近未来判事「タクヤ」

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事件簿006 『江戸の夢』その16

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健作の話を聞いた耕作は当然ながら反対した。

「このお茶は大きな可能性を持っている。まだこれからじゃないか。お前の気持ちがわからないわけじゃないが、人を笑顔に出来るのは料理だけではないぞ。」

「どんなに旨いお茶でも、たかがお茶じゃないか。」

「ばかもん!たかがとはなんだ!とにかく許さん!宗家長男としてあのお茶をちゃんと仕上げるんだ!」

「いやだ!俺は料理人になる!」

父が許すことは無いと感じた健作は、その夜黙って家を出ると、客として通っていた銀座の料亭に向かった。
下働きからでいいと頼み込み、何とか雇ってもらった。
それから何度も宗家茶舗の関係者が健作を連れ戻しに来たが、一度も家に戻ることはなかった。

「病気の父さんに頼まれたら店に戻ることを断り切れないかもしれないなぁ・・・。」

耕作が入院する病院に向かいながら、まだ健作は迷っていた。
元々父もお茶も嫌いなわけではない、というか大好きだ。
会えば気持ちが揺らぐとわかっていたから、もう会わないと決めていたのだ。

健作は、病院に行く前に、耕作がお茶の研究を続けていた倉庫に向かった。

「このお茶がなんだってんだ。お茶で何ができる。たかが嗜好品じゃないか。・・・そうだ。このお茶が無くなれば、父さんも諦めてくれるかも。」
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