【R18】サキュバスちゃんの純情

千咲

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13.迷惑な思惑(一)

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 ヴヴヴとカバンの中のスマートフォンが揺れる。バイブの長さからいって、誰かからの着信だ。

「……出ていいよ。持ってきてあげようか?」
「いい。出ない」
「そう? こんなの挿れたまま電話に出るとか、エロいと思うけど」

 相馬さんが舌なめずりをして、手を動かす。

「っ、あ、そこ、いいっ」
「うん、ここね。上?」
「んっ、うえ」

 温められたローションをまとったシリコン製のバイブは、動いてはいない。相馬さんの手によって、ヌルヌルと動かされているだけだ。

「こっち側にもう少し突起を増やすかなぁ。角度が難しいかも」
「やっ、ダメ、そこっ」
「男なら持てるけど、女の子がこの角度と位置で持つのは難しいな、うん」
「そうま、さんっ」

 バイブを小刻みに動かされ、少し奥にあるイイところが切なく疼く。そんなに刺激されたら、達してしまいたくなる。

「涼介でしょ。名前で呼んでくれたら、イカせてあげる」

 相馬さんの唇が胸の突起を掠め、胸の膨らみに吸い付く。ちゅうと吸い上げて、キスマークを散らしていく。

「女の子用のバイブを作ったほうがいいかな。でもGスポットは皆違うから、どう動かそうかな」
「っ、中に、螺旋状の、突起を……」
「あー、なるほど。リング状だと部品が多くなりそうだし、螺旋状はいいかも」

 バイブの先端が私の最奥へ沈められる。男の人のものとは違う無機質な道具だけれど、開発に余念のない男の手にかかれば、本物以上に快楽がもたらされる。

「ありがとね、あかり」
「やんっ、あ……ひゃあぁっ!」
「あ、こら、暴れないで。痛くなっちゃうよ」

 ガシャガシャと手首に繋がれた玩具の手錠が揺れる。相馬さんが脇なんか舐めるから、暴れたくなるんじゃないの、もう!

「じゃ、そろそろ――イク?」

 胸の先端が相馬さんの口に覆われて、舌が一番敏感な突起を舐め上げる。待ちに待った刺激に、腰が浮く。ヴィンヴィンと彼の手元のバイブが動き始めて、奥から少し手前を刺激する。さっき彼に教えた箇所だ。

「やっ、あ、んんっ」
「中でイク? クリでイク?」
「この、ままっ、あ!」

 一瞬の角度だったのに、相馬さんは私の反応を見逃さない。私が一際大きく啼いた角度をキープして、執拗に攻め立てる。
 ほんと、いい性格と、いい笑顔、してる。

「あかり、おいで」

 バイブの音。ぐちゅぐちゅと掻き混ぜられる卑猥な音。ベッドに繋がれた手錠の音。相馬さんの唇から漏れる気持ちのいい音。
 何もかも――忘れさせて。

「りょーすけっ、イッ、」
「いいよ、おいで」
「ん、っっ!」

 シリコンの先端を強く当てられ、乳首を舐られ――その甘い刺激に、強い快楽を感じて、達してしまう。
 一度高みへ昇らされたあと、体がゆっくり緊張を解いていく。

「ひあっ!」

 スイッチを切ったバイブをずるりと抜いて、相馬さんは笑う。

「コレと俺の、どっちが好き?」
「……涼介の」
「もう。あかりはいつもソレだなぁ。いつになったら、コッチを好きになってくれるのかな」

 相馬さんが開発したものでも、気持ち良くさせてくれるものでも、それは偽物だ。
 精液、出してくれないんだもの。

「涼介のが好き」
「んもう、かわいい」

 玩具の手錠が外されて、「おいで」と微笑む相馬さんの首に抱きつく。寛げられ、既に屹立した雄の先走りを指ですくい、舐め取る。

「おいし。口でする? それとも、このまま?」
「ん、もう限界。中でイカせて」

 耳元で体を求められる快感。首に抱きついたまま、硬い男根の上から少しずつ腰を沈めていく。ローションと愛液でぐちゃぐちゃに濡れた中へ、雄々しく反り立つ凶悪すぎる太さの肉棒を迎え入れていく。

「っ、は……おっきぃ……」
「これだけ濡れてるのに、窮屈だもんな……痛くない? 大丈夫?」
「だい、じょぶ……っふ」

 相馬さんの巨根は、本当に困ったもので。どれだけ解しても、普通の愛液だけでは、その太さを受け入れることができない。ローションとバイブで解さなければ、無理なのだ。
 それでも、痛いし、圧迫感がスゴい。

「あかり、中が、動いて……っ」
「イッたばかり、だから」
「あ、っ、奥まで……」

 相馬さんの陰茎を根元まで咥えて、ゆっくり上下に腰を振る。襞という襞が、相馬さんのものに引っ張られて動く感じ。二人の声とぐちゅぐちゅと淫らな水音だけが部屋に響く。

「胸、やらかい」
「んっ、やっ、だ」
「乳首、かわいい。すぐ起つよね」
「も、りょーすけ」

 抱きしめられて、その胸の先端が相馬さんの胸で潰され、捏ねられる。その甘い刺激でさえ、快楽のスパイスになる。

「あかり。限界」
「いいよ、中に、来て」
「っあ、出るっ」

 びくん、と肉棒が震えるのさえ、わかる。何度も何度も、震える。奥に吐き出された彼の精は大量で、零れてしまいそうになるのを必死で食い止める。
 性器が大きければ、精液も大量。規格外の人だ、本当に。

「あかり……相変わらず、いいね」
「涼介のも、相変わらず太いね」

 抱き合ったまま、笑い合う。
 バイブやローター、いわゆる「大人の玩具」を作る会社に勤める相馬涼介さんは、私の体を使って改良点などを見つけている。
「モニターになってくれないか」と彼からスカウトされたときに、「じゃあ、あなたとセックスしたい」と持ちかけたのは私。相馬さんは驚いていたけれど、そのあと彼の股間を見て驚いたのも、私だ。
 大きめサイズのコンドームすら受け付けない彼の巨根は、それを受け入れる女の子すらいなかった。たいてい、勃起状態の巨根を見て「無理です、壊れます!」と逃げられるのだそうだ。
 ゆえに、風俗嬢にお世話になる日々を過ごしてきた彼。何ともかわいそうな話である。

「手錠、痛くなかった?」
「大丈夫だったよ。痛くないけど、拘束されている感じはあったから」

 中で小さくなったといえど、結構な太さである。少し腰を揺すると、相馬さんは私の手首を見つめながら、くすぐったそうに笑う。

「良かった。内側に柔らかいシリコンを使ったからね」
「色は銀より黒とか紫とかのビビッドな色と、パステル色があれば女の子も買いやすいかなぁ」
「ジョークグッズとして、ね。あと、音はうるさいかな?」
「ガチャガチャうるさいけど、男の人はそれで興奮するんでしょ? わざと?」
「正解。わざと音が鳴るようにしてある」
「やっぱりね」

 よいしょと抜こうとすると、腰を押さえられる。あれ、続けて二回戦かなと相馬さんを見つめると、唇に啄むようなキスが重なる。

「あかり、何から逃げてるの?」
「……え」
「二週続けてうちに来るなんて、今までなかったじゃん。何かあった?」

 鋭い。
 相馬さんは鋭いなぁ。
 今まで、二週続けて会うときは、たいてい宮野さんだったから。

「電話もよく鳴っているし。あれ、他の男でしょ? 出なくていいの?」
「ん……いいの……ほんとは良くないけど」
「ほーら! 良くないんじゃん」

 先週は「体調が悪くなっちゃって」と湯川先生に断り、今週も同じ手を使ったら、かなり心配されてしまったのだ。「看病しようか?」と言い出した先生を放置している私は、やはり逃げているのだろう。

「あかりに何人セフレがいるのか知らないけど、ちゃんと皆平等に愛してあげなきゃダメだよ。その愛が、嘘であってもね」
「わかってるんだよ? でも、会うのが怖くて」
「何で怖いの? 暴力でも振るわれた?」
「違う、違うよ。そんなんじゃなくて」

 私は何が怖いのか。
 わかっている。私は。

「あぁ、愛されるのが怖いの?」

 ビクリと体が跳ねたのを見て、相馬さんはすべてを悟ったようだ。

「なるほど。相手が本気になっちゃったかもしれない、と」
「私、体の関係だけでいいのに……」
「あかりは我儘だなぁ」

 相馬さんにぎゅうと抱きつく。彼はぽんぽんと頭を軽く叩いて、背中を撫でてくれる。

「長く一緒に過ごせば過ごすほど、離れ難くなるのはわかるでしょ?」
「うん」
「男は独占欲が強いんだから、体を許した時点で心も欲しくなるに決まってる」
「……涼介も?」

 相馬さんは笑う。

「世の中のすべての風俗嬢は俺の嫁だ!」
「……涼介だけだよ、そう思うの」
「まぁ、でも、体の関係だけでも恋には落ちるよ。今、俺、リョーコちゃんって子に夢中なの」

 相馬さんがよく利用するところのデリヘル嬢さんだろうか。

「うまくいきそう?」
「いや、難しいね。子どもがいるからそっち優先だし、年上ってこと気にしてるし。でも、子どもと一緒にデートするのがとりあえずの目標なんだ」
「……うまくいくといいね」

 ありがとーと脳天気に相馬さんは笑う。裏表のない笑顔には本当に癒やされる。

「でも、あかりは何で体だけでいいの? 何で愛されたくないの?」
「それは……」
「その答え、ちゃんと電話の彼に伝えたほうがいいよ。じゃないと、追いかけてくるだけだよ」

 佐々木先輩も同じことを言っていた。
 やっぱり、誠意を見せるしかないのだろうか。
「絵のモデルは昔の私です。私はサキュバスだから、精液だけが欲しいんです」と答えたら、先生は納得してくれるだろうか。
 ……するわけないか。

 短い梅雨が終わり、夏が始まろうとしている。

「ねぇ、あかり。次はローター試してもらっていい?」

 相馬さんの頭の中は、常にピンク色の春真っ盛りだ。

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