Happy nation

文月

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七章 元通り

6.鶏が先か卵が先か。例えがぴったり過ぎて、笑える。

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「心配かけて、悪かった」

 ひとしきり大泣きして、‥落ち着いたらちょっと恥ずかしくなった。だけど、見た目子供なカツラギは、寧ろ今みたいな顔‥苦虫を嚙み潰したような顔‥している方が、違和感があるな、と思ったり。
 それにしても‥あんなに泣いたの初めてだし、あんなに大泣きするカツラギを見たのは初めてだ。
 でも、嫌な気持ちとかじゃない。
 ‥ただ、なんか‥照れくさいだけ。
 思えばこんなに素直な気持ちになったのも、初めてだ。カツラギたちが死んだときも「俺が何とかする!! 」とは決意したけど、‥心配した‥とかじゃなかった。再び会えて、こんなに大泣きするとかじゃなかった。
 ‥あの時は、多分、二人が傍に居たからだと思う。いないっていうのは、‥消えてしまうってこともあるっていうのは、やっぱり心配だ。
 GPSの反応がない = 死 の世界にいたんだ。しかも、カツラギにとって俺は、この世界の唯一の保護者だ。‥カツラギが決めることだけど、カツラギが望めばだけど‥あの世界に無事に連れて帰る義務が俺にはある。
 心配だとか、再会できて嬉しいだとか‥照れくさいだとか‥人間っていうのは、色んな感情を持って生きているんだな。
 ‥俺も以前は持っていたであろう感情なのに、‥すごく新鮮な物に感じる。
 今まで、‥高位魔法使いになってずっと‥俺は、心に靄がかかったみたいに、ずっと頑なだった。
 自分は一人だ。誰にもこころを許しちゃいけない。
 ってずっと‥それだけしか思わなかった。‥思えなかった、かな?

「ホントだよ。全く。何があったのか、後で聞くからな! 」
 桜子には聞かせられないだろ? って、カツラギが目で合図してくる。
 桜子に聞かせられない話‥とかなんだろうか? どうだろ‥?
 っていうか‥。
 ‥後で聞くって言われても、俺自身なんで高位魔法使いの魔法が解けたのかわかんないんだよな‥。
 それとなくそのことを伝えると
「そうなのか? 」
 カツラギは首を傾げた。
 まあ‥高位魔法使いの呪いが解けるってのは‥確かにただ事じゃない。きっと「なにかしら凄い出来事」があったって思うだろう。何かしら‥「happynation的に重要」で、それは「異世界人には聞かせられないような」事であろうって‥まあ、そう考えるのも無理は無い。
 カツラギはあんな調子だけど、仕事には真面目なんだ。
 だが、俺はただた首を傾げ返す他出来なかった。 
 あと‥他に話すべきこと‥? 
 俺が実は神だったってこと? (これは‥誰にも絶対言えないな‥。いくらカツラギやフミカといえど、だ。世界のタブーとかいうレベルの秘密だよな?)
 実はもと生きていた世界でアララキの事を愛してたってこと? (更に言いたくないな! )‥秘密のレベルは低そうだけどね。
 アララキが転生者だってこと? (この情報いるか? )
 ‥話すべきことは無い気がするが‥。
 と、今まで微笑ましい様な表情で俺たちを見ていたフミカが、
「ってことは‥。‥サカマキが高位魔法使いじゃなくなったから、鳩の羽が白くなったってことなのか? 」
 ぽつり、と呟いて、俺を見た。
 ええ? 今更なに?
「え? あ‥うんそういうことなのかも‥? 」
 ‥改めて‥どうした?
 ぽかんとした顔でフミカを見たが、フミカは顎に手を当て、独り言のように
「なるほどの‥。ああ、でも、どっちが先だったかは分からぬな。サカマキが高位魔法使いじゃなくなったから、カツラギに察知できなくなったのか、カツラギが賢者じゃなくなったから高位魔法使いのサカマキのこと察知できなくなったのか‥。
 さらに言えば、サカマキが高位魔法使いじゃなくなったのが先なのか、カツラギが賢者じゃなくなったのが先なのか‥」
 と、呟いた。

 あ、それ知ってる「鶏が先か卵が先か‥」って話。
 カツラギはふと、そんなことを考えた。
 ‥ぴったり。
 鶏‥って! 
 カツラギはサカマキの神獣姿(※ サカマキの神獣姿は真っ白で巨大なで鶏)を思い出し、つい吹き出しそうになった。
 happynationには、鶏という鳥はいない。ああいう形をしているのは、神獣だけで、皆はあの姿を気高い‥神聖‥と崇めていたが、(勿論あっちの世界での自分もそうだったが)こっちに来て、一般的に食料とされている鶏の姿と驚くほど似ていたのには‥驚愕した。笑っちゃった。とかじゃなく、だ。
 ‥絶対あれを‥happynationの住人には知られるわけにはいかない‥。(絶対ショックを受ける‥、それどころか、地球に攻めこんできかねない‥)
 因みに、サカマキはテレビでみたブロイラーの様子にショックを受けて泣いていた。
 キモチワカル。(私は笑っちゃったけど)
 だって、食べられちゃうんだもんな。‥食べられるために育てられてるんだもんな(笑)。自分の小型版みたいなやつが。‥サカマキにとっては笑い事じゃすまないよな。
 だけど、ま、サカマキもアララキに「たべられるために」育てられてたよな。変わんないかも。
 ‥それはそうと‥
 ‥時々、フミカってびしっと鋭いこという。その発想力に感心させられることも多い。
 今回だってそうだ。そんなこと、考えもしなかった。

 サカマキが先か、私が先か。
 高位魔法使いが先か、賢者が先か。

 賢者が先なら、解呪の原因は私ってことになる‥。なんかかわったことあったっけ??

「どっちが先か‥」
 サカマキがぽつり、と呟いた。

 俺は、勝手に「俺が高位魔法使いじゃなくなったから、カツラギも賢者じゃなくなった」って思ってたけど、‥確かに、カツラギが賢者じゃなくなったから、俺も高位魔法使いじゃなくなったってことも考えられる‥ってことか。
 それが、たまたまあのタイミングだっただけで‥
 だって、まあ‥特に変わったことってなかったもんな。(※‥というか、アララキが色々気付いただけ。だから、サカマキがしたことは特にない。あえていうなら、いろいろ思い出したアララキがサカマキに誘導尋問しただけ? )
 俺の方には「覚えがない」
 じゃあ‥カツラギ?
 カツラギが賢者じゃなくなるような出来事‥
 ‥死して尚、賢者だったカツラギが? 
 ‥ないとは思うけど、考える価値はあるのかもしれない。
 一応、ね。
「‥カツラギは、ここ数日何か特に変わったことあった? 」
 カツラギが首を振る。
「別に。ここ数日は特に家から外にも最小限度しか出てなかったし」
 それにはフミカも頷く。
 桜子も小さく二度ほど頷いた。
 さっき、フミカもそう言ってたしね。
 カツラギは特には変わったことをしていない‥
 じゃあ、やっぱり俺かな?
 ‥俺が、高位魔法使いじゃなくなったから、カツラギも賢者でなくなった。
「やっぱり、俺‥かな。あとで、ここ数日の俺のこと、順を追って話す」 
 サカマキは首を捻りながら言った。
「そうしてくれ」
 カツラギが頷く。
 神妙な顔をして、だ。フミカは、微妙な顔をしている。
「それは、今じゃダメなの? 」
 桜子がちょこんと首を傾げた。
 ‥それは、ちょっと。
 俺がカツラギに話す「ここ数日の俺のこと」は、「特に変わったことをしなかったか」の答えになる部分だ。
 その話は‥桜子には聞かせたくない‥。
 ‥桜子の前で、エロイ話はしたくない‥エロいと言うか‥まあ、そういう話。エロイことばっかりしてたわけじゃないんだけど‥まあ、エロイこともしてたわけだし‥。
 話の都合上、‥そういう話もすることにはなるだろう。アララキと‥まあ、エロイことしてる時にか、してた後にか‥何かあったんだろうから。‥まあ、何があったのかは、アララキに聞かなきゃわかんないことなわけだけど‥俺の方でなにか「こころあたり」を思い出すかもしれないし‥、まあ、順を追って「あったこと」を話す気ではいる。
 でも
 桜子の前でそんな話とか‥何の罰ゲームだ。
 桜子に「サカマキさんってそういうことしたりするんだ‥」とか言われたらショックで、寝込む。幻滅されたくない。桜子は、友達でもあるけど‥俺は桜子が小さい時から知っているまあ娘みたいなもんだし? そんな話‥聞かれたくない。聞かせたくない。
 いやね、桜子にも子供が居るんだから、そういうこと分からないとは‥勿論思ってないよ? でも、‥あれだ。桜子って、正樹におまかせ‥で知らない間にごにょごにょされて、気が付いたら子供が出来てましたって感じじゃん? 正樹は逆に、耳年増って感じするよね。なんか‥むっつりって感じするよね。(←正樹に対するこの扱いの悪さ‥)
 そんなこと考えてたら、一気に顔に血がのぼった。
「う‥いや、あの‥」
 真っ赤になって、口ごもってたら
「ちょっと国の極秘情報的な話も混じってるし‥」
 カツラギが誤魔化してくれた。
 大きなため息と共に。フミカも、呆れた様な顔で俺を見ている。
 国の極秘情報的な話。
 ‥まあ、これは間違えじゃない。
 アララキは王様。
 王様が関わってるんだから、超国の極秘情報的‥とも言えないでもない。
 まあ、そんな大げさなことじゃないんだけどね。
「なるほど‥そっか」
 にこ、っと桜子が微笑む。
 ‥ああ、ごめんよ。桜子。君をのけ者にしてるんじゃないからね。
「‥我も、別に主のプライベートには興味はないがの」
 フミカがため息をつく。
「その通りだな」
 カツラギも小声でフミカに同意する。
 多分あれだ。
 エロイことしてただけ、って話だろ?
 で、「なんかわかんないけど」偶然、解呪しちゃったってだけの話だろう?
 ‥聞かないでも分かってるっちゃ分かってるんだけど‥一応なあ‥

 お話聞くの、‥キガオモイデス

 どうせあれでしょ?
 愛の力とかって奴(←アララキが言いそう)でしょ?
 
 ‥どうでもいいです。お幸せに‥。
 親友たちの惚気(?)に1%の興味もない二人だった。て
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