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第一夜
024.聖女、聖樹会に参列する。(二)
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結婚式で祭壇に立っていたおじいちゃんが同じように祭壇の前に立つ。彼が総主教らしい。七聖教の一番の権力者だ。
聖樹会は、総主教の挨拶によって始まった。それから、教えの一部らしい呪文みたいな言葉を信徒全員で諳んずる。わたしはもちろんサッパリわからないから口パクだ。ベールで口元は見えないけど、一応、ね。
その次は副主教とやらのありがたい説法を聞き、また信徒全員で木琴の音色に合わせて歌を歌った。二階に木琴楽団がいてびっくりした。わたしの結婚式でも演奏してくれたら良かったのに。行進曲もなかったから、かなり味気なかったんだよなぁ。
あとは解散。一時間か、一時間半くらいかな、体感としては。長椅子に座ってお喋りを楽しむ人もいれば、我先にと帰る人もいる。ラルスとテレサは早く帰りたかったみたいだけど、それを許さない人がいた。エレミアスだ。
「次の総主教はまた黄の国から選ばれるかもしれないな」
「そうですか」
「黄の国の一部で、花が落ち始めていると聞いたぞ。実がなるのも時間の問題だろう」
「それは良かったですね。では」
ラルスはエレミアスの相手をしようとせずに、さっさと歩き始める。エレミアスはどうしてもラルスと話をしたいのか、彼を追いかけながら会話を続けている。
ふわりと漂う甘い匂い、普段なら何とも思わないんだろうけど、エレミアスの匂いだと思うと途端に臭い気がするから不思議なものだ。
「紫の国はまだ花が咲かないんだな。まぁ仕方ないか。盲目の夫は後回しにされたのだろうな。聖女様も酷な選択をするものだ」
「聖女様は結婚式で真意を示されたのと同じ順番で、ご夫君の指名をなさいました。勝手な推測はなさらぬように」
「ハハハ。ご夫君ねぇ。どうせ全員ワケありなんだ。そんなふうにへりくだることもなかろう」
あー、ほんと、こいつ嫌い。ムカつく。夫たちを「ワケあり」だと愚弄するなんて。わたしの悪口なら許せるのに、夫たちが悪し様に言われるのは、めちゃくちゃ腹立つなぁ。
怒りを覚えたのはラルスも同じらしい。
「……エレミアス殿、それはご夫君方への不敬と取ってよろしいか?」
「はん? 敬意も不敬も、我々が一番敬うべきは総主教様であって、聖女宮の面々ではないだろうが。それに、不敬罪で問える人間など、宮にはいないだろう。王子であっても貴族であっても、宮にいる限りは身分など剥奪されたのと同義なのだから」
この男、殴ってもいいかしら!?
七聖教のトップは聖女と総主教なのではなくて、彼の中では総主教こそが一番らしい。だから、聖女宮にいる人々を下に見ているのね? そこにラルスも含まれているのね? だから、こんなふうに上から目線なのね?
「どうせお前の意見など、総主教様には届かんよ。総主教様は私と同じく、黄の国出身だからな。紫の国出身の副主教に泣きついたところで、どうにもならないことくらいわかっているだろう?」
総主教と同郷だと何かと優遇されるのかしら? でも、エレミアスが自信満々な理由がわかった。七聖教のトップという後ろ盾があるから、威張り散らしているわけなのね。すっごい嫌な奴!
「早く紫の国に実がなるといいな。そうすりゃ、実を聖女様に食べさせて、赤子を生ませることができるのになぁ! ハハハ、何年先のことになるか、見ものじゃないか。せいぜい、頑張ってくれよ、ラルス」
殴りたい、殴りたい、殴りたい。グーでもパーでも、準備万端よ。
「あぁ、でも、お前は聖女様より先に嫁を孕ませないといけないんだっけ? トニアは相変わらず子を欲しがっているんだから、早く授けてやれよ。そのために、宮に仕えるお前なんかと結婚したんだからな。ハハハ」
エレミアスは言いたいことだけ吐き出すと、さっさと去って行った。殴る準備はできていたのに。あとはタイミングだけだったのに。もう! 次会ったら、絶対あの口を塞いでやる! 顔わかんないけど!
ラルスは溜め息を吐き出した。そりゃもう特大のやつ。肩がめっちゃ上下したもん。お疲れ様。
「お見苦しいところをお見せしてしまいましたね」
「いやぁ、ラルスはよく耐えたと思うよ。わたし、めっちゃ殴る準備してたもん。あの男に次会ったら殴らない自信がないわ」
「……それだけは、絶対におやめください。何をされるかわかりませんから」
そうね。総主教と繋がっている聖職者を殴ったりしたら、ラルスの監督不行届きってことになるもんね。彼の立場が悪くなることだけは絶対に避けなきゃ。聖女が素行不良なだけなんだもの。ラルスは関係ない。
それにしても、エレミアスとの会話の中で意味のわからないものがあった。たぶん、わたしには知らされていないことがまだあるんだろう。聞いてもいいことなのか、わたしにはわからない。でも、聞いておかなければ、後悔する。それだけは、何となくわかるのだ。
部屋に着いてベールを外すなり「わたしの夫はどんなふうにして選ばれたの?」とラルスに尋ねると、少し間があったあと「ほぼ推薦です」と答えた。ほぼ推薦。信仰心があり、見目麗しく、高貴な身分で、特定の相手がいない――でも「ワケあり」な夫たち。
オーウェンは肩を負傷、セルゲイは不能、ヒューゴはコミュ障、リヤーフは傲慢……とくると、まぁ嫌でも気づくよね。聖女の夫には一癖も二癖もあるような人しか選ばれないんじゃないかって。
「で、わたしが夫の子を生むと何がどうなるの?」
ソファに座り、ラルスに着席を促す。テレサは彼の分までお茶を置いてくれていた。ラルスは観念して対面のソファに座る。
「聖女の子は、次の総主教の選定に関わってきます。つまり、聖女が生んだ子の、夫と同郷の者が、総主教に選ばれるのです」
「じゃあ、前の聖女は黄の国の子を生んだってこと?」
「はい。もちろん、任期は定められておりますが、黄の国が優遇される現状に変わりはありません。聖女と子をなすこと自体、高い信仰心の現れですから」
なるほどね。だから、わたしが他の国の夫の子を生めば、その国の聖職者が総主教になれる確率が上がる、と。
わたしが出産することによってどんな利権があるのかと思っていたけれど、まさか七聖教のトップの椅子取りゲームだったなんて。そりゃ、どんな手を使ってでもわたしに命の実を食べさせようとするよね。食べるものには気をつけておかなくちゃ。
「じゃあ、推薦って、国を跨いで、聖職者の間で決められるんだ? 『この男なら聖女が愛することもないだろう』っていうギリギリの基準なわけね?」
「仰る通り、他国の者でも推薦は可能です。候補の中から、いくつかの会議と決を通り、選定されます」
「道理で、ワケありになるわけだ」
いやぁ、聖女でチキンレースをしないでほしかったわぁ。命の実を結ぶ程度には容姿に恵まれているけれど、どこかに難があり子をなすほどには愛を注げないであろう夫――すっごいギリギリを攻めた結果が、あの、七人の夫。
わたしは溜め息をつく。
「申し訳ございませんでした! 聖女様のご夫君方の選定に、我々の思惑が混在するなど」
「まぁ、それは仕方ないでしょ。宗教と政治は切っても切れない関係なんだし。よくあることだよ。問題は順番だよねぇ」
「順、番?」
そう、順番。ラルスはきょとんとしている。
「つまり、七人の子どもを生まなきゃいけないんでしょ? 順番とタイミングが大事ってことよね?」
「……聖女様は、いいのですか?」
「あ、出産するのは怖いからもうちょっと先がいいんだけど、子どもは嫌いじゃないし、今のところ夫にそこまでの不満はないし、残り三人の夫もたぶん大丈夫だと思うし……つまり平等にはできるだろうってことで」
誰か一人を寵愛しない、と約束まではできないけど、平等にセックスすることはできると思うんだよね。嫌いじゃないもん。夫も、セックスも。
「とりあえず、ヒューゴの子どもは後回しにするってことね。最初は誰がいいのかな? 紫の夫? ラルスは紫の国出身なんだよね?」
「そう、ですが……それは聖女様がお決めくださいませ。私の口からはとても」
「じゃ、そうする。夫の意向も聞いてみないといけないし、七人も育てられるかわかんないし。あ、宮女官を増やしてもらえばいっか。予算があるのかわかんないけど」
聖女宮の一切はラルスに一任すればいいかな。エレミアスなら絶対に信用できないけど、ラルスなら信頼に足ると思う。
さ、今夜は橙の夫だっけ? お風呂入ってこようっと。夕飯も食べなきゃいけないし。
「何かあったら、よろしくね、ラルス」
わたしはバァンとラルスの背を叩き、湯殿へと向かう。ラルスがむせていたけど、気にしない。彼がどんな思いでいるのかなんて、気にしていなかったのだ。
聖樹会は、総主教の挨拶によって始まった。それから、教えの一部らしい呪文みたいな言葉を信徒全員で諳んずる。わたしはもちろんサッパリわからないから口パクだ。ベールで口元は見えないけど、一応、ね。
その次は副主教とやらのありがたい説法を聞き、また信徒全員で木琴の音色に合わせて歌を歌った。二階に木琴楽団がいてびっくりした。わたしの結婚式でも演奏してくれたら良かったのに。行進曲もなかったから、かなり味気なかったんだよなぁ。
あとは解散。一時間か、一時間半くらいかな、体感としては。長椅子に座ってお喋りを楽しむ人もいれば、我先にと帰る人もいる。ラルスとテレサは早く帰りたかったみたいだけど、それを許さない人がいた。エレミアスだ。
「次の総主教はまた黄の国から選ばれるかもしれないな」
「そうですか」
「黄の国の一部で、花が落ち始めていると聞いたぞ。実がなるのも時間の問題だろう」
「それは良かったですね。では」
ラルスはエレミアスの相手をしようとせずに、さっさと歩き始める。エレミアスはどうしてもラルスと話をしたいのか、彼を追いかけながら会話を続けている。
ふわりと漂う甘い匂い、普段なら何とも思わないんだろうけど、エレミアスの匂いだと思うと途端に臭い気がするから不思議なものだ。
「紫の国はまだ花が咲かないんだな。まぁ仕方ないか。盲目の夫は後回しにされたのだろうな。聖女様も酷な選択をするものだ」
「聖女様は結婚式で真意を示されたのと同じ順番で、ご夫君の指名をなさいました。勝手な推測はなさらぬように」
「ハハハ。ご夫君ねぇ。どうせ全員ワケありなんだ。そんなふうにへりくだることもなかろう」
あー、ほんと、こいつ嫌い。ムカつく。夫たちを「ワケあり」だと愚弄するなんて。わたしの悪口なら許せるのに、夫たちが悪し様に言われるのは、めちゃくちゃ腹立つなぁ。
怒りを覚えたのはラルスも同じらしい。
「……エレミアス殿、それはご夫君方への不敬と取ってよろしいか?」
「はん? 敬意も不敬も、我々が一番敬うべきは総主教様であって、聖女宮の面々ではないだろうが。それに、不敬罪で問える人間など、宮にはいないだろう。王子であっても貴族であっても、宮にいる限りは身分など剥奪されたのと同義なのだから」
この男、殴ってもいいかしら!?
七聖教のトップは聖女と総主教なのではなくて、彼の中では総主教こそが一番らしい。だから、聖女宮にいる人々を下に見ているのね? そこにラルスも含まれているのね? だから、こんなふうに上から目線なのね?
「どうせお前の意見など、総主教様には届かんよ。総主教様は私と同じく、黄の国出身だからな。紫の国出身の副主教に泣きついたところで、どうにもならないことくらいわかっているだろう?」
総主教と同郷だと何かと優遇されるのかしら? でも、エレミアスが自信満々な理由がわかった。七聖教のトップという後ろ盾があるから、威張り散らしているわけなのね。すっごい嫌な奴!
「早く紫の国に実がなるといいな。そうすりゃ、実を聖女様に食べさせて、赤子を生ませることができるのになぁ! ハハハ、何年先のことになるか、見ものじゃないか。せいぜい、頑張ってくれよ、ラルス」
殴りたい、殴りたい、殴りたい。グーでもパーでも、準備万端よ。
「あぁ、でも、お前は聖女様より先に嫁を孕ませないといけないんだっけ? トニアは相変わらず子を欲しがっているんだから、早く授けてやれよ。そのために、宮に仕えるお前なんかと結婚したんだからな。ハハハ」
エレミアスは言いたいことだけ吐き出すと、さっさと去って行った。殴る準備はできていたのに。あとはタイミングだけだったのに。もう! 次会ったら、絶対あの口を塞いでやる! 顔わかんないけど!
ラルスは溜め息を吐き出した。そりゃもう特大のやつ。肩がめっちゃ上下したもん。お疲れ様。
「お見苦しいところをお見せしてしまいましたね」
「いやぁ、ラルスはよく耐えたと思うよ。わたし、めっちゃ殴る準備してたもん。あの男に次会ったら殴らない自信がないわ」
「……それだけは、絶対におやめください。何をされるかわかりませんから」
そうね。総主教と繋がっている聖職者を殴ったりしたら、ラルスの監督不行届きってことになるもんね。彼の立場が悪くなることだけは絶対に避けなきゃ。聖女が素行不良なだけなんだもの。ラルスは関係ない。
それにしても、エレミアスとの会話の中で意味のわからないものがあった。たぶん、わたしには知らされていないことがまだあるんだろう。聞いてもいいことなのか、わたしにはわからない。でも、聞いておかなければ、後悔する。それだけは、何となくわかるのだ。
部屋に着いてベールを外すなり「わたしの夫はどんなふうにして選ばれたの?」とラルスに尋ねると、少し間があったあと「ほぼ推薦です」と答えた。ほぼ推薦。信仰心があり、見目麗しく、高貴な身分で、特定の相手がいない――でも「ワケあり」な夫たち。
オーウェンは肩を負傷、セルゲイは不能、ヒューゴはコミュ障、リヤーフは傲慢……とくると、まぁ嫌でも気づくよね。聖女の夫には一癖も二癖もあるような人しか選ばれないんじゃないかって。
「で、わたしが夫の子を生むと何がどうなるの?」
ソファに座り、ラルスに着席を促す。テレサは彼の分までお茶を置いてくれていた。ラルスは観念して対面のソファに座る。
「聖女の子は、次の総主教の選定に関わってきます。つまり、聖女が生んだ子の、夫と同郷の者が、総主教に選ばれるのです」
「じゃあ、前の聖女は黄の国の子を生んだってこと?」
「はい。もちろん、任期は定められておりますが、黄の国が優遇される現状に変わりはありません。聖女と子をなすこと自体、高い信仰心の現れですから」
なるほどね。だから、わたしが他の国の夫の子を生めば、その国の聖職者が総主教になれる確率が上がる、と。
わたしが出産することによってどんな利権があるのかと思っていたけれど、まさか七聖教のトップの椅子取りゲームだったなんて。そりゃ、どんな手を使ってでもわたしに命の実を食べさせようとするよね。食べるものには気をつけておかなくちゃ。
「じゃあ、推薦って、国を跨いで、聖職者の間で決められるんだ? 『この男なら聖女が愛することもないだろう』っていうギリギリの基準なわけね?」
「仰る通り、他国の者でも推薦は可能です。候補の中から、いくつかの会議と決を通り、選定されます」
「道理で、ワケありになるわけだ」
いやぁ、聖女でチキンレースをしないでほしかったわぁ。命の実を結ぶ程度には容姿に恵まれているけれど、どこかに難があり子をなすほどには愛を注げないであろう夫――すっごいギリギリを攻めた結果が、あの、七人の夫。
わたしは溜め息をつく。
「申し訳ございませんでした! 聖女様のご夫君方の選定に、我々の思惑が混在するなど」
「まぁ、それは仕方ないでしょ。宗教と政治は切っても切れない関係なんだし。よくあることだよ。問題は順番だよねぇ」
「順、番?」
そう、順番。ラルスはきょとんとしている。
「つまり、七人の子どもを生まなきゃいけないんでしょ? 順番とタイミングが大事ってことよね?」
「……聖女様は、いいのですか?」
「あ、出産するのは怖いからもうちょっと先がいいんだけど、子どもは嫌いじゃないし、今のところ夫にそこまでの不満はないし、残り三人の夫もたぶん大丈夫だと思うし……つまり平等にはできるだろうってことで」
誰か一人を寵愛しない、と約束まではできないけど、平等にセックスすることはできると思うんだよね。嫌いじゃないもん。夫も、セックスも。
「とりあえず、ヒューゴの子どもは後回しにするってことね。最初は誰がいいのかな? 紫の夫? ラルスは紫の国出身なんだよね?」
「そう、ですが……それは聖女様がお決めくださいませ。私の口からはとても」
「じゃ、そうする。夫の意向も聞いてみないといけないし、七人も育てられるかわかんないし。あ、宮女官を増やしてもらえばいっか。予算があるのかわかんないけど」
聖女宮の一切はラルスに一任すればいいかな。エレミアスなら絶対に信用できないけど、ラルスなら信頼に足ると思う。
さ、今夜は橙の夫だっけ? お風呂入ってこようっと。夕飯も食べなきゃいけないし。
「何かあったら、よろしくね、ラルス」
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