今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

文字の大きさ
46 / 82
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

あたしたちの今後

しおりを挟む
 固まっているオズワルドさん。
 ‥どう解釈したらいいんだろうか。
 ① 急に何? って純粋に吃驚しただけ。(→ これなら、嫌われていない確率もある。だけど‥吃驚して今はまだ内容を理解する段階にないから、「え、そんなこと急に言われても‥一度持ち帰らせて」って逃げられる展開も予想される)
 ② 一瞬で今のあたしの言葉を理解して「え‥イヤだ。でも、何て断ろう‥」ってなっている。
 ③ そのことを考えることすら嫌なことを聞いた‥って感じで脳がフリーズして‥つまり、嫌悪感で固まった。
 ③じゃなかったら良いんだけど‥でも、オズワルドさんはいい人だから、そこまでは思わんと‥(信じてる)。今までの日々が「そこまでじゃないでしょ」って言ってくれてるよ! 大丈夫! でも、「友だちでしょ僕たち‥誤解させちゃったかな」って感じだったら‥どうしよう‥そんなことを考えた時、周りの景色が消えて、ぶわって色んな「記憶」が頭に蘇ってきた。
 苦しい‥っ! 
 そんな経験はないけど‥大量の水の中に落ちてしまったかのよう。ぶわっと‥息苦しくなる何かがあたしを飲み込む。
 溺れる‥
 情報の波に溺れる。そんな「息苦しい」感覚。
 この情報は‥いろんな人の生涯の記憶だ。
 ‥誰の記憶? それとも、今まで読んだお話しの内容? いや、これは‥
 全部あたしの記憶だ。

 記憶の水の中もがいていると、
「ハヅキちゃんにはホント感謝している。
 僕のこと好きになることもなく、何も聞かずに僕の相手をしてくれてありがとう。
 ‥君は、これからも一番僕の大事な友だちだ」
 ふいに、そんな声が聞こえた。

『何?! 』『誰? 』
 周りを見渡しても、予想通り誰もいない。
 背後に二人の人が立っているのを気配で感じた。 
 ホントの人じゃない。
 これは‥切り取られたあたしの記憶のワンシーンだ。
 
 口元だけが見えるそんな影法師みたいな二人が向き合っている。話してるのは男の方。向かい合った女‥この女はきっと前世のあたしだ‥は無言でその話を聞いている。
 女の気持ちが‥女は前世とはいえあたしそのものだから‥手に取るようにわかる。
 女は悲しんでいる? 怒っている? 否、女がその時思ったことは‥「まあいっか‥」だった。「将来結婚するわけじゃないから、今が楽しければいい」「あたしもそう思ってた。クリスさんだけじゃない。あたしも同罪だ」物わかりがいい‥便利な「大人の女」振ってる前世のあたし。
 冷めてたのかもしれない。‥イヤ、違う。あのときのあたしは‥冷めてなんかいなかった。
 転生を繰り返しているとはいえ、あたしは自分の人生に毎回全力でぶつかっていた。
 だから、「まあいっか」「こんなこともあるよ」「物語の主人公になれないのなんて日常茶飯事だ」とか思ったこと‥思えば一度もなかった。
 自分なりの人生を全うするために全力を尽くしてた。
 自分の「足りないもの」(美貌だとか、境遇だとか、出来ないことだとか)を呪わない。落ち込まない。人を羨まない。
 そんなあたしのこと、あたしは誇りに思ってた。‥誇りに思えるように生きていた。
 そんなあたしを選んでくれたって‥少なくとも思ってた。
 でも、違った。
 あたしはクリスさんにとって「誰でもいい人」だった。契約結婚の前に「誰でもいい」恋愛ごっこをしてくれる便利な相手。‥それがあたしだった。
 自分の相手をしてくれる。自分に惚れない。そんな‥便利で都合のいい女。それがあたしだった。

 客観的に見たら、クッソ腹立つな。
 そういえば、担当さんも凄く怒ってたな。

 あの時のあたしだってね。
 裏切られた、騙されたって‥思ったよ。
 くそ男クリスさんの前で泣かなかったし、罵らなかったし、怒らなかったけど。
 ホントは凄く‥悲しかったし、腹立ってたし、‥憎らしかったよ。
 でも、あたしの口から出たのは確か‥「これから先も友だちなんか無理」みたいな感じの言葉だった。(※ 正確には、「これから先も友だち、は御免だ」だ)あたしはついでに「もう、友だちだとは思わないで欲しい」って言ってやったんだ。(かっくい~! 前世のあたし! )
 今更ながら、「あの時のあたし、グッジョブ! 」「頑張ったね! 」って褒めてあげたい。
 怒ったり、泣いたりしても何にもなんなかった。男の気持ちが変わるわけでも(‥まあ、それは求めてなかったかな。だって、そんなクズ男とかこっちから願い下げだ)男が反省するわけじゃなし(それはして欲しかったかも)
 なによりさ、
 カッコ悪いじゃん。
 あのクソ男が「僕のこと好きだったのか~。いやぁ、僕って罪な男」とか思うかもしれないじゃん? そんなん腹立つだけだよ。
 あの時は‥でも、違ったな。
 ここで抵抗したら護衛に消される。とあと‥「そんなことして、今までの「楽しかった」が消えちゃうのは嫌だ」だったな。‥ホント、あの時のあたしは強くって、リアルで‥
 可哀そうだった。

 強くって、一生懸命で、可愛い‥「一人の大事な人間」

 あたしはあんなことに傷付けられていいような人間じゃない。
 大した人間じゃないかもしれないけど、「傷つけられても仕方がない」人間なんかじゃなかった。

 クズ男に「もう関わらんといて! 」宣言、グッジョブ! 

 ワンシーンが消えて、また真っ暗になる。
 走馬灯っての? 色んなシーンが流れていく。

 ああ、あれは‥一番目の夫かな? 微かに「思い出した」。今は名前すら覚えてない。(※ 因みに、シリルだ)幼馴染に恋してた彼にとってあたしは一番じゃなかったけど、彼はあたしにそれを言うことはなかった。周りに流されて結婚しただけで、恋愛結婚じゃなかったけど、彼はあたしに生涯「お前とじゃなくて、ホントに好きになった子と結婚出来たら幸せだったろうに」と言うことはなかった。「来世があるなら、きっとあの子にアプローチして‥今度こそあの子と結婚したい」って言ったことも。あたしも「そんな人生もあるかもしれないから、諦めないで。今回の人生は「ツイてなかったパターン」だと思ってさ」とか言わなかった。
 普通の人間に来世は‥ない。
 ごくまれに、ホントにごくまれにあるけど、普通はない。
 きっと、シリルみたいに平凡に生きてた人に来世ってのはなかっただろう。(悪口で言ってるんじゃないよ)
 一度の人生で完結、で彼の人生はよかったから。
 あたしたち‥人口の魂は一回じゃ‥人生が分からないんだ。感情ってのが「普通の人」とは違うから、分からない。本来分からないものを「経験して」覚える。その為の10回の転生だ。
 シリルからは何を覚えた?

 一番じゃなくても‥「足ることを知れ」? 「一番じゃなきゃダメだ」みたいな我が儘言っててもしかたがないでしょ‥「諦めることを知れ」ってこと? 
 
 二回目の人生は‥
 見る目ない男なんてざらにいるから気をつけろってことかな。三回目も含めて独身。
 ‥恋なんてしなくても生きてられる。
 あの時は思ったけど、思えば、あの時のあたしは「人を好きになったこと」が無かったんだろうね。だから、「取り敢えず」結婚出来た(四回目)。‥彼のことは顔も名前も覚えていない。
  
 その後、五回目、六回目、七回目‥
 結婚したりしなかったり。
 ‥恋はしなくても、あたしはそれぞれの人生でいっぱいのことを考えて、色んな技術を身に着けた。
 無駄なんて‥何もない人生を送ってきた。 
 その後もあたしは色々考えて、色々なことを経験して、学んだ。

 思えば、クリスさんと「付き合う」きっかけになったのは、失恋したからだった。
 始めて人を好きになり‥好きって言えないまま失恋した。
 ‥こころが疲れて‥
 こころに隙が出来てたんだ。
 あたしも同罪だね。

 好きでもない人と付き合うもんじゃない。

 だから
 オズワルドさんは言わないで。
「君とは‥付き合うことは出来ないけど、友だちとしてなら‥」
 って言わないで。
「お試しで付き合うなら‥」
 って。お試しって言葉であたしを縛らないで。‥期待させないで。

 どうか‥
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。 女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。 私は自立して、商会を立ち上げるんだから!! しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・? 勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。 ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。 果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。 完結しました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

夢でも良いから理想の王子様に会いたかったんです

さこの
恋愛
あれ?ここは? な、なんだか見覚えのある場所なんだけど…… でもどうして? これってよくある?転生ってやつ?? いや夢か??そもそも転生ってよくあることなの? あ~ハイハイ転生ね。ってだったらラッキーかも? だってここは!ここは!! 何処???? 私死んじゃったの?  前世ではこのかた某アイドルグループの推しのことを王子様なんて呼んでいた リアル王子様いるなら、まじ会いたい。ご尊顔遠くからでも構わないので一度いいから見てみたい! ーーーーーーーーーーーーーーーー 前世の王子様?とリアル王子様に憧れる中身はアラサーの愛され令嬢のお話です。 中身アラサーの脳内独り言が多くなります

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)

多賀 はるみ
恋愛
 私、ミリアリア・フォン・シュツットはミターメ王国の第一王女として生を受けた。この国の外見の美しい基準は、存在感があるかないか。外見が主張しなければしないほど美しいとされる世界。  そんな世界で絶世の美少女として、我儘し放題過ごしていたある日、ある事件をきっかけに日本人として生きていた前世を思い出す。あれ?今まで私より容姿が劣っていると思っていたお兄様と、お兄様のお友達の公爵子息のエドワルド・エイガさま、めちゃめちゃ整った顔してない?  今まで我儘ばっかり、最悪な態度をとって、ごめんなさい(泣)エドワルドさま、まじで私の理想のお顔。あなたに好きになってもらえるように頑張ります! -------だいぶふわふわ設定です。

攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました

犬野きらり
恋愛
攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました… というタイトルそのままの話です。 妹視点では、乙女ゲームも異世界転生も関係ありません。 特に私(主人公)は出しゃ張たりしません。 私をアピールするわけでもありません。 ジャンルは恋愛ですが、主人公は恋愛していません、ご注意下さい

処理中です...