Happy nation

文月

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四章 物語の主人公

27.犬は飼い主に似るっていうし、夫婦は似て来るっていう。同じ釜の飯を食うことは無いけど、似た者家族になれる様な気がする。

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「我も一緒だ。一人で、って我を置いていく気か。
 何勝手に我の人生を決めておる。我は、何もなくても、主といる。
 縁あって親子にまでなったんだしな。サカマキが育った村に我も連れて行ってほしい」 
 口の端を緩く上げ、穏やかな‥年相応でない落ち着いた口調で言ったのは、フミカだ。サカマキの目を覗き込んで「大丈夫だ」って言う。
 相変わらず、‥俺を子ども扱いする。
 今は、フミカこそが子供だっていうのに。(見た目的にも、それこそ立場的にも、だ)
 親友だった頃は‥今でもそれは変わらないが‥「今の姿になる前は」だな‥確かに、フミカの方がサカマキより年上だった。年上といっても、そう違わない。俺のことを子ども扱いするほどは変わらなかったはずだ。(実際はフミカがサカマキより二歳年上)
 だけど、ふわふわと波立つ金茶の麦わらみたいな髪と零れる程大きなキラッキラした若葉みたいな瞳の人形みたいな顔は、俺よりもずっと幼く見えた。初めて会った時は、もっと背も小さかったから「子供が紛れ込んでる」って思ったくらいだ。
 その子供が、俺に年を聞くなり「じゃあ、主は我の弟じゃ」って笑ったんだ。「まだ、主は幼いんじゃから、我に甘えればいい」って、無邪気な子供そのものの、屈託のない笑顔だった。(そんな顔して笑ったら、どっちが年下かわからないね)
 ‥皆は、俺のこと恐れて‥嫌(きら)ってだな‥遠巻きに見ていたというのに、だ。
 俺と居たら、皆に変な目で見られる、ってどんなに忠告しても、だ。
 フミカは、「そんな馬鹿みたいな奴ら、頼まれても相手しない」って、鼻で笑って‥、ちらっと、軽蔑する様な視線を、こっちを(俺を、だな)遠巻きに眺めひそひそと悪口を言う者たちに向けた。
 その視線は、いつものお日様みたいに微笑むフミカのそれとは違い‥まるで別の人間の様に見えた。

 ふと
 自分に向けられたわけではないのに
 ‥いつかその視線が自分に向けられたら‥
 って考えると‥
 ‥怖くなった。

 だけど、未だそんな視線を向けられたことは無い。

 フミカは、周りの意見にも、俺の意見にも染まらない。
 俺と一緒にいない方がいいって
 周りがいくら言っても、
 俺がいくら言っても、
 変わらない。
「誰にも指図されない。我は我のしたいようにする」
 って、あんなふわふわした顔してるのに、ガッチガッチの頑固おやじみたいなんだ。

 そして、その時から、気が付いたらずっと一緒にいる。
 時々、キレて相手を投げ飛ばし、
 でも、「ったく、拳で語りゃ、ある程度の問題は全部解決するんだ」って笑って、そのさっき投げ飛ばした相手に豪快に笑いかけ、肩を組んだ。(こういうところも「おっさん」みたいだな)
 脳筋なフミカには、「根に持つ」とか「頭脳戦」とか「計算」とか、ない。
 フミカの周りには、いつの間にか人が集まっていった。
 俺といることについても次第に「まあ、フミカだから」ってスルーされるようになった。
 勿論、俺に関わってくることは無い。
 ほっといてくれるようになったって感じだ。
 俺と関わりたくないけど、フミカの前で俺の悪口を言って、フミカに嫌われるのも嫌だってところ‥だろう。
 俺を理解したっていうより、フミカが‥フミカの性格が皆に認識されたって感じかな。
 ‥人に受け入れられたのは、フミカと俺ではなく、フミカだけだった。
 フミカは、皆の頼れる兄貴(←主に仕事面や、戦闘面)として、そして平常時には可愛い妹として‥尊敬され、可愛がられていた。
 戦闘面では右に出る者はいなかったし、決断力もあり、判断力もあったフミカは頼れる上司って感じだった。
 だが、戦闘を離れたら、フミカは身の回りの世話はナツカに頼りっきりのポンコツで‥。
 嫁に行けねぇそ、とか、恋愛っけがちっともない、色気が皆無、とか言って揶揄われてた。
 そりゃあ嬉しそうに。「兄」ってのは、父親同様「妹」に恋愛の影が見えるのを嫌がるもんなんだ。

 俺たちの親友であるフミカ
 皆の愛すべきマスコットで妹であるフミカ
 頼れる上司であるフミカ

 フミカは皆に愛されていた。
 それは、フミカが子供から大人に成って、異性の目を引く様な美しい女性になった後でも、変わりはしなかった。
 そんなフミカはもう‥いない。でも、顔かたちが変わっても、ここに居るのは、フミカだ。
 フミカは何も変わらない。暖かい笑顔も、真っ直ぐでさっぱりした性格も口調も。そして‥俺に対する扱いもだ。
 連れて行ってほしい、なんて殊勝に「頼み」ながらも、表情が
 大丈夫じゃ、我が傍に居てやる。
 って言ってる。
 敵わないなあ‥。ホント‥女の子には敵わない。フミカは、女の子っぽくないって自分では言ってるけど、あの強さは女の子そのものだ。母親みたいに優しくって強くって、しなやかで‥逞しい。
 それに加えて、フミカは喧嘩だって力だって誰よりも強いし誰より、自信満々なんだ!!
 ‥もう、色々、勝てる気がしないよ。
 どんなに生まれ変わっても、フミカには勝てる気はしない。

「サカマキ。大丈夫じゃ」
「大丈夫だよ」
「「傍に居る」よ」
 ‥同じ顔が並んで、俺に手を差し伸べて来る。

「サカマキがちっとも似ていない顔のことで気にしてるのであったら、心配はいらぬ。人間というのは、他人でも一緒に住んでいたら、‥同じ様な暮らし方をしていたら、同じ様な顔になるらしい。
 我がサカマキの子として、サカマキと同じように暮らせば、我はきっとサカマキと同じ顔になる。この国にも「夫婦は似て来る」って定説があるであろう?
 神が意地でもサカマキの遺伝子‥サカマキの生きた証を残さないっていうならば、我が‥サカマキの生きた証をこの身に残す」

 偉大で、総てを統べる全能の神よ。
 志も矮小で、平凡な我らの、その位の小さな反抗心‥小さな幸せを求める位は許して‥認めてほしい。

 惚れ惚れするほど、きっぱりと言った。
 フミカの言葉は強い。
 何でもその通りになりそうな気がするほど‥強い。

 でも、
「‥夫婦が似て来るっていうのは、「元々似たところがある伴侶を選びがち」っていう話だろ? 生活を共にすると似て来るって話ではないと思うぞ」
 ‥間違いは正しておこうと思う。
 生活を共にすると似て来るっていっても、「同じものを喰ってれば、大体体形とかその他が同じになるよね‥」って話であって、食物を摂取しない俺とは似ようがなかろうが。‥しかも、お前の性格も俺の性格も相手に感化されることは無い気がするぞ? 
 ‥って俺のつぶやきは無視されたみたいだけど‥。

「魔法も教えてくれ。
 今まで魔法が使えなかったが、実は憧れておったんじゃ。
 アララキのお陰で我には魔力があるのであろう? 
 ‥魔力を持つのは初めてだから使い方が分からん」
 その言葉はちょっと照れくさそうに
 控えめに言った。

 でもそれは、やたら人間っぽくって、‥小さな子供のそれのようで‥やたら嬉しかった。
「フミカ‥」「うん‥うん! 」
 頷いて、ちょっと泣き顔になってしまう。

「何言ってるんだ! フミカは、僕とサカマキの愛の結晶だよ! わざわざ言うまでのことはどこにもない! 神に拒まれもしていない! 夫婦は似て来るっていうなら、出会った時から運命で夫婦だった僕らは既にもう見分けがつかない程にそっくりだろうし、僕にそっくりだって言うフミカはサカマキにも似てるってことじゃないか! 、‥生まれながらの僕たちの子供! 」
 必死な顔で否定するアララキは‥
 通常運転で

「キモいな」
「ああ、キモい」
 サカマキとフミカが頷きある。
 桜子だけは話についていけなくて、ちょっと首を傾げている。
 でも、「親子三人の微笑ましい様子」を微笑みながら見つめている。

「三人は、いい家族だね。何か事情があるみたいだけど、‥そんなの関係ない位、いい家族だね。サカマキさんも楽しそう」
「え~? そうか~? 」
 サカマキが、苦笑いをして桜子を見て、そんなサカマキを見てフミカが笑い、アララキは‥
 サカマキを後ろから抱きしめたまま、離れない。
 うっとりと、サカマキの頭に自分の頭をのせる。
「幸せ‥」
「‥‥キモいな」
「‥‥ああ、キモい」
 息の合った親子そのもののサカマキとフミカ。
 桜子は、くすくす笑う。
「さて‥と。私は翔のお迎えに行ってくるね! じゃあね、サカマキさん、フミカちゃん、アララキさん」
 寄り添う(※サカマキが背中から一方的にしなだれかかられているともいう)両親と子供、「家族になる」なんてわざわざ言わなくても彼らは既に家族じゃないか。‥なにやら、複雑な事情はあるっぽいけど、愛があれば大丈夫だ!
 桜子は、微笑んで三人に手を振った。

 桜子‥絶対、おめでたいこと考えてそう‥。「愛があれば大丈夫」とか思ってるんだろうなあ‥。
 (※ビンゴ)
 苦笑するフミカだった。
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