悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第六十六話 楽しいマスク(ミーシャ視点)

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 ナーナとして、アクー達を誘導するのは、そう難しいことではなかった。ただ、彼らには爆発させた薬を吸い込んでほしくないため、少しばかり特殊なマスクを着用してもらったが……。


「なぁ、なんで、動物の口が描かれたマスクなんだ?」


 赤い髪のアクーには、青い狼の舌を出した口が描かれたマスクを。


「えー、面白いと思いますけど?」


 黄色の髪のジークには、黄色いアヒルのようなくちばしが描かれたマスクを。


「……他の者には、見られたくありませんね」


 緑の髪のリンクスには、ニヒルな笑みを浮かべた茶色い猫の口が描かれたマスクを。

 それぞれに、わりと個性的なマスクを着用した彼らは、私が『お兄ちゃん達! 私が作ったマスクを付けてちょうだいっ』と頼んだら、実物を見ないままに快諾して、実物を見た途端、固まる、爆笑する、困り果てるなどの反応を示した。ただ、言ったことは守る主義なのか、それとも、幼い少女と思われている私に嘘つきとして覚えてほしくないのか、ぎこちなかったり、笑い死にそうになっていたり、悩んだりしながらも、一人一人に渡せば、ちゃんと着用してくれていた。


「えっと、可愛いでしょ!」


 そして、詳しく聞かれないために、えっへんと胸を張って自慢げにすれば、彼らがこのマスクの柄について追及することはない。
 ちなみに、私はうさぎの口のマスクで、こちらは、頬が赤く染まっている仕様である。


「ナーナのは可愛いな」

「確かに、ナーナちゃんは最高ですわ」

「ナーナなら、他のものも似合うかもしれませんね?」


 一応、一番まともな柄の一つを選んだ私だが、この三人はべた褒め過ぎではないだろうかと少し心配になる。と、いうか……。


(何だろう……この状況が、乙女ゲームのハーレム状態みたいに感じられるのは……?)


 なんとなーく妙な空気を感じつつも、彼らがおかしな扉を開いていないことを密かに祈って、城へと足を踏み入れていく。


「なぁ、なんか、さっきから奇声をあげて走るやつとか、いきなり倒れるやつとか、助けを求めてるやつとかがちらほら見えるんだが、何が起こってるんだ?」


 しばらく城内を歩けば、当然、薬の影響下にある人間達の姿を目撃することにもなる。


「えっとね? このマスクをしてないと、幻覚を見てああなっちゃうんだって!」


 厳密に言えば、薬が蔓延する場所にでも行かなければ問題ないのだが、そう返答した瞬間、彼らはしっかりとマスクを手で押さえる。
 確かに、酷い者は、白目を剝いて気絶していたりするので、当然の反応だろう。
 そうして、私達は黒幕の居場所を捜し続け、ようやく、彼女の姿を目にすることとなった。
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