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「――さて、始めましょうか」
清々しい朝の光が降り注ぐ、公爵邸の広大な庭園。
色とりどりのバラが咲き誇り、中央には噴水が煌めく、まさに貴族の優雅さを象徴するような場所だ。
その中心に立ち、私は仁王立ちで宣言した。
隣には、少し眠そうな(昨夜遅くまで私の「改造計画」に付き合わされた)クロード公爵がいる。
「本当にやるのか、マーヤ。……ここは王都でも指折りの美観地区なのだが」
「ええ、やりますわ。美観? 筋肉こそが至高の美ですもの」
私はバサリと設計図を広げた。
「まず、あの噴水。水圧が弱すぎますわ。もっと高圧にして、打たせ湯(僧帽筋マッサージ用)に改造します」
「……噴水がマッサージ機に」
「次に、あちらのガゼボ(西洋風あずまや)。お茶を飲むにはいいですが、懸垂(チンニング)をするには梁の強度が足りません。鉄骨で補強し、ついでに吊り輪も設置しましょう」
「……憩いの場が体操競技場に」
「そして、この一面のバラ園! 土が柔らかくて足腰に優しそうですわね。……全て掘り起こして、『マッスル・サーキット・コース』を作ります!」
私の指示が飛ぶたびに、後ろに控えていた公爵家の使用人たちが「ヒィッ!」と悲鳴を上げている。
特に、年配の家令(執事長)であるセバス(実家の執事と同名だが別人)は、顔面蒼白で震えていた。
「お、奥様……! (まだ婚約者だが、すでに実権は握られている) 正気でございますか!? この庭は、亡き大奥様が愛された由緒ある……!」
「あら、セバス。貴方、最近腰痛がひどいのではなくて?」
「えっ? な、なぜそれを……」
「立ち姿を見れば分かりますわ。脊柱起立筋が悲鳴を上げていますし、それを庇うために骨盤が後傾しています。……そんな体で、公爵家を支えられますの?」
「うぐっ……!」
私は彼に近づき、優しく(強引に)肩を掴んだ。
「この庭改造は、貴方たちのためでもあるのです。……健康な肉体にこそ、健全な忠誠心が宿る。違いますか?」
「そ、それは……仰る通りですが……」
「では、決まりですわね。……ガンツ! 資材を運び込みなさい!」
「イエスマッスルゥ!!」
私の合図と共に、門の外から「マッスル建設(店の常連たち)」のトラック部隊が雪崩れ込んできた。
荷台には大量の鉄骨、バーベル、そしてプロテインの袋。
「さあ、作業開始よ! バラは丁寧に移植して、空いたスペースに『ベンチプレス台』を等間隔に配置! プロムナード(散歩道)には、タイヤ引き用の古タイヤを用意して!」
「了解!」
美しい庭園が、瞬く間に工事現場へと変貌していく。
使用人たちは呆然と立ち尽くしていたが、私は彼らにも容赦なく声をかけた。
「何を見ていますの? 貴方たちも参加するのです」
「えっ? わ、私たちも工事を?」
「いいえ。……基礎トレーニングです」
私はメイド長に、ピンク色のダンベル(2キロ)を手渡した。
「まずはそれを持ちながら、スクワット百回。……公爵家に仕える者なら、最低限そのくらいはこなせなくては」
「ひ、ひゃくかい!?」
「嫌なら辞めても構いませんが……これからの公爵家は『体育会系』になりますわよ? ついてこられるかしら?」
私がニヤリと笑うと、メイド長はクロード公爵に助けを求める視線を送った。
しかし、当の主人は諦めたように首を振った。
「……諦めろ。彼女には逆らえん。……それに、私の筋肉(からだ)を見ろ」
クロード様が上着を脱ぎ、盛り上がった上腕を見せつけた。
「この肉体は、彼女の指導の賜物だ。……悪くないぞ、健康になるのは」
「だ、旦那様まで……!?」
主人が肯定してしまっては、従うしかない。
使用人たちは涙目になりながら、各々ダンベルや箒を手に取り、スクワットを始めた。
「イ、イチッ……! ニッ……!」
「声が小さいですわ! 腹から声を出しなさい!」
「イ、イエスマッスルゥゥ!!」
奇妙な掛け声が、優雅な公爵邸に響き渡る。
近隣の貴族たちが「何事か」と窓から覗いているが、気にする必要はない。
すぐに彼らも巻き込んでやるつもりだから。
◇
数日後。
公爵邸の庭は、完全に生まれ変わっていた。
バラのアーチの代わりに『雲梯(うんてい)』が架かり、噴水の周りには『腹筋ベンチ』が並び、木陰には『サンドバッグ』が吊るされている。
もはや庭園ではない。
青空ジムだ。
「……素晴らしい」
完成した庭を見渡し、私は満足げに頷いた。
そして、その横では――。
「ふんっ! ふんっ!」
「お嬢様! 見てください! 私、5キロのダンベルが持てるようになりました!」
メイドたちが生き生きとした顔(とパンプアップした腕)で報告に来る。
最初は死にそうな顔をしていた彼女たちも、筋肉の成長と共に自信をつけ、肌ツヤも良くなっていた。
「あら、素晴らしいわエマ。上腕二頭筋に可愛いコブができているわ」
「ありがとうございます! これも奥様のプロテインのおかげです!」
「セバスはどう?」
「はっ! 腰痛が嘘のように消えました! 今なら旦那様をお姫様抱っこできるかもしれません!」
家令のセバスが、見違えるように背筋を伸ばして敬礼する。
その執事服の下には、コルセットではなく自前の筋肉の鎧ができつつあった。
「ふふふ……計画通りね」
私がほくそ笑んでいると、クロード様がトレーニングウェア(私の特注)姿でやってきた。
汗に濡れた前髪がセクシーだ。
「マーヤ。……屋敷の中も、大変なことになっているぞ」
「あら、何か不備でも?」
「いや。……階段の手すりが『懸垂バー』になり、廊下の床が『衝撃吸収マット』に張り替えられていた。……歩きやすいが、屋敷というより道場だ」
「機能美ですわ。それに、いつでもどこでも鍛えられる環境こそが、最強の騎士団長には必要でしょう?」
「……否定はできん」
彼は苦笑しつつ、手に持っていたタオルで汗を拭った。
「だが、一つ問題がある」
「問題?」
「……夜だ」
「夜?」
彼が少し顔を赤らめ、咳払いをした。
「寝室のベッドだ。……スプリングが強力すぎて、寝返りを打つたびにトランポリンのように跳ねるのだが」
「あら、それは『体幹トレーニング・マットレス』ですわ。寝ている間もバランス感覚を鍛えられる優れものですのよ?」
「……安眠させてくれ」
「ダメです。結婚式まであと一ヶ月。それまでに貴方の筋肉を、さらにワンランク上の『神の領域』まで仕上げなければなりませんから」
私は彼の胸板を指でツンとつついた。
「式当日は、タキシードの上着を脱ぎ捨てて『誓いのポーズ』を決める予定でしょう? 今の仕上がりでは、参列者が失神するレベルには達していませんわ」
「……参列者を失神させる必要があるのか?」
「当然です。私の夫となる男ですもの。伝説を作らなくては」
私の無茶振りに、クロード様は天を仰いだ。
だが、その口元は笑っている。
「……やれやれ。とんだ鬼コーチを妻にしたものだ」
「ふふっ。スパルタ教育は私の得意分野ですわ」
その時、門の方から騒がしい声が聞こえてきた。
「た、頼もぉぉぉ!!」
「……?」
現れたのは、ボロボロの服を着た男たちだった。
見覚えがある。
以前、私の店を襲撃したボルドー率いる元正規軍の兵士たちだ。
ただし、全員が痩せこけて、やつれている。
「ど、どうしたのですか? また懲りずに襲撃?」
私が構えると、彼らは一斉に地面に土下座した。
「ち、違います! 俺たち、クビになったんです!」
「へ?」
「ジュリアン殿下の件で連帯責任を取らされて……職を失って……。食うものもなくて……」
ボルドーが涙ながらに訴える。
「噂を聞きました! ここでは『筋肉』があれば飯が食えると! お願いします! 俺たちを雇ってください! もう二度と逆らいませんから!」
「「「お願いしますマッスルゥ!!」」」
どうやら、飢えと失職の恐怖で、彼らのプライドは完全に崩壊したらしい。
それにしても、かつての敵に頭を下げてくるとは。
「クロード様、どうします?」
「……君の庭だ。君が決めることだ」
クロード様は私に判断を委ねた。
私は彼らを見下ろし、そしてニヤリと笑った。
「いいでしょう。人手はいくらあっても困りませんから」
私は指をパチンと鳴らした。
「ただし! 私の下で働くからには、生半可な覚悟じゃ務まりませんわよ? まずはそのだらしない体を鍛え直すことから始めます」
私は庭の隅にある、巨大な岩(オブジェとして置いたが、誰も動かせなかったやつ)を指差した。
「あれを担いで、庭を十周しなさい。終わった者から、プロテイン入りのスープを恵んであげます」
「は、はいぃぃっ! ありがとうございますぅぅ!」
元兵士たちが、涙を流して岩に群がる。
地獄のトレーニングの始まりだ。
「……公爵家が、どんどん『梁山泊(りょうざんぱく)』のようになっていくな」
クロード様が遠い目をする。
「いいえ、楽園(パラダイス)ですわ」
私は彼の腕に抱きついた。
増え続ける筋肉。
改良される環境。
そして、隣には最愛のパートナー。
「さあ、クロード様。私たちも負けていられませんわ。……『愛のスクワット』千回、いってみましょうか!」
「……千回か。望むところだ」
美しい青空の下、私たちの掛け声と、男たちの悲鳴がハーモニーを奏でる。
結婚式の準備(肉体改造)は、順調に進んでいた。
清々しい朝の光が降り注ぐ、公爵邸の広大な庭園。
色とりどりのバラが咲き誇り、中央には噴水が煌めく、まさに貴族の優雅さを象徴するような場所だ。
その中心に立ち、私は仁王立ちで宣言した。
隣には、少し眠そうな(昨夜遅くまで私の「改造計画」に付き合わされた)クロード公爵がいる。
「本当にやるのか、マーヤ。……ここは王都でも指折りの美観地区なのだが」
「ええ、やりますわ。美観? 筋肉こそが至高の美ですもの」
私はバサリと設計図を広げた。
「まず、あの噴水。水圧が弱すぎますわ。もっと高圧にして、打たせ湯(僧帽筋マッサージ用)に改造します」
「……噴水がマッサージ機に」
「次に、あちらのガゼボ(西洋風あずまや)。お茶を飲むにはいいですが、懸垂(チンニング)をするには梁の強度が足りません。鉄骨で補強し、ついでに吊り輪も設置しましょう」
「……憩いの場が体操競技場に」
「そして、この一面のバラ園! 土が柔らかくて足腰に優しそうですわね。……全て掘り起こして、『マッスル・サーキット・コース』を作ります!」
私の指示が飛ぶたびに、後ろに控えていた公爵家の使用人たちが「ヒィッ!」と悲鳴を上げている。
特に、年配の家令(執事長)であるセバス(実家の執事と同名だが別人)は、顔面蒼白で震えていた。
「お、奥様……! (まだ婚約者だが、すでに実権は握られている) 正気でございますか!? この庭は、亡き大奥様が愛された由緒ある……!」
「あら、セバス。貴方、最近腰痛がひどいのではなくて?」
「えっ? な、なぜそれを……」
「立ち姿を見れば分かりますわ。脊柱起立筋が悲鳴を上げていますし、それを庇うために骨盤が後傾しています。……そんな体で、公爵家を支えられますの?」
「うぐっ……!」
私は彼に近づき、優しく(強引に)肩を掴んだ。
「この庭改造は、貴方たちのためでもあるのです。……健康な肉体にこそ、健全な忠誠心が宿る。違いますか?」
「そ、それは……仰る通りですが……」
「では、決まりですわね。……ガンツ! 資材を運び込みなさい!」
「イエスマッスルゥ!!」
私の合図と共に、門の外から「マッスル建設(店の常連たち)」のトラック部隊が雪崩れ込んできた。
荷台には大量の鉄骨、バーベル、そしてプロテインの袋。
「さあ、作業開始よ! バラは丁寧に移植して、空いたスペースに『ベンチプレス台』を等間隔に配置! プロムナード(散歩道)には、タイヤ引き用の古タイヤを用意して!」
「了解!」
美しい庭園が、瞬く間に工事現場へと変貌していく。
使用人たちは呆然と立ち尽くしていたが、私は彼らにも容赦なく声をかけた。
「何を見ていますの? 貴方たちも参加するのです」
「えっ? わ、私たちも工事を?」
「いいえ。……基礎トレーニングです」
私はメイド長に、ピンク色のダンベル(2キロ)を手渡した。
「まずはそれを持ちながら、スクワット百回。……公爵家に仕える者なら、最低限そのくらいはこなせなくては」
「ひ、ひゃくかい!?」
「嫌なら辞めても構いませんが……これからの公爵家は『体育会系』になりますわよ? ついてこられるかしら?」
私がニヤリと笑うと、メイド長はクロード公爵に助けを求める視線を送った。
しかし、当の主人は諦めたように首を振った。
「……諦めろ。彼女には逆らえん。……それに、私の筋肉(からだ)を見ろ」
クロード様が上着を脱ぎ、盛り上がった上腕を見せつけた。
「この肉体は、彼女の指導の賜物だ。……悪くないぞ、健康になるのは」
「だ、旦那様まで……!?」
主人が肯定してしまっては、従うしかない。
使用人たちは涙目になりながら、各々ダンベルや箒を手に取り、スクワットを始めた。
「イ、イチッ……! ニッ……!」
「声が小さいですわ! 腹から声を出しなさい!」
「イ、イエスマッスルゥゥ!!」
奇妙な掛け声が、優雅な公爵邸に響き渡る。
近隣の貴族たちが「何事か」と窓から覗いているが、気にする必要はない。
すぐに彼らも巻き込んでやるつもりだから。
◇
数日後。
公爵邸の庭は、完全に生まれ変わっていた。
バラのアーチの代わりに『雲梯(うんてい)』が架かり、噴水の周りには『腹筋ベンチ』が並び、木陰には『サンドバッグ』が吊るされている。
もはや庭園ではない。
青空ジムだ。
「……素晴らしい」
完成した庭を見渡し、私は満足げに頷いた。
そして、その横では――。
「ふんっ! ふんっ!」
「お嬢様! 見てください! 私、5キロのダンベルが持てるようになりました!」
メイドたちが生き生きとした顔(とパンプアップした腕)で報告に来る。
最初は死にそうな顔をしていた彼女たちも、筋肉の成長と共に自信をつけ、肌ツヤも良くなっていた。
「あら、素晴らしいわエマ。上腕二頭筋に可愛いコブができているわ」
「ありがとうございます! これも奥様のプロテインのおかげです!」
「セバスはどう?」
「はっ! 腰痛が嘘のように消えました! 今なら旦那様をお姫様抱っこできるかもしれません!」
家令のセバスが、見違えるように背筋を伸ばして敬礼する。
その執事服の下には、コルセットではなく自前の筋肉の鎧ができつつあった。
「ふふふ……計画通りね」
私がほくそ笑んでいると、クロード様がトレーニングウェア(私の特注)姿でやってきた。
汗に濡れた前髪がセクシーだ。
「マーヤ。……屋敷の中も、大変なことになっているぞ」
「あら、何か不備でも?」
「いや。……階段の手すりが『懸垂バー』になり、廊下の床が『衝撃吸収マット』に張り替えられていた。……歩きやすいが、屋敷というより道場だ」
「機能美ですわ。それに、いつでもどこでも鍛えられる環境こそが、最強の騎士団長には必要でしょう?」
「……否定はできん」
彼は苦笑しつつ、手に持っていたタオルで汗を拭った。
「だが、一つ問題がある」
「問題?」
「……夜だ」
「夜?」
彼が少し顔を赤らめ、咳払いをした。
「寝室のベッドだ。……スプリングが強力すぎて、寝返りを打つたびにトランポリンのように跳ねるのだが」
「あら、それは『体幹トレーニング・マットレス』ですわ。寝ている間もバランス感覚を鍛えられる優れものですのよ?」
「……安眠させてくれ」
「ダメです。結婚式まであと一ヶ月。それまでに貴方の筋肉を、さらにワンランク上の『神の領域』まで仕上げなければなりませんから」
私は彼の胸板を指でツンとつついた。
「式当日は、タキシードの上着を脱ぎ捨てて『誓いのポーズ』を決める予定でしょう? 今の仕上がりでは、参列者が失神するレベルには達していませんわ」
「……参列者を失神させる必要があるのか?」
「当然です。私の夫となる男ですもの。伝説を作らなくては」
私の無茶振りに、クロード様は天を仰いだ。
だが、その口元は笑っている。
「……やれやれ。とんだ鬼コーチを妻にしたものだ」
「ふふっ。スパルタ教育は私の得意分野ですわ」
その時、門の方から騒がしい声が聞こえてきた。
「た、頼もぉぉぉ!!」
「……?」
現れたのは、ボロボロの服を着た男たちだった。
見覚えがある。
以前、私の店を襲撃したボルドー率いる元正規軍の兵士たちだ。
ただし、全員が痩せこけて、やつれている。
「ど、どうしたのですか? また懲りずに襲撃?」
私が構えると、彼らは一斉に地面に土下座した。
「ち、違います! 俺たち、クビになったんです!」
「へ?」
「ジュリアン殿下の件で連帯責任を取らされて……職を失って……。食うものもなくて……」
ボルドーが涙ながらに訴える。
「噂を聞きました! ここでは『筋肉』があれば飯が食えると! お願いします! 俺たちを雇ってください! もう二度と逆らいませんから!」
「「「お願いしますマッスルゥ!!」」」
どうやら、飢えと失職の恐怖で、彼らのプライドは完全に崩壊したらしい。
それにしても、かつての敵に頭を下げてくるとは。
「クロード様、どうします?」
「……君の庭だ。君が決めることだ」
クロード様は私に判断を委ねた。
私は彼らを見下ろし、そしてニヤリと笑った。
「いいでしょう。人手はいくらあっても困りませんから」
私は指をパチンと鳴らした。
「ただし! 私の下で働くからには、生半可な覚悟じゃ務まりませんわよ? まずはそのだらしない体を鍛え直すことから始めます」
私は庭の隅にある、巨大な岩(オブジェとして置いたが、誰も動かせなかったやつ)を指差した。
「あれを担いで、庭を十周しなさい。終わった者から、プロテイン入りのスープを恵んであげます」
「は、はいぃぃっ! ありがとうございますぅぅ!」
元兵士たちが、涙を流して岩に群がる。
地獄のトレーニングの始まりだ。
「……公爵家が、どんどん『梁山泊(りょうざんぱく)』のようになっていくな」
クロード様が遠い目をする。
「いいえ、楽園(パラダイス)ですわ」
私は彼の腕に抱きついた。
増え続ける筋肉。
改良される環境。
そして、隣には最愛のパートナー。
「さあ、クロード様。私たちも負けていられませんわ。……『愛のスクワット』千回、いってみましょうか!」
「……千回か。望むところだ」
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