悪役令嬢の神様ライフ

第二章 異質な神界

第百一話 嫌がらせの日々１（ピンク頭視点）

　私の名前はリエラ。この世界の上位に当たる世界から来た神。目的は、まぁ、色々あるけど、一番大切なのは私はこの世界で乙女ゲームの再現をして、面白おかしく過ごすことだった。だから……。


「わ、私ぃ、フィオナさん達に、虐められててぇ」


　見目が良い男神達にそう言えば、彼らは目に見えて憤慨してくれる。しかし、いい加減、本当にいじめに合っている現場というものを作らなければならないと感じ始めた頃、それは始まった。

　学校へ向かって歩き、校舎に入る、というところで、突如として感じた悪寒に、思わず一歩下がる。
　そして、バシャアッ！　と落ちてきたそれの臭いを認識した途端、私は落ちそうになる意識をどうにか繋ぎ止めて、そこから逃走を計る。しかし……。

　バシャアッ！　バシャアッ！　バシャアッ！　バシャアッ！！

　逃げても逃げても、真っ黒で、ドロドロしたそれは、意思を持って私を追いかけてくる。


（何あれ何あれ何あれ何あれっ！！）


　ソレは、とにかく臭い。あんなものがかかったら最後、神として死ねるのではないかというくらいに臭い。
　真っ青になりながら、必死に走る私は、息も不用意にはできない。なぜか、神力も上手く使えず、走る以外に方法はないし、助けを呼ぼうにも、口を開いた途端に意識を失いそうなほどにその腐臭は強烈だ。いや、そもそも、この臭いによって、私から百メートル以上離れていた神も、意識を失っている。つまりは、私は一人で、これをどうにかするしかないわけで……。


（こ、こんなの、乙女ゲームの展開じゃないぃぃいっ！！）


　誰が仕掛けたかは不明だが、ソレは、明確に私を狙っている。しかも、黒幕は、私がソレを頭から被るのがお望みなのか、いちいち私の身長ほどに飛び上がっては襲いかかってくる。


（いぃやぁぁぁぁぁあっ！！）


　もしかしたら、これは嫌がらせかもしれない。嫌がらせかもしれない、が、あまりにも、度が過ぎている。


（逃げなきゃっ！　ううん、隠れなきゃっ）


　今は、自分の足以外に頼れるものはない。しかし、さすがにあまりの臭気に、意識を飛ばさないようにするのも限界が近い。とにかく逃げなければと、いつの間にかやってきていたかつての商業区画に駆け込むと、適当な建物の中へ入る。しかし……。


「おぶぅ」


　建物の中に満ちた、アレと同じ臭気。そして直後にバシャアッ、と前から突進してきたソレを顔面で受けて、私は、完全に意識を飛ばした。