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②前編:【ダントの従魔たち】
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――ラドル・ルグランは、黒髪と褐色肌のシーフである。
目つき、口調、態度、どれをとっても”悪い”と評される彼には、……昨日……まことに不服ながら……彼氏ができた。
都市ノーダの宿、流れに流されるままにとってしまったこの部屋――そのとても広いベッドの上で、ラドルは後ろから抱きすくめられた状態で目を覚ました。
ギシッと身体が固まる。何事かと肩越しに振り返れば、その”恋人”ダントが、なんとも健やかな表情で寝息を立てている。こちらのわきの下に腕を通し、懐に抱え込んでいる形。
……ダントはそういう男ではないはずだ、寝ていて無意識下での”つい”だろう、という頭と。
てめぇ昨日散々「ダチだと思えば一緒のベッドで寝れる」とか言っといてちゃっかり抱き枕代わりにしてんじゃねぇぶっ飛ばすぞ、という頭が拮抗――するまでもなく、瞬時に後者がラドルの思考を占拠する。
ぐ、と腰を前に捻り、胴にかかっている腕を勢いよく弾き下ろす。ビクッ、と大きく揺れたダントの腕の中から抜けるように、そのままずるりと一回転。
「んあっ!?」
「っんの!ボケが!!」
ボケが、の一言で済んだのは、恐らく故意の事ではなかったためか。
まだ半分眠ったような表情のまま、ダントがぽかんと口を開けていた。
「……な、なに……!?」
声が出たのは、数拍遅れてからだった。視線はまだ宙を泳いでいる。ラドルの一喝で腕を跳ね飛ばされたダントは、なんとかむくりと起き上がって、寝ぐせ全開の緑の髪をわしゃわしゃと掻いた。
「ちょっ……え、まって、俺、なんかした……?」
まだ力の入り切らない声で、抗弁する。明らかに身に覚えがない様子で、寝起き特有の焦点の合っていない顔をしていたが、……次第に状況に思い至ったのか、ぱちりと目を見開いた。
「……あ、ああっ!?なに!?違う!違うからな!?わざとじゃねぇからな!?――っく、癖だ!俺そんな、ラドルのことを、その、抱きたいとかそんなんじゃなくて!」
勢いよく言い募ったが、口にした単語に自爆したのか、ぐっと喉を詰まらせる。
「っっ……ちげぇな、そうじゃなくて!いや、そういう意味じゃなくて……わりぃ……っ」
手のひらですっかりと覆われた顔をただ睨みつけているラドルを前にして、……やがて諦めたように、ダントは小さく頭を振った。背後ではかけ布団がずり落ちて、広すぎるベッドの真ん中にくっきりと、ふたり分の沈み跡が残っている。
「……チッ!もういい!」
最後にギッともうひと睨みだけを置き、ラドルは軽い動きでベッドから降りた。コキ、と首を回し、短いため息を一つ。
……特筆して”怒り狂っている”というわけでもなさそうな気配。その様子を窺いつつ、同じようにベッドから降りたダントを――瑪瑙の視線が一瞥。
「……次は技キメるからなクソが」
「わ、わかったわかった!」
――前言撤回、まぁまぁ怒っている。男性冒険者から毎日のように狙われれば、それもそうなるか、とダントがまたも頭をかく。
完全に無意識でやってしまっていて、こちとら抱いてた感触すら覚えてないんですが、と言いかけたが……それを言えばこれまた火に油を注ぎそうで、胸中に留める。
「……そういう癖あっから、勘違いする女も増えんじゃねぇの」
「へ?」
ぼそ、とぼやいたラドルの表情は、呆れ半分と、もう半分は読めなかった。ただ、とてもしかめっ面である。
「……女にやってたんだろそれ。朝起きて抱きつかれてたら勘違いすんだろ」
「え、いや……してねぇ……多分」
なんとも曖昧な言葉選びに、ラドルが小さく舌打ちをする。それを受けてダントも、右手を首の後ろにやって、くしゃりと髪を撫で落とした。
「……いや、っていうか、朝まで女の子といるとかそういうの自体が、まぁ、あんまり……」
視線を泳がせ、言葉を探したあとで、ふと口をつぐむ。
「……わりぃ。気をつける」
やや低くなった声でそう返しながら、ダントは足元に転がったかけ布団を拾い上げた。ばふ、と軽く整えて、ベッドの上へ。
「……てめぇそのナリで女癖悪いとかねぇだろうな」
「んっ!?ない!ないよ!?……あっ、何、俺もしかして言い方間違えた!?」
ラドルがどこを見ているのか、明確にはわからなかったが……、睨まれているわけでもなさそうで、ダントがそろりとその視界に入ろうとする。
「……ワンナイト的なのはねぇよ……?」
「聞いてねぇよ!」
「だよねー!?だよね、悪い!なんでもねぇ!!」
またも鋭い舌打ちが落ちて、ようやくラドルとしっかり目があった。――わかった、とでもいうような、どこか緩んだ”睨み”だった。
――ノーダの冒険者ギルドは、大規模ギルドに分類される。
正面の大扉をくぐれば、依頼掲示板から受付、納品、素材買取までのすべてにアクセスできるギルドホール。
そこへやってきたラドルとダントに、視線が集まる。その理由は明快、ふたりが今、このノーダ支部の”時の人”だからである。
「きっ、来た来た!」
「やだ、ホントに一緒に行動してるじゃない!」
「やっぱり宿も一緒って本当だったのか……!」
……やっぱり宿も一緒って広まってたか……!、と。
ラドルとダントが揃って頭を抱える――わけにもいかず、これ見よがしに腕などを組む。
昨日、追い詰められて咄嗟に口から出た、「俺ら付き合ってる」は……どうやら本日もしっかりと、”継続”である。
「らっ、ラドル~♡今日はどんな依頼に行こうな!」
「あっ、ああ!俺はお前と一緒ならどこでもいいぜ、ダント♡」
最後の”ダント♡”のみ、ひくっとラドルの眉がひきつれたが……、そんな微細な表情変化に気づくものなど周囲にはいない。
彼らから見えているのはただ、……ダントの腕に、両腕を絡ませて身体を寄せる、ラドル。
決して懐かない、野良猫のようなラドルに”懐かれたかった”男冒険者たち。
そして誰かを特別扱いしなかったダントの”特別になりたかった”女冒険者たち。
そういった面々が、次々と膝を撃ち抜かれていく。
「だ、ダントさんの声が……甘いわ……!!」
「勝てねぇ……ッ!見ろあのラドルの笑顔!!」
「俺が向けられたかった……!ラドルに甘えられたかったッ!!」
何言ってんだ、とラドルの顔が渋面になりかけるが、気づいたダントが慌てて掲示板前へと移動する。
様々な依頼が貼られた巨大な板の前、ダントが首をすくめて、ひそりと真横に顔を寄せた。
「ラドル、顔!それは”恋人”の顔じゃねぇってッ」
「っ……わかってらァ……!」
ラドルにしがみつかれたダントの腕が、ギリィ、と締め上げられる。ダントに対しての攻撃の意思、ではなく、無意識に力が入っているだけである。
いてて、とやや口角だけを上げて、ダントが掲示板に目を這わせた。こうして視線が集中するにもかかわらずギルドへ赴いたのは、……だからといって宿でこもっているわけにもいかなかったからだ。
テイマーである自分と、シーフのラドル。適性のある依頼は、――まぁ、がっつり討伐系ではないもの。
「んん~……ラドルの戦闘スタイルって攪乱とか奇襲系?」
「……おう。あと罠系か……体術とか……」
「あ~……朝のアレ、びっくりしたもんなぁ」
――”朝のアレ”とは……と、聞こえてしまった周囲の冒険者が頭を抱える。
ラドルが……朝から……?
体術で……びっくり……?
体術使える奴って身体柔らかいよな……。
いやそれよりも朝、あ、朝から……?
……などという、言葉にならない、周囲の目線での応酬。
それに気づきもしないふたりは、相変わらず腕を組んで掲示板を見上げていた。
「……ん、これ、急ぎじゃねぇか?」
ふと、ラドルが一枚の依頼書に目を止めて、それを引き抜いた。
――《沈黙の坑道、制圧せよ》
【依頼内容】
魔獣の巣と化した坑道内部にて、作業員が複数閉じ込められている。
内部は複雑な迷路状で、騒音や光に過敏な魔獣が待ち構えている可能性あり。
順次区画を制圧しながら、作業員の生存確認・確保・脱出ルートの構築を行う。
【目標】
坑道の制圧、および作業員の保護・救出
【報酬】
金貨一枚
【注意事項】
・騒音・振動・魔術の使用に制限あり
・マップ情報は不完全/分岐多数
「金貨一枚……」
ラドルの手元を覗き込んだダントが、ぽそりと呟く。――金貨一枚、十万G。
だがダントとラドルの目に、欲はない。……依頼の内容に対しての、破格にも近いこの報酬。……”面倒そう”な、依頼だ。
音や光の制限、分岐多数の迷路構造……。ただでさえ暗い坑道の中を、灯りを絞って、音もたてず、要救助者を探す。
「……魔獣が何かってとこだな」
「索敵と捜索ができる従魔、いるぜ」
「んん……」
依頼書を持ち直すフリをして、ラドルがダントの腕から手を外す。もう充分だろ、といった表情のようだ。
「従魔も頭数に入れればさ、ある程度は坑道の構造把握も――」
言いかけたところで、ひときわ近くから息を呑む音が聞こえた。
「ふたりで……坑道……!?」
「魔獣に囲まれても……ふたりで身を寄せ合って……!」
「そん……そんなの距離が縮まっちゃうじゃない!」
周囲から広がる勝手な妄想と、その湿度。
「…………」
「…………」
ダントは軽く首筋を押さえて、笑い声をぐっと堪えた。隣人の顔が、とても険しい。
「ラドル、お前……か、顔……!」
声にならない声で懇願するように目線を送るが、ラドルは既に目を細めてホール全体を睨んでいる。獣のような、殺意のこもった牽制だ。
「……よ、よし、わかった、早く行こうなッ……」
そう言って、ダントは吹き出しそうになるのを堪えつつ、依頼書を手に受付カウンターへ向かった。
ラドルもほんの少しだけ距離を取りつつも、ぴったり背後をついていく。
――そんなふたりの背に、ざわめきと共に相も変わらず、冒険者たちの視線が注がれていた。
ダントが受付カウンターに依頼書を置けば、顔見知りの受付担当の男性職員がぺこ、と軽く頭を下げてみせた。
「ダントさん、おはようございます。……すごい噂になってますよ」
「……まじ?」
カウンターに置かれた依頼書を引き寄せつつ、職員が帳簿も取り出す。ダント越し、背後に立つラドルへと視線を流し、そちらにも目礼……また、ダントへと目を向けた。
「マジもマジですよ。ギルド食堂もその話題で持ち切りです」
「んん……まぁ、付き合ってるのはホントだし……?なぁ?」
「……ああ……」
――非常に不満げな、ラドルの返事。
ガチリ、と依頼書の控えにギルド判が押されるのを見ながら、ダントがへらりと笑った。……ここで「実は……」などといってこの”回避劇”にボロが出ては意味がない。周囲を騙すのならとことん、である。
「まぁ、……冒険者同士の仲がいいのは、ギルドとしては喜ばしいことですが……」
……たり、とダントの頬に汗が伝う。この職員、ノーダの大規模ギルドの受付業務を長く務めるベテランの職員で……いわゆる”敏腕”というやつだ。
視点も勘も、たいへんに鋭い。
「だ、大丈夫、浮かれて依頼失敗するとかはしないようにするからさ……」
「……なら結構ですが……。こちらの依頼、最優先は作業員の救出でお願いします。坑道の制圧は、余力があればで結構です」
す、と控えをダントに差し出しつつ、職員が”目標”の項目を指さした。
「おう。崩落?」
「……かと、思われますが、……なんとも。巻き込まれたのがベテランの鉱山夫たちでしたので、民間人よりかは生存率が高いとは踏んでいるんですが……二日、経過しています」
「生きてる可能性あんなら、急がねぇとな」
ダントが声の調子を締める。にやけ顔は引っ込んで、表情も目線も、受け取った依頼書と帳簿の間に収まった。
「遭難地点とか、どこまで掴めてんだ?」
「大まかな……推定だけです。通報者の作業員も、避難するのに必死で持ち帰った情報が少なくて。坑道の地図も資料としてありますが、最終の更新も十日前です」
カウンターの下から取り出された簡易マップには、坑道の主幹ルートと作業区画が簡略的に記されていた。
事故があったのは、第二層の西端。通称“沈黙の鉱区”と呼ばれる、特に音や光に神経質な小動物や虫類が多く生息するエリアだった。
「うわぁ……めんどくさそ」
マップを受け取りつつ、ダントが小声でぼやく。背後にいたラドルも、それをのぞき込んでいるのが気配でわかる。
振り向かずに、声だけをやや張ってみせた。
「ラドル、迷路得意か?」
「……舐めんな」
ぴしゃりと返された言葉に、職員がふ、と笑った。
「ご無事をお祈りしてます。帰ってきたら、噂話の真偽でも聞かせてください」
「はは……それはほら……プライベートなことだから……」
なんともぎこちなく返しつつ、ダントは依頼書とマップを手に、ラドルへ視線を投げた。
――通常運転のしかめっ面に、表情が崩れそうになるのをぐっとこらえて……わずかに顎で外を示す。行くぞ、の合図だった。
「お前、顔もう少し制御しろよ……疑われるだろ……」
「チッ……、つい……わりぃ」
ノーダの街門を抜けてすぐ、街道わきにある馬車の乗合所。ラドルは、わずかに俯いて腕組みをしていた。
表情管理は……得意な方ではない。”恋人のフリ”に慣れてきたのか、隣にいる男が意外と器用な演技を見せる分、……自分の渋面が余計に際立ってしまう。
現在、馬車を待つ乗合所には人気もなく、ふたりからすれば、ほんのわずかな”息継ぎの場”といった具合。
それでも若干距離が近いのは……本人たちは無意識のようだ。
「……シーフと依頼行くのは初めてだなぁ。斥候とは違うもん?」
ぽそ、とダントが呟いたのは、世間話のような温度感だった。腕組みをしたままに、ラドルがしばし宙を見つめる。
「……斥候は、あれだろ、とにかく情報掴んで持ち帰る奴」
「ああ、そうだけど……シーフは?」
「……シーフは、まぁ、任務完遂を優先させる」
ラドルを見つめた鈍色の瞳が、一拍……そのまま留まった。――その言葉の裏に、かすかな一線を感じる。
まるで、そのためなら、帰ってこないことすら前提としているような、言い方。
……だからと言って、帰って来いよ、などという余計な言葉は、きっとこの男は受け取らない。
と、思ったからこそ。
「……ラドルにうちの従魔一体つけようか」
「なんでだよ!!いらねぇ!出すなよ!?」
「ええ~?お前には懐いてるみたいだし、俺じゃなくても言うこと聞きそうだけどなぁ。抑えてるだけでずっと出てこようとしてるぜコイツら」
「いらねぇ……!!」
自分の影を指さして、ダントが軽く笑う。馬車が、ガタゴトを車輪を鳴らして近づいてきていた。
「……あ、来た来た」
ダントが手をひらりと上げると、馬車の御者がこちらに気づいて手を振り返した。古びた幌の揺れる四輪馬車が、徐々に減速しながら彼らの前で停まる。
「ふたりか?この馬車は隣街行きだよ」
御者の言葉に、ダントが人当たりのいい笑顔で応じた。
「うん、途中にある坑道に用があってさ。通るよな?」
「ああ、なんか事故があったってとこかい。もちろん通るさ、早いとこ乗んな」
冒険者か、とふたりを一瞥しつつ、御者が車体後部の乗り口を指で示した。ダントが二人分の銀貨を渡せば、御者からは「まいど」という小さな返事。
中は質素な造りだが、クッションの入った長椅子が両壁沿いに据えられており、多少の揺れには耐えられそうだった。先に乗り込んだラドルが、馬車の先頭、一番奥側に腰かける。ダントがその隣に腰かければ、露骨に嫌そうな顔が向けられた。
「なんッ……近ぇだろ……!」
「いやこういうとこから慣れとかないと……」
チッ、と鋭い舌打ちが一つ。癖なのかなんなのか、それとも”恋人”を前に暴言を飲み込んだ末の舌打ちなのか……昨日からもう百回以上は聞いている気がする。
「お前さぁ……そんなに嫌がらなくてもいいじゃんかぁ」
「るせぇ……」
ゴトゴトと揺れる馬車、ゆっくりと街門が離れていく中、ダントの足元……影の奥がほんの一瞬、うねった。
視線だけでそれを制したダントが、わざとらしく膝を組み直す。ラドルの腕に、ほんのわずか、布越しの圧がかかるように。
「……うちの従魔とも仲良くしてもらわないとなぁ」
「なんねぇ……!!」
揺れる車輪の音に混じって、影が再び、名残惜しげにしゅるりと沈んだ。
依頼書にあった坑道は、街から馬車で一刻ほどの場所にあった。
遠ざかっていく車輪の音を背に、ふたりが坑道の入り口前まで歩を進める。
――その入り口は、岩肌の切れ目を無理やり広げたような造りで、黒い口を開けたまま静かに佇んでいた。木枠で補強されていた痕があるが、片方は崩れて傾き、手前にはこぼれた岩がいくつか転がっている。
入口脇には赤い布と木札で組まれた簡易の封鎖柵──雑な字で「魔獣注意」「作業中止」とだけ書かれていた。少なすぎる情報量だったが、現地の人間が急いで撤収したのが伝わる。
「……先に言っとくが」
ベルトに取り付けたダガーを確認しながら、ため息まじりにラドルが小さく呟いた。
「うん?」
「……本来こういった坑道系は、シーフじゃなくて斥候のが得意だ。”安全な道”を探すのは、……俺の仕事じゃねぇ。抜け道は作れっけどな」
「……なるほど」
ぎゅ、と肘まであるグローブの紐を閉めながら、ダントも言葉を返す。だが、まぁ、ならば。
「”斥候”には及ばねぇかもしんねぇけど……言ったろ、索敵と捜索できる奴いるって」
「……あ?」
……たち、たち、と――ダントの影から、大型の犬牙種が顔を出した。クィン=シィと同等か、わずかに大きいくらいの犬型魔獣だ。明らかに顔を引きつらせたラドルが、ず、と半歩だけ後ずさる。
「コダってんだ。いい子だぜぇ」
「……オイ、無理だ、こっち寄せん」
なよ、と言い切るよりも前に……コダ、と呼ばれた従魔の視線が、ひた、とラドルを捉える。ばっふばっふと振られる尾と――にぱ、と音がしそうなほどに緩んだ口元……さながら、影から見てましたよ!とでも言い出しそうな、”満面の笑み”。
――ヴォン!
「っせぇ!静かにさせろ!」
互いにひと吠えを交えたラドルとコダを見て、ダントが片手で口元を押さえる。ちょっとあの……うちの従魔”たち”可愛すぎない?と思ったものの、口に出そうものならぶっ飛ばされそうで、無理やり呑み込んだ。
……飛びかかりこそしないものの、コダの前足がバタバタと地を踏みしめる。陽気を……身体全体で体現したような従魔だった。
「……やっぱコダもお前に懐くんだなぁ……シィだけじゃねぇんだもんな」
「知るか!なんっ、クソが、デケェ!」
「うう~ん、嫌がるなぁ……」
ダントが肩をすくめる。コダはといえば、ラドルの拒絶など一切意に介さず、……ゆるゆると腰を低くしてダントの足元に座り込み、舌を出して待機の姿勢だ。
――あくまで依頼で、仕事ですね、わかってます、と言っているような眼差しだった。
「……よしよし、いけるか」
ダントが坑道の入り口を一瞥しつつ、周囲の静寂を確認する。坑道内部からは、ときおり風が吹き抜ける音と、岩が軋むような重い音が混じるだけ。
「コダ、索敵。遭難者を探しながら奥に向かえ。静かにな」
主の言葉が終わるのを確認し、コダはぴょんと軽く跳ねて坑道へと駆け出した。鼻を低くした体勢で静かに、岩肌に紛れながら姿を消す。
「……あいつ、ちょっと陽気だけど、気配消すのだけは上手いんだよな」
「……どうでもいいが、吠えたら即シメる」
「ひどッ」
半分笑いながら、ぽん、とダントは肩にかけた小さなバッグを叩いた。隣ではラドルも同じように装備の最終チェックをしており、やがてそろって坑道入口に目を向ける。
「行くか」
呟いてラドルのほうを向けば、一つ頷く仕草。坑道の中へ吹き込む風が、間延びしたように唸る獣の声に聞こえた。
岩陰に落とされたランタンと、飲みかけの水袋。作業用のグローブと、大ぶりのツルハシ。
取り残された残骸たちを横目に、ふたりは坑道に一歩、足を踏み入れた。ダントが手持ちの灯に火を灯す間、ラドルも地図を広げる。
「……第二層だけ重ね掘りかよ……」
チッ、と小さな舌打ちの音。地図上、沈黙の鉱区までは、主幹ルート沿いにある下層への道を下りる。
第一層と第二層は上下に階層状になるように空間が作られており、第三層はそこからずらして掘削が進められていたようだった。
その第二層の西端で崩落があったとすれば、恐らく今いる第一層の床が抜けたということ。
もしそこから直下へ降りられれば、遭難者のもとへたどり着くのは早そうだが、まぁ、そんな都合よく、通路の下に通路を作っているとも限らない。
「あのデカ犬どこいった。下に向かったか」
「コダ?……うーん、……まだこの階層にいる気配はするな。俺らだけ下に降りても大丈夫だから、行こうぜ」
「…………」
視線を坑道の暗闇に投げつつもパサ、と地図をたたみ、ラドルがそれをダントに手渡した。無言の了承。
ダントの手元、ランタンの火が小さく揺れる。灯りと足音、呼吸も控えて。
主幹ルートからはちらほらと、細い掘削用の道が伸びている。曲がり角も多ければ死角も多いが、先行したコダが反応しなかったということは、この近辺に脅威はないということだ。
「……猫、犬、……次はウサギでも出てくんのか」
下の層へつながる道を探りながら、ぽそ、とラドルがぼやいた。斜め後ろ、灯りを携えていたダントの目が、ラドルの後ろ姿に向く。
「……え、なに、気になる……?」
そわ、とダントが肩をひそめた。それは軽口や皮肉に類するものだったのかもしれないが、確かにラドルから自分へ向けられた”興味”だった。
――ランタンによって、坑道の壁に投影された影に、ダントが手を伸ばす。
立ち止まったダントに気づいたラドルがそれを振り返り、やや警戒して身を引いた。
ぬぅっ……と、影の中から鋭い爪が現れ……猛禽の魔獣がその腕に足をかけて姿を現す。翼を広げれば軽く一メートルはありそうな、立派な体つき。……飛ばないのは、坑道内で狭いからか。
「鳥型魔獣のライカーだよ」
「ッ……」
――鳴きもせず、羽ばたきもせず、身じろぐこともせず……鋭い金色の瞳が、正面からジッとラドルを見た。
ランタンに照らされた茶色の羽毛が、穏やかに光を受けている。
対するラドルも、これには声を上げなかった。……おっ?とダントが、わずかに目を見開く。
「…………」
「…………触ってみる……?」
「……い……いいのかよ……」
――返事は、ライカーが目を閉じたことで成った。
「おお……?……よかったな、ライカー」
ダントが軽く口元を緩める。手綱もなしに静止している猛禽の姿に、ふたりの足音までもが自然と沈黙した。
ゆっくりと、ライカーが乗る腕をダントが下ろせば、ラドルがそろりと指先を伸ばす。ライカーはそのまま、頭をわずかに低くした。
手のひらが、その頭へと触れる。――硬質さと、滑らかさ。まるで金属と絹の中間のような、しっとりとした感触が指先に伝わる。
瑪瑙の眼差しがわずかに伏せられ、ライカーの頸元を一撫でしたところで……ふる、と羽が軽く揺れた。だが飛ばず、逃げず、ただ静かにその場にいる。
「……シィも、コダもそうだけどさ」
ぽつ、とダントが呟く。
「ああやってお前に、怒鳴られたり避けられたりしても、うちの従魔、ぜんっぜんめげてねぇよ」
「…………」
その言葉には、皮肉も冗談も混ざっていなかった。
ラドルの手元に、ライカーの頭が軽く預けられる。伏せた目のまま、その魔獣が小さく声を鳴らした。
「だからまぁ、気が向いたら構ってやってよ」
「……知らねぇし」
吐き捨てるような声音の中に、どこか諦めたような薄さが滲む。ライカーを撫でる手は、引っ込められなかった。
「ま、どうせならこのまま連れてくか」
ダントがランタンを持ち直すと、ライカーの影が伸びて、坑道の奥に柔らかく沈む。
「お前と俺と、ライカーでな、死角も減るし。……ちょっと暗いけどな」
ラドルは返事をせず、けれど拒絶もしないままに、背を向けて再び歩き出した。……ライカーが静かにその背を目で追う。ダントも同じように。
「……なぁ、そのうち慣れそうだな」
……ぴじゅっ。
ダントに返事をしたライカーの声に、一瞥だけ、鋭い睨みが返ってきた。
――【ダントの従魔たち】
目つき、口調、態度、どれをとっても”悪い”と評される彼には、……昨日……まことに不服ながら……彼氏ができた。
都市ノーダの宿、流れに流されるままにとってしまったこの部屋――そのとても広いベッドの上で、ラドルは後ろから抱きすくめられた状態で目を覚ました。
ギシッと身体が固まる。何事かと肩越しに振り返れば、その”恋人”ダントが、なんとも健やかな表情で寝息を立てている。こちらのわきの下に腕を通し、懐に抱え込んでいる形。
……ダントはそういう男ではないはずだ、寝ていて無意識下での”つい”だろう、という頭と。
てめぇ昨日散々「ダチだと思えば一緒のベッドで寝れる」とか言っといてちゃっかり抱き枕代わりにしてんじゃねぇぶっ飛ばすぞ、という頭が拮抗――するまでもなく、瞬時に後者がラドルの思考を占拠する。
ぐ、と腰を前に捻り、胴にかかっている腕を勢いよく弾き下ろす。ビクッ、と大きく揺れたダントの腕の中から抜けるように、そのままずるりと一回転。
「んあっ!?」
「っんの!ボケが!!」
ボケが、の一言で済んだのは、恐らく故意の事ではなかったためか。
まだ半分眠ったような表情のまま、ダントがぽかんと口を開けていた。
「……な、なに……!?」
声が出たのは、数拍遅れてからだった。視線はまだ宙を泳いでいる。ラドルの一喝で腕を跳ね飛ばされたダントは、なんとかむくりと起き上がって、寝ぐせ全開の緑の髪をわしゃわしゃと掻いた。
「ちょっ……え、まって、俺、なんかした……?」
まだ力の入り切らない声で、抗弁する。明らかに身に覚えがない様子で、寝起き特有の焦点の合っていない顔をしていたが、……次第に状況に思い至ったのか、ぱちりと目を見開いた。
「……あ、ああっ!?なに!?違う!違うからな!?わざとじゃねぇからな!?――っく、癖だ!俺そんな、ラドルのことを、その、抱きたいとかそんなんじゃなくて!」
勢いよく言い募ったが、口にした単語に自爆したのか、ぐっと喉を詰まらせる。
「っっ……ちげぇな、そうじゃなくて!いや、そういう意味じゃなくて……わりぃ……っ」
手のひらですっかりと覆われた顔をただ睨みつけているラドルを前にして、……やがて諦めたように、ダントは小さく頭を振った。背後ではかけ布団がずり落ちて、広すぎるベッドの真ん中にくっきりと、ふたり分の沈み跡が残っている。
「……チッ!もういい!」
最後にギッともうひと睨みだけを置き、ラドルは軽い動きでベッドから降りた。コキ、と首を回し、短いため息を一つ。
……特筆して”怒り狂っている”というわけでもなさそうな気配。その様子を窺いつつ、同じようにベッドから降りたダントを――瑪瑙の視線が一瞥。
「……次は技キメるからなクソが」
「わ、わかったわかった!」
――前言撤回、まぁまぁ怒っている。男性冒険者から毎日のように狙われれば、それもそうなるか、とダントがまたも頭をかく。
完全に無意識でやってしまっていて、こちとら抱いてた感触すら覚えてないんですが、と言いかけたが……それを言えばこれまた火に油を注ぎそうで、胸中に留める。
「……そういう癖あっから、勘違いする女も増えんじゃねぇの」
「へ?」
ぼそ、とぼやいたラドルの表情は、呆れ半分と、もう半分は読めなかった。ただ、とてもしかめっ面である。
「……女にやってたんだろそれ。朝起きて抱きつかれてたら勘違いすんだろ」
「え、いや……してねぇ……多分」
なんとも曖昧な言葉選びに、ラドルが小さく舌打ちをする。それを受けてダントも、右手を首の後ろにやって、くしゃりと髪を撫で落とした。
「……いや、っていうか、朝まで女の子といるとかそういうの自体が、まぁ、あんまり……」
視線を泳がせ、言葉を探したあとで、ふと口をつぐむ。
「……わりぃ。気をつける」
やや低くなった声でそう返しながら、ダントは足元に転がったかけ布団を拾い上げた。ばふ、と軽く整えて、ベッドの上へ。
「……てめぇそのナリで女癖悪いとかねぇだろうな」
「んっ!?ない!ないよ!?……あっ、何、俺もしかして言い方間違えた!?」
ラドルがどこを見ているのか、明確にはわからなかったが……、睨まれているわけでもなさそうで、ダントがそろりとその視界に入ろうとする。
「……ワンナイト的なのはねぇよ……?」
「聞いてねぇよ!」
「だよねー!?だよね、悪い!なんでもねぇ!!」
またも鋭い舌打ちが落ちて、ようやくラドルとしっかり目があった。――わかった、とでもいうような、どこか緩んだ”睨み”だった。
――ノーダの冒険者ギルドは、大規模ギルドに分類される。
正面の大扉をくぐれば、依頼掲示板から受付、納品、素材買取までのすべてにアクセスできるギルドホール。
そこへやってきたラドルとダントに、視線が集まる。その理由は明快、ふたりが今、このノーダ支部の”時の人”だからである。
「きっ、来た来た!」
「やだ、ホントに一緒に行動してるじゃない!」
「やっぱり宿も一緒って本当だったのか……!」
……やっぱり宿も一緒って広まってたか……!、と。
ラドルとダントが揃って頭を抱える――わけにもいかず、これ見よがしに腕などを組む。
昨日、追い詰められて咄嗟に口から出た、「俺ら付き合ってる」は……どうやら本日もしっかりと、”継続”である。
「らっ、ラドル~♡今日はどんな依頼に行こうな!」
「あっ、ああ!俺はお前と一緒ならどこでもいいぜ、ダント♡」
最後の”ダント♡”のみ、ひくっとラドルの眉がひきつれたが……、そんな微細な表情変化に気づくものなど周囲にはいない。
彼らから見えているのはただ、……ダントの腕に、両腕を絡ませて身体を寄せる、ラドル。
決して懐かない、野良猫のようなラドルに”懐かれたかった”男冒険者たち。
そして誰かを特別扱いしなかったダントの”特別になりたかった”女冒険者たち。
そういった面々が、次々と膝を撃ち抜かれていく。
「だ、ダントさんの声が……甘いわ……!!」
「勝てねぇ……ッ!見ろあのラドルの笑顔!!」
「俺が向けられたかった……!ラドルに甘えられたかったッ!!」
何言ってんだ、とラドルの顔が渋面になりかけるが、気づいたダントが慌てて掲示板前へと移動する。
様々な依頼が貼られた巨大な板の前、ダントが首をすくめて、ひそりと真横に顔を寄せた。
「ラドル、顔!それは”恋人”の顔じゃねぇってッ」
「っ……わかってらァ……!」
ラドルにしがみつかれたダントの腕が、ギリィ、と締め上げられる。ダントに対しての攻撃の意思、ではなく、無意識に力が入っているだけである。
いてて、とやや口角だけを上げて、ダントが掲示板に目を這わせた。こうして視線が集中するにもかかわらずギルドへ赴いたのは、……だからといって宿でこもっているわけにもいかなかったからだ。
テイマーである自分と、シーフのラドル。適性のある依頼は、――まぁ、がっつり討伐系ではないもの。
「んん~……ラドルの戦闘スタイルって攪乱とか奇襲系?」
「……おう。あと罠系か……体術とか……」
「あ~……朝のアレ、びっくりしたもんなぁ」
――”朝のアレ”とは……と、聞こえてしまった周囲の冒険者が頭を抱える。
ラドルが……朝から……?
体術で……びっくり……?
体術使える奴って身体柔らかいよな……。
いやそれよりも朝、あ、朝から……?
……などという、言葉にならない、周囲の目線での応酬。
それに気づきもしないふたりは、相変わらず腕を組んで掲示板を見上げていた。
「……ん、これ、急ぎじゃねぇか?」
ふと、ラドルが一枚の依頼書に目を止めて、それを引き抜いた。
――《沈黙の坑道、制圧せよ》
【依頼内容】
魔獣の巣と化した坑道内部にて、作業員が複数閉じ込められている。
内部は複雑な迷路状で、騒音や光に過敏な魔獣が待ち構えている可能性あり。
順次区画を制圧しながら、作業員の生存確認・確保・脱出ルートの構築を行う。
【目標】
坑道の制圧、および作業員の保護・救出
【報酬】
金貨一枚
【注意事項】
・騒音・振動・魔術の使用に制限あり
・マップ情報は不完全/分岐多数
「金貨一枚……」
ラドルの手元を覗き込んだダントが、ぽそりと呟く。――金貨一枚、十万G。
だがダントとラドルの目に、欲はない。……依頼の内容に対しての、破格にも近いこの報酬。……”面倒そう”な、依頼だ。
音や光の制限、分岐多数の迷路構造……。ただでさえ暗い坑道の中を、灯りを絞って、音もたてず、要救助者を探す。
「……魔獣が何かってとこだな」
「索敵と捜索ができる従魔、いるぜ」
「んん……」
依頼書を持ち直すフリをして、ラドルがダントの腕から手を外す。もう充分だろ、といった表情のようだ。
「従魔も頭数に入れればさ、ある程度は坑道の構造把握も――」
言いかけたところで、ひときわ近くから息を呑む音が聞こえた。
「ふたりで……坑道……!?」
「魔獣に囲まれても……ふたりで身を寄せ合って……!」
「そん……そんなの距離が縮まっちゃうじゃない!」
周囲から広がる勝手な妄想と、その湿度。
「…………」
「…………」
ダントは軽く首筋を押さえて、笑い声をぐっと堪えた。隣人の顔が、とても険しい。
「ラドル、お前……か、顔……!」
声にならない声で懇願するように目線を送るが、ラドルは既に目を細めてホール全体を睨んでいる。獣のような、殺意のこもった牽制だ。
「……よ、よし、わかった、早く行こうなッ……」
そう言って、ダントは吹き出しそうになるのを堪えつつ、依頼書を手に受付カウンターへ向かった。
ラドルもほんの少しだけ距離を取りつつも、ぴったり背後をついていく。
――そんなふたりの背に、ざわめきと共に相も変わらず、冒険者たちの視線が注がれていた。
ダントが受付カウンターに依頼書を置けば、顔見知りの受付担当の男性職員がぺこ、と軽く頭を下げてみせた。
「ダントさん、おはようございます。……すごい噂になってますよ」
「……まじ?」
カウンターに置かれた依頼書を引き寄せつつ、職員が帳簿も取り出す。ダント越し、背後に立つラドルへと視線を流し、そちらにも目礼……また、ダントへと目を向けた。
「マジもマジですよ。ギルド食堂もその話題で持ち切りです」
「んん……まぁ、付き合ってるのはホントだし……?なぁ?」
「……ああ……」
――非常に不満げな、ラドルの返事。
ガチリ、と依頼書の控えにギルド判が押されるのを見ながら、ダントがへらりと笑った。……ここで「実は……」などといってこの”回避劇”にボロが出ては意味がない。周囲を騙すのならとことん、である。
「まぁ、……冒険者同士の仲がいいのは、ギルドとしては喜ばしいことですが……」
……たり、とダントの頬に汗が伝う。この職員、ノーダの大規模ギルドの受付業務を長く務めるベテランの職員で……いわゆる”敏腕”というやつだ。
視点も勘も、たいへんに鋭い。
「だ、大丈夫、浮かれて依頼失敗するとかはしないようにするからさ……」
「……なら結構ですが……。こちらの依頼、最優先は作業員の救出でお願いします。坑道の制圧は、余力があればで結構です」
す、と控えをダントに差し出しつつ、職員が”目標”の項目を指さした。
「おう。崩落?」
「……かと、思われますが、……なんとも。巻き込まれたのがベテランの鉱山夫たちでしたので、民間人よりかは生存率が高いとは踏んでいるんですが……二日、経過しています」
「生きてる可能性あんなら、急がねぇとな」
ダントが声の調子を締める。にやけ顔は引っ込んで、表情も目線も、受け取った依頼書と帳簿の間に収まった。
「遭難地点とか、どこまで掴めてんだ?」
「大まかな……推定だけです。通報者の作業員も、避難するのに必死で持ち帰った情報が少なくて。坑道の地図も資料としてありますが、最終の更新も十日前です」
カウンターの下から取り出された簡易マップには、坑道の主幹ルートと作業区画が簡略的に記されていた。
事故があったのは、第二層の西端。通称“沈黙の鉱区”と呼ばれる、特に音や光に神経質な小動物や虫類が多く生息するエリアだった。
「うわぁ……めんどくさそ」
マップを受け取りつつ、ダントが小声でぼやく。背後にいたラドルも、それをのぞき込んでいるのが気配でわかる。
振り向かずに、声だけをやや張ってみせた。
「ラドル、迷路得意か?」
「……舐めんな」
ぴしゃりと返された言葉に、職員がふ、と笑った。
「ご無事をお祈りしてます。帰ってきたら、噂話の真偽でも聞かせてください」
「はは……それはほら……プライベートなことだから……」
なんともぎこちなく返しつつ、ダントは依頼書とマップを手に、ラドルへ視線を投げた。
――通常運転のしかめっ面に、表情が崩れそうになるのをぐっとこらえて……わずかに顎で外を示す。行くぞ、の合図だった。
「お前、顔もう少し制御しろよ……疑われるだろ……」
「チッ……、つい……わりぃ」
ノーダの街門を抜けてすぐ、街道わきにある馬車の乗合所。ラドルは、わずかに俯いて腕組みをしていた。
表情管理は……得意な方ではない。”恋人のフリ”に慣れてきたのか、隣にいる男が意外と器用な演技を見せる分、……自分の渋面が余計に際立ってしまう。
現在、馬車を待つ乗合所には人気もなく、ふたりからすれば、ほんのわずかな”息継ぎの場”といった具合。
それでも若干距離が近いのは……本人たちは無意識のようだ。
「……シーフと依頼行くのは初めてだなぁ。斥候とは違うもん?」
ぽそ、とダントが呟いたのは、世間話のような温度感だった。腕組みをしたままに、ラドルがしばし宙を見つめる。
「……斥候は、あれだろ、とにかく情報掴んで持ち帰る奴」
「ああ、そうだけど……シーフは?」
「……シーフは、まぁ、任務完遂を優先させる」
ラドルを見つめた鈍色の瞳が、一拍……そのまま留まった。――その言葉の裏に、かすかな一線を感じる。
まるで、そのためなら、帰ってこないことすら前提としているような、言い方。
……だからと言って、帰って来いよ、などという余計な言葉は、きっとこの男は受け取らない。
と、思ったからこそ。
「……ラドルにうちの従魔一体つけようか」
「なんでだよ!!いらねぇ!出すなよ!?」
「ええ~?お前には懐いてるみたいだし、俺じゃなくても言うこと聞きそうだけどなぁ。抑えてるだけでずっと出てこようとしてるぜコイツら」
「いらねぇ……!!」
自分の影を指さして、ダントが軽く笑う。馬車が、ガタゴトを車輪を鳴らして近づいてきていた。
「……あ、来た来た」
ダントが手をひらりと上げると、馬車の御者がこちらに気づいて手を振り返した。古びた幌の揺れる四輪馬車が、徐々に減速しながら彼らの前で停まる。
「ふたりか?この馬車は隣街行きだよ」
御者の言葉に、ダントが人当たりのいい笑顔で応じた。
「うん、途中にある坑道に用があってさ。通るよな?」
「ああ、なんか事故があったってとこかい。もちろん通るさ、早いとこ乗んな」
冒険者か、とふたりを一瞥しつつ、御者が車体後部の乗り口を指で示した。ダントが二人分の銀貨を渡せば、御者からは「まいど」という小さな返事。
中は質素な造りだが、クッションの入った長椅子が両壁沿いに据えられており、多少の揺れには耐えられそうだった。先に乗り込んだラドルが、馬車の先頭、一番奥側に腰かける。ダントがその隣に腰かければ、露骨に嫌そうな顔が向けられた。
「なんッ……近ぇだろ……!」
「いやこういうとこから慣れとかないと……」
チッ、と鋭い舌打ちが一つ。癖なのかなんなのか、それとも”恋人”を前に暴言を飲み込んだ末の舌打ちなのか……昨日からもう百回以上は聞いている気がする。
「お前さぁ……そんなに嫌がらなくてもいいじゃんかぁ」
「るせぇ……」
ゴトゴトと揺れる馬車、ゆっくりと街門が離れていく中、ダントの足元……影の奥がほんの一瞬、うねった。
視線だけでそれを制したダントが、わざとらしく膝を組み直す。ラドルの腕に、ほんのわずか、布越しの圧がかかるように。
「……うちの従魔とも仲良くしてもらわないとなぁ」
「なんねぇ……!!」
揺れる車輪の音に混じって、影が再び、名残惜しげにしゅるりと沈んだ。
依頼書にあった坑道は、街から馬車で一刻ほどの場所にあった。
遠ざかっていく車輪の音を背に、ふたりが坑道の入り口前まで歩を進める。
――その入り口は、岩肌の切れ目を無理やり広げたような造りで、黒い口を開けたまま静かに佇んでいた。木枠で補強されていた痕があるが、片方は崩れて傾き、手前にはこぼれた岩がいくつか転がっている。
入口脇には赤い布と木札で組まれた簡易の封鎖柵──雑な字で「魔獣注意」「作業中止」とだけ書かれていた。少なすぎる情報量だったが、現地の人間が急いで撤収したのが伝わる。
「……先に言っとくが」
ベルトに取り付けたダガーを確認しながら、ため息まじりにラドルが小さく呟いた。
「うん?」
「……本来こういった坑道系は、シーフじゃなくて斥候のが得意だ。”安全な道”を探すのは、……俺の仕事じゃねぇ。抜け道は作れっけどな」
「……なるほど」
ぎゅ、と肘まであるグローブの紐を閉めながら、ダントも言葉を返す。だが、まぁ、ならば。
「”斥候”には及ばねぇかもしんねぇけど……言ったろ、索敵と捜索できる奴いるって」
「……あ?」
……たち、たち、と――ダントの影から、大型の犬牙種が顔を出した。クィン=シィと同等か、わずかに大きいくらいの犬型魔獣だ。明らかに顔を引きつらせたラドルが、ず、と半歩だけ後ずさる。
「コダってんだ。いい子だぜぇ」
「……オイ、無理だ、こっち寄せん」
なよ、と言い切るよりも前に……コダ、と呼ばれた従魔の視線が、ひた、とラドルを捉える。ばっふばっふと振られる尾と――にぱ、と音がしそうなほどに緩んだ口元……さながら、影から見てましたよ!とでも言い出しそうな、”満面の笑み”。
――ヴォン!
「っせぇ!静かにさせろ!」
互いにひと吠えを交えたラドルとコダを見て、ダントが片手で口元を押さえる。ちょっとあの……うちの従魔”たち”可愛すぎない?と思ったものの、口に出そうものならぶっ飛ばされそうで、無理やり呑み込んだ。
……飛びかかりこそしないものの、コダの前足がバタバタと地を踏みしめる。陽気を……身体全体で体現したような従魔だった。
「……やっぱコダもお前に懐くんだなぁ……シィだけじゃねぇんだもんな」
「知るか!なんっ、クソが、デケェ!」
「うう~ん、嫌がるなぁ……」
ダントが肩をすくめる。コダはといえば、ラドルの拒絶など一切意に介さず、……ゆるゆると腰を低くしてダントの足元に座り込み、舌を出して待機の姿勢だ。
――あくまで依頼で、仕事ですね、わかってます、と言っているような眼差しだった。
「……よしよし、いけるか」
ダントが坑道の入り口を一瞥しつつ、周囲の静寂を確認する。坑道内部からは、ときおり風が吹き抜ける音と、岩が軋むような重い音が混じるだけ。
「コダ、索敵。遭難者を探しながら奥に向かえ。静かにな」
主の言葉が終わるのを確認し、コダはぴょんと軽く跳ねて坑道へと駆け出した。鼻を低くした体勢で静かに、岩肌に紛れながら姿を消す。
「……あいつ、ちょっと陽気だけど、気配消すのだけは上手いんだよな」
「……どうでもいいが、吠えたら即シメる」
「ひどッ」
半分笑いながら、ぽん、とダントは肩にかけた小さなバッグを叩いた。隣ではラドルも同じように装備の最終チェックをしており、やがてそろって坑道入口に目を向ける。
「行くか」
呟いてラドルのほうを向けば、一つ頷く仕草。坑道の中へ吹き込む風が、間延びしたように唸る獣の声に聞こえた。
岩陰に落とされたランタンと、飲みかけの水袋。作業用のグローブと、大ぶりのツルハシ。
取り残された残骸たちを横目に、ふたりは坑道に一歩、足を踏み入れた。ダントが手持ちの灯に火を灯す間、ラドルも地図を広げる。
「……第二層だけ重ね掘りかよ……」
チッ、と小さな舌打ちの音。地図上、沈黙の鉱区までは、主幹ルート沿いにある下層への道を下りる。
第一層と第二層は上下に階層状になるように空間が作られており、第三層はそこからずらして掘削が進められていたようだった。
その第二層の西端で崩落があったとすれば、恐らく今いる第一層の床が抜けたということ。
もしそこから直下へ降りられれば、遭難者のもとへたどり着くのは早そうだが、まぁ、そんな都合よく、通路の下に通路を作っているとも限らない。
「あのデカ犬どこいった。下に向かったか」
「コダ?……うーん、……まだこの階層にいる気配はするな。俺らだけ下に降りても大丈夫だから、行こうぜ」
「…………」
視線を坑道の暗闇に投げつつもパサ、と地図をたたみ、ラドルがそれをダントに手渡した。無言の了承。
ダントの手元、ランタンの火が小さく揺れる。灯りと足音、呼吸も控えて。
主幹ルートからはちらほらと、細い掘削用の道が伸びている。曲がり角も多ければ死角も多いが、先行したコダが反応しなかったということは、この近辺に脅威はないということだ。
「……猫、犬、……次はウサギでも出てくんのか」
下の層へつながる道を探りながら、ぽそ、とラドルがぼやいた。斜め後ろ、灯りを携えていたダントの目が、ラドルの後ろ姿に向く。
「……え、なに、気になる……?」
そわ、とダントが肩をひそめた。それは軽口や皮肉に類するものだったのかもしれないが、確かにラドルから自分へ向けられた”興味”だった。
――ランタンによって、坑道の壁に投影された影に、ダントが手を伸ばす。
立ち止まったダントに気づいたラドルがそれを振り返り、やや警戒して身を引いた。
ぬぅっ……と、影の中から鋭い爪が現れ……猛禽の魔獣がその腕に足をかけて姿を現す。翼を広げれば軽く一メートルはありそうな、立派な体つき。……飛ばないのは、坑道内で狭いからか。
「鳥型魔獣のライカーだよ」
「ッ……」
――鳴きもせず、羽ばたきもせず、身じろぐこともせず……鋭い金色の瞳が、正面からジッとラドルを見た。
ランタンに照らされた茶色の羽毛が、穏やかに光を受けている。
対するラドルも、これには声を上げなかった。……おっ?とダントが、わずかに目を見開く。
「…………」
「…………触ってみる……?」
「……い……いいのかよ……」
――返事は、ライカーが目を閉じたことで成った。
「おお……?……よかったな、ライカー」
ダントが軽く口元を緩める。手綱もなしに静止している猛禽の姿に、ふたりの足音までもが自然と沈黙した。
ゆっくりと、ライカーが乗る腕をダントが下ろせば、ラドルがそろりと指先を伸ばす。ライカーはそのまま、頭をわずかに低くした。
手のひらが、その頭へと触れる。――硬質さと、滑らかさ。まるで金属と絹の中間のような、しっとりとした感触が指先に伝わる。
瑪瑙の眼差しがわずかに伏せられ、ライカーの頸元を一撫でしたところで……ふる、と羽が軽く揺れた。だが飛ばず、逃げず、ただ静かにその場にいる。
「……シィも、コダもそうだけどさ」
ぽつ、とダントが呟く。
「ああやってお前に、怒鳴られたり避けられたりしても、うちの従魔、ぜんっぜんめげてねぇよ」
「…………」
その言葉には、皮肉も冗談も混ざっていなかった。
ラドルの手元に、ライカーの頭が軽く預けられる。伏せた目のまま、その魔獣が小さく声を鳴らした。
「だからまぁ、気が向いたら構ってやってよ」
「……知らねぇし」
吐き捨てるような声音の中に、どこか諦めたような薄さが滲む。ライカーを撫でる手は、引っ込められなかった。
「ま、どうせならこのまま連れてくか」
ダントがランタンを持ち直すと、ライカーの影が伸びて、坑道の奥に柔らかく沈む。
「お前と俺と、ライカーでな、死角も減るし。……ちょっと暗いけどな」
ラドルは返事をせず、けれど拒絶もしないままに、背を向けて再び歩き出した。……ライカーが静かにその背を目で追う。ダントも同じように。
「……なぁ、そのうち慣れそうだな」
……ぴじゅっ。
ダントに返事をしたライカーの声に、一瞥だけ、鋭い睨みが返ってきた。
――【ダントの従魔たち】
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