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まどかさんと昼飯だと?
まどかさんの会社には11時の約束だったので、11時5分前にはビルの受付に到着していた。
「高坂さん」
受付しようとしたら、後ろから聞きなれたまどかさんの声がした。
「お待たせするのも悪いので、お待ちしていたんです」
はにかむような笑顔で迎えてくれたまどかさんは、最高にかわいかった。加賀よ、見習え。こういうのだよ。加賀さんにされても多分なんとも思わんけど。
ブースに案内されて、一通り終えると昼休憩に近かった。
「あの、俺飯食って帰りますけど、よかったらご一緒しませんか?」
晩飯は断られたけど、ランチくらいなら大丈夫だろう。
そう思ったのは正しく、まどかさんは少し悩んでから
「じゃあ、一度これ置いてきますね。10分ほどで戻りますから」
と言って、席を立った。
よっしゃ。俺を一人で来させてくれてありがとう、佐藤さん!
今度佐藤さんの好きな焼肉を御馳走します。
まどかさんの会社の近くには、おしゃれな店が多かった。
イタリアンだかフレンチだか、とにかく横文字だ。元カノがこういう系が好きだったせいで、俺も自然と覚えたけどね。
女の子ってこういうの好きだしな。
無難なイタリアンに入ろうと思っていたら、「男の人だとがっつり系がいいですよね?」と言って、案内してくれたのが、おしゃれとは程遠い昔ながらの食堂だった。
「イタリアンとかじゃなくていいんですか?」
店に入ろうとするまどかさんに尋ねると、まどかさんはしまったという顔をして謝った。
「すみません。イタリアンとかの方がよかったですか?」
「いえ、俺はなんでもいいんですし、むしろこっちの方が好きというか」
まどかさんが連れてきてくれた店ですからね。どんな所でも好きですよ。
「よかった。ここは定職も丼も美味しくて安いんです」
輝くような笑顔で言うと、まどかさんは引き戸を開けて「二人お願いします」と言って中に入って行った。
手慣れている……常連なんだろうか。
まどかさんの言う通り、その店はとても美味しくて安かった。
サバの味噌煮定食を頼んだんだけど、半身のサバに味噌汁、小鉢が2つついてご飯はおかわり自由で600円。
経営大丈夫か。
「本当に美味しいです。俺、また来ますよここ」
「ぜひ」
まどかさんはコロッケ定食だ。手作りだろうか。手のひらほどもある大きなコロッケが二枚。
まどかさんはそれをぺろりと平らげた。
「――大食いなんです」
恥ずかしそうに笑う姿も可愛い。何なら俺のサバも食いますか。
「こういう店はよく来るんですか?」
「ええ。お恥ずかしい事に一人暮らしだし、近くに友達もいないから一人で食べに行けるところを探していたら、こういう所ばかりになってしまって」
なるほど。つまり独身ですね。彼氏も――多分いないよな。
「地元はこの辺じゃないんですか?」
「ええ。隣の県なんですが、大学もそっちで。就職でこっち出てきたから」
なるほど。焦るな、俺。ゆっくり聞き出すんだ。
「こっちにはどのくらい?」
「大学卒業してからだから3年かな?」
俺の1つ下ですか。丁度いい年齢ですね。俺、年上だから任せてください。
向かい合って座って、食事をしながら主に仕事の事なんかを話している。なんだろう、もうこれ付き合ってるようなもんじゃないか?――いや待て俺。暴走するな。
「そういえばクリスマスですねぇ」
店に飾られていた、古臭いクリスマスツリーを見て、まどかさんが呟いた。
「柏木さんはクリスマスはどうされるんですか?」
今年のクリスマスは土日だ。予定がないって言ってくれ。俺とデートしましょう。
「クリスマスは――多分バタバタしてるので、ゆっくりクリスマスムードを味わうのは難しいかな」
なんだ、それは。どういう意味だ?彼氏か?彼氏と過ごすのか?――いや待て。バタバタしてるって言ってたから用事?
どっちだ。
「高坂さんは彼女さんとデートとか?」
なんだって。まさかまどかさんの方からこんなナイスアシストが来るとは。
「彼女がいたらよかったんですがね。残念ながら」
内心はとてもドキドキしていたけど、なるべくいつも通り答える。だけどやっぱドキドキするもんだ。
俺は無意識に目線を逸らしつつ、右手で左の耳たぶを触った。
クソ姉貴の推しの暗黒騎士が困ったときによくやる仕草で、あのアホに散々やらされた結果、癖になっていたんだ。
「え――」
小さく声を上げて、まどかさんの動きが止まった。
「ど、どうしました?俺何か失礼をしましたか?」
慌てて尋ねると、まどかさんは立ち上がって「食べ終わったし、もう出ましょうか」と言って上着を羽織り出した。
なんだ?俺の返事の何が気に障ったんだ。
パニックになりながら、俺も急いでコートとカバンを持って、割り勘でいいと言い張るまどかさんを説き伏せて御馳走させてもらった。
「あの、御馳走様でした。――ではまた何かございましたら……」
昼休みはまだ30分近くあるのに、なんで急いで帰ろうとするんですか。それに俺も同じ方向に行くんですけど。
「俺、何か失礼な事をしましたか?」
立ち去ろうとするまどかさんの腕を掴んで尋ねた。
振り返ったまどかさんの顔は真っ赤になっている。
「いえ、そういうわけでは」
「だったら、なんでそんなに急いで別れようとするんですか?せっかくゆっくりお話しできると思ったのに」
「お話し――はい。すみません」
何故俺達は食堂の前でトレンディドラマ並みの事をしているんだ。
「手、離しますけど逃げないでくれます?」
コート持ったままだし、寒いから着たいし。
まどかさんが頷いたまま俯いてしまったので、俺は手を放して急いで上着を着た。
そして、来る途中にあった公園まで一緒に歩いた。
その間、まどかさんは俺の顔を一切見ようとしない。
何をやらかしたんだよ、俺。
「高坂さん」
受付しようとしたら、後ろから聞きなれたまどかさんの声がした。
「お待たせするのも悪いので、お待ちしていたんです」
はにかむような笑顔で迎えてくれたまどかさんは、最高にかわいかった。加賀よ、見習え。こういうのだよ。加賀さんにされても多分なんとも思わんけど。
ブースに案内されて、一通り終えると昼休憩に近かった。
「あの、俺飯食って帰りますけど、よかったらご一緒しませんか?」
晩飯は断られたけど、ランチくらいなら大丈夫だろう。
そう思ったのは正しく、まどかさんは少し悩んでから
「じゃあ、一度これ置いてきますね。10分ほどで戻りますから」
と言って、席を立った。
よっしゃ。俺を一人で来させてくれてありがとう、佐藤さん!
今度佐藤さんの好きな焼肉を御馳走します。
まどかさんの会社の近くには、おしゃれな店が多かった。
イタリアンだかフレンチだか、とにかく横文字だ。元カノがこういう系が好きだったせいで、俺も自然と覚えたけどね。
女の子ってこういうの好きだしな。
無難なイタリアンに入ろうと思っていたら、「男の人だとがっつり系がいいですよね?」と言って、案内してくれたのが、おしゃれとは程遠い昔ながらの食堂だった。
「イタリアンとかじゃなくていいんですか?」
店に入ろうとするまどかさんに尋ねると、まどかさんはしまったという顔をして謝った。
「すみません。イタリアンとかの方がよかったですか?」
「いえ、俺はなんでもいいんですし、むしろこっちの方が好きというか」
まどかさんが連れてきてくれた店ですからね。どんな所でも好きですよ。
「よかった。ここは定職も丼も美味しくて安いんです」
輝くような笑顔で言うと、まどかさんは引き戸を開けて「二人お願いします」と言って中に入って行った。
手慣れている……常連なんだろうか。
まどかさんの言う通り、その店はとても美味しくて安かった。
サバの味噌煮定食を頼んだんだけど、半身のサバに味噌汁、小鉢が2つついてご飯はおかわり自由で600円。
経営大丈夫か。
「本当に美味しいです。俺、また来ますよここ」
「ぜひ」
まどかさんはコロッケ定食だ。手作りだろうか。手のひらほどもある大きなコロッケが二枚。
まどかさんはそれをぺろりと平らげた。
「――大食いなんです」
恥ずかしそうに笑う姿も可愛い。何なら俺のサバも食いますか。
「こういう店はよく来るんですか?」
「ええ。お恥ずかしい事に一人暮らしだし、近くに友達もいないから一人で食べに行けるところを探していたら、こういう所ばかりになってしまって」
なるほど。つまり独身ですね。彼氏も――多分いないよな。
「地元はこの辺じゃないんですか?」
「ええ。隣の県なんですが、大学もそっちで。就職でこっち出てきたから」
なるほど。焦るな、俺。ゆっくり聞き出すんだ。
「こっちにはどのくらい?」
「大学卒業してからだから3年かな?」
俺の1つ下ですか。丁度いい年齢ですね。俺、年上だから任せてください。
向かい合って座って、食事をしながら主に仕事の事なんかを話している。なんだろう、もうこれ付き合ってるようなもんじゃないか?――いや待て俺。暴走するな。
「そういえばクリスマスですねぇ」
店に飾られていた、古臭いクリスマスツリーを見て、まどかさんが呟いた。
「柏木さんはクリスマスはどうされるんですか?」
今年のクリスマスは土日だ。予定がないって言ってくれ。俺とデートしましょう。
「クリスマスは――多分バタバタしてるので、ゆっくりクリスマスムードを味わうのは難しいかな」
なんだ、それは。どういう意味だ?彼氏か?彼氏と過ごすのか?――いや待て。バタバタしてるって言ってたから用事?
どっちだ。
「高坂さんは彼女さんとデートとか?」
なんだって。まさかまどかさんの方からこんなナイスアシストが来るとは。
「彼女がいたらよかったんですがね。残念ながら」
内心はとてもドキドキしていたけど、なるべくいつも通り答える。だけどやっぱドキドキするもんだ。
俺は無意識に目線を逸らしつつ、右手で左の耳たぶを触った。
クソ姉貴の推しの暗黒騎士が困ったときによくやる仕草で、あのアホに散々やらされた結果、癖になっていたんだ。
「え――」
小さく声を上げて、まどかさんの動きが止まった。
「ど、どうしました?俺何か失礼をしましたか?」
慌てて尋ねると、まどかさんは立ち上がって「食べ終わったし、もう出ましょうか」と言って上着を羽織り出した。
なんだ?俺の返事の何が気に障ったんだ。
パニックになりながら、俺も急いでコートとカバンを持って、割り勘でいいと言い張るまどかさんを説き伏せて御馳走させてもらった。
「あの、御馳走様でした。――ではまた何かございましたら……」
昼休みはまだ30分近くあるのに、なんで急いで帰ろうとするんですか。それに俺も同じ方向に行くんですけど。
「俺、何か失礼な事をしましたか?」
立ち去ろうとするまどかさんの腕を掴んで尋ねた。
振り返ったまどかさんの顔は真っ赤になっている。
「いえ、そういうわけでは」
「だったら、なんでそんなに急いで別れようとするんですか?せっかくゆっくりお話しできると思ったのに」
「お話し――はい。すみません」
何故俺達は食堂の前でトレンディドラマ並みの事をしているんだ。
「手、離しますけど逃げないでくれます?」
コート持ったままだし、寒いから着たいし。
まどかさんが頷いたまま俯いてしまったので、俺は手を放して急いで上着を着た。
そして、来る途中にあった公園まで一緒に歩いた。
その間、まどかさんは俺の顔を一切見ようとしない。
何をやらかしたんだよ、俺。
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