近未来判事「タクヤ」

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事件簿007 『名人長二』その20

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「宮崎はもう梅雨かしら?」

極上の牛フィレ肉を、極上のワインで喉に流し込んでから、金在定子が貴陽に尋ねた。

「そうですね。この時季は古傷が痛む、いやな季節です。」

分厚いステーキを慣れないナイフで切りながら貴陽が答えた。

「怪我をなさったの?」

「はい。いや、記憶は無いんです。赤ん坊の頃らしいので。」

傷を見せようとする貴陽。

江夏は慌てた。

「つ、つよし様!お茶はいかがですか!?」

「つよし?」

「あ、いや、失礼しました、手崎様。どうも歳を取ると人の名前さえ覚えきれなくなります。コーヒーがよろしいですか?」

「少し疲れました。今日はもう休みましょう。」

定子の一言で晩餐は終わった。
突然の空気の変化に貴陽は戸惑ったが、とりあえず部屋に戻ることにした。

定子の寝室に呼ばれた江夏は背中に冷たい汗が流れるのを感じていた。

「江夏!あいつは剛だね!?」

「な、なんのことですか?あの方はただの家具大工の手崎様ですよ。」

「ふんっ!誤魔化しても無駄だよ!40年前にあんたが隠した赤ん坊。どれだけ探してもみつけられなかった。やっぱりあんたの実家に隠してたんだねぇ。どうするつもりだぃ?財産を狙ってるんだろ!?あんな奴にビタ一文渡すもんか!金在家の財産は全部あたしと息子の物よっ!」

還暦を過ぎてもなお、定子は人殺しさえ厭わない強烈な毒を持っていた。
しかも膨大な資産を持ったことで、敵を見分ける勘の鋭さは、より磨かれている。

「あの方は何もご存じないのです。今はただの家具職人、それだけです!」
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