女神の箱庭は私が救う

神月いろは

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ヒューイさんにヴォルフに乗せてもらいさらに丘を下っていく。
ソードリーフの草原を抜けしばらくすると平地に馬車と騎士らしき人たちが見えてきた。騎士らしき人は10人ほどいてあとメイドさんもいる!リアルメイドだぁ!!あちらもこちらに気づいたようで歓声があがる。

「おぉ~!!王国は女神の乙女を得たぞぉ!!」

「これで王国は安泰だ~!」

何か熱烈歓迎っぽい。熱狂ぶりに少しひく・・・

皆さんの前に着くと騎士さんは整列し、一番年長らしき騎士さんが一歩前に出て、右手を左胸にあて礼をしてくれる。

「お初にお目にかかります。私はアルディア王国第二騎士団副団長クレイブ・ブローフと申します。こうして女神の乙女様をお迎えでき光栄でございます。王城までの道中我ら第二騎士団で護衛させていただきます」

「高い所から失礼します。私は川原多恵と申します。“川原”が家名で“多恵”が名です。まだ来たところで分からない事だらけですので、色々教えて下さい。よろしくお願いします」

とお辞儀をした。顔を上げると騎士さん達の羨望の眼差しがイタい。

『私大した力ないよ・・・期待しないで・・・』

ちょっと泣きそうになる
戸惑った私に気づいたヒューイさんが

「すぐ出立の準備を。日が暮れる前に王都に着きたい」

ヒューイさんの言葉を聞いた騎士さんは一斉に動きだす。ヒューイさんは靴を履いていない私を馬車に乗せメイドさんに私の身の回りを任せると、先ほどのクレイブさんと話を始めた。
みんな帰り支度で忙しそうだ。
ふかふかの座席に座って一息つくと、どっと疲れが来た。ぼーっと放心状態。
そこへメイドの女性が飲み物を持ってきてくれた。

「紅茶を入れましたのでいかがですか⁈」 

「ありがとうございます。いただきます」

温かい紅茶で一息…めっちゃほっこり。

メイドさんが冷えるからと外套と膝掛けをかけてくれた。更にほっこりしてきた。
落ち着いて来たせいが色々疑問が出てきた。私は転生したの?それとも転移したの?


落ち着いて色々整理していこう。
まず私は多分”川原多恵”ではない。
鏡が無いから姿を確認出来ないけど違う。
”川原多恵”は所謂中年体型だ。
最近服のサイズは3Lにアップし夫にはゆるキャラ体型といわれている。

フェイスラインから首元を触ってみる。
…二重顎が無い。
二の腕…多恵にあった立派な振袖も無い。
腹部は…三段腹も無い。
脚は…太腿に隙間がある。
多恵の髪はショートボフで白髪混じりだけど、今はサラサラ黒髪ロング。
完全別人だ…

ナイスバディ(古い⁈)は嬉しいけど…って事はやっぱり転生(死んでる)って事だよね…

朝出勤する時玄関で倒れたんだ。
あの日は皆んな寝坊してバタバタで、会話なんてする間も無かった。こんな事ならゆっくり話せば良かった…
最後会話は「遅れる!早よいけ!」だった。

何が泣けて来た。判子の場所さえ知らない夫。今年高校受験の娘。
ゴメンね…急に居なくなって

「乙女様❗️」

急に私が泣き出し吃驚したメイドさんが馬車から飛び出して行った。
馬車の中で一人になり更に涙が溢れてくる。

貧乏でもいいから夫と娘の所に帰りたい。涙腺崩壊した私。

「多恵様」優しい声が耳元でする。
そして暖かい何かに包まれる。
ほのかに香るシトラス系の爽やかな香り。
見上げるとヒューイさんと目が合う。

「貴女が落ち着くまで抱き締める事をお許しください」

ヒューイさんが優しく背中をさすってくれる。

『大丈夫です。』って言いたいけど、言葉が出てこない。ヒューイさんごめん。少しの間貴方の腕の中間借りします。

この後ひとしきり泣いて疲れて眠ってしまった様です。



ふぁぁ…
まだ眠い…半開きの目を擦りながらリビングに下りていく。 
週末は大抵深夜まで本を読むから朝は遅め。リビングにはTVで撮りためた映画を観ている夫とタブレットで好きなアイドルのMVを観ている娘。

「朝ごはん!」
『オカン待たずに自分で用意しろ~』
「パパ!タバコ無いんじゃーない⁈コンビニ買いに行ったら⁉︎ で、ついでにおにぎり買って来て♪」
『でた~すぐお父さんつかう』
「具は何がいい?1個か?お母さんは菓子パンか?」

娘に甘く妻に気遣い出来る夫。
思春期の割に反抗期無く、パパ大好きな娘。

あ~ やっぱり”あっち”が夢で、”こっち”が本当やん!よかった…

「…パパ…お母さんのパンはもう要らないでしょ…」

「…ぶっ仏壇に供るだよ。お母さんパン大好きだったから…」

えっ!イヤイヤ!私ここに居るし!
さっき喋ったじゃない!
おーい!朝から放置プレーやめて!

段々2人の表情がなくなる。

『嘘!こっちは”本当”だよね!』思わず叫ぶ。
2人は無言で画面を観ている。
私の声は届かない…

なんで!
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