私、異世界で保護されました! 〜やりたいことのために猪突猛進です〜

星宮歌

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第二章 本当の心

第三十五話 ケインの異変

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 最近、ケインの様子がおかしい。
 ロレーヌに色々な事情を暴露した後、私は元通り、とまではいかないものの、ケインと普通に接することができるようになったとは思う。ただ、そうすることができたのは、ケイン自身の変化が大きかった。

 話しかけても上の空。いつもなら一緒に行動したがるのに、それもなくなり、むしろ私を避けているようにすら感じられる有り様だ。

 きっと、姉離れがようやくできるようになったのだろう。もしくは、反抗期なのかもしれない。

 そう、考えていた私は、その日、再びロレーヌに捕まることとなる。


「そ・れ・で? 今度は何があったの? ミオ、この前以上に酷い顔よ?」


 教室に入った直後、ロレーヌは問答無用で私を救護室まで連行し、マリンさんに一言断ってから尋問を開始する。
 ただ、そう問われたところで、私はどう答えて良いのか分からなかった。


「何も、ないけど……」

「……そんな顔して、何もないっていうのはあり得ないと思うわよ?」


 そうは言われても、本当に分からない。今、自分がどんな顔をしているのかすら、自分では分からないのだから。


「……じゃあ、聞き方を変えるね。最近、何か変わったことはあった?」


 本当に分からないという私の思いが伝わったのか、ロレーヌは別の質問を投げかけてくる。


「変わった、こと……。それなら、ケインが、私の、弟が、ね――――」


 変わったことなんて、それ以外になかった。だから、私はそれをロレーヌに説明し……頭を抱えられた。


「ロレーヌ?」


 しかも、どんどん顔色が青くなっていくその姿に、私はたまらず声をかける。


「……たかもしれない」

「え?」

「あの女が、接触したかもしれない」


 『あの女』が誰のことかは分からない。それでも、私の心臓はドクリと音を立て、嫌な予感に駆られる。


「どうしよう、もしかしたら、私のせいで、ミオまで……」

「ロレーヌ、落ち着いて。深呼吸して。それから、ゆっくりで良いから、何を思ったのか教えてちょうだい」


 顔を上げたロレーヌは、今にも泣き出しそうな表情で、どうにか落ち着いてほしいと背中を擦る。


「ごめん、ごめんね……」


 謝罪を続けるロレーヌが落ち着いた頃には、一限目の授業終了の鐘が鳴っていた。






「もしかしたら、私の片翼を奪った女が、私がミオと仲良くなったせいでケイン君に接触したかもしれないの」


 そうして、ロレーヌからもたらされたのは、そんな恐ろしい内容だった。
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