今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

あたしたちの今後

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 固まっているオズワルドさん。
 ‥どう解釈したらいいんだろうか。
 ① 急に何? って純粋に吃驚しただけ。(→ これなら、嫌われていない確率もある。だけど‥吃驚して今はまだ内容を理解する段階にないから、「え、そんなこと急に言われても‥一度持ち帰らせて」って逃げられる展開も予想される)
 ② 一瞬で今のあたしの言葉を理解して「え‥イヤだ。でも、何て断ろう‥」ってなっている。
 ③ そのことを考えることすら嫌なことを聞いた‥って感じで脳がフリーズして‥つまり、嫌悪感で固まった。
 ③じゃなかったら良いんだけど‥でも、オズワルドさんはいい人だから、そこまでは思わんと‥(信じてる)。今までの日々が「そこまでじゃないでしょ」って言ってくれてるよ! 大丈夫! でも、「友だちでしょ僕たち‥誤解させちゃったかな」って感じだったら‥どうしよう‥そんなことを考えた時、周りの景色が消えて、ぶわって色んな「記憶」が頭に蘇ってきた。
 苦しい‥っ! 
 そんな経験はないけど‥大量の水の中に落ちてしまったかのよう。ぶわっと‥息苦しくなる何かがあたしを飲み込む。
 溺れる‥
 情報の波に溺れる。そんな「息苦しい」感覚。
 この情報は‥いろんな人の生涯の記憶だ。
 ‥誰の記憶? それとも、今まで読んだお話しの内容? いや、これは‥
 全部あたしの記憶だ。

 記憶の水の中もがいていると、
「ハヅキちゃんにはホント感謝している。
 僕のこと好きになることもなく、何も聞かずに僕の相手をしてくれてありがとう。
 ‥君は、これからも一番僕の大事な友だちだ」
 ふいに、そんな声が聞こえた。

『何?! 』『誰? 』
 周りを見渡しても、予想通り誰もいない。
 背後に二人の人が立っているのを気配で感じた。 
 ホントの人じゃない。
 これは‥切り取られたあたしの記憶のワンシーンだ。
 
 口元だけが見えるそんな影法師みたいな二人が向き合っている。話してるのは男の方。向かい合った女‥この女はきっと前世のあたしだ‥は無言でその話を聞いている。
 女の気持ちが‥女は前世とはいえあたしそのものだから‥手に取るようにわかる。
 女は悲しんでいる? 怒っている? 否、女がその時思ったことは‥「まあいっか‥」だった。「将来結婚するわけじゃないから、今が楽しければいい」「あたしもそう思ってた。クリスさんだけじゃない。あたしも同罪だ」物わかりがいい‥便利な「大人の女」振ってる前世のあたし。
 冷めてたのかもしれない。‥イヤ、違う。あのときのあたしは‥冷めてなんかいなかった。
 転生を繰り返しているとはいえ、あたしは自分の人生に毎回全力でぶつかっていた。
 だから、「まあいっか」「こんなこともあるよ」「物語の主人公になれないのなんて日常茶飯事だ」とか思ったこと‥思えば一度もなかった。
 自分なりの人生を全うするために全力を尽くしてた。
 自分の「足りないもの」(美貌だとか、境遇だとか、出来ないことだとか)を呪わない。落ち込まない。人を羨まない。
 そんなあたしのこと、あたしは誇りに思ってた。‥誇りに思えるように生きていた。
 そんなあたしを選んでくれたって‥少なくとも思ってた。
 でも、違った。
 あたしはクリスさんにとって「誰でもいい人」だった。契約結婚の前に「誰でもいい」恋愛ごっこをしてくれる便利な相手。‥それがあたしだった。
 自分の相手をしてくれる。自分に惚れない。そんな‥便利で都合のいい女。それがあたしだった。

 客観的に見たら、クッソ腹立つな。
 そういえば、担当さんも凄く怒ってたな。

 あの時のあたしだってね。
 裏切られた、騙されたって‥思ったよ。
 くそ男クリスさんの前で泣かなかったし、罵らなかったし、怒らなかったけど。
 ホントは凄く‥悲しかったし、腹立ってたし、‥憎らしかったよ。
 でも、あたしの口から出たのは確か‥「これから先も友だちなんか無理」みたいな感じの言葉だった。(※ 正確には、「これから先も友だち、は御免だ」だ)あたしはついでに「もう、友だちだとは思わないで欲しい」って言ってやったんだ。(かっくい~! 前世のあたし! )
 今更ながら、「あの時のあたし、グッジョブ! 」「頑張ったね! 」って褒めてあげたい。
 怒ったり、泣いたりしても何にもなんなかった。男の気持ちが変わるわけでも(‥まあ、それは求めてなかったかな。だって、そんなクズ男とかこっちから願い下げだ)男が反省するわけじゃなし(それはして欲しかったかも)
 なによりさ、
 カッコ悪いじゃん。
 あのクソ男が「僕のこと好きだったのか~。いやぁ、僕って罪な男」とか思うかもしれないじゃん? そんなん腹立つだけだよ。
 あの時は‥でも、違ったな。
 ここで抵抗したら護衛に消される。とあと‥「そんなことして、今までの「楽しかった」が消えちゃうのは嫌だ」だったな。‥ホント、あの時のあたしは強くって、リアルで‥
 可哀そうだった。

 強くって、一生懸命で、可愛い‥「一人の大事な人間」

 あたしはあんなことに傷付けられていいような人間じゃない。
 大した人間じゃないかもしれないけど、「傷つけられても仕方がない」人間なんかじゃなかった。

 クズ男に「もう関わらんといて! 」宣言、グッジョブ! 

 ワンシーンが消えて、また真っ暗になる。
 走馬灯っての? 色んなシーンが流れていく。

 ああ、あれは‥一番目の夫かな? 微かに「思い出した」。今は名前すら覚えてない。(※ 因みに、シリルだ)幼馴染に恋してた彼にとってあたしは一番じゃなかったけど、彼はあたしにそれを言うことはなかった。周りに流されて結婚しただけで、恋愛結婚じゃなかったけど、彼はあたしに生涯「お前とじゃなくて、ホントに好きになった子と結婚出来たら幸せだったろうに」と言うことはなかった。「来世があるなら、きっとあの子にアプローチして‥今度こそあの子と結婚したい」って言ったことも。あたしも「そんな人生もあるかもしれないから、諦めないで。今回の人生は「ツイてなかったパターン」だと思ってさ」とか言わなかった。
 普通の人間に来世は‥ない。
 ごくまれに、ホントにごくまれにあるけど、普通はない。
 きっと、シリルみたいに平凡に生きてた人に来世ってのはなかっただろう。(悪口で言ってるんじゃないよ)
 一度の人生で完結、で彼の人生はよかったから。
 あたしたち‥人口の魂は一回じゃ‥人生が分からないんだ。感情ってのが「普通の人」とは違うから、分からない。本来分からないものを「経験して」覚える。その為の10回の転生だ。
 シリルからは何を覚えた?

 一番じゃなくても‥「足ることを知れ」? 「一番じゃなきゃダメだ」みたいな我が儘言っててもしかたがないでしょ‥「諦めることを知れ」ってこと? 
 
 二回目の人生は‥
 見る目ない男なんてざらにいるから気をつけろってことかな。三回目も含めて独身。
 ‥恋なんてしなくても生きてられる。
 あの時は思ったけど、思えば、あの時のあたしは「人を好きになったこと」が無かったんだろうね。だから、「取り敢えず」結婚出来た(四回目)。‥彼のことは顔も名前も覚えていない。
  
 その後、五回目、六回目、七回目‥
 結婚したりしなかったり。
 ‥恋はしなくても、あたしはそれぞれの人生でいっぱいのことを考えて、色んな技術を身に着けた。
 無駄なんて‥何もない人生を送ってきた。 
 その後もあたしは色々考えて、色々なことを経験して、学んだ。

 思えば、クリスさんと「付き合う」きっかけになったのは、失恋したからだった。
 始めて人を好きになり‥好きって言えないまま失恋した。
 ‥こころが疲れて‥
 こころに隙が出来てたんだ。
 あたしも同罪だね。

 好きでもない人と付き合うもんじゃない。

 だから
 オズワルドさんは言わないで。
「君とは‥付き合うことは出来ないけど、友だちとしてなら‥」
 って言わないで。
「お試しで付き合うなら‥」
 って。お試しって言葉であたしを縛らないで。‥期待させないで。

 どうか‥
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