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第二章 目論む者達
第三十八話 甘く蕩けて
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(うぅ……やっぱり、お説教、ですよね?)
あの事件から目が覚めて、動けることを確認した私は、気が進まないながらも、今、いつもアルムとお茶会をしている場所へと向かっている。ベラ曰く、アルムがそこで私を待っていると言うのだ。
(でも、私もあんな状態になって、対処できるはずもありませんし……)
そう思いながら、それがただの言い訳だということを、私自身が一番理解していた。あの時、あの使用人が怪しいと踏んだ時点でアルムに連絡していれば、拐われることなどなかったかもしれないのだから。
「はぁ……」
憂鬱なため息は、前後を歩いて護衛している人達にも聞こえたかもしれない。拐われたせいか、目が覚めた時には、すでに護衛がつくようになっていて四人ほど護衛を紹介されていた。今は、そのうちの二人が私の前と後ろに一人ずつ居る。
いつものテラスへ続く扉の前に出た私は、一つ深呼吸をして、そっと扉を開ける。すると……。
「……アルム?」
出された紅茶に手をつけず、何かの本を難しい表情で真剣に読んでいるアルムがそこにはいた。
「シェイラ……? っ、体調はっ、もう大丈夫なのか!?」
「は、はい、おかげさまで?」
「いや、まだ歩くのはダメだろうっ。なぜ、こんなところまで来たんだっ。ベラは止めなかったのか!?」
「えっ? あ、あの?」
どういうわけか、アルムは私がここに来ることを知らなかったらしい。アルムに呼ばれたはずなのにどういうことだろうかと思っていると、本を置いて立ち上がったアルムが、いつの間にか目の前に居た。
「ア、アルム? きゃっ」
明らかに怒っている様子のアルムは、私の戸惑いに応えることなく、私を抱き上げる。……そう、再び、お姫様抱っこだ。
「ア、アアア、アルム!?」
「ベッドまで運ぼう」
「い、いえ、あの、歩けますからっ」
必死にアルムに抗議するものの、アルムは眉間にシワを寄せたまま、私の意見を受け入れてくれる様子はない。
「シェイラはしばらく養生すべきだ。あぁ、魔法も禁止だな。諜報活動も、しばらくはギースに任せることにする」
「いえ、私は元気で「ダメだ」……はい」
先ほどまで怒っていたはずのアルムが、泣きそうな顔でそう言ってきたため、私はついついうなずいてしまう。
(……心配、かけすぎたようですね)
どうやら、しばらくはアルムの好きにさせるしかなさそうだ。ただ……。
「お願いします。歩くくらいは、させてください」
「嫌だ」
私の部屋からテラスまでは、それなりに距離がある。つまりは、その分人目に触れるというわけで……あの夜会の日のことを考えると今さらなのかもしれないが、羞恥心で顔にどんどん熱が集まっていく。しかし、そうすると、なぜかアルムの歩く速度が速くなる。
ほどなくして部屋に着いた私は、どこか満足げな笑みを浮かべたベラに迎え入れられ、こうなることを予測されていたことに気づく。
「ベ、ベラ?」
「後はごゆっくりー」
綺麗に整ったベッドに寝かしつけられた私は、なぜか、側にあった椅子に座り込むアルムを見て、ベラに助けを求めるが、ニンマリとした笑顔を浮かべて退出されてしまう。護衛もいつの間にか居なくなっていて、いたたまれないことこの上ない。
「シェイラ……」
「ひゃいっ」
とても、とても切ない声で名前を呼ばれて、つい、舌がもつれる。
「居なくならないでくれ」
まるで愛の告白でもしているかのように、アルムの瞳には熱が籠っていて、戸惑いが大きくなる。と、いうより……。
(ドキドキがっ、ドキドキですっ)
ただ、アルムを見つめているだけなのに、この状態は何なのだろうかと混乱しながらも、不安そうなアルムに、私はどうにか返事をする。
「だ、大丈夫です。私は、ここに居ますからっ」
「そうか」
そうして甘く、フワリと微笑むアルムを見て、私の心臓はより大きく音を立てるのだった。
あの事件から目が覚めて、動けることを確認した私は、気が進まないながらも、今、いつもアルムとお茶会をしている場所へと向かっている。ベラ曰く、アルムがそこで私を待っていると言うのだ。
(でも、私もあんな状態になって、対処できるはずもありませんし……)
そう思いながら、それがただの言い訳だということを、私自身が一番理解していた。あの時、あの使用人が怪しいと踏んだ時点でアルムに連絡していれば、拐われることなどなかったかもしれないのだから。
「はぁ……」
憂鬱なため息は、前後を歩いて護衛している人達にも聞こえたかもしれない。拐われたせいか、目が覚めた時には、すでに護衛がつくようになっていて四人ほど護衛を紹介されていた。今は、そのうちの二人が私の前と後ろに一人ずつ居る。
いつものテラスへ続く扉の前に出た私は、一つ深呼吸をして、そっと扉を開ける。すると……。
「……アルム?」
出された紅茶に手をつけず、何かの本を難しい表情で真剣に読んでいるアルムがそこにはいた。
「シェイラ……? っ、体調はっ、もう大丈夫なのか!?」
「は、はい、おかげさまで?」
「いや、まだ歩くのはダメだろうっ。なぜ、こんなところまで来たんだっ。ベラは止めなかったのか!?」
「えっ? あ、あの?」
どういうわけか、アルムは私がここに来ることを知らなかったらしい。アルムに呼ばれたはずなのにどういうことだろうかと思っていると、本を置いて立ち上がったアルムが、いつの間にか目の前に居た。
「ア、アルム? きゃっ」
明らかに怒っている様子のアルムは、私の戸惑いに応えることなく、私を抱き上げる。……そう、再び、お姫様抱っこだ。
「ア、アアア、アルム!?」
「ベッドまで運ぼう」
「い、いえ、あの、歩けますからっ」
必死にアルムに抗議するものの、アルムは眉間にシワを寄せたまま、私の意見を受け入れてくれる様子はない。
「シェイラはしばらく養生すべきだ。あぁ、魔法も禁止だな。諜報活動も、しばらくはギースに任せることにする」
「いえ、私は元気で「ダメだ」……はい」
先ほどまで怒っていたはずのアルムが、泣きそうな顔でそう言ってきたため、私はついついうなずいてしまう。
(……心配、かけすぎたようですね)
どうやら、しばらくはアルムの好きにさせるしかなさそうだ。ただ……。
「お願いします。歩くくらいは、させてください」
「嫌だ」
私の部屋からテラスまでは、それなりに距離がある。つまりは、その分人目に触れるというわけで……あの夜会の日のことを考えると今さらなのかもしれないが、羞恥心で顔にどんどん熱が集まっていく。しかし、そうすると、なぜかアルムの歩く速度が速くなる。
ほどなくして部屋に着いた私は、どこか満足げな笑みを浮かべたベラに迎え入れられ、こうなることを予測されていたことに気づく。
「ベ、ベラ?」
「後はごゆっくりー」
綺麗に整ったベッドに寝かしつけられた私は、なぜか、側にあった椅子に座り込むアルムを見て、ベラに助けを求めるが、ニンマリとした笑顔を浮かべて退出されてしまう。護衛もいつの間にか居なくなっていて、いたたまれないことこの上ない。
「シェイラ……」
「ひゃいっ」
とても、とても切ない声で名前を呼ばれて、つい、舌がもつれる。
「居なくならないでくれ」
まるで愛の告白でもしているかのように、アルムの瞳には熱が籠っていて、戸惑いが大きくなる。と、いうより……。
(ドキドキがっ、ドキドキですっ)
ただ、アルムを見つめているだけなのに、この状態は何なのだろうかと混乱しながらも、不安そうなアルムに、私はどうにか返事をする。
「だ、大丈夫です。私は、ここに居ますからっ」
「そうか」
そうして甘く、フワリと微笑むアルムを見て、私の心臓はより大きく音を立てるのだった。
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