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第一章 神嫌いの最凶神
第三十三話 助けを求める声
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デルロとジュライアが説明したのは、シグルドの容態と、その対処法について。悪神サイドの淫の神によって、性欲が爆発寸前なシグルド。しかし、獣の神という特性上、番以外では性欲を発散できず、唯一の例外としては淫の神が挙げられるものの、それをシグルドはずっと拒否し続けてきた。
それでルカが手に入るわけでもないのに、ルカ以外は受け入れられないと言う。シグルドが本当に危険になれば、手段を選ぶつもりはないと考えるのがデルロやジュライアであり、実際、今、生死の境をさまようほどに悶絶している状態なので、とにかく淫の神を連れてきた、というのが彼らの言い分だった。
「……ねぇ、バカなの? その淫の神をあの変態に捧げたところで、殺されるしかないと思うんだけど?」
「それは、我々が止めようと」
「無理だね。だって、僕の軽い威圧だけで失神するんだよ? あの変態は仮にもなんとかってところの団長になれる実力者でしょ? その淫の神がどれだけの覚悟を持っているかとか、全然知らないし興味もないけど、できることとできないことの区別くらいつかないわけ?」
そんな苛立ち紛れの言葉に、デルロもジュライアも沈黙する。たとえ、淫の神を守れたとしても、それでシグルドが助かることに繋がるかといえば、その可能性はとんでもなく薄かった。
「な、ら……ならっ、団長をっ、助けてくださいよっ! あなたは、団長の番です! だからっ、どうか! 俺にできることは何でもします!」
シグルドが助かる見込みは低い。しかし、ルカが協力するのであれば、話は変わってくる。デルロは、プライドも何もかもを捨てて、ルカの前で土下座する。
「っ、俺からも頼む。アイツは、俺の大切な戦友なんだっ。俺も、できることはなんだってしようっ」
続いて、ジュライアまでもが土下座する姿を見て、ルカの反応はというと……。
「嫌だね」
ルカの拒絶に、デルロは目の前の存在がどういうものかを忘れたかのように、目を吊り上げて立ち上がる。
「あなたであればっ、団長は助かるんだ! それなのにっ、何でっ!!」
「はっ! 僕はあの変態を助ける義理なんてないよっ」
ルカの胸ぐらを掴むデルロの表情は、怒りと悲しみとでごちゃまぜだ。しかし、ルカはそんなデルロの手を振り払い、スタスタと部屋の奥へ入ろうとする。そこに居るのは、この家の主のみにもかかわらず。
「っ、そっちはっ」
「僕は、僕の用事があって来た。邪魔しないでよね?」
そんな言葉とともに、やたらと強力な結界が張られて、シグルドの元へと向かう道が絶たれる。
「っ、助けないのでは、なかったのですか……?」
呆然とするデルロに、ルカは何も応えることなく、さっさとシグルドが居る部屋へと入ってしまう。
そこに残されたデルロとジュライアは、しばらくの間、動くことができなかった。
それでルカが手に入るわけでもないのに、ルカ以外は受け入れられないと言う。シグルドが本当に危険になれば、手段を選ぶつもりはないと考えるのがデルロやジュライアであり、実際、今、生死の境をさまようほどに悶絶している状態なので、とにかく淫の神を連れてきた、というのが彼らの言い分だった。
「……ねぇ、バカなの? その淫の神をあの変態に捧げたところで、殺されるしかないと思うんだけど?」
「それは、我々が止めようと」
「無理だね。だって、僕の軽い威圧だけで失神するんだよ? あの変態は仮にもなんとかってところの団長になれる実力者でしょ? その淫の神がどれだけの覚悟を持っているかとか、全然知らないし興味もないけど、できることとできないことの区別くらいつかないわけ?」
そんな苛立ち紛れの言葉に、デルロもジュライアも沈黙する。たとえ、淫の神を守れたとしても、それでシグルドが助かることに繋がるかといえば、その可能性はとんでもなく薄かった。
「な、ら……ならっ、団長をっ、助けてくださいよっ! あなたは、団長の番です! だからっ、どうか! 俺にできることは何でもします!」
シグルドが助かる見込みは低い。しかし、ルカが協力するのであれば、話は変わってくる。デルロは、プライドも何もかもを捨てて、ルカの前で土下座する。
「っ、俺からも頼む。アイツは、俺の大切な戦友なんだっ。俺も、できることはなんだってしようっ」
続いて、ジュライアまでもが土下座する姿を見て、ルカの反応はというと……。
「嫌だね」
ルカの拒絶に、デルロは目の前の存在がどういうものかを忘れたかのように、目を吊り上げて立ち上がる。
「あなたであればっ、団長は助かるんだ! それなのにっ、何でっ!!」
「はっ! 僕はあの変態を助ける義理なんてないよっ」
ルカの胸ぐらを掴むデルロの表情は、怒りと悲しみとでごちゃまぜだ。しかし、ルカはそんなデルロの手を振り払い、スタスタと部屋の奥へ入ろうとする。そこに居るのは、この家の主のみにもかかわらず。
「っ、そっちはっ」
「僕は、僕の用事があって来た。邪魔しないでよね?」
そんな言葉とともに、やたらと強力な結界が張られて、シグルドの元へと向かう道が絶たれる。
「っ、助けないのでは、なかったのですか……?」
呆然とするデルロに、ルカは何も応えることなく、さっさとシグルドが居る部屋へと入ってしまう。
そこに残されたデルロとジュライアは、しばらくの間、動くことができなかった。
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