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二章 サフィール○○エンド
027.黒幕登場
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サフィールが亡くなってから、何年かたった。
出産を間近に控えたある夜、ジョゼは大きなお腹を撫でながらアルジャンを探していた。歩き慣れた宮殿内を、カンテラの明かりだけで進む。
「アル? アル、どこ? お父さんったらどこに行っちゃったんでしょうねぇ?」
お腹が大きくなるにつれ、ジョゼの独り言は多くなった。お腹の中にいてももう周りの音は聞こえているのだと宮殿医師に言われたからだ。
アルジャンも愛しそうに腹を撫で、毎朝毎晩お腹の中に話しかけている。こぽこぽとしゃっくりをしている赤子の胎動を、アルジャンが「蹴った」と勘違いするのもまた幸せな時間だと、ジョゼは思う。
だが、この幸せがいつまで続くのかはわからない。また出産と同時に命を落としてしまうのではないかと怯え、ジョゼは陣痛が来ないことを祈っている。
「……ちがう!」
ふと、アルジャンの声が聞こえたような気がして、ジョゼはそちらへ進む。角を曲がると、テラスでアルジャンが誰かと言い争っているような声が聞こえてきた。
「どういうことですか、あと一回残っているのではないのですか!」
『妾は最初からそう言っておる。お前に残された時間はもうない』
アルジャンが話しているのは、男のような女のような、抑揚のない声の主だ。テラスの先か、庭の中か、どこにいるのかもわからない方向から聞こえてくる。
だからこそ、ジョゼは口をつぐむ。夫が話しているのは、人ならざる者なのだと悟って。
『お前は結局あの娘を幸福にはしてやれなかったではないか。もう諦めよ』
「違う、違う! 違う! ジョゼは、ジョゼだけは毎日、幸せだと言って笑ってくれるんです!」
結婚してから、アルジャンは毎日不安そうにジョゼに幸せかどうかを尋ねてくる。アルジャンの不安がわかるからこそ、ジョゼは毎日「幸せよ」と微笑んでいる。それは嘘ではない。
『だが、それはあの娘の幸福ではない。あの娘の幸福のためにお前を創ったというのに、勝手にジョゼの幸福を願うようになるとは。これだから人形は役に立たん』
「待ってください、僕からまたジョゼを奪うのですか!? 何回も奪っておいて、また奪うのですか!?」
『勘違いをするでない。妾は与えたものを返してもらっているに過ぎん』
「そんな! ジョゼはまた、子どもの顔を見ることなく……」
やはり、とジョゼは思う。やはり、アルジャンは自分の死期を知っていたのだ。
妊娠をあまり喜んでいない様子から、寂しそうに腹に話しかけている様子から、何となくそんな気はしていた。サフィールと同じように、彼にも記憶があるのかもしれないと。出産時にジョゼが死ぬことを知っているのかもしれないと、疑っていた。
しかし、結局それを問いただすことはしなかった。
『さぁ、腕輪を返してもらおうかね。それを外したお前が触れたことによって、記憶の継承者が増えてしまったのでな。これ以上増えると面倒だのう』
「……返さないと、言ったら、どうなるのですか」
『お前がここで死ぬだけよの。それでもいいと言うのなら、止めはせんがね』
アルジャンはしばらく悩んだのち、銀色の腕輪を声の主に手渡す。その誰かの手首には、同じような腕輪がキラリと光っている。
「……僕は、どうなるのですか」
『何も。お前は妾が創ったただの人形よ。物語には登場しない異端者ゆえに、役目を終えたら妾のもとに戻ってくるだけのことよ』
――物語? 異端者?
ジョゼは腹を撫でる。少し腹が張っているような気がする。先ほどまで元気に蹴っていた赤子は、今はとても静かだ。眠っているのかもしれない。
『まったく、あの娘の我儘には困るのう。創った者の責任とは言え』
「その我儘に付き合わされているだけなのでしょう、僕は」
『そうとも。お前のような存在が必要だと、あの娘が言ったからの。面倒なことを引き受けるものではなかったわ』
「彼女は……何回、これを繰り返すのですか」
――まさか、繰り返しの理由を、アルは知っているの? その人が、原因なの?
『あと何回? わからぬものよ、妾にも。あの娘が満足するまで、舞台が繰り返されるだけよ』
「その舞台を、あなたは最前列で観ているのですか」
『そうとも。退屈とは無縁だからのう』
――あの娘、って誰? その人が満足すると、幸福な結末になるということかしら?
ジョゼは気づく。誰かわからない娘の幸福と満足の先に、自分たちの幸福な結末があるとは限らないことを。
つまり、自分たちは、誰かわからない娘の幸せのための舞台装置、演者でしかないのだ。
――あぁ、なんてこと。こんな理由があったなんて。こんな理由で、理不尽な死を、不幸を、迎えていただなんて!
『しかし、残念だったのう。ジョゼを手に入れるための策を弄しても、お前の願いは手に入らなかったとは』
「……あと一回、あと一回だけ」
『何度繰り返しても同じ結果よ。お前の望む幸福は、その人生の中にはないのであろう』
アルジャンはその場で泣き崩れる。ジョゼは夫に駆け寄ろうとして、気づく。じわりと下腹部を濡らしていく液体に。
――あぁ、待って……! まだ、聞かなければならないことが……!
「お願いします! もう一度、ジョゼと……ジョゼと……!」
『もう遅い。時間切れよ。二年では足りなかったとは、つくづく強欲な娘よのう、サンドラは』
「ジョゼに、幸福を……ジョゼを幸せに……!」
『望みどおり、いや、いつもどおり、ジョゼには哀れな最期を与えてやろう。あの娘の幸福が引き立つように』
ジョゼの腹が痛む。何度も経験している陣痛だ。痛くて痛くて、涙が出る。ずるりと壁を伝い、その場に崩れ落ちる。ジョゼは濡れた絨毯の上で荒い呼吸を繰り返す。
「ジョゼ! ジョゼ、大丈夫か!?」
「……アル」
カンテラが落ちた音に気づいたアルジャンが慌てて駆け寄り、一瞬だけ躊躇ったのち、ぎゅうとジョゼを抱きしめる。その瞬間に、ジョゼはすべてを理解する。
――そうだわ。わたくし、腕輪のないアルに触れてから、こんなふうに記憶を引き継ぐことになったのだわ。……きっと、サフも同じことを。
ジョゼの中に流れ込んでくる、アルジャンの記憶。ジョゼを愛しいと感じ、ジョゼを幸せにしたいと願っている記憶。
ジョゼを手に入れるために、ブランカを利用してサフィールを罠にはめた記憶。ジョゼの腹と同時に大きく膨らんでいく罪悪感と、贖罪の記憶。
「アル……」
「ごめん、ごめんね、ジョゼ。僕じゃ、無理だった。あなたを幸せにしようとしたけど、今の僕じゃ無理だった」
「だいじょ、ぶ、アル……」
アルジャンは泣きながら、ジョゼに許しを乞う。周りに集まった騎士や侍女が、ジョゼを寝台へと運んでいく。アルジャンはボロボロと涙をこぼしながら、ジョゼの手を握る。
「早く、医者を! 急げ!」
「出血が、血が、あぁ、妃殿下……!」
あたりが騒がしい。体中が痛い。しかし、ジョゼは微笑みながら、夫を見上げる。
「アル、がんば、るわ、わた、くし」
「ジョゼ。僕を残して逝かないで」
「だいじょ、ぶ。また、あえるわ」
アルジャンは力なく左右に首を振る。
「もう、会えないんだ。僕はもう、ジョゼに会えない……もう、二度と」
「しんぱ、しない、で」
下腹部を濡らす体液が多すぎることに、ジョゼは気づいている。今回もまた、ここで死ぬことは覚悟している。
アルジャンは「もう会えない」と繰り返している。それは、事実なのだろう。人ならざる者との契約か、交渉か、そういう類いの結果なのだろう。
だが、ジョゼは何となく、またアルジャンと巡り会えるような気がしている。
「こわく、ないわ、アル」
死ぬことは痛くて、怖くて、恐ろしい。しかし、また生まれ変わって、出会えることを、ジョゼは知っている。だから、恐れることはない。
「しあわ……だった……」
「ジョゼ! ジョゼ、待って! ジョゼ!」
アルジャンの声が遠くなる。体の痛みが、徐々になくなっていく。手に力が入らない。
ジョゼは最期の力を振り絞って、いきむ。それが、彼女のやるべき仕事なのだと、知っているのだ。
出産を間近に控えたある夜、ジョゼは大きなお腹を撫でながらアルジャンを探していた。歩き慣れた宮殿内を、カンテラの明かりだけで進む。
「アル? アル、どこ? お父さんったらどこに行っちゃったんでしょうねぇ?」
お腹が大きくなるにつれ、ジョゼの独り言は多くなった。お腹の中にいてももう周りの音は聞こえているのだと宮殿医師に言われたからだ。
アルジャンも愛しそうに腹を撫で、毎朝毎晩お腹の中に話しかけている。こぽこぽとしゃっくりをしている赤子の胎動を、アルジャンが「蹴った」と勘違いするのもまた幸せな時間だと、ジョゼは思う。
だが、この幸せがいつまで続くのかはわからない。また出産と同時に命を落としてしまうのではないかと怯え、ジョゼは陣痛が来ないことを祈っている。
「……ちがう!」
ふと、アルジャンの声が聞こえたような気がして、ジョゼはそちらへ進む。角を曲がると、テラスでアルジャンが誰かと言い争っているような声が聞こえてきた。
「どういうことですか、あと一回残っているのではないのですか!」
『妾は最初からそう言っておる。お前に残された時間はもうない』
アルジャンが話しているのは、男のような女のような、抑揚のない声の主だ。テラスの先か、庭の中か、どこにいるのかもわからない方向から聞こえてくる。
だからこそ、ジョゼは口をつぐむ。夫が話しているのは、人ならざる者なのだと悟って。
『お前は結局あの娘を幸福にはしてやれなかったではないか。もう諦めよ』
「違う、違う! 違う! ジョゼは、ジョゼだけは毎日、幸せだと言って笑ってくれるんです!」
結婚してから、アルジャンは毎日不安そうにジョゼに幸せかどうかを尋ねてくる。アルジャンの不安がわかるからこそ、ジョゼは毎日「幸せよ」と微笑んでいる。それは嘘ではない。
『だが、それはあの娘の幸福ではない。あの娘の幸福のためにお前を創ったというのに、勝手にジョゼの幸福を願うようになるとは。これだから人形は役に立たん』
「待ってください、僕からまたジョゼを奪うのですか!? 何回も奪っておいて、また奪うのですか!?」
『勘違いをするでない。妾は与えたものを返してもらっているに過ぎん』
「そんな! ジョゼはまた、子どもの顔を見ることなく……」
やはり、とジョゼは思う。やはり、アルジャンは自分の死期を知っていたのだ。
妊娠をあまり喜んでいない様子から、寂しそうに腹に話しかけている様子から、何となくそんな気はしていた。サフィールと同じように、彼にも記憶があるのかもしれないと。出産時にジョゼが死ぬことを知っているのかもしれないと、疑っていた。
しかし、結局それを問いただすことはしなかった。
『さぁ、腕輪を返してもらおうかね。それを外したお前が触れたことによって、記憶の継承者が増えてしまったのでな。これ以上増えると面倒だのう』
「……返さないと、言ったら、どうなるのですか」
『お前がここで死ぬだけよの。それでもいいと言うのなら、止めはせんがね』
アルジャンはしばらく悩んだのち、銀色の腕輪を声の主に手渡す。その誰かの手首には、同じような腕輪がキラリと光っている。
「……僕は、どうなるのですか」
『何も。お前は妾が創ったただの人形よ。物語には登場しない異端者ゆえに、役目を終えたら妾のもとに戻ってくるだけのことよ』
――物語? 異端者?
ジョゼは腹を撫でる。少し腹が張っているような気がする。先ほどまで元気に蹴っていた赤子は、今はとても静かだ。眠っているのかもしれない。
『まったく、あの娘の我儘には困るのう。創った者の責任とは言え』
「その我儘に付き合わされているだけなのでしょう、僕は」
『そうとも。お前のような存在が必要だと、あの娘が言ったからの。面倒なことを引き受けるものではなかったわ』
「彼女は……何回、これを繰り返すのですか」
――まさか、繰り返しの理由を、アルは知っているの? その人が、原因なの?
『あと何回? わからぬものよ、妾にも。あの娘が満足するまで、舞台が繰り返されるだけよ』
「その舞台を、あなたは最前列で観ているのですか」
『そうとも。退屈とは無縁だからのう』
――あの娘、って誰? その人が満足すると、幸福な結末になるということかしら?
ジョゼは気づく。誰かわからない娘の幸福と満足の先に、自分たちの幸福な結末があるとは限らないことを。
つまり、自分たちは、誰かわからない娘の幸せのための舞台装置、演者でしかないのだ。
――あぁ、なんてこと。こんな理由があったなんて。こんな理由で、理不尽な死を、不幸を、迎えていただなんて!
『しかし、残念だったのう。ジョゼを手に入れるための策を弄しても、お前の願いは手に入らなかったとは』
「……あと一回、あと一回だけ」
『何度繰り返しても同じ結果よ。お前の望む幸福は、その人生の中にはないのであろう』
アルジャンはその場で泣き崩れる。ジョゼは夫に駆け寄ろうとして、気づく。じわりと下腹部を濡らしていく液体に。
――あぁ、待って……! まだ、聞かなければならないことが……!
「お願いします! もう一度、ジョゼと……ジョゼと……!」
『もう遅い。時間切れよ。二年では足りなかったとは、つくづく強欲な娘よのう、サンドラは』
「ジョゼに、幸福を……ジョゼを幸せに……!」
『望みどおり、いや、いつもどおり、ジョゼには哀れな最期を与えてやろう。あの娘の幸福が引き立つように』
ジョゼの腹が痛む。何度も経験している陣痛だ。痛くて痛くて、涙が出る。ずるりと壁を伝い、その場に崩れ落ちる。ジョゼは濡れた絨毯の上で荒い呼吸を繰り返す。
「ジョゼ! ジョゼ、大丈夫か!?」
「……アル」
カンテラが落ちた音に気づいたアルジャンが慌てて駆け寄り、一瞬だけ躊躇ったのち、ぎゅうとジョゼを抱きしめる。その瞬間に、ジョゼはすべてを理解する。
――そうだわ。わたくし、腕輪のないアルに触れてから、こんなふうに記憶を引き継ぐことになったのだわ。……きっと、サフも同じことを。
ジョゼの中に流れ込んでくる、アルジャンの記憶。ジョゼを愛しいと感じ、ジョゼを幸せにしたいと願っている記憶。
ジョゼを手に入れるために、ブランカを利用してサフィールを罠にはめた記憶。ジョゼの腹と同時に大きく膨らんでいく罪悪感と、贖罪の記憶。
「アル……」
「ごめん、ごめんね、ジョゼ。僕じゃ、無理だった。あなたを幸せにしようとしたけど、今の僕じゃ無理だった」
「だいじょ、ぶ、アル……」
アルジャンは泣きながら、ジョゼに許しを乞う。周りに集まった騎士や侍女が、ジョゼを寝台へと運んでいく。アルジャンはボロボロと涙をこぼしながら、ジョゼの手を握る。
「早く、医者を! 急げ!」
「出血が、血が、あぁ、妃殿下……!」
あたりが騒がしい。体中が痛い。しかし、ジョゼは微笑みながら、夫を見上げる。
「アル、がんば、るわ、わた、くし」
「ジョゼ。僕を残して逝かないで」
「だいじょ、ぶ。また、あえるわ」
アルジャンは力なく左右に首を振る。
「もう、会えないんだ。僕はもう、ジョゼに会えない……もう、二度と」
「しんぱ、しない、で」
下腹部を濡らす体液が多すぎることに、ジョゼは気づいている。今回もまた、ここで死ぬことは覚悟している。
アルジャンは「もう会えない」と繰り返している。それは、事実なのだろう。人ならざる者との契約か、交渉か、そういう類いの結果なのだろう。
だが、ジョゼは何となく、またアルジャンと巡り会えるような気がしている。
「こわく、ないわ、アル」
死ぬことは痛くて、怖くて、恐ろしい。しかし、また生まれ変わって、出会えることを、ジョゼは知っている。だから、恐れることはない。
「しあわ……だった……」
「ジョゼ! ジョゼ、待って! ジョゼ!」
アルジャンの声が遠くなる。体の痛みが、徐々になくなっていく。手に力が入らない。
ジョゼは最期の力を振り絞って、いきむ。それが、彼女のやるべき仕事なのだと、知っているのだ。
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