Chaka

宮成 亜枇

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Chapter4

4

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 どこをどうしてこうなったのか。説明しろ、と言われてもできない。そもそも、スタートがあまりに妙だった。
「んふっ。だから言ったじゃない。『灼かれた』んでしょ?って。何も、ナオちゃんだけじゃないわ。陸ちゃんにも、それは言えるの」
 と、言う真澄の言葉が、二人を物語る。
「へっ? 俺??」
「そうよぉ。だって、陸ちゃんが『一目惚れ』したんでしょ? じゃなかったら、いくら何でもアタシの無茶ぶり受け入れられるわけないじゃないっ♪」
 言いながら、ウインクをするママに「マジか……」と間宮はうんざりとした顔を見せたが、否定する気はないらしい。と、言うより。言われて、納得したと言うべきか。
「あ、アタシはもちろん応援するわよ。こうなって欲しいと思ってふっかけたんだし。でも、いろいろ大変かもねぇ」
「それは、陸仁が芸能人だから?」
「それもあるけど、ナオちゃん、あなた自身も。……ね?」
 そう言われ、思い当たる節があったのか表情を曇らせた綾瀬を、間宮は複雑な表情で見つめる。

『時間が欲しい』
 確かに、そう言われた。

 しかし、直後に触れた唇と、その後も思いの丈を受け入れてくれることから、自惚れではないと確信している。

 直接の言葉は聞いていない。
 間宮自身も醜態は晒したが、言葉ではっきりと、想いは伝えていない。
 すべては、曖昧なまま。

 原因は……、『濱田樹』。
 その存在が、いまだに綾瀬を縛り付ける。

 あの若さで、父から継いだ会社を一大グループにまで押し上げた社長。それには、副社長である笹本航汰と言う人物の功績が大きいと、大輔が見せてくれた誌面にあった。それだけの者が、何故綾瀬と面識があるかというと。以前働いていたバーが、濱田と関わりがあったらしい。
「あの人、常連だったんですよ」
 何度聞いても口を閉ざしていた彼が、ようやく告げたのがこの一言。詳細を知りたい思いはあったが、綾瀬が『これ以上聞くな』という空気を醸し出したため、間宮たちは揃って口を噤んだ。
 しかし。
 このままではいけないと、間宮たちは思っている。

 何故なら。あの日以来、濱田は頻繁に店にやってくるようになった。
 そのたびに、何かと綾瀬に絡んでくる。
 いったい何がしたいのか。間宮には、全く理解できない。
 濱田の行動が理解できないのは、綾瀬も同じ。
 拒絶をするのなら、関わらなければいいこと。なのに、店にやってきては何かと絡み、ピアノを弾かせ、にやにやと笑う。
 苦しかったのは、数回。しかし、さすがに慣れた。
 ほかの客と同様には行かなくても、傍目には全く問題ないように接客はできる。あのときのような醜態は晒さない。
 まだ、心は痛みを訴え、悲鳴をあげるときもあるが。
 そんな日は。
 言わずとも間宮が察し、傷口をふさごうと、あれこれ手を尽くす。
 見た目の華やかさに隠された優しさと、真っ直ぐであるが故の脆さ。
 彼が傷つき苦しむときは、綾瀬から間宮を包み込むことも。

『傷の舐めあい』。 
 そう思われてもしかたがないが。

 これが、彼らの『想い合い』。





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