の影で、人型になって立っていた。
樹の根元を見つめるみたいに、力なく俯いて、樹と向かい合って立っている。
ここのところいつもサカマキが着ているトレーナーと綿パン姿。
桜子に貰った服だ。
「サカマキ」
アララキが、声を掛けてサカマキの後ろに立った。
「人って、凄いな‥」
アララキを振り向くこともなく、サカマキが呟いた。
独り言ってわけではなさそうだ。
「え? 」
「魔法も、何にもないのに、‥分かるんだな、って‥。俺が‥俺が異質だから、桜子みたいに振舞えなかったから‥分かってしまったのかな」
それでも、頑張ったつもりだったんだけどな
って、呟く。
弱気で泣きそうな声
サカマキの細い身体が、いつもよりずっと頼りなく見えて、可哀そうで仕方が無くなった。
アララキが慰める様にサカマキを後ろから抱きしめたけど、別にそんな理由なんかなくたって、アララキはサカマキを抱きしめていただろう。
‥久し振りに会えた。
会いたくて仕方が無かったサカマキに、本当に久し振りに会えた。
そして、
周りには誰もいない。
サカマキが怒る
「人がいる前で何してるんだ! 」
って状況ではない。
アララキは、
「正樹だから分かったんだろう。‥あいつは、魔法は使えないようだが、‥勘が鋭そうだ。
大方‥用心深いんだろうな。ずっと人を観察してるんだろう。
人が信じられなくって、‥でも信じたくって、ずっと不安で。無意識に観察する様に人を見てしまう。
‥心変わりが怖いんだ。でも、自分が傷つくのが一番怖くて‥」
抱きしめながら、静かな声でサカマキに話す。
アララキとサカマキの身長差は、割とある。
長身のアララキの腕は、サカマキの胸の辺りでゆるく組まれている。サカマキはゆっくり息を吐いて背後に立っているアララキに少し体重を預けた。
背中からアララキの暖かさが伝わってきて、少し安心した。
くす
背中越しに、アララキが微かに微笑んだのを感じた。
「さっきの仮説も‥一種の賭けだったんだろう。あそこにいたのが、ここの人間ではなく、彼のなかでは「荒唐無稽で、普通とは違う常識外」の異世界人だったから‥。
そうじゃなかったら、‥言いもしなかっただろう。
現実逃避するなよ、アンタの嫁さんの心変わりだろ?
って言われて終わりだ。
‥でも、正樹はそれを言われるのが一番怖かったんだろうね。桜子を信じたかった。‥だから、一縷の望みをかけて、あんな荒唐無稽な仮説を口にした。‥正樹自身も自分で言いながら‥信じていなかっただろうけどね。
でも、言いながら「なんとなく有り得るかも」っていう気持ちになった」
苦し紛れに、何となく変なことを言っちゃったんだけど、言ってみると、「あれ、これ案外あってるかも」ってやつだ。‥あんまりないけど、無いことではない。偶に、ある。
噓から出た誠
瓢箪から駒が出る
とは、今回のケースは違うけど、‥人間ってのは、とかく「言ってみただけ」を実現させちゃうようなへんな行動力を持っている。行動力っていうか、‥引き寄せるっていうか‥。
言霊の力っていうのは、確かにあるのだろう。
こわい生物だ。
今回のケースは‥でも、「そう思う」だけの根拠‥「これあるかも」って思う要素があった。
だから、余計に「そうかも」ってなった。仮説が、確信に変わった。(まあ、桜子が認めない限り、確信に変わるわけでは、ホントの意味ではないんだけど、少なくとも正樹のこころの中では確信に変わったわけだ)
正樹は、時々桜子に違和感を感じていた。
これだけなら、「奥さんが何か隠してるんじゃない? 」「心変わりじゃない? 」だ。
だけど
「‥それは、俺の存在だね」
アララキが頷く。
正樹には、‥サカマキ‥「酒井 真紀」と会った時に感じた既視感っていうもう一つの違和感があった。
「俺が、正樹に関わって、俺の存在に正樹が少なからず既視感を抱いたから‥」
それが今回、「これあるかも」を後押しした。
ちょっと感じた違和感‥既視感。それだけなんだけど、‥ホントにそうかも、って自分を納得させるのには十分な要素だった。
だって、自分は裏切られているって思いたくなかったし、‥桜子を信じたかったから。
こじつけだって構わなかった。
‥正樹と「俺自身の姿で」接触を取ってしまった、俺の落ち度だ。
‥正樹の観察力やら勘の鋭さを見抜けなかった俺の‥。
サカマキが俯いて、きゅっと自分の拳を握った。
「‥そうだね」
短くアララキが応えて、サカマキを自分の方に向ける。
サカマキがアララキの顔を見上げる。
「サカマキ、いつまでここにいるの? 桜子が心配だから? 魔物の入って来た裂け目のこと? だけど、それって‥サカマキが責任持たなくちゃいけない事かな。
サカマキが裂け目をつくったわけじゃない。
こっちに来てる魔物は、雑魚ばかり。
それこそ、こっちの人間が、自分たちで何とかすればいい話じゃないのかな。‥サカマキはあっちに帰って、大きな魔物だけ今まで通り倒していれば、こっちに来るのは、雑魚だけになる。雑魚なら‥こっちの人間でも何とかできる。‥そもそも、こっちの悪意から産まれた魔物じゃないか。大きな魔物をあっちで始末してやるだけでも、感謝されて然り‥って思うけどな」
最後はちょっと、恨みがましいような口調になってしまった。
こっちの人間に、嫉妬してるみたいで恰好が悪い。
アララキは、‥ちょっとそうは思ったが、気にしないことにした。
サカマキは、ちょっと驚いた顔をして、
ふふ、って小さく笑った。
「アララキは‥俺以外の事だと、割と冷たいよね」
なんて揶揄ったような口調で言ったのは、‥アララキに対する照れ隠しか、それとも自分の心に根深く張っている不安を誤魔化したかったからか。
桜子に対する想い、魔物を何とかしなければいけないって思う気持ち、そして、自分の使命に対する責任感。
そんなもろもろの感情が、自分の心に絡まり合いながら、まるで根っこの様に張り巡らされている。
不安で、不快で
思わず、アララキをすがる様な視線で見上げてしまっていた。
ふわ、っとアララキがサカマキの瞳を見つめて、微笑む。
それだけで、総てが大丈夫だって言われたような気になる。
「僕にとって一番大事で‥愛してるのはサカマキだけだ。
‥万人に優しくする必要なんてない。それに、‥自国民ならともかく、ここは他国どころか、異世界だし‥僕には関係が無い」
相変わらずなアララキに「安心する」。
変わってないなって‥
だけど、そうじゃない‥安心していいものでもない。ここは「無責任なこというなよ」って諌めるべきなんだ‥。
だのに‥
‥(安心してしまった)自分に嫌悪感を抱く。
自分の使命、自分の想い、‥自分の‥我が儘‥。
アララキのことは好きだ。でも、‥きっと自分の「好き」とアララキの「好き」は違うし、自分はアララキのこと「アララキの様に好き」にはなれない‥なってはいけない。
でも、‥分かりたい。
だけど、‥わかるのが怖い。自分が変わるのは怖い。
もう、無茶苦茶で、
心細くて、なんだかイライラして、不安で‥胸を掻きむしりたいような衝動に駆られる。
「‥アララキは凄いな」
アララキから視線を外し、サカマキは俯く。
「ん? 」
アララキが首を傾げる。
「なんで、俺にそんなに愛してるって言ってくれるの? 俺は‥愛の意味すらわからないのに」
右手で、
さっきから痛い気がする胸を抑える。
「愛に意味なんかないんじゃない? 衝動だし、欲望の塊だよ。
僕にとってはね、サカマキっていう存在は、「飲まないと生きていけない水」みたいなもんだ。
水を飲まないと、枯渇して死ぬ。
今すぐ飲まなくても、傍にないと不安だし、口に含めば満たされる。水浴びは至上の喜び‥でしょう? ‥サクは‥
いや? 」
サクって呼ぶとろりとした甘い口調。
アララキのいつもと同じ、色っぽくて、ため息が出る程整った貌。
サカマキにだけ見せる優しい表情と‥欲情を孕んだ視線。
「やらしい言い方するなあ‥」
呆れた振りして、躱そうとしたけど、アララキに躱されてくれる気なんかまったくなかったようだ。
いつの間にか背中に回された手は、腰の辺りに移動されている。
その手がそのまま下に下がっていく。
優しく‥自然に尻を撫ぜる不埒な手からするりと抜けだ‥
‥そうとして、
もっと強く腕の中に閉じ込められる。
「逃げないで‥サカマキ」
「もう、サカマキと離れたくないんだ‥」
誰よりも赤い‥至宝のガーネット。
僕だけの‥宝物。
桜子はふふ、って笑って、
「あ、石を持ってこれに触ればいいんですか? 」
検査機に触れた。
「微かに、‥緑」
「おや、緑ですね。宝石の原石に近い感じですね! 流石お母さん! 子供さんともども、才能を伸ばしませんか?! 」
アララキの部下二人が交互に、
驚いたように桜子を見て、ちょっと興奮した声を出す。
勧誘がヒートアップした‥。
まだ何か言いたげな正樹は、狐につままれたような顔をして、桜子を見た。
検査機を見ながら無邪気に微笑む桜子を見て、桜子が、さっきまでの桜子と変わったのが分かったんだろう。
そして、それは
アララキも同じだった。
「サカマキ? 」
黙ってあの場を離れ、辺りを歩き回りながら、サカマキを探す。
影を伝って桜子の外に出て、鳩に戻っているんだろうか?
立ち止まって、全身の神経を集中させて、サカマキの気配を探る。
目をつぶると鳥の鳴き声が聞こえて来た。
‥サカマキは、今 鳥ではない。
サカマキは、樹の影で、人型になって立っていた。
樹の根元を見つめるみたいに、力なく俯いて、樹と向かい合って立っている。
ここのところいつもサカマキが着ているトレーナーと綿パン姿。
桜子に貰った服だ。
「サカマキ」
アララキが、声を掛けてサカマキの後ろに立った。
「人って、凄いな‥」
アララキを振り向くこともなく、サカマキが呟いた。
独り言ってわけではなさそうだ。
「え? 」
「魔法も、何にもないのに、‥分かるんだな、って‥。俺が‥俺が異質だから、桜子みたいに振舞えなかったから‥分かってしまったのかな」
それでも、頑張ったつもりだったんだけどな
って、呟く。
弱気で泣きそうな声
サカマキの細い身体が、いつもよりずっと頼りなく見えて、可哀そうで仕方が無くなった。
アララキが慰める様にサカマキを後ろから抱きしめたけど、別にそんな理由なんかなくたって、アララキはサカマキを抱きしめていただろう。
‥久し振りに会えた。
会いたくて仕方が無かったサカマキに、本当に久し振りに会えた。
そして、
周りには誰もいない。
サカマキが怒る
「人がいる前で何してるんだ! 」
って状況ではない。
アララキは、
「正樹だから分かったんだろう。‥あいつは、魔法は使えないようだが、‥勘が鋭そうだ。
大方‥用心深いんだろうな。ずっと人を観察してるんだろう。
人が信じられなくって、‥でも信じたくって、ずっと不安で。無意識に観察する様に人を見てしまう。
‥心変わりが怖いんだ。でも、自分が傷つくのが一番怖くて‥」
抱きしめながら、静かな声でサカマキに話す。
アララキとサカマキの身長差は、割とある。
長身のアララキの腕は、サカマキの胸の辺りでゆるく組まれている。サカマキはゆっくり息を吐いて背後に立っているアララキに少し体重を預けた。
背中からアララキの暖かさが伝わってきて、少し安心した。
くす
背中越しに、アララキが微かに微笑んだのを感じた。
「さっきの仮説も‥一種の賭けだったんだろう。あそこにいたのが、ここの人間ではなく、彼のなかでは「荒唐無稽で、普通とは違う常識外」の異世界人だったから‥。
そうじゃなかったら、‥言いもしなかっただろう。
現実逃避するなよ、アンタの嫁さんの心変わりだろ?
って言われて終わりだ。
‥でも、正樹はそれを言われるのが一番怖かったんだろうね。桜子を信じたかった。‥だから、一縷の望みをかけて、あんな荒唐無稽な仮説を口にした。‥正樹自身も自分で言いながら‥信じていなかっただろうけどね。
でも、言いながら「なんとなく有り得るかも」っていう気持ちになった」
苦し紛れに、何となく変なことを言っちゃったんだけど、言ってみると、「あれ、これ案外あってるかも」ってやつだ。‥あんまりないけど、無いことではない。偶に、ある。
噓から出た誠
瓢箪から駒が出る
とは、今回のケースは違うけど、‥人間ってのは、とかく「言ってみただけ」を実現させちゃうようなへんな行動力を持っている。行動力っていうか、‥引き寄せるっていうか‥。
言霊の力っていうのは、確かにあるのだろう。
こわい生物だ。
今回のケースは‥でも、「そう思う」だけの根拠‥「これあるかも」って思う要素があった。
だから、余計に「そうかも」ってなった。仮説が、確信に変わった。(まあ、桜子が認めない限り、確信に変わるわけでは、ホントの意味ではないんだけど、少なくとも正樹のこころの中では確信に変わったわけだ)
正樹は、時々桜子に違和感を感じていた。
これだけなら、「奥さんが何か隠してるんじゃない? 」「心変わりじゃない? 」だ。
だけど
「‥それは、俺の存在だね」
アララキが頷く。
正樹には、‥サカマキ‥「酒井 真紀」と会った時に感じた既視感っていうもう一つの違和感があった。
「俺が、正樹に関わって、俺の存在に正樹が少なからず既視感を抱いたから‥」
それが今回、「これあるかも」を後押しした。
ちょっと感じた違和感‥既視感。それだけなんだけど、‥ホントにそうかも、って自分を納得させるのには十分な要素だった。
だって、自分は裏切られているって思いたくなかったし、‥桜子を信じたかったから。
こじつけだって構わなかった。
‥正樹と「俺自身の姿で」接触を取ってしまった、俺の落ち度だ。
‥正樹の観察力やら勘の鋭さを見抜けなかった俺の‥。
サカマキが俯いて、きゅっと自分の拳を握った。
「‥そうだね」
短くアララキが応えて、サカマキを自分の方に向ける。
サカマキがアララキの顔を見上げる。
「サカマキ、いつまでここにいるの? 桜子が心配だから? 魔物の入って来た裂け目のこと? だけど、それって‥サカマキが責任持たなくちゃいけない事かな。
サカマキが裂け目をつくったわけじゃない。
こっちに来てる魔物は、雑魚ばかり。
それこそ、こっちの人間が、自分たちで何とかすればいい話じゃないのかな。‥サカマキはあっちに帰って、大きな魔物だけ今まで通り倒していれば、こっちに来るのは、雑魚だけになる。雑魚なら‥こっちの人間でも何とかできる。‥そもそも、こっちの悪意から産まれた魔物じゃないか。大きな魔物をあっちで始末してやるだけでも、感謝されて然り‥って思うけどな」
最後はちょっと、恨みがましいような口調になってしまった。
こっちの人間に、嫉妬してるみたいで恰好が悪い。
アララキは、‥ちょっとそうは思ったが、気にしないことにした。
サカマキは、ちょっと驚いた顔をして、
ふふ、って小さく笑った。
「アララキは‥俺以外の事だと、割と冷たいよね」
なんて揶揄ったような口調で言ったのは、‥アララキに対する照れ隠しか、それとも自分の心に根深く張っている不安を誤魔化したかったからか。
桜子に対する想い、魔物を何とかしなければいけないって思う気持ち、そして、自分の使命に対する責任感。
そんなもろもろの感情が、自分の心に絡まり合いながら、まるで根っこの様に張り巡らされている。
不安で、不快で
思わず、アララキをすがる様な視線で見上げてしまっていた。
ふわ、っとアララキがサカマキの瞳を見つめて、微笑む。
それだけで、総てが大丈夫だって言われたような気になる。
「僕にとって一番大事で‥愛してるのはサカマキだけだ。
‥万人に優しくする必要なんてない。それに、‥自国民ならともかく、ここは他国どころか、異世界だし‥僕には関係が無い」
相変わらずなアララキに「安心する」。
変わってないなって‥
だけど、そうじゃない‥安心していいものでもない。ここは「無責任なこというなよ」って諌めるべきなんだ‥。
だのに‥
‥(安心してしまった)自分に嫌悪感を抱く。
自分の使命、自分の想い、‥自分の‥我が儘‥。
アララキのことは好きだ。でも、‥きっと自分の「好き」とアララキの「好き」は違うし、自分はアララキのこと「アララキの様に好き」にはなれない‥なってはいけない。
でも、‥分かりたい。
だけど、‥わかるのが怖い。自分が変わるのは怖い。
もう、無茶苦茶で、
心細くて、なんだかイライラして、不安で‥胸を掻きむしりたいような衝動に駆られる。
「‥アララキは凄いな」
アララキから視線を外し、サカマキは俯く。
「ん? 」
アララキが首を傾げる。
「なんで、俺にそんなに愛してるって言ってくれるの? 俺は‥愛の意味すらわからないのに」
右手で、
さっきから痛い気がする胸を抑える。
「愛に意味なんかないんじゃない? 衝動だし、欲望の塊だよ。
僕にとってはね、サカマキっていう存在は、「飲まないと生きていけない水」みたいなもんだ。
水を飲まないと、枯渇して死ぬ。
今すぐ飲まなくても、傍にないと不安だし、口に含めば満たされる。水浴びは至上の喜び‥でしょう? ‥サクは‥
いや? 」
サクって呼ぶとろりとした甘い口調。
アララキのいつもと同じ、色っぽくて、ため息が出る程整った貌。
サカマキにだけ見せる優しい表情と‥欲情を孕んだ視線。
「やらしい言い方するなあ‥」
呆れた振りして、躱そうとしたけど、アララキに躱されてくれる気なんかまったくなかったようだ。
いつの間にか背中に回された手は、腰の辺りに移動されている。
その手がそのまま下に下がっていく。
優しく‥自然に尻を撫ぜる不埒な手からするりと抜けだ‥
‥そうとして、
もっと強く腕の中に閉じ込められる。
「逃げないで‥サカマキ」
「もう、サカマキと離れたくないんだ‥」
誰よりも赤い‥至宝のガーネット。
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