プロジェクト・グノーシス

坂口堅固

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終わりなき日常を生きれるのか?

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 私の部屋には鏡がある。
 私は鏡を嫌う。
 それはなぜか?そうそれは私だからだ。

 『世界』この胡散臭いシロモノは『私』ではないのかもしれない。

 それは……事実か?あり得ない!

 鏡をふと見る。

 そしてそこには私の間抜け面が映っているだろう。
 これは因果律である。
 私は鏡を見るたびに私が映し出され私は私としての人生を歩めと強要されているのだ、と痛感する。
 しかし、この自明ともいえる因果関係は破れた。
 私ではない、『ナニか』が映っていた。

 『それEs』はこう言った。
「我は……なり」
 いまいち聞き取れない。

 いや、聞こえておるのだが意味が理解できない。
 私の言語を処理する脳機能が、私の意味を理解する精神が『それEs』のいう言葉を拒否している。

 失われた少女性を象徴するがごとく美しい少女の姿をした彼女Esは私にその壊れたCDの裏面のような毒々しく妖しく煌めく瞳を向けると、顔のパーツがバラバラと崩れのっぺらぼうになり、そしてカラダが歪みどこかへ消えた。

 そして私は鏡から消えた。
 そう、私は鏡に映らなくなってしまったのだ。

「お前は……そう、おかしなヤツだ」
 声が聞こえる。感覚としては普通の声しかし。それはあり得ない私のいる場所は……人の声などしない場所。

「俺はお前を守りたい!」
 声がそう『言う』と

 垂直に交差している部屋の角がズレる。
 しかし、部屋そのものに変化はない。
 ただ、部屋が曲がりくねるだけなのだ。

 私は不安になりテレビをつけると。CMがやっていた。
 役者が訳もわからず商品を踊らせていた。
 テレビの向こう側で人々はカラダを震わせ熱を帯びていた。
 熱は波動になり人々は駆り立てられた。
 人々は『霊』など知らぬと偽りの『黄金』をどこからともなく川のように泳いだ。
 ……………………

 そう、これは私の見たヴィジョン。

 私は全てを知っている。
 鏡は自己コントロール。崩れた少女はもう一人の私であり私の本音。部屋の角のズレは空間の意味。それがズレるのは空間の自明性の破れ。テレビ、CMは消費社会。そしてそれに駆り立てられ、貨幣という信用という神話に酩酊する人々。私のこの寓話全て知っている。

 そうならば、世界の秘密は『それEs』の放った「我は……なり」の真実。それは世界の真実の『知識グノーシス』あるいは、単なる剰余。
「だろ?」

 私はヴィジョンを見せた相手に問いかけた。
 返事はない。
 かの者はそうそうと、おいそれと、返事をしない。

 私は街に出かけた。
 この街は空虚な中心を持っている。
 この街は空虚が全てを仕切っている。
 この街は空虚こそが真実であると雄弁に語っている。

 看板に溢れるこの街に歴史はない。

 それもそうだ、この街は五年前に出来たばかり。

 全てが偽物のこの街は『経済技術特区』と呼ばれる実験都市。そうMMT現代貨幣理論の試し場としての都市
 そして、それは五年前までの話し。

 一人の預言者がこの街を解体した。お陰で地価暴落、失業率はうなぎ登りで、全ては無駄になった。

 街をブラブラと遊歩する。

 私はずいぶんと強い。チンピラには襲われまい。

「共に!真実の社会を!作りませんか!」
 甲高い女の声がする。
 その女は私を見つけると。
 駆け寄り。
 XXXX!
 私を呼んだ。

 私は私だ
 世界を変えるなど無意味。そう考え私は女を無視する。

「世界の混乱の全ては」「偽物の黄金です」「空間を支配せんとする欲望が」「自我を強く持ちすぎなのです現代人は」

 女は矢継ぎ早に持論を捲し立てる。

 最近ではこの女こそが真実ではないのかと思ってもいるが私に真実など……。

 はあ、願うならばもう少し日常に潤いを……

 天を仰いでも何も起きなかった。
  
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