今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

どれ程転生を重ねたって。

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 オズワルドさんが口を開く。
 真っ赤な顔して。
 あたしはぎゅっと目をつぶった。
 オズワルドさんの声は‥聞こえない。
 そっと目を開けると、
 真っ赤な顔で黙って俯いていた。
「ええと‥その」 
 ‥口ごもってる。
 それを見て、あたしははっとした。‥やっと、気付いたんだ。自分のことに夢中になって、オズワルドさんの気持ちを考えてなかった。
 相手の気持ちまで考えられてなかった。
 オッケーならいいよ? 「付き合おう! 」は言いやすい。(多分)でも、「ごめんなさい! 無理です! 」とか、言いにくいよね。あたしには‥そんな経験ないけど、当たり前に想像できる。絶対言いにくい。
 告白その後のこと考えてなかった~!! 
 いや、誓っていう。「断られるって選択しなんてなかった」とかじゃない。
 告白する。ってことしか‥マジで考えてなかった‥!!
 その後のこと‥
 すう‥と血の気が引く。
 あたしは‥今オズワルドさんを困らせている‥オズワルドさんを好きなあたしが! オズワルドさんを! 困らせている。
 ‥最悪だ。
 だから、あたしから言わないといけない。「退路を作ってあげる」それが、「迷惑かもしれない」ことを言った者の義務な気もする。(義務な気もするし、それは違う気もする。告白ってのはそういうもんな気もする。けど‥あたしは今「そうしたほうがいいかな」って思ったってこと)
 あたしは精一杯笑顔で「ごめんなさい! ご迷惑おかけしてすみませんでした! ‥(ここで苦笑い)突然すみませんでした。あたしの勝手な気持ちなので‥オズワルドさんは、言いにくいこと言わなくてもいいです(できれば、ここで誠意が伝わるように謝りたい‥が、泣いちゃって出来ないかも)」って言おうって決心した。(まだあくまで予定段階。実行には移していない)
 で。(← 予定を実行にうつす)
 オズワルドさんを見ながら‥は無理だから、俯いて
「ごめんなさい! ご迷惑‥」
 位を言いかけた時に、
 オズワルドさんが慌てて
「迷惑なんかじゃないです! 」
 って叫んだ。あたしが(恐る恐る)顔を上げてオズワルドさんを見ると、オズワルドさんは赤い顔で俯こうとして‥でも、もう一度勇気を振り絞って真っすぐあたしを見つめ
「‥迷惑なわけないじゃないですか」
 苦しそうに‥眉を寄せて言った。 
 ドキッとした。
 あんまりオズワルドさんが、苦しそうで‥こころが痛んだ。
「俺が‥ハヅキさんが勇気を出して言ってくれた言葉を迷惑だなんて思う男だと思ってますか? 」
 オズワルドさんは静かな口調でそう続ける。
 ‥そうだよね。あたしは「そう思われても仕方がない」ことを言おうとした‥。
 オズワルドさんはそんな人じゃない。あたしが一生懸命言ったことを迷惑だって思う人間なんかじゃない。断る断らないは別として、あたしが好意を持ったことについて、あたしが勇気を振り絞って想いを伝えたことについては迷惑だって思ってないだろう。
 あたしが迷惑をかけたって思うのもそこじゃない。「気持ちは迷惑じゃない」でも→ その気持ちには答えられない。→ それを言うのって嫌だろうな~迷惑かけちゃったな~。こういうとこだ。
 しまったまたいらぬ誤解を与えてしまった。
 自分の意図するところじゃなくても、そのことで人が不快に思っているなら、謝る。それだけだ。「そういう意味じゃねーよ! 」とか言い訳はなしだ。
「思いません。オズワルドさんがそういう人間だって思ったんじゃなくて、あたし自身が「言いにくいこと言わせてしまうだろうから」悪いなって思ったってことです」
 あたしは自分の気持ちを真っすぐに、なるだけ分かりやすく‥伝わりやすいように言った。

 一歩一歩「終わり」に近づいている「私たちの関係」。それを感じながら。

 ここでオズワルドさんが「そうでしたか」って納得して「でも‥」って切り出しやすくなっただろう。
 それを思えば、患者さんと治療師って関係(≠友だちじゃない)でよかったのかも。
 友だちだったらギクシャクしちゃったりしてヤだけど、患者さんと治療師なら会わないようにすればいいだけじゃない?
 ってあたしの心はすっかり(もうすでに)振られたモード。そんな感じで納得しようとしてるのに‥
「言いにくいことって? 」
 オズワルドさんが首を傾げる。
 おい!! まだ言うか!! 傷口に塩を練り込まないでください!! 
 その首を傾げた顔‥可愛いい~!! けど、憎い~! もう勘弁してよ~!
「オズワルドさんの気持ち。「あたしの気持ちには答えられません」‥って言うことですよね? そういうことって、やっぱり言いにくいですよね‥」
 苦笑いして言うと、オズワルドさん、今度は目を見開いてあたしを見た。
 ‥え。なにその「へ? 」って顔。なんでオズワルドさんはそんな‥鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるの??
 あたしも首を傾げる。
 え。何?
 「そうですよ」とは流石に言わないだろうけど‥苦笑いしてくれたら同意の意味で捉えますけど? あたし、それほど鈍くないですけど?? 
 だけど、
「ええ!? 」
 オズワルドさんが「らしくない」叫び声をあげた。一テンポも二テンポも反応が送れたのは驚いたからだろう。
 余程驚かせてしまったらしい。
 そして、眉を寄せて「困ったな」「そうじゃなくて‥」と何度か呟いて、小さく息を吐いて気持を落ち着けさせると、
「こういうこと初めてだから、ちょっとずつ‥話していきますね」
 と、前置きして話し始めた。
 あたしはゴクリとつばを飲む。
「まず、俺は戸惑っていたのは単に驚いたからで、ハヅキさんの言葉が嫌だったからとかでは絶対ない。それはわかりますか? 」
 それはさっき言った。
 あたしが頷くとオズワルドさんも頷いて言葉を続けた。
「今までそんなこと言われたことなかったから、驚きはしたけど、ハヅキさんの言葉なら「俺を揶揄ったりしているわけではない」って思える。
 俺はハヅキさんのこと信じているから」
 ジーンと来た。
 ‥信じてくれてるんだ。ありがとう。
 あたしは二度、しみじみと頷く。オズワルドさんはまた小さく頷くと、
「ハヅキさんの言葉の内容が‥驚きすぎて頭に入ってこなくて、咄嗟にあんな態度になってしまった。
 ごめんなさい」
 そう言って、深く頭を下げ、あたしの言葉(きっとここでオズワルドさんが黙ったら「いえいえ、あたしこそ先走っちゃって」って言ってたに違いない)を言わせないためにか、続けて
「勿論、嬉しかった。
 そして、何より‥信じられなかった。嬉し過ぎて‥俺の人生にそんなことがあることが信じられなかった」
 って言って、じっとあたしを見た。
 ちょっと赤くなった顔であたしを見たその表情。
 ‥カッコ可愛い‥。
 あたしはそんな場合じゃないのに‥その顔に見惚れてしまった。
 そして
「かっこいい‥」 
 やっぱり口に出して呟いてしまい、慌てて口を押える。
 ちらりとオズワルドさんを見るとオズワルドさんは苦笑いして‥でも‥その様子はちっとも嫌そうじゃなくて、寧ろ「全くもう」って呆れたみたいな‥優しい表情を浮かべていた。
 ‥この顔も‥素敵‥っ!
「あの時も‥ハヅキさんはそう言ってくれた。‥あの時から‥俺はハヅキさんのこと意識するようになったんだ」
 あの時?
 あたしが首を傾げると、いつかあたしがオズワルドさんが病室で寝ていた(寝たフリをしていた)オズワルドさんに言った言葉を実は聞いていたことを明かしてくれた。
 ひょ!
 聞かれていたとか‥
 恥ずか死ぬ‥
「アレは‥」
 オズワルドさんがこの次になんと続けようとしたのかは分からないがもしかして「気のせいだったって思っておきますね? 」とか?! そんな風にはさせませんよ!!
「アレは本心だったし、今のも本心です! あたしは‥オズワルドさんの顔が大好きなんです!! 」 
 ええい!! もう、全部気持ちぶつけちゃうぞ!!
 あたしは真っ赤になりながら、如何にオズワルドさんがあたしにとってカッコイイかを語り始めた。
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