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第二夜
053.茶の君との第二夜(一)
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「……これは」と、ランプカバーを見つめて、ベアナードが固まった。刺繍されているのは茶色のファンシーな熊である。カエルやイモではない。
わたしがあまりに期待した視線を送りすぎたのか、ベアナードは困ったような表情で見下ろしてくる。まぁ、別に正解でも不正解でも構わないんだけど。
「……熊か」
「当たり! 当たり! ベアさん、当たり!」
抱きつこうとしたら、肩を押さえられる。広げた両腕がから回る。さすがに扉の前でハグはできないらしい。ちぇっ。
「……これを」
「わ! 花? 木? 木でできた花?」
ベアナードが差し出してきたのは、花びらが五枚ある花と、それが入れられた一輪挿し。どちらも木製。聖樹の花なのかな? こんな薄い花びら、どうやって作ったんだろう? めっちゃ綺麗。
「これはベアナードが作ってくれたの?」
「……得意なんだ。木を扱うのは」
「すごーい! 大工さんだったの? 木こり?」
「……木の加工をしていた」
職人さんだったのかな? よくわかんないけど、聖樹の枝を加工したりする人はいるんだろうな。あれだけ大きな木だもん。枝も大きそう。
「ありがとう、大事にするね」
「……イズミは、なぜ、このようなものを?」
「蓄光石の明かりを消して、ベアさんと早めにいちゃいちゃするために決まってんじゃん」
明かりが消えるまで挿入なしとか、耐えられないもん、わたしが。イケそうでイケないのがずっと続くの、わたしにとっては拷問だよ。
手を繋ぐことなく、わたしとベアナードは廊下を歩く。ちなみに、いつもは居室にも支度部屋にも置いてあるランプは撤去済み。明かりは、今持っているランプだけだ。準備万端である。
「……気を遣わせたか」
「ううん、大丈夫。準備するの楽しかったよ」
居室と支度部屋を通り過ぎ、寝室に入ってすぐ、ベアナードがわたしを抱きしめた。ランプ、まだ隠していないんだけどな。だから、ハグだけ。
「イズミ」と、低い声で求められる。ベアナードは優しくわたしに触れてくれる。……ベッドじゃないよ、ここ。
「……七日が、途方もなく長かった」
ひょいと横抱きに抱えられ、ベッドに向かう。わたしをベッドに横たえ、木製の花とランプをベッド近くのテーブルに置き、ランプが隠される。準備は完璧。
落ちてきた唇は優しいのに、舌は乱暴にわたしの口内に挿入ってくる。自慰を我慢させていたんだもん、しんどかっただろうな。行儀の悪い足で確認すると、確かに硬い。
嬉しいなぁ。こうやって、勃たせて、わたしを求めてくれる夫がいる。すごく嬉しい。だから、七人のことを好きになってしまう。
「イズミを、抱きたくて仕方なかった」
「一人でしていない?」
「……我慢した。毎日、毎晩、焦がれながらも、この時間を待っていた」
寝間着のボタンが外され、ベアナードの舌が肌を這う。くすぐったいのは、髭のせいかな。熱くて気持ちいい。
ベアナードは性急な愛撫をしない。ゆっくりじっくり、優しく慈しみながら指と舌と、たまに髭で高めていってくれる。自分は相当我慢しているのに。いじらしいなぁ。
「ベアさん、挿れていいんだよ?」
「……まだだ」
「わたし、ちょっと痛くても大丈夫だよ」
「……ダメだ。加減がわからないうちは優しくしたい」
ベアナードはドMなのかな。耐えるほうを選ぶだなんて。ぐずぐずにとろけた中を堪能したいと言うのなら、大変趣味がいいことだけど。
胸が弱いことを知られているから、ベアナードはそこを重点的に攻めてくる。今日はベッドの上にいるため比較的涼しい。やっぱりランプカバーを作って正解だった。
ベアナードのも触りたいんだけど、全然手が届かない。仕方なく太腿で撫でてみると、夫は苦笑する。
「そんなに欲しいか?」
「欲しいって言ったら挿れてくれる?」
「……善処する」
ってことは、挿れてくれないんだよねぇ。わかってるよ。
ベアナードは乳首を舐めながら蜜口に指を侵入させてくる。既に濡れそぼったそこは、夫の指を難なく飲み込む。あぁ、気持ちいい。乳首と陰核と膣内のいいところを的確に攻められると、一瞬で昇りつめてしまう。
「ベアナ、ド、イッちゃ、あ」
「……ああ」
前回は全然イカせてくれなかったのに、今夜は素直にイカせてくれるみたい。ベアナードは離れることなく、わたしが達するのを待ってくれる。
「ベア、さ、っあ、あ」
ぎゅうとベアナードの指を締め上げながら、何度か腰が跳ねる。弛緩した体に、ベアナードはさらに快感を刻み込んでいく。指が増えても、時折乳首を噛まれても、わたしの体はすんなりそれを受け入れる。
ベアナードのことを信頼している。彼はわたしが嫌がることはしないし、痛いこともしない。絶対的な信頼が、セックスの快感に繋がっているような気がする。
三回イカされたあと、「ハァ」と短くベアナードが溜め息を吐いた。耳元で低い吐息が聞こえる。そろそろ我慢の限界かな? ベアナード、かなり我慢強いよねぇ。
「……イズミ」
「うん、わたしも欲しい」
「まだ、何も言っていないが」
「えぇー。挿れてくれるんじゃないの?」
ベアナードをぎゅうと抱きしめ、笑う。あ、違う、笑い合う。ベアナードが笑ってる。真っ暗で見えないけど笑ってる。
「挿れたい。イズミが欲しい」
濡れたあわいに押し付けられた熱は、徐々に蜜口へと進んでくる。ぐちゅぐちゅと淫靡な音が響いて、夫の甘い吐息が混じる。
「いいよ、ベアナード。来て」と囁くと、キスと同時に肉杭が隘路を割った。
わたしがあまりに期待した視線を送りすぎたのか、ベアナードは困ったような表情で見下ろしてくる。まぁ、別に正解でも不正解でも構わないんだけど。
「……熊か」
「当たり! 当たり! ベアさん、当たり!」
抱きつこうとしたら、肩を押さえられる。広げた両腕がから回る。さすがに扉の前でハグはできないらしい。ちぇっ。
「……これを」
「わ! 花? 木? 木でできた花?」
ベアナードが差し出してきたのは、花びらが五枚ある花と、それが入れられた一輪挿し。どちらも木製。聖樹の花なのかな? こんな薄い花びら、どうやって作ったんだろう? めっちゃ綺麗。
「これはベアナードが作ってくれたの?」
「……得意なんだ。木を扱うのは」
「すごーい! 大工さんだったの? 木こり?」
「……木の加工をしていた」
職人さんだったのかな? よくわかんないけど、聖樹の枝を加工したりする人はいるんだろうな。あれだけ大きな木だもん。枝も大きそう。
「ありがとう、大事にするね」
「……イズミは、なぜ、このようなものを?」
「蓄光石の明かりを消して、ベアさんと早めにいちゃいちゃするために決まってんじゃん」
明かりが消えるまで挿入なしとか、耐えられないもん、わたしが。イケそうでイケないのがずっと続くの、わたしにとっては拷問だよ。
手を繋ぐことなく、わたしとベアナードは廊下を歩く。ちなみに、いつもは居室にも支度部屋にも置いてあるランプは撤去済み。明かりは、今持っているランプだけだ。準備万端である。
「……気を遣わせたか」
「ううん、大丈夫。準備するの楽しかったよ」
居室と支度部屋を通り過ぎ、寝室に入ってすぐ、ベアナードがわたしを抱きしめた。ランプ、まだ隠していないんだけどな。だから、ハグだけ。
「イズミ」と、低い声で求められる。ベアナードは優しくわたしに触れてくれる。……ベッドじゃないよ、ここ。
「……七日が、途方もなく長かった」
ひょいと横抱きに抱えられ、ベッドに向かう。わたしをベッドに横たえ、木製の花とランプをベッド近くのテーブルに置き、ランプが隠される。準備は完璧。
落ちてきた唇は優しいのに、舌は乱暴にわたしの口内に挿入ってくる。自慰を我慢させていたんだもん、しんどかっただろうな。行儀の悪い足で確認すると、確かに硬い。
嬉しいなぁ。こうやって、勃たせて、わたしを求めてくれる夫がいる。すごく嬉しい。だから、七人のことを好きになってしまう。
「イズミを、抱きたくて仕方なかった」
「一人でしていない?」
「……我慢した。毎日、毎晩、焦がれながらも、この時間を待っていた」
寝間着のボタンが外され、ベアナードの舌が肌を這う。くすぐったいのは、髭のせいかな。熱くて気持ちいい。
ベアナードは性急な愛撫をしない。ゆっくりじっくり、優しく慈しみながら指と舌と、たまに髭で高めていってくれる。自分は相当我慢しているのに。いじらしいなぁ。
「ベアさん、挿れていいんだよ?」
「……まだだ」
「わたし、ちょっと痛くても大丈夫だよ」
「……ダメだ。加減がわからないうちは優しくしたい」
ベアナードはドMなのかな。耐えるほうを選ぶだなんて。ぐずぐずにとろけた中を堪能したいと言うのなら、大変趣味がいいことだけど。
胸が弱いことを知られているから、ベアナードはそこを重点的に攻めてくる。今日はベッドの上にいるため比較的涼しい。やっぱりランプカバーを作って正解だった。
ベアナードのも触りたいんだけど、全然手が届かない。仕方なく太腿で撫でてみると、夫は苦笑する。
「そんなに欲しいか?」
「欲しいって言ったら挿れてくれる?」
「……善処する」
ってことは、挿れてくれないんだよねぇ。わかってるよ。
ベアナードは乳首を舐めながら蜜口に指を侵入させてくる。既に濡れそぼったそこは、夫の指を難なく飲み込む。あぁ、気持ちいい。乳首と陰核と膣内のいいところを的確に攻められると、一瞬で昇りつめてしまう。
「ベアナ、ド、イッちゃ、あ」
「……ああ」
前回は全然イカせてくれなかったのに、今夜は素直にイカせてくれるみたい。ベアナードは離れることなく、わたしが達するのを待ってくれる。
「ベア、さ、っあ、あ」
ぎゅうとベアナードの指を締め上げながら、何度か腰が跳ねる。弛緩した体に、ベアナードはさらに快感を刻み込んでいく。指が増えても、時折乳首を噛まれても、わたしの体はすんなりそれを受け入れる。
ベアナードのことを信頼している。彼はわたしが嫌がることはしないし、痛いこともしない。絶対的な信頼が、セックスの快感に繋がっているような気がする。
三回イカされたあと、「ハァ」と短くベアナードが溜め息を吐いた。耳元で低い吐息が聞こえる。そろそろ我慢の限界かな? ベアナード、かなり我慢強いよねぇ。
「……イズミ」
「うん、わたしも欲しい」
「まだ、何も言っていないが」
「えぇー。挿れてくれるんじゃないの?」
ベアナードをぎゅうと抱きしめ、笑う。あ、違う、笑い合う。ベアナードが笑ってる。真っ暗で見えないけど笑ってる。
「挿れたい。イズミが欲しい」
濡れたあわいに押し付けられた熱は、徐々に蜜口へと進んでくる。ぐちゅぐちゅと淫靡な音が響いて、夫の甘い吐息が混じる。
「いいよ、ベアナード。来て」と囁くと、キスと同時に肉杭が隘路を割った。
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