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王都の石畳を、鉄格子のはめられた護送馬車がガタガタと揺れながら進んでいく。
その薄暗い車内には、かつて「真実の愛」を誓い合ったはずの男女が二人、手枷をされた状態で押し込められていた。
「……おい、ミナ。狭いぞ。もう少しあっちへ行け」
ジェラルド(元・王子)が、不機嫌そうに肩で小突く。
「嫌ですぅ! あっちに行ったら壁の隙間から冷たい風が入ってくるじゃないですかぁ!」
ミナ(元・男爵令嬢)も負けじと押し返す。
「お前は脂肪がついているから寒くないだろう!」
「ひどぉい! これは『ぽっちゃり』ですぅ! 殿下こそ、筋肉なくてガリガリのくせに!」
「なんだと!? 僕の筋肉はしなやかな細マッチョだ!」
「ただの栄養失調ですぅ! ……あーあ、最悪。なんで私、こんな貧乏神と一緒に北国に行かなきゃいけないんですかぁ?」
ミナが深いため息をついた。その言葉に、ジェラルドの額に青筋が浮かぶ。
「貧乏神だと? 誰のせいでこうなったと思っている! お前が『アインズより私のほうが可愛い』とか焚きつけるから!」
「殿下が『僕には才能がある』とか勘違いするからじゃないですかぁ! カビ取り剤撒くとか、セコいことするから!」
「うるさい! お前だってノリノリだったじゃないか!」
「脅されたんですぅ! ……ああ、戻りたい。アインズ様のペットになればよかった」
「……お前、本当に節操がないな」
車内には、冷たい隙間風と共に、二人の関係が完全に終わったことを告げる乾いた空気が流れていた。
かつて、夜会で「僕たちの愛は永遠だ」と見つめ合っていた二人。
アインズを「愛のない女」と嘲笑っていた二人。
今、彼らの間に残っているのは、相手への責任転嫁と、自分だけが助かりたいという浅ましいエゴのみ。
「……なあ、ミナ」
「なんですかぁ」
「北に行ったら、雪かきのノルマがあるらしいぞ。……僕の分も手伝ってくれないか?」
「はぁ? 自分でやってくださいよぉ。私、ネイルが割れるの嫌なんで」
「爪なんかもうどうでもいいだろ! 頼むよ、僕、腰痛持ちなんだ」
「知りません。……ねえ、あのお菓子(非常食の乾パン)、私にくださいよ。殿下はどうせ食欲ないでしょ?」
「あるわ! というか、さっき僕の分まで食べただろ!」
「愛があるなら譲ってくださいよぉ!」
「愛なんてあるか! カビて溶けたわ!」
醜い罵り合いは、馬車が北の果てに到着するまで延々と続いたという。
「真実の愛」の末路は、カビ取り剤よりも刺激臭のする、ドロドロの結末であった。
***
一方その頃、王宮の玉座の間。
空気は清浄だが、緊張感においては護送馬車以上だった。
「……どうだ、アインズ嬢。返答を聞かせてくれ」
国王陛下が身を乗り出して私を見つめている。
隣では、ルーカス様が私の横顔を静かに見守っていた。
王位継承権を持つルーカス様が王になり、私がその妃となる。
それは、国一番の出世コースであり、多くの令嬢が喉から手が出るほど欲しがる地位だ。
しかし。
私は扇子を開き、パタパタと顔をあおぎながら、ゆっくりと口を開いた。
「……陛下。そのご提案、魅力的(な投資案件)ではあります」
「ほう?」
「ルーカス様という『超優良物件』とパートナーシップを継続できる点は、私の人生計画においてプラスです。彼以上の人材は市場におりませんので」
「ありがとうございます、社長」
ルーカス様が嬉しそうに微笑む。
「ですが、『王妃』という職務(ポスト)については……精査が必要です」
私は指を一本立てた。
「まず、王妃の業務は激務です。外交、儀式、慈善活動、そして世継ぎの生産……。労働基準法適用外のブラック労働と言わざるを得ません」
「む……否定はできん」
陛下が苦笑する。
「さらに、王宮という組織は、前例踏襲主義で非効率の塊です。私が何か改革を行おうとすれば、老害……失礼、保守的な貴族たちからの反発で、無駄な調整コストがかかります」
「……耳が痛いな」
「つまり、今のままの条件(スペック)では、王妃業は『割に合わない』のです。私の貴重な時間を、非生産的な儀式や根回しに浪費したくありません」
会場がざわつく。
国王陛下の打診に対し、「割に合わない」と切り捨てた令嬢など、前代未聞だからだ。
「な、ならば断るのか?」
陛下が残念そうに眉を下げる。
「いいえ。……条件(契約内容)を変更できるなら、前向きに検討いたします」
私はニヤリと笑った。
「条件?」
「はい。私が王妃になる場合、以下の権限を与えていただきます」
私は懐から、いつの間にか作成していた『業務提携に関する覚書(メモ)』を取り出した。
「一つ。王宮内の『全予算の編成権』および『人事権』を私に委譲すること」
「なっ、予算と人事だと!?」
「無駄な部署は統廃合し、優秀な人材は身分に関わらず登用します。……もちろん、私の商会のスタッフも送り込みますわ」
「そ、それはもはや、国を乗っ取る気では……?」
「『経営再建』と言ってください。今の赤字財政を立て直すには、これくらいの大手術が必要です」
私は続ける。
「一つ。私が王妃になっても、『アインズ商会』の代表権は保持し、副業(ビジネス)を継続すること」
「王妃が商売を!?」
「稼げる王妃、素敵ではありませんか? 国の税収に頼らず、自ら外貨を稼いでくるのですから。国民の負担も減りますわよ」
陛下が目を白黒させている。
「そ、そして……?」
「最後の一つ。……ルーカス様との関係は、『主従』ではなく『対等な共同経営者(パートナー)』とすること」
私は隣のルーカス様を見上げた。
「私は、ただ彼の後ろを歩く飾り物の妻になる気はありません。共に悩み、共に決断し、共に国という巨大な商会を動かす……そういう関係でなければ、契約できませんわ」
私の言葉に、ルーカス様が眼鏡を外し、破顔した。
「……ははっ! 最高だ」
彼は陛下に向かって一礼した。
「陛下。……これがアインズ・ヴォルガです。彼女は国を『支配』したいのではなく、『経営』したいのです」
「経営……」
「ええ。彼女になら任せられます。いえ、彼女以外に、この傾きかけた国をV字回復させられる人間はいません」
ルーカス様は私の方を向き、愛おしげに目を細めた。
「私は彼女の条件を全面的に支持します。……私が王となり、彼女が最高経営責任者(CEO)のような王妃となる。新しい時代の統治スタイルです」
陛下はしばらく沈黙し、そして……大きく笑い出した。
「はっはっは! 痛快だ! 実に痛快だ!」
陛下は玉座の肘掛けを叩いた。
「よかろう! 好きにするがいい! どうせこのままでは、ジェラルドの浪費で国は破綻寸前だったのだ。……アインズよ、この国をそなたの色に染め上げてみせよ!」
「言質(げんち)、取りましたわよ?」
私は扇子で口元を隠して微笑んだ。
「では、契約成立ですわね。……ルーカス次期国王陛下」
「ええ。……よろしくお願いします、アインズ次期王妃殿下」
会場から、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
それは、新しい時代の幕開けを告げる音だった。
誰もが予感していた。この型破りなカップルが、この国を劇的に、そして合理的に変えていくであろうことを。
「……さて」
拍手の中、ルーカス様が私の耳元で囁いた。
「公の契約(王位継承)はまとまりましたが……『私的な契約』の方は、まだ保留のままですよ?」
「私的な契約?」
「プロポーズの返事です。……場所を変えましょう。これ以上、おじ様たちの前で口説くのは無粋ですから」
彼は私の手を取り、ウィンクした。
「アインズ社長。……いえ、アインズ。これから『極秘会議』のお時間です」
「……ふふ。議題は何ですの?」
「『二人の未来における利益配分と、愛の独占権について』です」
私は赤くなる頬を扇子で隠し、彼のエスコートに身を委ねた。
ジェラルドとミナの「真実の愛(笑)」が冷たい馬車の中で崩壊していく一方で、私たちの論理的で計算高い、しかし確かな信頼に裏打ちされた愛は、今まさに最高値を更新しようとしていた。
その薄暗い車内には、かつて「真実の愛」を誓い合ったはずの男女が二人、手枷をされた状態で押し込められていた。
「……おい、ミナ。狭いぞ。もう少しあっちへ行け」
ジェラルド(元・王子)が、不機嫌そうに肩で小突く。
「嫌ですぅ! あっちに行ったら壁の隙間から冷たい風が入ってくるじゃないですかぁ!」
ミナ(元・男爵令嬢)も負けじと押し返す。
「お前は脂肪がついているから寒くないだろう!」
「ひどぉい! これは『ぽっちゃり』ですぅ! 殿下こそ、筋肉なくてガリガリのくせに!」
「なんだと!? 僕の筋肉はしなやかな細マッチョだ!」
「ただの栄養失調ですぅ! ……あーあ、最悪。なんで私、こんな貧乏神と一緒に北国に行かなきゃいけないんですかぁ?」
ミナが深いため息をついた。その言葉に、ジェラルドの額に青筋が浮かぶ。
「貧乏神だと? 誰のせいでこうなったと思っている! お前が『アインズより私のほうが可愛い』とか焚きつけるから!」
「殿下が『僕には才能がある』とか勘違いするからじゃないですかぁ! カビ取り剤撒くとか、セコいことするから!」
「うるさい! お前だってノリノリだったじゃないか!」
「脅されたんですぅ! ……ああ、戻りたい。アインズ様のペットになればよかった」
「……お前、本当に節操がないな」
車内には、冷たい隙間風と共に、二人の関係が完全に終わったことを告げる乾いた空気が流れていた。
かつて、夜会で「僕たちの愛は永遠だ」と見つめ合っていた二人。
アインズを「愛のない女」と嘲笑っていた二人。
今、彼らの間に残っているのは、相手への責任転嫁と、自分だけが助かりたいという浅ましいエゴのみ。
「……なあ、ミナ」
「なんですかぁ」
「北に行ったら、雪かきのノルマがあるらしいぞ。……僕の分も手伝ってくれないか?」
「はぁ? 自分でやってくださいよぉ。私、ネイルが割れるの嫌なんで」
「爪なんかもうどうでもいいだろ! 頼むよ、僕、腰痛持ちなんだ」
「知りません。……ねえ、あのお菓子(非常食の乾パン)、私にくださいよ。殿下はどうせ食欲ないでしょ?」
「あるわ! というか、さっき僕の分まで食べただろ!」
「愛があるなら譲ってくださいよぉ!」
「愛なんてあるか! カビて溶けたわ!」
醜い罵り合いは、馬車が北の果てに到着するまで延々と続いたという。
「真実の愛」の末路は、カビ取り剤よりも刺激臭のする、ドロドロの結末であった。
***
一方その頃、王宮の玉座の間。
空気は清浄だが、緊張感においては護送馬車以上だった。
「……どうだ、アインズ嬢。返答を聞かせてくれ」
国王陛下が身を乗り出して私を見つめている。
隣では、ルーカス様が私の横顔を静かに見守っていた。
王位継承権を持つルーカス様が王になり、私がその妃となる。
それは、国一番の出世コースであり、多くの令嬢が喉から手が出るほど欲しがる地位だ。
しかし。
私は扇子を開き、パタパタと顔をあおぎながら、ゆっくりと口を開いた。
「……陛下。そのご提案、魅力的(な投資案件)ではあります」
「ほう?」
「ルーカス様という『超優良物件』とパートナーシップを継続できる点は、私の人生計画においてプラスです。彼以上の人材は市場におりませんので」
「ありがとうございます、社長」
ルーカス様が嬉しそうに微笑む。
「ですが、『王妃』という職務(ポスト)については……精査が必要です」
私は指を一本立てた。
「まず、王妃の業務は激務です。外交、儀式、慈善活動、そして世継ぎの生産……。労働基準法適用外のブラック労働と言わざるを得ません」
「む……否定はできん」
陛下が苦笑する。
「さらに、王宮という組織は、前例踏襲主義で非効率の塊です。私が何か改革を行おうとすれば、老害……失礼、保守的な貴族たちからの反発で、無駄な調整コストがかかります」
「……耳が痛いな」
「つまり、今のままの条件(スペック)では、王妃業は『割に合わない』のです。私の貴重な時間を、非生産的な儀式や根回しに浪費したくありません」
会場がざわつく。
国王陛下の打診に対し、「割に合わない」と切り捨てた令嬢など、前代未聞だからだ。
「な、ならば断るのか?」
陛下が残念そうに眉を下げる。
「いいえ。……条件(契約内容)を変更できるなら、前向きに検討いたします」
私はニヤリと笑った。
「条件?」
「はい。私が王妃になる場合、以下の権限を与えていただきます」
私は懐から、いつの間にか作成していた『業務提携に関する覚書(メモ)』を取り出した。
「一つ。王宮内の『全予算の編成権』および『人事権』を私に委譲すること」
「なっ、予算と人事だと!?」
「無駄な部署は統廃合し、優秀な人材は身分に関わらず登用します。……もちろん、私の商会のスタッフも送り込みますわ」
「そ、それはもはや、国を乗っ取る気では……?」
「『経営再建』と言ってください。今の赤字財政を立て直すには、これくらいの大手術が必要です」
私は続ける。
「一つ。私が王妃になっても、『アインズ商会』の代表権は保持し、副業(ビジネス)を継続すること」
「王妃が商売を!?」
「稼げる王妃、素敵ではありませんか? 国の税収に頼らず、自ら外貨を稼いでくるのですから。国民の負担も減りますわよ」
陛下が目を白黒させている。
「そ、そして……?」
「最後の一つ。……ルーカス様との関係は、『主従』ではなく『対等な共同経営者(パートナー)』とすること」
私は隣のルーカス様を見上げた。
「私は、ただ彼の後ろを歩く飾り物の妻になる気はありません。共に悩み、共に決断し、共に国という巨大な商会を動かす……そういう関係でなければ、契約できませんわ」
私の言葉に、ルーカス様が眼鏡を外し、破顔した。
「……ははっ! 最高だ」
彼は陛下に向かって一礼した。
「陛下。……これがアインズ・ヴォルガです。彼女は国を『支配』したいのではなく、『経営』したいのです」
「経営……」
「ええ。彼女になら任せられます。いえ、彼女以外に、この傾きかけた国をV字回復させられる人間はいません」
ルーカス様は私の方を向き、愛おしげに目を細めた。
「私は彼女の条件を全面的に支持します。……私が王となり、彼女が最高経営責任者(CEO)のような王妃となる。新しい時代の統治スタイルです」
陛下はしばらく沈黙し、そして……大きく笑い出した。
「はっはっは! 痛快だ! 実に痛快だ!」
陛下は玉座の肘掛けを叩いた。
「よかろう! 好きにするがいい! どうせこのままでは、ジェラルドの浪費で国は破綻寸前だったのだ。……アインズよ、この国をそなたの色に染め上げてみせよ!」
「言質(げんち)、取りましたわよ?」
私は扇子で口元を隠して微笑んだ。
「では、契約成立ですわね。……ルーカス次期国王陛下」
「ええ。……よろしくお願いします、アインズ次期王妃殿下」
会場から、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
それは、新しい時代の幕開けを告げる音だった。
誰もが予感していた。この型破りなカップルが、この国を劇的に、そして合理的に変えていくであろうことを。
「……さて」
拍手の中、ルーカス様が私の耳元で囁いた。
「公の契約(王位継承)はまとまりましたが……『私的な契約』の方は、まだ保留のままですよ?」
「私的な契約?」
「プロポーズの返事です。……場所を変えましょう。これ以上、おじ様たちの前で口説くのは無粋ですから」
彼は私の手を取り、ウィンクした。
「アインズ社長。……いえ、アインズ。これから『極秘会議』のお時間です」
「……ふふ。議題は何ですの?」
「『二人の未来における利益配分と、愛の独占権について』です」
私は赤くなる頬を扇子で隠し、彼のエスコートに身を委ねた。
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