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Chapter5
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「あの、さ。……ママ達はどうして、あの場所に来ることができたの?」
一番聞きたかったことを、綾瀬は単刀直入に問う。すると。
「ああ。それはね? ……ちょっと、ナオちゃんに謝らないといけないこと、なんだけど……」
視線を逸らし、真澄は応じる。
「ほら。ダーリンってベンチャー企業でしょ? 何やってるかって言うと、主にアプリの開発。ダーリン、海自のころから星を見るのが好きでね? GPS機能を使った星見のアプリとかを元々開発してたんだけど……、それの応用でね、ちょっと」
困ったような笑みを浮かべて説明する真澄の意図がわからない。
大輔の仕事はわかった。しかし……、それが、どうして今回と繋がるのか。
「まだわからない? 簡単に言えば、位置情報検索よ。で、ナオちゃん。仕事の時スマホそのままにしてお店に出たときあったでしょ? その時にね。ちょっと……、アプリをね、入れさせてもらったの。一般的なアプリだとまだ、位置がずれて表示されることがよくあるみたいだけど、ダーリン、制度を上げられるだけ上げたんだって。でも、まだ試験段階だから、試して貰える人がいると嬉しいって言うから……」
そこまで言われて、やっと。綾瀬は真澄の表情の意味を理解する。
そんなアプリが入っていることなど知らなかった。真澄の言葉を引用するならば、位置はすべて、知らないうちに起動していたアプリによって、知れ渡っていたことになる。
「あっ! でもっ、その位置を受信できるように設定したのは陸ちゃんだけよっ。アタシもダーリンも知らないっ。それだけは神に誓って断言するわっ! でも、ナオちゃんに無断でやったことには変わらない。それについては謝るわ。だけど、まさかこんな形で使うことになるとは、アタシも思っていなかったわよ……」
真澄の言葉は、すべて本当のことだろう。
だからこそ、ばつの悪そうな表情を崩さずにいるのだから。
確かに。本来なら怒ってもいい内容だ。 勝手にアプリを入れられた上に、位置情報まで漏らされていたのだから。
しかし、あんなおかしな形で、今回は役に立った。 それ故に、怒り、と言う感情は、今の綾瀬にはわかない。
真澄の話をまとめると、こうだ。
たまたま綾瀬が車に連れ込まれるのを目撃した沢井は、すぐに真澄に連絡した。
その後すぐ、真澄の方から間宮に連絡をしたところ、仕事が巻きで終わり、今から向かうところだった、すぐに合流する、と。
そこから、沢井の車に乗り込み。 間宮が常にスマホのアプリから位置情報を確認し。 地の利のある沢井が「そこにいるならたぶん次、この一方通行の道通るよ」という判断ができたからこそ。
車の前に立ちふさがるという離れ業をやってのけたのだ。
「すげ……っ」
ひととおり話を聞いた綾瀬が、言葉を漏らす。 それもそうだろう。先ほどの話は偶然が重なって成り立ったもの。
もし、どれか一つが欠けていたらと思うと。それだけでゾッとする。
「尚哉……」
その身震いが伝わったのか。
酷く心配した様子を乗せて、間宮が尋ねる。
「一体、あの人と何があったんだよ……っ」
そうして、また。
華奢な身体を抱きしめる。たとえ数秒でも、手放したくない。
その様子がありありと見て取れる。
沢井は、その光景を複雑な心境で見つめていた。
『間宮陸仁』
常に仕事で動き回り、テレビを見ることがほとんどない沢井であっても、その名前を聞いただけですぐに顔を思い浮かべるほどの有名人。その彼が、一般人である綾瀬を抱きしめ。離したくないとわがままを言う。
もちろん、この情報を『売る』ような卑しさは沢井にはない。笹本との関係があるからこそ、余計に。 むしろ応援したいくらいだ。
ただ、思うのだ。
笹本は「そんなことは絶対にない」と言ったが、濱田の綾瀬に対する執着……、と言っていいのかわからないが。
とにかく、接する態度は異常だ。
そして、この目の前の様子。
綾瀬も嫌がるかと思えば、結局はされるがままにしている。
これは、直感。
このまま流れに任せていれば、今日よりも、もっと面倒なことが起きそうな気がする。
「……ねえ。尚哉くん」
その考えから、沢井は綾瀬に尋ねた。
「何で、濱田さんはあそこまで尚哉くんに意地悪するの?」
「そんなの知るかよ」
「じゃあさ。尚哉くんって、ひょっとしてさ。濱田さんのこと、好きだった?」
この質問に。綾瀬は言葉こそ発しないが表情を変える。 沢井はすぐに、それを肯定と受け取った。
「ね? 尚哉くん。それ、教えてくれない? 嫌かもしれないけどさ。こんな事が起きちゃった後だもん。ちゃんと聞いておかないと、また、面倒なことになるかもしれないよ?尚哉くんだって嫌でしょ?また、ママや、恋人さんに迷惑かけるの。
探してる間ね、スマホずっと見つめて、真っ青な顔して。今すぐ倒れちゃうんじゃないかってくらいだったんだよ。あの、『間宮陸仁』が。そこまで心配かけてたの、尚哉くん、知らないでしょ?」
ここぞ、とばかりに。 諭すように語りかける沢井の表情は。間宮ほどではないが心配してくれてるのだと伝わる。
そこまで言われて。……ようやく。
「大したことじゃないんだよ。ホントに……」
ポツポツと、綾瀬は語り始めた。
一番聞きたかったことを、綾瀬は単刀直入に問う。すると。
「ああ。それはね? ……ちょっと、ナオちゃんに謝らないといけないこと、なんだけど……」
視線を逸らし、真澄は応じる。
「ほら。ダーリンってベンチャー企業でしょ? 何やってるかって言うと、主にアプリの開発。ダーリン、海自のころから星を見るのが好きでね? GPS機能を使った星見のアプリとかを元々開発してたんだけど……、それの応用でね、ちょっと」
困ったような笑みを浮かべて説明する真澄の意図がわからない。
大輔の仕事はわかった。しかし……、それが、どうして今回と繋がるのか。
「まだわからない? 簡単に言えば、位置情報検索よ。で、ナオちゃん。仕事の時スマホそのままにしてお店に出たときあったでしょ? その時にね。ちょっと……、アプリをね、入れさせてもらったの。一般的なアプリだとまだ、位置がずれて表示されることがよくあるみたいだけど、ダーリン、制度を上げられるだけ上げたんだって。でも、まだ試験段階だから、試して貰える人がいると嬉しいって言うから……」
そこまで言われて、やっと。綾瀬は真澄の表情の意味を理解する。
そんなアプリが入っていることなど知らなかった。真澄の言葉を引用するならば、位置はすべて、知らないうちに起動していたアプリによって、知れ渡っていたことになる。
「あっ! でもっ、その位置を受信できるように設定したのは陸ちゃんだけよっ。アタシもダーリンも知らないっ。それだけは神に誓って断言するわっ! でも、ナオちゃんに無断でやったことには変わらない。それについては謝るわ。だけど、まさかこんな形で使うことになるとは、アタシも思っていなかったわよ……」
真澄の言葉は、すべて本当のことだろう。
だからこそ、ばつの悪そうな表情を崩さずにいるのだから。
確かに。本来なら怒ってもいい内容だ。 勝手にアプリを入れられた上に、位置情報まで漏らされていたのだから。
しかし、あんなおかしな形で、今回は役に立った。 それ故に、怒り、と言う感情は、今の綾瀬にはわかない。
真澄の話をまとめると、こうだ。
たまたま綾瀬が車に連れ込まれるのを目撃した沢井は、すぐに真澄に連絡した。
その後すぐ、真澄の方から間宮に連絡をしたところ、仕事が巻きで終わり、今から向かうところだった、すぐに合流する、と。
そこから、沢井の車に乗り込み。 間宮が常にスマホのアプリから位置情報を確認し。 地の利のある沢井が「そこにいるならたぶん次、この一方通行の道通るよ」という判断ができたからこそ。
車の前に立ちふさがるという離れ業をやってのけたのだ。
「すげ……っ」
ひととおり話を聞いた綾瀬が、言葉を漏らす。 それもそうだろう。先ほどの話は偶然が重なって成り立ったもの。
もし、どれか一つが欠けていたらと思うと。それだけでゾッとする。
「尚哉……」
その身震いが伝わったのか。
酷く心配した様子を乗せて、間宮が尋ねる。
「一体、あの人と何があったんだよ……っ」
そうして、また。
華奢な身体を抱きしめる。たとえ数秒でも、手放したくない。
その様子がありありと見て取れる。
沢井は、その光景を複雑な心境で見つめていた。
『間宮陸仁』
常に仕事で動き回り、テレビを見ることがほとんどない沢井であっても、その名前を聞いただけですぐに顔を思い浮かべるほどの有名人。その彼が、一般人である綾瀬を抱きしめ。離したくないとわがままを言う。
もちろん、この情報を『売る』ような卑しさは沢井にはない。笹本との関係があるからこそ、余計に。 むしろ応援したいくらいだ。
ただ、思うのだ。
笹本は「そんなことは絶対にない」と言ったが、濱田の綾瀬に対する執着……、と言っていいのかわからないが。
とにかく、接する態度は異常だ。
そして、この目の前の様子。
綾瀬も嫌がるかと思えば、結局はされるがままにしている。
これは、直感。
このまま流れに任せていれば、今日よりも、もっと面倒なことが起きそうな気がする。
「……ねえ。尚哉くん」
その考えから、沢井は綾瀬に尋ねた。
「何で、濱田さんはあそこまで尚哉くんに意地悪するの?」
「そんなの知るかよ」
「じゃあさ。尚哉くんって、ひょっとしてさ。濱田さんのこと、好きだった?」
この質問に。綾瀬は言葉こそ発しないが表情を変える。 沢井はすぐに、それを肯定と受け取った。
「ね? 尚哉くん。それ、教えてくれない? 嫌かもしれないけどさ。こんな事が起きちゃった後だもん。ちゃんと聞いておかないと、また、面倒なことになるかもしれないよ?尚哉くんだって嫌でしょ?また、ママや、恋人さんに迷惑かけるの。
探してる間ね、スマホずっと見つめて、真っ青な顔して。今すぐ倒れちゃうんじゃないかってくらいだったんだよ。あの、『間宮陸仁』が。そこまで心配かけてたの、尚哉くん、知らないでしょ?」
ここぞ、とばかりに。 諭すように語りかける沢井の表情は。間宮ほどではないが心配してくれてるのだと伝わる。
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「大したことじゃないんだよ。ホントに……」
ポツポツと、綾瀬は語り始めた。
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