3 / 28
3
「……お嬢様。今一度お伺いしますが、その手に持たれた輝かしい物体は何でございますか?」
学園の中庭、噴水近くのベンチの前で。
執事のセバスが、額の青筋を隠しもせずに私に問いかけました。
「見て分からないかしら、セバス。特注の『純金プレート』よ。文字もしっかり彫り込んであるわ。『聖紀二〇二六年一月、ヴィルフリート殿下、この地に三十分間鎮座される。その際、右脚を上に組まれた』とね!」
「……それを、今からこのベンチに打ち付けるおつもりで?」
「当たり前でしょう。ここは殿下が読書をなされた聖なる場所。ただの木材として朽ちさせていいはずがありませんわ。歴史的遺産として、後世に語り継ぐべきですもの!」
私は金槌を振り上げました。
今日から私は、婚約者という公務から解放されたのです。
学園での時間は、すべて「推しの軌跡を辿る旅」に費やすことができます。
「おやめなさい。学園の備品を勝手に加工するのは、公爵令嬢としてではなく、一人の人間として問題がございます。そもそも、許可を取っているのですか?」
「取ったわよ? 学園長に『殿下の威光を顕彰するための寄付金を一千万ほど積むので、中庭の景観を少し整えさせてほしい』って。快諾してくださったわ!」
「金に物を言わせた強行突破……! 学園長も学園長でございますが、お嬢様の熱意が歪みすぎていて、もはや恐怖を感じます」
「愛よ、セバス。これは無償の愛なの。……ああっ、見て! あちらの樫の木! 昨日の放課後、殿下が背中をお預けになっていた場所だわ!」
私は金槌を放り出し(セバスが華麗にキャッチしました)、隣の木へと駆け寄りました。
その幹には、まだ殿下の温もりが……いえ、殿下の背中の圧が残っているような気がします。
「……はぁ、はぁ。この粗い樹皮に、殿下の最高級のカシミヤの制服が触れたのね。なんて幸運な木なのかしら。今日からあなたの名前は『ヴィル・ツリー』よ。毎日私が、殿下の残り香に近い香水で霧吹きしてあげますわ!」
「メメル、貴様……そこで何をしている」
背後から、低くて美しい、それでいてひどく不機嫌そうな声が響きました。
振り返らなくても分かります。この鼓膜を震わせる心地よい低音、そしてわずかに混じる「本気で引いている」ニュアンス。
推し、降臨。
「……あら、殿下! ごきげんよう。今日は一段と、御髪のキューティクルが光り輝いておりますわね。太陽光の反射率が昨日の五パーセント増しですわ!」
私は優雅に(そして素早く)カーテシーを捧げました。
ヴィルフリート殿下は、リリアンさんを伴って、引きつった笑顔でこちらを睨んでいました。
「……昨夜、あれほど私の視界に入るなと言ったはずだが? なぜ翌日の昼休みに、私の目の前で木を愛でているんだ」
「誤解しないでくださいませ、殿下。私は殿下を見に来たのではありません。殿下が『居た場所』をメンテナンスしに来ただけですわ。つまり、私は殿下ではなく、殿下の残滓を見ているのです。ですから、視界に入っているのは、厳密には殿下の方から私の視界に侵入してきたことになりますわね!」
「詭弁を弄するな! その手に持っている怪しい霧吹きは何だ! それに、あのベンチに打ち付けられた悪趣味な金色の板は!」
「ああっ、お気づきになりましたか! 殿下の御尻が触れた記念すべき位置をミリ単位で特定し、そこに座る不届き者が現れないよう、『着席禁止・聖域指定』の文字を刻んでおきましたの!」
殿下は、頭を押さえてよろめきました。
リリアンさんが慌ててその腕を支えます。
「殿下、大丈夫ですか? メメル様……あんなところに金プレートを貼ったら、誰も座れなくなってしまいます。困る生徒さんもいるのではないでしょうか……?」
リリアンさんが、おどおどしながらも正論を吐きました。
私は彼女に向かって、慈愛に満ちた(と自分では思う)微笑みを向けました。
「リリアンさん、甘いわ。殿下が座った場所に、平民や他の貴族が座るなんて、それこそ不敬ではありませんか? あのベンチは今後、ガラスケースに入れて保存するのが礼儀というものです。大丈夫、代わりに私が、殿下の座り心地を再現した『ヴィル・ベンチ・レプリカ』を百脚ほど寄贈しておきますから」
「……百脚もいりませんよぉ!」
リリアンさんの叫びが中庭に響きます。
殿下は、真っ赤な顔をして私を指差しました。
「メメル! 貴様、婚約破棄されてショックで頭がおかしくなったのか!? 普通なら、泣いて部屋に閉じこもるか、私を呪うかするだろう!」
「呪うなんてとんでもない! 私は感謝しているのですわ。婚約者という重責を解かれたことで、私は一人の『ファン』としての純粋さを取り戻しました。今の私は、殿下の幸せだけを願う菩薩のような心境です」
「菩薩が私のベンチを金メッキにするか! いいか、今すぐそれを剥がせ! 学園の景観を汚すな!」
「景観を汚す? いいえ、殿下。これは『付加価値』です。数十年後には、この学園は『ヴィルフリート殿下の聖地』として、国中から観光客が押し寄せる名所になるのですわ。私はそのための先行投資をしているに過ぎません」
「……セバス。貴様からも何か言え。主人の暴走を止めるのが執事の役目だろう!」
殿下が助けを求めるようにセバスを見ました。
セバスは、深々と頭を下げ、冷徹な声で答えました。
「……恐れながら殿下。私、すでにお嬢様を止めることは諦めております。現在、私はお嬢様が打ち付けたプレートが水平であるかを確認する『水準器』としての職務に専念しております」
「貴様もか! この主従、救いようがない!」
殿下は、吐き捨てるように言って、リリアンさんを連れて逃げるように去っていきました。
去り際、少しだけ振り返って私を見たその表情。
「蔑み」の中に、ほんの少しの「戦慄」が混じっていました。
……ああっ、新しい! 「ゴミ瞳」の進化系、「ゴミを見るような瞳・恐怖のスパイス添え」ですわ!
「……セバス。今の殿下の表情、写生できたかしら?」
「ご安心を。隠しカメラ……いえ、魔法の記録鏡でバッチリと。後ほど、アルバムの『婚約破棄・二日目』の項に追記しておきます」
「頼もしいわ、セバス。さあ、次は学食の『殿下がいつも注文される日替わり定食』を、永久欠番にするための交渉に行くわよ!」
「……生徒たちが飢えることになりますが、よろしいのですか?」
「いいのよ。代わりに私が『殿下をイメージした特性マフィン』を全校生徒に無料で配り続ければ、みんな納得するわ。マフィンの表面には、もちろん殿下の御顔を焼き印するけれど!」
「……学園が宗教施設になるのも、時間の問題のようでございますね」
私は意気揚々と、金槌を手に次の目的地へと歩き出しました。
婚約破棄から二日。
私の「推し活」は、まだ序の口に過ぎないのです。
学園の中庭、噴水近くのベンチの前で。
執事のセバスが、額の青筋を隠しもせずに私に問いかけました。
「見て分からないかしら、セバス。特注の『純金プレート』よ。文字もしっかり彫り込んであるわ。『聖紀二〇二六年一月、ヴィルフリート殿下、この地に三十分間鎮座される。その際、右脚を上に組まれた』とね!」
「……それを、今からこのベンチに打ち付けるおつもりで?」
「当たり前でしょう。ここは殿下が読書をなされた聖なる場所。ただの木材として朽ちさせていいはずがありませんわ。歴史的遺産として、後世に語り継ぐべきですもの!」
私は金槌を振り上げました。
今日から私は、婚約者という公務から解放されたのです。
学園での時間は、すべて「推しの軌跡を辿る旅」に費やすことができます。
「おやめなさい。学園の備品を勝手に加工するのは、公爵令嬢としてではなく、一人の人間として問題がございます。そもそも、許可を取っているのですか?」
「取ったわよ? 学園長に『殿下の威光を顕彰するための寄付金を一千万ほど積むので、中庭の景観を少し整えさせてほしい』って。快諾してくださったわ!」
「金に物を言わせた強行突破……! 学園長も学園長でございますが、お嬢様の熱意が歪みすぎていて、もはや恐怖を感じます」
「愛よ、セバス。これは無償の愛なの。……ああっ、見て! あちらの樫の木! 昨日の放課後、殿下が背中をお預けになっていた場所だわ!」
私は金槌を放り出し(セバスが華麗にキャッチしました)、隣の木へと駆け寄りました。
その幹には、まだ殿下の温もりが……いえ、殿下の背中の圧が残っているような気がします。
「……はぁ、はぁ。この粗い樹皮に、殿下の最高級のカシミヤの制服が触れたのね。なんて幸運な木なのかしら。今日からあなたの名前は『ヴィル・ツリー』よ。毎日私が、殿下の残り香に近い香水で霧吹きしてあげますわ!」
「メメル、貴様……そこで何をしている」
背後から、低くて美しい、それでいてひどく不機嫌そうな声が響きました。
振り返らなくても分かります。この鼓膜を震わせる心地よい低音、そしてわずかに混じる「本気で引いている」ニュアンス。
推し、降臨。
「……あら、殿下! ごきげんよう。今日は一段と、御髪のキューティクルが光り輝いておりますわね。太陽光の反射率が昨日の五パーセント増しですわ!」
私は優雅に(そして素早く)カーテシーを捧げました。
ヴィルフリート殿下は、リリアンさんを伴って、引きつった笑顔でこちらを睨んでいました。
「……昨夜、あれほど私の視界に入るなと言ったはずだが? なぜ翌日の昼休みに、私の目の前で木を愛でているんだ」
「誤解しないでくださいませ、殿下。私は殿下を見に来たのではありません。殿下が『居た場所』をメンテナンスしに来ただけですわ。つまり、私は殿下ではなく、殿下の残滓を見ているのです。ですから、視界に入っているのは、厳密には殿下の方から私の視界に侵入してきたことになりますわね!」
「詭弁を弄するな! その手に持っている怪しい霧吹きは何だ! それに、あのベンチに打ち付けられた悪趣味な金色の板は!」
「ああっ、お気づきになりましたか! 殿下の御尻が触れた記念すべき位置をミリ単位で特定し、そこに座る不届き者が現れないよう、『着席禁止・聖域指定』の文字を刻んでおきましたの!」
殿下は、頭を押さえてよろめきました。
リリアンさんが慌ててその腕を支えます。
「殿下、大丈夫ですか? メメル様……あんなところに金プレートを貼ったら、誰も座れなくなってしまいます。困る生徒さんもいるのではないでしょうか……?」
リリアンさんが、おどおどしながらも正論を吐きました。
私は彼女に向かって、慈愛に満ちた(と自分では思う)微笑みを向けました。
「リリアンさん、甘いわ。殿下が座った場所に、平民や他の貴族が座るなんて、それこそ不敬ではありませんか? あのベンチは今後、ガラスケースに入れて保存するのが礼儀というものです。大丈夫、代わりに私が、殿下の座り心地を再現した『ヴィル・ベンチ・レプリカ』を百脚ほど寄贈しておきますから」
「……百脚もいりませんよぉ!」
リリアンさんの叫びが中庭に響きます。
殿下は、真っ赤な顔をして私を指差しました。
「メメル! 貴様、婚約破棄されてショックで頭がおかしくなったのか!? 普通なら、泣いて部屋に閉じこもるか、私を呪うかするだろう!」
「呪うなんてとんでもない! 私は感謝しているのですわ。婚約者という重責を解かれたことで、私は一人の『ファン』としての純粋さを取り戻しました。今の私は、殿下の幸せだけを願う菩薩のような心境です」
「菩薩が私のベンチを金メッキにするか! いいか、今すぐそれを剥がせ! 学園の景観を汚すな!」
「景観を汚す? いいえ、殿下。これは『付加価値』です。数十年後には、この学園は『ヴィルフリート殿下の聖地』として、国中から観光客が押し寄せる名所になるのですわ。私はそのための先行投資をしているに過ぎません」
「……セバス。貴様からも何か言え。主人の暴走を止めるのが執事の役目だろう!」
殿下が助けを求めるようにセバスを見ました。
セバスは、深々と頭を下げ、冷徹な声で答えました。
「……恐れながら殿下。私、すでにお嬢様を止めることは諦めております。現在、私はお嬢様が打ち付けたプレートが水平であるかを確認する『水準器』としての職務に専念しております」
「貴様もか! この主従、救いようがない!」
殿下は、吐き捨てるように言って、リリアンさんを連れて逃げるように去っていきました。
去り際、少しだけ振り返って私を見たその表情。
「蔑み」の中に、ほんの少しの「戦慄」が混じっていました。
……ああっ、新しい! 「ゴミ瞳」の進化系、「ゴミを見るような瞳・恐怖のスパイス添え」ですわ!
「……セバス。今の殿下の表情、写生できたかしら?」
「ご安心を。隠しカメラ……いえ、魔法の記録鏡でバッチリと。後ほど、アルバムの『婚約破棄・二日目』の項に追記しておきます」
「頼もしいわ、セバス。さあ、次は学食の『殿下がいつも注文される日替わり定食』を、永久欠番にするための交渉に行くわよ!」
「……生徒たちが飢えることになりますが、よろしいのですか?」
「いいのよ。代わりに私が『殿下をイメージした特性マフィン』を全校生徒に無料で配り続ければ、みんな納得するわ。マフィンの表面には、もちろん殿下の御顔を焼き印するけれど!」
「……学園が宗教施設になるのも、時間の問題のようでございますね」
私は意気揚々と、金槌を手に次の目的地へと歩き出しました。
婚約破棄から二日。
私の「推し活」は、まだ序の口に過ぎないのです。
あなたにおすすめの小説
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!
ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」
特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18)
最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。
そしてカルミアの口が動く。
「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」
オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。
「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」
この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
婚約破棄を申し込むも、殿下の説得がガチすぎて詰む?
ちゅんりー
恋愛
公爵令嬢リペは、厳しい王妃教育と窮屈な未来から逃れるため、ある画期的な計画を思いつく。それは、世にも恐ろしい「悪役令嬢」になりきって、完璧な第一王子カイルに婚約破棄を叩きつけること!
さっそくリペは、高笑いと共に「不敬な態度」「無駄遣い」「嫌がらせ」といった悪行の数々を繰り出すが……。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
【完結】侯爵令嬢は破滅を前に笑う
黒塔真実
恋愛
【番外編更新に向けて再編集中~内容は変わっておりません】禁断の恋に身を焦がし、来世で結ばれようと固く誓い合って二人で身投げした。そうして今生でもめぐり会い、せっかく婚約者同士になれたのに、国の内乱で英雄となった彼は、彼女を捨てて王女と王位を選んだ。
最愛の婚約者である公爵デリアンに婚約破棄を言い渡された侯爵令嬢アレイシアは、裏切られた前世からの恋の復讐のために剣を取る――今一人の女の壮大な復讐劇が始まる!!
※なろうと重複投稿です。★番外編「東へと続く道」「横取りされた花嫁」の二本を追加予定★
乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……
三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」
ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。
何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。
えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。
正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。
どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?