変革の剣神ー欠落の剣士は救世主ー=SECONDSTAGE

黒猫大和

文字の大きさ
2 / 2

忌み子=Re:スタート

しおりを挟む
 少女は忌み子ハーフエルフである自身のことが大嫌いだった。
 エルフ族の族長ぞくちょうの娘として生まれた少女の母親は、族長の娘としてきびしく育てられた影響かおてんば娘で人一倍ひといちばい冒険心ぼうけんしんが強く。
 外の世界は危ないから決して森の外へ出てはいけないというおきてやぶり、彼女は閉鎖的へいさてき大森林だいしんりんを飛び出した。

 エルフ族は精霊せいれいの声を聞くためのながとがった耳を持ち、精霊の力を借りることで強力な魔法を使うことができる種族しゅぞくだが。まだ子供である彼女にはそこまでの力はなかった。
 結果として人さらいにつかまった彼女は奴隷どれいとして人族じんぞくの権力者の持ち物となり、助け出された彼女は心をこわされて人形のようになっていたが。
 皮肉にも死んでいた彼女の心をかえらせたのはごもっていた権力者の子への母性ぼせい本能ほんのうであり、母親としての愛だった。

『やぁっ! 私の赤ちゃん、とらないでっ!』

 彼女は権力者けんりょくしゃへの憎悪ぞうおと善意から自身の子供を魔法でろそうする大人達に衰弱すいじゃくしきった身体で抵抗し、子供を守り切った。
 しかしエルフ族は人族から一方的いっぽうてき宣戦布告せんせんふこくで国をほろぼされてかくひそむようになった過去があり、可愛がっていた族長の娘が無理やり身ごもらされた子供。ましてや相手は憎悪の対象である人族の指導者である。
 生まれた子供に悪感情あくかんじょうが向かってしまうのも無理はなかった。
 そうして複雑な心境の大人達の見守る中で短く尖った・・・・・耳を持つハーフエルフの少女は生まれた。

 大人達の多くは生まれた子供に罪はないと憎悪を抑え込み、まだ子供である彼女の子育てを手伝い少女の成長を見守っていたが。裏で一部の大人達が少女のことをと呼んで嫌悪けんおしていた。
 そのためある意味当然ではあるが大人でも抑えきれない憎悪をエルフ族の子供達がおさえれるはずもなく、少女は他の子供から様々な暴言、暴力を受けることになったが。
 自身の生まれと子供達が少女の父親の手で理不尽りふじんに家族を奪われたことを知ってしまった少女は反撃することもできず、やがて忌み子ハーフエルフである自身は生きていてはいけないのではないかと思うほど追い込まれてしまう。

『ごめんなさい、私が森の外に出さえしなければっ。私が全部悪いのッ!
 アリスに罪なんてないのよ! だって、あなたはこんなに優しいじゃない!!』

 やがて母親へ『ぼくは死んだ方がいいのかな、お母様』といてしまった少女は涙を流しながら己を抱きしめて、そう言った母親の姿を目の当たりにして強く後悔し、確かな母親からの愛情を感じた少女は生きようと自然と思った。
 自分自身に価値を感じることができず、生きていていいのかまだ分からないけど。それでも母親の泣き顔は二度と見たくないと思ったのだ。

 それから少女は変わった。今まで一方的に暴力を受けるだけだった状況を変えるため、子供達と向き合い殴られながらも心の傷が少しでも治ればいいと子供達の親代わりをしようとした。
 そんな少女の姿は親をうばわれた子供や人族との戦いで子供を亡くした親の心をくもらせていた憎しみを晴らし、自分自身の心へとしっかりと向き合わせる。
 本当はみんな分かっていたのだ。こんなものは八つ当たりにすぎないと、亡くなった家族が生きていたのならばこんな幼子おさなごに何をやってるんだと怒るのだろうと。

『ごめん、なさ、いッ! 本当はわかってる、あなたに罪がないことも。こんなことをしたってしょうがないってこともッ!! 
 だけど許せなかった! 母様はあの人族に殺されたのに!! なんでその娘が生きてるのよッ!l 返して、私の家族を返してよっ』

 少女は子供達の中で一番年上の女の子が叫んだ言葉に対して最初反応できなかった、それほどの衝撃だった。
 頭では分かっているつもりだったのだ、己の存在の罪深さを。しかし現実は少女の想像を超えていた。
 目の前の女の子は当たり前のように母親を持つ子供だったのだ・・・・・
 その日人族が攻めてさえこなければきっと、今日も母親と共に笑っていた。こんな悲しみを背負うこともなかった。
 気が付けば少女は女の子を抱きしめていた。まるで女の子が愛する我が子かのように優しく、この子へあなたを愛している人が少なくともここに一人いると伝わるよう――しっかりと。

『ごめんね、僕はお母様のために生きるって決めたから死ぬことはできない。
 それでもあなたの悲しみを受け止めることくらいはできると思うんだ、こんな僕でも』

 少女は泣きじゃくる女の子の頭を静かに撫でながら己の罪をつぐなおうと密かな決意をした。
 母親のために死んで逃げることはできないからせめて、目の前の女の子のような人を死ぬまですく続ける・・・のだと。
 それがアリスと名付けられた少女が己の魂にきざんだちかいだった。だから僕は後悔しない、絶対に。












「アリス先生、この魔法のやり方が分からないの。どうすればいい?」

「あぁ、え~と、これはね――」

 あの誓《ちか》いを立てた時から大体3年の月日が経ち――まっすぐ彼らに向き合い続けた成果せいかなのか、僕は里のみんなと少しだけ仲良くなることができたのかな? 僕にはよく分からないし、恐怖きょうふからただ走り続けてきただけだけど。
 彼らの笑顔が少しずつ増えてきてくれて、僕も少しだけ嬉しかった。
 侵略しんりゃく戦争せんそう後に生まれた忌み子ハーフエルフに対して負の感情を持ってない子供の引率いんそつをして魔法を教える仕事中の僕は、目の前のエルフ族の子供が一生懸命いっしょうけんめい精霊せいれい魔法まほうを使おうとがんばっているのを見守りながら3年前の出来事できごとおもいいをせた。

 立てた誓《ちか》いを撤回てっかいするつもりは毛頭もうとうないし、これからも――人を死ぬまですく続ける・・・のは――考えるまでもない当然とうぜんのことだ。
 だが、どうしようなく思うのだ。幸せだと。

「アリス先生、小っちゃな炎がでたの~、やったの~」

「えぇ、小さいけど――とても素敵すてきほのおの精霊魔法ね、こうするともっと綺麗きれいよ」

 僕は目の前のひらつつみんで、小さな炎の魔法へ少しだけ僕の魔力を送り込み――大輪たいりんほのお薔薇バラかせた。
 そしてこの子の魔力でも維持いじできるようにしてから「この花をみんなに見せてあげてね、とっても素敵よ――ただこれは綺麗きれいでも炎のかたまりだからさわらせちゃちゃダメよ? 分かりましたか??」そう言った。
 そう言うと目をキラキラとかがやかせた少女はドタドタと足音をひびかせながら走って行ってしまった。

「ふふふっ、後で走らないように注意ちゅういしなくちゃね。可愛い子♡」

 そんなことを考えながら――僕は思う。
 忌み子ハーフエルフとしてまれてきて、色々なことがあった。理不尽りふじんだと思える仕打しうちをけたこともある。そのことをうらむ気持ちはない、そうおのれちかえる。
 ……ただこわかった、僕はなさけないことに死ぬのがこわくてこわくてしょうがないのだ。

 こんなことでだれかをまもるためにたたかえるのだろうかと、もう守りたい宝物たからもの出来できてしまったからこそ。そう強く思い、そんな日がなければいいと今日も思っている。
 そんな日々をごしながら少しだけ自分のことが好きになっていた頃、大森林だいしんりんさとはずれで魔法の授業じゅぎょうをしているボク達の前に――ヤツらが現れた・・・・・・・












 魔物まもの
 魔法などに使用される生命エネルギーである魔力の竜穴りゅうけつと呼ばれる場所が属性ぞくせいである闇属性やみぞくせいの魔力で汚染され、周囲しゅうい動植物どうしょくぶつへんじた動く災害さいがい
 そんな存在そんざいれが――僕のっている結界けっかいおそいかかってきた。

「グヌヌッ!!!? けてたまるか!!!!! ここには僕の生徒せいとが、いや――僕の宝物たからものがいるのだからァッ!!!!!!??」

 結界にぶつかるたび自爆じばくする魔物達の影響えいきょうきしむ結界を全力ぜんりょく強化きょうかし、あらたにつくした無数むすうの結界で魔物達をばし、一旦いったん結界の周囲から魔物を排除はいじょすることに成功せいこうした。

「みんなは今すぐ里の方向へ向かって逃げなさい!!! 僕がここで魔物達をめているあいだはやく!!!!」

「だ、だけど、アリス先生は? わ、私達も一緒に闘った方がいいん――」

「――非常事態ひじょうじたいゆえ二度にどいません!!!!!! いますぐ全員全力ぜんいんぜんりょくはしれ!!!!!!! はしれ!!!!!!! はしれェェェェェェッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

「「「「「「「――ッ!!? はい!!!! 分かりました!!!!! アリス先生!!!!!!」」」」」」 

 僕の言葉を聞いて一目散いちもくさんに里の方角へ走り出した生徒達の姿に、僕はほこらしさと少しの愛慕あいぼおぼえながら全力の魔法を行使こうしはじめた。
 そしてアリスが魔物の群れを十分じゅうぶん破壊はかいする威力いりょくの魔法が準備できると、アリスは魔物の群れ目がけてそれを・・・はなった。

「――全力でいくよ!!! スカイジャッジメントッ!!!!
!」

 その言葉に呼応こおうするよう天空てんくうから目に見えるほど圧縮あっしゅくされた巨大な空気のハンマーが落っこちてきた。
 僕はスカイジャッジメントで魔物の半数をたたつぶすと、そのいきおいのままさらにもう一発いっぱつのスカイジャッジメントをつくし始めた。
 そしてアリスが魔物の群れを十分じゅうぶん破壊はかいできる威力いりょくの魔法の準備が終わると、ぐさまはなとうとしたが。
 チクリとしたいたみが首筋くびすじはしり、その直後ちょくご体が言うことを聞かず――地面じめんたおんだ。

「な、なに、が、おき、て」

 アリスは倒れ込んだまま周囲しゅうい視線しせんめぐらせると、数え切れないほどの触手が結界内をたしており。触手しょくしゅさきだけを空間くうかん転移てんいさせているのだと分かった。
 そしてゆっくりと倒れたアリスの元へ触手がびてきたことで、僕はこれから自分があじわうことになる地獄が脳裏のうりをよぎり、アリスは――自分のくびかぜやいばいた。

 ――例え、僕がここで死ぬことになっても、あの子達は僕が守るッ!!!!!!

 これで、がしたあの子達へ万が一にも自分の悲鳴ひめいとどかないようにした。
 もしも僕の悲鳴を聞いてしまったらやさしいあの子達はきっと戻ってきてしまうと分かっていたから――それだけは絶対ぜったい阻止そしする。
 その意思いしで自分の首を切り裂いたが、僕は死ぬのがこわくて、こわくて、仕方しかたなかった。

 ただ死ぬこと事態じたいはこわくない。こわいのは死ぬことがじゃなく、もう誰も守れなく・・・・なってしまう・・・・・・ことがこわかった。
 それでもアリスはなみだを流さず、ただ自身へせま触手運命をただただ受け入れた。
 そしてアリスは空中へ持ち上げられ、まるでおもちゃの人形をいじるように触手が体中をまわり――アリスは空中でだいがたにされてから手足てあしほねられた。

「ぇっ――ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!??????????」

 アリスは手足を同時に折られてこえにならない悲鳴ひめいを上げたが、誰もアリスを助けに来てくれるものはいなかった。
 自分で最後の命綱いのちづなを切ったのだから仕方がないが、その後もアリスは触手達にもてあそばれ続けた。
 そして全身ぜんしんほねがグチャグチャになるまであそばれた後、アリスのくびに触手がき少しずつ力をつよめていった。
 アリスはやっと死ねるのだと思い、過去かこ回想かいそうし始めていた。

 ――ごめんね、お母様。もう泣かしたくなかったのに僕、もう死んじゃうや。

 アリスは人のため生きた人生にいなどなかったが、母親は己が死んだ後大丈夫だろうかと少し不安だった。
 忌み子ハーフエルフである自分のことを愛情を持って育ててくれた程優しい母親だから、きっと僕なんかが死んでもショックを受けるのだろう。
 そうならないためにもまだ生きていたかったが、もう指一本動かなかった。

 ――そう言えばもっと自分を大切にするよう言われたばっかりだったけ。僕は僕なりに体調管理しっかりしてるんだけどなぁ。

 少し前に『睡眠は一刻いっこくで十分だしあまり食べ物を食べなくても周囲の魔力だけで一月は生きていられる!』と胸を張って言い切ったアリスに対して烈火れっかごとく怒っていた母親の顔を思い出して幸せだったと苦笑し、それと同時に死にたくないと強く思ったが。その願いが叶わないことはアリスが誰よりもよく理解していた。

――まだ、生きていたかったなぁ

そうして人生で初めてのがままを心の中でこぼした後、アリスは目を閉じて最後の時を待つ。
しかしいつまで待っても死は訪れず、不思議に思っていると声がした。

「――もう大丈夫だいじょうぶだ、おれた」
 
「ぇ、ぁ、ぇ、ァァ――」

もう体の感覚かんかくがほとんどないから最初は気がつかなかったが、今アリスはみにくい触手ではなく、だれかのやさしい両手りょうてがアリスを優しくかかえていた。
 そのことに気がつくとアリスは涙がぐっとこみ上げ声をまらせるが、アリスはそれでも気絶きぜつする前に「ぁ、ぃ、ぁ、ぉ」と顔も知らない救出者きゅうしゅつしゃげてから完全かんぜんうしなった。












 アリスを助けた――デュラン・ライオットは目の前で気を失った少女を見つめながらベッドを創造してからそこへ寝かせ、先程きざんだ魔物の群れがした残虐ざんぎゃく非道ひどうな行動に文字もじどおり、地面がれ動くほどの怒髪天どはつてんき――それだけでアリスのっていた結界はんだ。
 そしてぐるりと魔物の群れへ視線を向けたデュランは風にかれたたんぽぽの綿毛わたげのように姿すがたし、次の瞬間には魔物達は自爆じばくすらゆるされず――空間ごと体をみじん切りにされ、声一つあげられずにこの世から消えた。

界破斬かいはざん――乱舞らんぶ

 その言葉と共に再びアリスの近くに現れたデュランは優しくアリスをお姫様ひめさまっこすると、里の方角へ向けて歩き出した。
 これが後に世界を救う少年と少女の始めての出会いであり、またとある妖精の受難じゅなんの始まりでしたが。そんなことはまだ、誰も知るよしもありませんでした。






 この世界にはかつて剣神けんじんたたえられた剣士がいた。
 剣士は十二の神が唯一神ゆいいつしんの座を巡り争ったことで荒廃こうはいした世界を救うため、新たに生まれ落ちた十三番目の神である起源神きげんしんワールドと同道どうどうして旅立ち。長い旅の末に起源神ワールドと共に十二の神を討ち果たして争いを終結させた。
 そして争いを終結させ、神を打倒した剣士は剣をきわめ神の領域りょういきへといたった者――剣神と呼ばれた。
 そんな偉業いぎょうをなしとげた剣神はやがて姿を消し、共に世界を旅した起源神ワールドは世界を見守る存在として七体の竜王を生み出した後。荒廃こうはいした世界を支える大樹ユグドラシルに姿を変える。

 世界中のありとあらゆる種族が姿を消した剣神を探したが見つかることはなく、剣神は伝説になった。
 これはそれから数百年後。好きな女のために世界存亡の危機へと立ち向かった――新たな剣神の物語である。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...