今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

「この年になって」、人生観が変わったんです。

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 「今」がかけがえのないものだって思えば今まで考えたことなかった。

 あたしたちの魂が不完全で、転生を重ねることは、「繰り返す体験学習」だって、何度目かの転生で気付いた。 
 そのことに気付いたきっかけは今となっては分からないけど、自分がどうやら転生を繰り返してるらしいってことは、気付く前に何となくわかった。「そういう魂なんだ」ってある日、ちゃんと腑に落ちた。
 何でそういうことになってるのかは分からなかったが、「そういうこと」なんだから仕方がない。そういうことに
疑問を持ったり、反感を持ったりしても仕方がないわけじゃない?
 どうやら自分は他の皆と違って感情が乏しいようだ。 
 ある時、そう気付いた。
 でもね、感情ってさ、知識と違って親に教えてもらえるものじゃない。だってどうやら、両親を含めて‥他の皆にとってそれは当たり間のことらしいから。呼吸をして、お腹がすけばご飯を食べる‥と同じ位自然に‥嬉しければ笑うし、悲しければ泣く。
 でも、あたしにはその「当たり前」が無かった。(思い起こせばね)
 無かったから、「当たり前に」笑ったりすることも、怒ったりすることも、悔しがることもなかった。
 でも、それで「この子、何か変なんじゃないかしら」って歴代の両親から心配されたことはなかった。彼らはみんないい人達だったから。「ハヅキはそういう子」って寛容な心で接してくれた。あたしも彼らのことが大好きだったから(思えば、どの家族も皆大好きだった)彼らが笑えば一緒に笑い、彼らが泣けば一緒に涙を流した。そうしてるうちに、何となく「嬉しい」時「悲しい」時ってのが分かるようになっていった。
 分かる気になっていた。(本当のところはよくわからない。もしかしたら家族じゃない人たちからは「コイツ感情に乏しいな」って思われてるかもしれん。だけど、その時はあたしの家族たちも周りにそう思われてるってことだから、別に構わない)
 転生は、体験学習の場でそれ以上の意味はない。
 とは言わないけど、今気づいたんだけど、「今世はこんなだったけど、来世もあるし、いいや」って考えが心の奥底ではずっとあったかもしれん、と思ったり。
 でも、
 何度転生しようとも、その時の人生はその時だけのもので、繰り返せるものじゃなかった。
 今までの人生にオズワルドさんに出会ったことはなかった。オズワルドさんを想うように、人をこんなに恋しく思ったことは‥思えばなかったかもしれない。(多分。歴代の結婚相手の皆様スミマセン。でも、嫌いだったとかじゃないと思います。それは絶対に! )
 否、「今この瞬間」とかじゃなくって、毎回毎回の転生。その時々の「今」は特別だった。
 「今」は、あたしが思う以上に‥
 かけがえのないものだったんだ。

「初めまして! ハヅキって言います。オズワルドさんとお付き合いさせていただいてます! 」
 緊張して深くお辞儀して、顔を上げてオズワルドさんのお母様の顔を見た瞬間、「あ」って思った。 
 あ、って思って次に、ああって思った。納得した。
 向かい合ったお母様も「あ」って顔をほんの一瞬だけど、した。そりゃそうだ。
 今日はあたしは「初めて彼・オズワルドさんのお母様にご挨拶する」為にローブを外している。その顔と、お母様の顔は‥驚くほど似てたんだ。
 ナガツキという‥変な名前、嫌に見慣れた顔‥流石に全く同じではないけど、「製作者が同じなんだろうな」って顔‥この人は、
 あたしと一緒だ。 
 そういうこともあるんだな。
 ‥いや、ないだろ。普通にミスだろ。
 いやそれより、それよりだよ。
 ああそうか、だからか。
 この世界に居て、この世界の美意識に染まらない理由はそういうことか。
 魂が「この世界」の人間じゃなかったからか。
 だからオズワルドさんを「可愛い、可愛い」って育てられたんだ。(胸糞悪い言い方だけどね)だから、オズワルドさんも「自分が他人と違う(他人と違って醜い)」って思わずにすくすく成長出来たんだ。
 同時に「あ、あれって親だから、とかじゃなくて本心からだったんだ」って気付いてちょっと嬉しくなった。 
 この世界に染まらないだけじゃなく、この人は、きっと私と趣味が似てる人なんだろうな~って思って、凄い親近感がわいた。
 目の前の「お母様」もそんなこと考えてる? 
 そう思ってナガツキさんに目線を合わせると、(※ 驚くことに身長もほぼ同じだった。‥あたしたちって量産型だったのか?? )にっこり微笑まれた。
 丸顔で、ちょっとふっくらした頬。涼し気な目元、柳眉。 
 目の前で微笑む、上品で優し気な夫人は、この世界ではきっと「絶世の美女」って奴なんだろう。
 あたしの感覚じゃなく、この世界の感覚、美意識だ。
 でも、あたしにとっても
 (美しいとかじゃなくて)ホントに穏やかで優しそうな、「イイ笑顔」って感じがした。
 嫌味がない。優し気で温かくって、何より上品で知的な感じがするご婦人。
 そうそう。人間の美しさってこういうのだよね。
 思いやりの心、寛容な心、抱擁力、何度も繰り返した体験学習の末、あたしは身に着けることができたって‥自信もって言えるだろうか?
 自分が恥ずかしいって思った。そこにいるのが恥ずかしくって、‥どうしようもなく悲しくてナガツキさんを見たあたしにナガツキさんが「大丈夫よ」って微笑んでくれた。
「どうしたの? ハヅキさん」
 オズワルドさんが吃驚してあたしを見た。
「大丈夫よ、緊張しなくても」
 ナガツキさんが助け舟を出してくれて、あたしも
「緊張しちゃって‥」
 って苦笑いした。
「大丈夫よ。何も心配ないわ」
 ナガツキさんが微笑む。
 そしたら、ホントに「何も心配いらない」って感じがした。
「そんなに緊張するかな~。母さんなんて、所詮、俺の母親ってだけだよ。緊張するようなことなんて何もないよ? 」
 オズワルドさんの笑顔も優しい。
 ナガツキさんが愛情いっぱいに育てたから、「可愛い可愛い」って育てたから、オズワルドさんは優しいし、他の「醜い人(あたしから見たらめちゃイケメンや美人)」たちみたいに卑屈じゃない。
 他の人の悪口に傷付かないわけは絶対ないけど、でも、「そうじゃない人もいる」ってちゃんと認めることが出来る心を持っている。そうナガツキさんが育てたから。
 思えば‥
 あたしは何度かの転生で結婚をして、子供も産んだけど、子供を「普通の子と同じように」「将来食うに困らないように」育てるのに必死で、自分の価値観でもって育てたことなんてなかった。
 普通に‥極当たり前に。

 あたしの痕跡は‥あたしがいなくなったそれぞれの世界に‥どこを探しても残っていない。

 そんなことを考えてますます泣きそうになったけど、我慢して、笑った。
 そんなあたしをナガツキさんが抱きしめてくれた。
 そして、耳元で
「ハヅキさんはハヅキさんのままでいいのよ。オズワルドのこと好きって言ってくれて、オズワルドのこと笑顔にしてくれた、そんなハヅキさんのままで。
 きっと、ハヅキさんは真面目で優しい方なんでしょうね。私も、そんなハヅキさんのことが大好きになったわ」
 って小声で言ってくれた。
 不思議と、社交辞令だとは思わなかった。 
 素直に、
 嬉しいって思った。

「さあさ! ここで立ち話ってのもなんだわ。
 お茶にしましょう! 私ケーキ焼きましたのよ」
 ふふって今度は魅力的な貴婦人の笑顔を浮かべてナガツキさんがあたしに手を差し出す。
は長いけど、「今」この瞬間は今だけ。楽しまなきゃ勿体ないわ」
 そう言って出してくれたお茶もケーキもホントに‥今まで食べたこともないくらい美味しくって、「そういえば美味しいもの食べたい」て今までの人生思ったことなかったな、って気付いて‥ 
 今更
 今まで勿体なかったかなって思った。 
 最後の最後に気付いてよかった。
 人生楽しんでいいんだって‥最後の最後に気付いて、気付けて良かった。
 こころから大好きって思える人に出会えて、美味しいものが嬉しいって気付けて、‥人生楽しんでもいいって気付けて、泣きたくなる程嬉しくなったハヅキだった。
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