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53話、姉。
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いつもの定位置で、ショウに髪を乾かしてもらいながら、思案する。
ショウは、誰とも付き合っていなかった。中学も高校も、今も。それ自体は喜ばしいことだ。
「姉より好きになれない」と誰かの告白を一度断っただけで、私はショウを好きな子全員から敵意を向けられた。
今なら、好きな人を手に入れたいという欲求がどれほど膨らむものなのか、よくわかるけれど。当時の私にとっては、彼女たちの行動は、迷惑以外の何物でもなかった。
だから、諸悪の根源であるショウを恨んだりもしたものだ。
それは昔のこと。懐かしいだけの思い出。
ショウの冷たい指がうなじを撫であげる。声が出そうなくらいぞくりとする。
ドライヤーが弱冷風になると、うなじにぬるい感触。振り向こうとすると、ショウが「じっとしてて」と耳元でささやく。
どうやら、ショウはうなじにキスを落としているようだ。くすぐったくて、肩が震える。
「ずっと、こうしたかった」
ショウが私の肩から腕を回して抱きついてくる。首筋に熱い吐息がかかる。
ショウのまだ乾いていない髪を撫でる。顔を上げたショウが、キスをしてくれる。
「俺は、ずっと姉ちゃんのことが好きだった。だから、彼女は作らなかった」
ドライヤーを切って、ショウがソファの隣に座る。私は低い声で話し始めたショウに体を寄せ、その肩にもたれかかる。
「今まで告白してきた子たちは、俺の彼女になりたがった。でも、美郷店長は」
ショウの左手に私の右手を重ねる。ショウはすぐに指を絡めてきて、ぎゅっと握りしめる。
「――あの人は、ただ、体の関係だけを求めてきた」
セックスだけの関係。セックスフレンドになりたい、と言える女の人の心境は私にはよく理解できない。
ただ、好きな人の心が手に入らないのなら、せめて体だけでも……と考えるに至る過程はわからなくもない。
「もちろん、俺は拒絶した。でも、あの人はなかなか俺を帰してくれなくて……最終的には、自分を受け入れるか、拒絶してバイトと大学を辞めるか、どちらかだと脅してきたんだ」
「なんで、大学まで?」
「高梨ショウにレイプされたとバイト先の本社と大学に言い触らす、って脅されたんだ」
なんて、ひどい。
頭にかぁっと血が上るのが自分でもよくわかった。
自分の大好きな弟が、上司という権力者から女という武器をもって脅されるという状況に、怒りが湧いてこない姉がいるとしたら、今すぐここに連れてきて欲しい。
「……ひどい」
「だから、仕方なく店長の相手をすることになって……ヘルプに行っている半年くらいは、あの人の性欲の捌け口にされてた」
思わず、ショウの太ももの上にまたがって座り、その冷たい体を抱きしめる。
かわいそうに。
首にぎゅうぎゅうと抱きついていると、ショウが背中を撫でてくれる。
「俺は大丈夫。男だし、そんなにダメージはないから」
「大丈夫じゃない! 好きでもない人とセックスさせられて、心がおかしくならないわけ、ないじゃない」
元カノかな? なんて軽く考えていた私が馬鹿みたいだ。ショウの異変に気づけなかった私は、大馬鹿者だ。
「大丈夫だよ、姉ちゃん。本当に」
「……本当に?」
「うん」
ショウの指がそっと唇に触れる。優しくキスをして、ショウが苦笑する。
「店長に無理やりヤラれるのと、姉ちゃんとこういうことするの、男にとって、どっちがハードル高いと思ってんの」
「……」
「だから、大丈夫。問題ない。ただ」
軽いキスを繰り返す。ショウの手のひらが、私の胸にあてがわれている。同時に、お尻の下で隆起してくる熱いものの存在に気づく。
「ただ一つだけ、姉ちゃんに謝らないといけないことがあって」
「え?」
耳元で、ショウの声。
「ごめん」
何を、謝るの? 何のための、謝罪の言葉なの?
「姉ちゃんが寝ている間に」
……ん?
「――何回か、キスしたことがある」
はあっ!?
ショウは、誰とも付き合っていなかった。中学も高校も、今も。それ自体は喜ばしいことだ。
「姉より好きになれない」と誰かの告白を一度断っただけで、私はショウを好きな子全員から敵意を向けられた。
今なら、好きな人を手に入れたいという欲求がどれほど膨らむものなのか、よくわかるけれど。当時の私にとっては、彼女たちの行動は、迷惑以外の何物でもなかった。
だから、諸悪の根源であるショウを恨んだりもしたものだ。
それは昔のこと。懐かしいだけの思い出。
ショウの冷たい指がうなじを撫であげる。声が出そうなくらいぞくりとする。
ドライヤーが弱冷風になると、うなじにぬるい感触。振り向こうとすると、ショウが「じっとしてて」と耳元でささやく。
どうやら、ショウはうなじにキスを落としているようだ。くすぐったくて、肩が震える。
「ずっと、こうしたかった」
ショウが私の肩から腕を回して抱きついてくる。首筋に熱い吐息がかかる。
ショウのまだ乾いていない髪を撫でる。顔を上げたショウが、キスをしてくれる。
「俺は、ずっと姉ちゃんのことが好きだった。だから、彼女は作らなかった」
ドライヤーを切って、ショウがソファの隣に座る。私は低い声で話し始めたショウに体を寄せ、その肩にもたれかかる。
「今まで告白してきた子たちは、俺の彼女になりたがった。でも、美郷店長は」
ショウの左手に私の右手を重ねる。ショウはすぐに指を絡めてきて、ぎゅっと握りしめる。
「――あの人は、ただ、体の関係だけを求めてきた」
セックスだけの関係。セックスフレンドになりたい、と言える女の人の心境は私にはよく理解できない。
ただ、好きな人の心が手に入らないのなら、せめて体だけでも……と考えるに至る過程はわからなくもない。
「もちろん、俺は拒絶した。でも、あの人はなかなか俺を帰してくれなくて……最終的には、自分を受け入れるか、拒絶してバイトと大学を辞めるか、どちらかだと脅してきたんだ」
「なんで、大学まで?」
「高梨ショウにレイプされたとバイト先の本社と大学に言い触らす、って脅されたんだ」
なんて、ひどい。
頭にかぁっと血が上るのが自分でもよくわかった。
自分の大好きな弟が、上司という権力者から女という武器をもって脅されるという状況に、怒りが湧いてこない姉がいるとしたら、今すぐここに連れてきて欲しい。
「……ひどい」
「だから、仕方なく店長の相手をすることになって……ヘルプに行っている半年くらいは、あの人の性欲の捌け口にされてた」
思わず、ショウの太ももの上にまたがって座り、その冷たい体を抱きしめる。
かわいそうに。
首にぎゅうぎゅうと抱きついていると、ショウが背中を撫でてくれる。
「俺は大丈夫。男だし、そんなにダメージはないから」
「大丈夫じゃない! 好きでもない人とセックスさせられて、心がおかしくならないわけ、ないじゃない」
元カノかな? なんて軽く考えていた私が馬鹿みたいだ。ショウの異変に気づけなかった私は、大馬鹿者だ。
「大丈夫だよ、姉ちゃん。本当に」
「……本当に?」
「うん」
ショウの指がそっと唇に触れる。優しくキスをして、ショウが苦笑する。
「店長に無理やりヤラれるのと、姉ちゃんとこういうことするの、男にとって、どっちがハードル高いと思ってんの」
「……」
「だから、大丈夫。問題ない。ただ」
軽いキスを繰り返す。ショウの手のひらが、私の胸にあてがわれている。同時に、お尻の下で隆起してくる熱いものの存在に気づく。
「ただ一つだけ、姉ちゃんに謝らないといけないことがあって」
「え?」
耳元で、ショウの声。
「ごめん」
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……ん?
「――何回か、キスしたことがある」
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