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番外編
その後
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あれから、月日は経ち、アレンハルトは学院を卒業し、今年18歳となった。若き天才として、国の魔術師団の団長を務めている。ルートベルトは30歳となったがあまり、成長せず今ではアレンハルトの方が一回り大きくなってしまった。未だに、食が細いが、1日3食食べれるようになり、以前よりは身体に肉がついた。首や手足の痣は薄くはなったが消えることが無く、今でも枷が着いているような錯覚に陥る。全身の傷や痣も酷いものは癒えずに残ってしまい、それを気にするアレンハルトの為にルートベルトは露出が少ないハイネックを着るようになった。声は出せるようになったが、なにせ20年も発していなかったものだから、舌足らずで語彙が少なく、単語で話すことが多かった。それでも、アレンハルトは声を出して、自分を呼んでくれる一回り歳上の可愛らしい番を大切に愛でていた。
「ルート。」
「なに?」
「俺の番になってくれて、ありがとう。」
「おれ、ありがとう。」
「『も』を間に、入れるんだよ。」
「ん。....?...おれ、も、ありがとう?」
「うん、良くできました。」
そう言って、撫でれば嬉しそうに目を細める。あれから、感情が出るようになり僅かだが、笑ったり、少し拗ねたり、怒ったりするようになった。しかし、痛覚だけは戻らず、気付かないうちに傷や痣ができていることも多々あり、アレンハルトが家にいる間は常に一緒に行動した。いない間は、保護魔法をかけて使用人達に気を付けるように言い付けてから家を出ている。アレンハルトの兄、オルトレインとルートベルトの弟、リリィベルトは、屋敷に残り、アレンハルトとルートベルトと数人の使用人を連れて新たに屋敷を買って住んでいる。
そんなある日、アレンハルトは魔術師団にルートベルトを連れて出勤した。ルートベルトは20年間歩かなかった事で筋力が落ちてしまった足をリハビリして杖を付きながらゆっくりと歩けるようになっていた。アレンハルトの腕に掴まりながら、杖を付いて歩くルートベルト。その腰を抱いて支えるアレンハルト。傍から見れば、介護する親子だが、ルートベルトに向けるアレンハルトの微笑みは魔術師団では一切見せることのない顔だった。魔術師団の塔に着くまでに王宮にいた貴族や貴族令嬢に見せびらかし、自分が番持ちで、その番がこの美しく可愛らしいルートベルトなのだと主張した。
周囲からはヒソヒソと妬みなどが聞こえたが、どこ吹く風で気にしていなかった。そんな中、一人の令嬢が近付いてきてアレンハルトに詰め寄った。
「アレンハルト様!その方はなんですの?」
「....『なに』とは?」
ルートベルトを人として扱わなかった令嬢に対し、冷めた視線を向け、威圧した。
「わたくしは、アレンハルト様の婚約者ですわよ?」
「....誰だ?そんなことを言ったやつは。俺は婚約者などいない。」
「...なっ?!なんてことを言うんですの?!正式な婚約を無かったものにするのですか?!」
「そもそも、婚約などしていないし、お前を知らない。」
「~~~っ!!...こんな一回りも歳上の!しかも!男ですわよ?!ありえないですわ!!!」
そう言って、ルートベルトの杖を蹴り飛ばし、バランスを崩したルートベルトは膝が折れ座り込んだ。
「...?....ア、レン。...どうした?」
「大丈夫だよ。杖が飛んでいったからね。怪我はしていない?」
「ん。だいじょうぶ。」
「そう、抱えていい?」
「ん。」
そう言って、手を伸ばすルートベルトを横抱きにして抱え、杖を魔術で持ってきた。そして、令嬢に殺気を込めた視線を送り言い放った。
「お前の家が潰れるのも時間の問題だな。なにせ、勇者の兄であるルートに手を出したのだから。それに俺の兄は、騎士団長だしな。可哀想に。」
そう言って、ルートベルトを抱き抱えたまま、魔術師団の塔に向けて足を進めた。魔術師団では、散々惚気けていたので、ヒソヒソとした声は聞こえなかったが、代わりに惚気けた末の団長、アレンハルトの番に見惚れている者が多数いた。アレンハルトはそれを良く思わず、見惚れていた者の仕事を後日、倍に増やしたのは言うまでもない。
「ルート、挨拶して。」
「ん。...ルート、ベルト。...?」
「よろしく」
「...よろしく。」
「良くできました。」
そう言って、頭を撫でているアレンハルトは本当に番を大切にしている事が伝わってくる。惚気の際にルートベルトの生い立ちを聞いている魔術師団の者達は、拙い喋り方のルートベルトを悪く思う者はおらず、むしろ、かわいいと愛でて菓子を上げたりしていた。その光景は、正しく幼い子にお菓子を上げる大人だった。だがしかし、菓子を貰っているのはアレンハルトより一回り小さいが男性に見れるくらいの身長の30歳の大人なのだ。そして、菓子をあげているのは、菓子を貰うルートベルトより歳下の20代の大人なのだ。
―――――なんとも言えないが、アレンハルトはルートベルトが幸せそうなら何でも良かったのだ。
その後 Fin
「ルート。」
「なに?」
「俺の番になってくれて、ありがとう。」
「おれ、ありがとう。」
「『も』を間に、入れるんだよ。」
「ん。....?...おれ、も、ありがとう?」
「うん、良くできました。」
そう言って、撫でれば嬉しそうに目を細める。あれから、感情が出るようになり僅かだが、笑ったり、少し拗ねたり、怒ったりするようになった。しかし、痛覚だけは戻らず、気付かないうちに傷や痣ができていることも多々あり、アレンハルトが家にいる間は常に一緒に行動した。いない間は、保護魔法をかけて使用人達に気を付けるように言い付けてから家を出ている。アレンハルトの兄、オルトレインとルートベルトの弟、リリィベルトは、屋敷に残り、アレンハルトとルートベルトと数人の使用人を連れて新たに屋敷を買って住んでいる。
そんなある日、アレンハルトは魔術師団にルートベルトを連れて出勤した。ルートベルトは20年間歩かなかった事で筋力が落ちてしまった足をリハビリして杖を付きながらゆっくりと歩けるようになっていた。アレンハルトの腕に掴まりながら、杖を付いて歩くルートベルト。その腰を抱いて支えるアレンハルト。傍から見れば、介護する親子だが、ルートベルトに向けるアレンハルトの微笑みは魔術師団では一切見せることのない顔だった。魔術師団の塔に着くまでに王宮にいた貴族や貴族令嬢に見せびらかし、自分が番持ちで、その番がこの美しく可愛らしいルートベルトなのだと主張した。
周囲からはヒソヒソと妬みなどが聞こえたが、どこ吹く風で気にしていなかった。そんな中、一人の令嬢が近付いてきてアレンハルトに詰め寄った。
「アレンハルト様!その方はなんですの?」
「....『なに』とは?」
ルートベルトを人として扱わなかった令嬢に対し、冷めた視線を向け、威圧した。
「わたくしは、アレンハルト様の婚約者ですわよ?」
「....誰だ?そんなことを言ったやつは。俺は婚約者などいない。」
「...なっ?!なんてことを言うんですの?!正式な婚約を無かったものにするのですか?!」
「そもそも、婚約などしていないし、お前を知らない。」
「~~~っ!!...こんな一回りも歳上の!しかも!男ですわよ?!ありえないですわ!!!」
そう言って、ルートベルトの杖を蹴り飛ばし、バランスを崩したルートベルトは膝が折れ座り込んだ。
「...?....ア、レン。...どうした?」
「大丈夫だよ。杖が飛んでいったからね。怪我はしていない?」
「ん。だいじょうぶ。」
「そう、抱えていい?」
「ん。」
そう言って、手を伸ばすルートベルトを横抱きにして抱え、杖を魔術で持ってきた。そして、令嬢に殺気を込めた視線を送り言い放った。
「お前の家が潰れるのも時間の問題だな。なにせ、勇者の兄であるルートに手を出したのだから。それに俺の兄は、騎士団長だしな。可哀想に。」
そう言って、ルートベルトを抱き抱えたまま、魔術師団の塔に向けて足を進めた。魔術師団では、散々惚気けていたので、ヒソヒソとした声は聞こえなかったが、代わりに惚気けた末の団長、アレンハルトの番に見惚れている者が多数いた。アレンハルトはそれを良く思わず、見惚れていた者の仕事を後日、倍に増やしたのは言うまでもない。
「ルート、挨拶して。」
「ん。...ルート、ベルト。...?」
「よろしく」
「...よろしく。」
「良くできました。」
そう言って、頭を撫でているアレンハルトは本当に番を大切にしている事が伝わってくる。惚気の際にルートベルトの生い立ちを聞いている魔術師団の者達は、拙い喋り方のルートベルトを悪く思う者はおらず、むしろ、かわいいと愛でて菓子を上げたりしていた。その光景は、正しく幼い子にお菓子を上げる大人だった。だがしかし、菓子を貰っているのはアレンハルトより一回り小さいが男性に見れるくらいの身長の30歳の大人なのだ。そして、菓子をあげているのは、菓子を貰うルートベルトより歳下の20代の大人なのだ。
―――――なんとも言えないが、アレンハルトはルートベルトが幸せそうなら何でも良かったのだ。
その後 Fin
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