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事件簿007 『名人長二』その29
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弁護士がゆっくりと貴陽に問いかけた。
「さて、手崎貴陽さん。いや、金在剛さん。改めて伺います。あなたは本当に金在定子を殺しましたか?」
しばらくの間、俯いていた貴陽は顔を上げるとはっきりと答えた。
「すみません。嘘を言っていました。私は彼女に殺されかけた。そして彼女は過って自分を刺しました。」
ボクも今度ばかりはぱっちりと目を開けていた。
開けてはいたけれど、この展開はボクの理解の範囲を越えていた。
「な、なぜこれまで嘘を?」
「私は捨て子でした。おやじと母さんは、誰の子かもわからない私を最高の愛情で育ててくれた。本当に感謝しています。私の両親は、手崎のおやじと母さんだけです。」
傍聴席からすすり泣きが聞こえる。
おそらく、養い親の手崎夫妻に違いない。
「それでも、親がわかった時に、自分が初めて人間になれた、そんな気がしたんです。たとえ血が繋がっていなくても。親が自分を殺そうとしたなんて考えたく無かった。でもその女が本当は実の父親も殺そうとしたなんて・・・。許せない!」
静まり返った傍聴席から突然一人の男が立ち上がり法廷から外に飛び出した。
「正広様!!」執事の江夏が男のあとを追って飛び出していった。
「さて、手崎貴陽さん。いや、金在剛さん。改めて伺います。あなたは本当に金在定子を殺しましたか?」
しばらくの間、俯いていた貴陽は顔を上げるとはっきりと答えた。
「すみません。嘘を言っていました。私は彼女に殺されかけた。そして彼女は過って自分を刺しました。」
ボクも今度ばかりはぱっちりと目を開けていた。
開けてはいたけれど、この展開はボクの理解の範囲を越えていた。
「な、なぜこれまで嘘を?」
「私は捨て子でした。おやじと母さんは、誰の子かもわからない私を最高の愛情で育ててくれた。本当に感謝しています。私の両親は、手崎のおやじと母さんだけです。」
傍聴席からすすり泣きが聞こえる。
おそらく、養い親の手崎夫妻に違いない。
「それでも、親がわかった時に、自分が初めて人間になれた、そんな気がしたんです。たとえ血が繋がっていなくても。親が自分を殺そうとしたなんて考えたく無かった。でもその女が本当は実の父親も殺そうとしたなんて・・・。許せない!」
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「正広様!!」執事の江夏が男のあとを追って飛び出していった。
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