俺の番が最凶過ぎるっ

星宮歌

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第二章 復活と変化

第四十四話 シグルドは檻へ

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 時は遡り、シグルドがルカの息子を親戚だと思って声をかけた後のこと。シグルドは、衝撃の事実に固まっていた。


「ルカ、が……母親……?」


 シグルドが招かれたのは、彼のルキの家。互いの自己紹介で知ったその事実に、シグルドのショックは簡単には抜けてくれない。むしろ、もし、シグルドが神格障害を持たない獣の神であれば、即座にルカの子供だというルキを殺しにかかっていたはずだった。それほどに、本来、番に対する想いは強いものなのだ。


「そう、だから、ね? あなたは、僕に認められなきゃならないってことは分かるよね?」


 しかし、ルキはそんな一般的なことを知らないのか、番という意識を持たない一般の神を相手にするかのような常識を口にする。


「ぐぅ……」


 シグルドは、ただ、獣の神としては少し様々な点で劣るというだけで、番への想いが強いことに変わりはない。そのため、そんなルキの言葉を容易には受け入れられない。むしろ、ルキへの殺意が全くないわけではない状態。
 ルカの夫も子供も、自分や自分の子供だけで十分だという心が、狂気を生み出す。


「それとも、僕を殺して、母上に嫌われたいです?」

「うぐっ」


 しかし、ルキは常識を知らないとは言え、殺意くらいは感じ取れる。そのために告げただけの言葉だったが、シグルドには、効果覿面だ。


「…………………………分かった。努力、しよう」


 長い、長い沈黙の後に出した答え。それに満足そうにうなずいたルキは、ニコニコと微笑む。


「なら、まずは僕と仲良くなろう。僕の部屋に案内するから、ね?」

「あ、あぁ……」


 まだ、心の整理はハッキリとついていないものの、承諾してしまったからには仕方ないと、シグルドはルキの後についていく。そして……。


「? 随分と、その……物がない部屋、だな」


 ルキに案内された部屋は、大きなベッドが一つと、かなり小さなクローゼットのみ。あれだけの小ささならば、服を四着かけられるかどうか、といったところだろうと当たりをつけたシグルドだが、直截な物言いで嫌われるわけにはいかないと、必死に言葉を選ぶ。


「うん、そうだね。僕も、そう思う。でも、僕の部屋は、別にこれでも良いんだ」


 そう、ルキが告げた直後、グラリとシグルドの体が揺れる。


「獣の神にはとっても良く効く、無臭の毒ガス。ねぇ、今、どんな感じかな?」


 シグルドへと振り向いてニッコリと笑うルキの姿を目に捉えながら、シグルドは、その場に倒れ込む。


「ぁ……ん、で……」

「うん? だって、僕と母上の邪魔をする者は、いらないでしょう? あっ、でも、殺しはしないから安心してね?」


 指一本動かせなくなったシグルドへ、困ったような表情で告げたルキは、そのまま、シグルドを引きずって、檻の中へと閉じ込めたのだった。
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