今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

ハヅキ、S級上級治療師への道。

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 帰る前に教会によった。昇級試験をここで開催することを伝える為だけど、職場に顔を出して、皆の顔を見たかったってのが一番。あたしこそ、趣味とかないのかしらんって思ったり。
 でも、仕事が趣味とは違う。仕事は好きだけど、好きと趣味は違う。まあ‥職場の仲間に恵まれてるってことなんだよね。一番は。 
 え、ってかホントに趣味って何だろ‥。皆には当たり前にあるのかな??
「ハヅキ! もういいのか? 」
「今回のことは‥ホント吃驚したんだぞ」
 って怒った顔したのは、ダンさんとリュックさんだ。心配そうな顔で
「もう大丈夫なのか? 」
 って聞いてくれる人もいる。
 ジーンときた。
 こんな時、ホント嬉しいって思う。怒られるのも心配されるのも全部。‥あたしを気にかけてくれる言葉や表情が嬉しい。あたしは皆に謝って、そしてこころからお礼を言った。
 こういうのって、人数ギリギリの忙しい職場では難しいって思う。それだけじゃなくて、普通の「家族」でもね。庶民では難しいよ。
 毎日さ、みんなそれぞれやることがあるし忙しいわけじゃない。そしたらさ、心配より効率の方がどうしてもね、優先されちゃう。
 今までだってギリギリの役割分担でやってるんだ、代わりとか無いよ?! どうすんのさ‥ってなる。心配はするけど、でもね、困るのは確か。
 役割分担ってあるじゃない。その間位誰かが変わればいいじゃない‥とはなかなかならない。結果、完治しないまま起き上がって、ごそごそと用事を片付ける。そしたら他の家族は「もう大丈夫なんだな」って思うだけ。「ヨカッタヨカッタ」って思うだけ。
 過去のあたしの家族が特別に冷たかったってわけじゃない。だけど、だ。
 自分の体調の管理ぐらいさ、自分でして欲しいって思ってしまう。それは、自然の感情だ。
 今あたしは貴族だから、家族って単位が全てじゃない。
 お手伝いさんがいて、「毎日滞りなく生活が送れるように」サポートしてくれる。お手伝いさんのうちの一人が倒れたって他の人がサポートしてくれる。それは‥とてつもなく贅沢なことだ。
 代わりがいる。皆でサポートし合っている。それを思うと、この教会はだいぶ「ホワイト」だな。

「協会の幹部の皆様がわざわざ来て下さるのですか? ‥まあ、今回のことは協会の方の都合なわけだから、それ位はしてもらいましょう」 
 ヨハネさんが小さくうなずきながら言った。
 そうか‥「それ位はしてもらおう」「当然だ」ってなるんだ。「(お偉い方に)お手数おかけして申し訳ない! 」「そんなことまでさせられません! 」とかにはならないんだ。あたしが驚いていたら、コールさんが苦笑いして「なぜへりくだらなければいけない? 」って首を傾げた。ええ!? だって、実際に偉い人じゃない? 偉い人に気を使ってもらったら「イイのかな? 」ってならない?? 「すみませんね‥」ってならない??
 ヨハネさん、コールさん曰く
「私たち神官が頭を下げるのは、神様だけ」
 らしい。
 別に幹部だから偉いってもんじゃない。そもそも、何がエライんだ? 
「貴族も金持ちも病気になるのは変わらないでしょ」
 あ、このセリフどっかでも聞いたな。
 でも、‥ホントに納得。もう、諺にしてもいいレベルで至言。
 うん、そうだよね。病は平等。
 でも、ま、金持ちは治せるお金があるって点で平等ではないわな。
 だから、それを言うなら「病は全ての人に平等にやって来る。死ぬのも同様。それが多少遅いか早いかの違いだけだ」だな。
 あたしがうんうんって頷いてたら、
「病も、死も平等にやって来て、死んだ後は全部無に帰る」
 ってしみじみとヨハネさんが言った。
 死んだらおしまいってことですね。‥あたしはそうじゃなかったけどね。今までは。
 あたしは、でも「そうですね」って大きく頷いた。
 あたし同様一つ大きく同意の意味で頷いてから、
「善行も悪行も自分のしたことは全部無になる。どんな悪行でも、死を持って全てが許される。神様が見ている、悪人は許されない‥といっても、実際には死ねば全てのしがらみから解放される。そこに喜びも苦しみもない。全くの無だ。
 ‥だけど、その人が生前「悪行をした」って事実は消えないし、その被害を受けた者はきっと、一生そのことを忘れない。一生そのことを恨み続け、その加害者を恨み続ける。
 子々孫々に語り継がれるかもしれないし、その加害者の子々孫々をも恨み続けるかもしれない。そして、昔からずっと恨み言を聞かされた子孫は加害者子孫のことを知りもしないのに恨み続けるということもあるだろう。
 恨み続けなければ薄情なのでは? と、自分に言い聞かせてしまうかもしれない。
 誰も幸せにならない。
 それは‥凄く恐ろしいことだと思いませんか? 」
 って言ったのはコールさん。
 うわ~なんか、嫌に具体的だなあ‥なんかあったのかな。「そういうこと」が。あたしは何も言えず苦笑いだ。だけど、コールさんの目が‥あたしに答えを要求している。
 ‥何か言わなきゃなりませんかね‥。
 あたしは苦笑いのまま
「だから、悪行をしちゃダメだってことですよね」
 って言うと、コールさんは「そうですねえ‥」と首を傾げてから、
「自分の悪行は‥やり逃げしちゃダメだってことじゃないですか? 。人間なら意図せずともやってしまうこともあるでしょう。大事なのはそのあと、やってしまったなら、責任をもって生きてる間に、ちゃんと決着つけないといけないってことなんじゃないですかね? 」
 何で疑問形。
 ほんと、何があったんだろう‥。
 ただ、コールさんに悪行認定されることをしたら、子々孫々迄語り継がれるってことかな。‥気をつけよう。 
 いやでも「意図せずともやってしまう」ことについては気をつけようがないな‥。
 ホント怖いな‥
「意図せずやってしまったら、言ってくださいね。あたしには‥」
 あたしが真顔で言うとコールさんが「ハヅキも言ってくださいね」って笑顔で言った。怖いわ~ホント。
「逆もまたしかりですけどね。恩を子々孫々に語り継ぐ人もいる。悪いことばかりじゃないでしょう? 」
 ふふっとヨハネさんが静かに微笑んだ。
 年長者の威厳? ‥なんていうんだろ。年の功? ‥やっぱり長いこと生きてきてる人は言うことになんか重みがある。(いや‥でも)それでいったら、あたしも随分と人生経験長いけど、このセリフは言えんな。人生の重みが違う? 量より質? あたしは‥うっすい人生しか送ってこんかったんだろうか? あたしのことはわからんが、きっとヨハネさんはあたしよりずっと責任感を感じて生きて来たんだろう。立場上ね。「自分の職務(仕事、責任)を全うする」ことだけが総てだったあたしの今までの人生よりずっと多くのものに対して責任を感じて生きて来たのだろう。
 でもね、あたしは‥「だから彼の方が凄い」とは思わないんだ。だって、彼がその責任を全うするまでに彼を影からサポートしてきた人がいるんだってちゃんと知ってるから。お母さんかもしれないし、奥さんかもしれない。勿論その人たちに会ったことはない。だけど‥きっとそうだと思うし、きっとそれは間違えていないだろう。
 彼は‥「人に恵まれて生きて来た」顔をしているから。
 きっとあたしは今までそっち側(サポート側)の人間で‥そんな人生を送ってきた。あたしは、あたしの今までの人生を否定する気はない。地味だと嘆くつもりも、ないし、不満だって言う気もない。
 裏方舐めるな。 
「まあ‥つまり、人間の身分はその人の価値とは違うってことですね。人の肩書きにも価値はない。死や病は全ての人に平等に訪れ、死んだら全て無になり、その身に残るものはない。が、その人が生前して来た悪行、善行は他の人の心に死後も残り続けるから、気をつけろってことですね」
 あたしの「身も蓋もない」要約を聞いて苦笑いしたのはヨハネさん。コールさんは
「ま、そうですね」
 ってケロリ。
「協会の幹部といっても同じ人間だ。幹部だから偉いってもんじゃない。寧ろ、我々があってこその幹部でしょう。幹部は協会の代表って意味しかないですよ」
 コールさんがにっと笑う。
 う~んまあ、そうだね。いや、そうなのか‥そうなると、彼らの『うまみ』って何だろ。一協会の一幹部なんて、別にそれ程偉いわけじゃない。会員からも「ただの代表」って位の扱いしか受けない‥
 なのに‥仕事は馬鹿忙しい。
 うわ~なんでそんな仕事してるんだろ。「それがお前の使命だ諦めろ」ってやつか??
 首を傾げていたら
「いんだよ、そういうのが好きな奴もいるだろ。そういうの‥肩書きっての? それに、神官からは敬われてないけど、上(幹部昇格)を狙う治療師からは敬われてるぞ」
 ってダンさんが話に加わってきた。「ホントに偉いと思われてるかどうかは別としてな~」ってニヤリ。
「給料もいいですしね」「それ、大事ですよ? まあ‥売れっ子の治療師の方が貰ってるかもしれませんけどね」
 とリュックさん。
 二人はそれだけ言うとまた仕事に戻っていった。コールさんとヨハネさんは苦笑い。
「まあ‥彼らもいやいややってるわけじゃないわけですしね」
 あたしも苦笑いして、そう話を(ちょっと無理やり)終わらせた。
「まあ‥とにかく。先にそれをお伝えしておこうと。日付の指定はまだなんですが」
 いいながら「そう言えば日付の話はしてないな」って思い出した。でもまあ、そういうのはあたしとしても仕方ない話だな。あたしがそう思ったら案の定
「じゃあ、それは私がしておきますね」
 ってヨハネさんが言った。
 よろしくお願いします。あたしがぺこりとお辞儀をして了承のアピールをすると、コールさんが
「で、ハヅキの方の都合はどうですか? もう準備万端って感じですか? 」
 って聞いて来た。
 まあ‥昇級試験の方なら問題はないかと‥。一番の‥最終的な課題は「新技術のプレゼン」なんだよね。だけど、それも先に昇級試験で合格したことが前提かな~と。

 手を伸ばせば掴めるかもしれない長年の夢‥。

 今まで雲の上の存在で、憧れで象徴みたいな感じだったS級上級治療師って存在が、随分と近くに来たような気がしたのだった。
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