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32話、弟。
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四時に本店に着くと、厨房は団体予約の準備で慌ただしくなっていた。仕込みがまだ終わっていないのだろう。予約状況を確認すると、団体予約の開始時間は六時のよう。時間はあるから、頑張らないと。
「高梨です、ヘルプに来ました!」
大声で厨房に呼びかけると、スタッフの一人がやってくる。
「助かるよ、高梨。制服は準備してあるから、早速で悪いけど、着替えたら手伝ってくれ」
「そのつもりで来ましたよ」
本店には何度もヘルプに入ったことがある。スタッフも、勝手も知っている。大丈夫だ。
洗濯された制服に着替えたあと、更衣室から出ると、目の前に美郷店長がいた。
「うわ、びっくりした」
「あ、ごめん。待ち伏せたわけじゃないんだけど……ヘルプ来てくれてありがとう、高梨くん」
待ち伏せたんだな。わかりやすい人。
相変わらず、年齢を感じさせない風貌で、ふわふわで甘い、綿菓子のような雰囲気をまとっている。もちろん、見かけだけだとはわかっている。じゃないと、本店の店長なんて任せてもらえない。仕事はできる人だ。
「いえ。大変そうだったので。一応、ラストまではいる予定ですが、終わったらすぐ帰りますね。今日は用事があるので」
捨てられた仔犬のような顔を俺に向けたって、ダメだ。小さい体に、その顔はよく似合う。庇護欲のような何かがかき立てられる。
以前の俺なら、その切なそうな表情に同情したのだろうが、今の俺には通用しない。
俺はあなたに興味はない。
あなたなら、態度でわかるでしょう?
「そう、帰るの。大事な人がいるのね」
「はい、お陰さまで。では失礼します」
背中に怨念のような視線を感じながら、俺は厨房へと急ぐ。
かわいらしいあなたなら、選り取りみどりなんだから、もう俺に執着しないでくださいよ。
本店には魔女が棲んでいる。
バイトの男子をつまみ食いばかりする、恐ろしい魔女。捕らえられたら最後、骨の髄まで「若さ」を吸い取られる。
そうやって長年生きてきた、かわいらしくも恐ろしい、魔女。
「高梨です、ヘルプに来ました!」
大声で厨房に呼びかけると、スタッフの一人がやってくる。
「助かるよ、高梨。制服は準備してあるから、早速で悪いけど、着替えたら手伝ってくれ」
「そのつもりで来ましたよ」
本店には何度もヘルプに入ったことがある。スタッフも、勝手も知っている。大丈夫だ。
洗濯された制服に着替えたあと、更衣室から出ると、目の前に美郷店長がいた。
「うわ、びっくりした」
「あ、ごめん。待ち伏せたわけじゃないんだけど……ヘルプ来てくれてありがとう、高梨くん」
待ち伏せたんだな。わかりやすい人。
相変わらず、年齢を感じさせない風貌で、ふわふわで甘い、綿菓子のような雰囲気をまとっている。もちろん、見かけだけだとはわかっている。じゃないと、本店の店長なんて任せてもらえない。仕事はできる人だ。
「いえ。大変そうだったので。一応、ラストまではいる予定ですが、終わったらすぐ帰りますね。今日は用事があるので」
捨てられた仔犬のような顔を俺に向けたって、ダメだ。小さい体に、その顔はよく似合う。庇護欲のような何かがかき立てられる。
以前の俺なら、その切なそうな表情に同情したのだろうが、今の俺には通用しない。
俺はあなたに興味はない。
あなたなら、態度でわかるでしょう?
「そう、帰るの。大事な人がいるのね」
「はい、お陰さまで。では失礼します」
背中に怨念のような視線を感じながら、俺は厨房へと急ぐ。
かわいらしいあなたなら、選り取りみどりなんだから、もう俺に執着しないでくださいよ。
本店には魔女が棲んでいる。
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そうやって長年生きてきた、かわいらしくも恐ろしい、魔女。
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