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第二章 目論む者達
第三十九話 胸の痛み
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(こんな……こんなのって、ないです……)
荒れ狂う心音を聞きながら、側で手を握っていてくれるアルムを見て、私は嘆く。
(想いを自覚した途端に、失恋だなんて……)
元々、貴族令嬢であったがゆえに、恋愛などできるわけもないと諦めていた。しかし、それでも憧れがないわけではなく、いつか、私の王子様(エルヴィス王子ではない。けっして、ないっ)が現れてくれないだろうかと思ったこともある。もちろん、それがあり得ないことは重々承知していた。それ、なのに……。
(私は、アルムのことが……)
『好き』なのだと自覚した心は、その直後大きく軋む。なぜなら、私は知っているのだから。アルムは、お姉様に恋をしているということを、一番、良く知っているのだから……。
「シェイラ? どこか痛いところでもあるのか?」
「い、いえ、痛みなどありませんよっ」
どうにか笑顔を浮かべて、平気で嘘を吐く私は、きっと、醜いだろう。
本当は、痛かった。とても……とっても、痛かった。胸が、心が、痛くて痛くて堪らなかった。それでも、それを悟らせるわけにはいかない。私は、『絶対者』の妹で、アルムとは同志なだけなのだから。それ以上ではあり得ないのだから……。
眉間にシワを寄せたアルムに、私は懸命に笑顔を浮かべる。
「ほら、私はここで大人しくしていますから、仕事をした方が良いのでは? アルムにしかできないことは、たくさんありますでしょう?」
「……それは、そうだが……ボクは、シェイラの側に居たい」
ズクリ、と、失恋の傷が盛大な痛みを訴える。アルムの心配は、ただの友人へ向ける思いでしかない。それを良く知っている私は、だからこそ、今は一人になりたかった。
「私は、側に居たくありません」
「っ……」
気づいた時には、そんな言葉が口からこぼれていて、それに、アルムは珍しく傷ついたような表情を浮かべる。
「っ、あ……いえ、その……」
その表情に驚いて、慌てて訂正しようとするものの、こういう時に限って、口が上手く回らない。
「すまなかった。シェイラ」
深く頭を下げて謝罪したアルムに、私はますます何も言えなくなってしまう。そうこうしているうちに、私の手を包んでいた温もりは消え、アルムが立ち上がってしまう。
(ま、待ってっ)
アルムを傷つけてしまった事実がショックで、どうすれば良いのか分からないままだったものの、このままアルムを帰してはいけないということだけははっきりしていて、私は咄嗟に声を上げようとしたものの……それは、慌ただしい足音にかき消される。
「失礼します。陛下、『絶対者』様がお越しです」
「っ、すぐ向かう」
それは、お姉様の来訪を告げるもの。そして、すぐに反応したアルムを見て、再び、胸の痛みが強くなる。
(……いいえ、これで……これで良いんです……)
先ほどまでは引き留めなければと思っていたものの、この瞬間に、私は、その必要はないのだと気づいてしまった。
所詮、私は他国の人間。どんなにアルムが親しくしてくれたところで、いずれは離れる運命にあるのだ。アルムにとっても、私にとっても、お互いが近くに居るメリットなどない。ならば、今のうちから離れる準備をしていても良いではないか。
アルムが部屋を出たのを見送った私は、ギュッと枕に顔を埋めて、胸の痛みをやり過ごすのだった。
荒れ狂う心音を聞きながら、側で手を握っていてくれるアルムを見て、私は嘆く。
(想いを自覚した途端に、失恋だなんて……)
元々、貴族令嬢であったがゆえに、恋愛などできるわけもないと諦めていた。しかし、それでも憧れがないわけではなく、いつか、私の王子様(エルヴィス王子ではない。けっして、ないっ)が現れてくれないだろうかと思ったこともある。もちろん、それがあり得ないことは重々承知していた。それ、なのに……。
(私は、アルムのことが……)
『好き』なのだと自覚した心は、その直後大きく軋む。なぜなら、私は知っているのだから。アルムは、お姉様に恋をしているということを、一番、良く知っているのだから……。
「シェイラ? どこか痛いところでもあるのか?」
「い、いえ、痛みなどありませんよっ」
どうにか笑顔を浮かべて、平気で嘘を吐く私は、きっと、醜いだろう。
本当は、痛かった。とても……とっても、痛かった。胸が、心が、痛くて痛くて堪らなかった。それでも、それを悟らせるわけにはいかない。私は、『絶対者』の妹で、アルムとは同志なだけなのだから。それ以上ではあり得ないのだから……。
眉間にシワを寄せたアルムに、私は懸命に笑顔を浮かべる。
「ほら、私はここで大人しくしていますから、仕事をした方が良いのでは? アルムにしかできないことは、たくさんありますでしょう?」
「……それは、そうだが……ボクは、シェイラの側に居たい」
ズクリ、と、失恋の傷が盛大な痛みを訴える。アルムの心配は、ただの友人へ向ける思いでしかない。それを良く知っている私は、だからこそ、今は一人になりたかった。
「私は、側に居たくありません」
「っ……」
気づいた時には、そんな言葉が口からこぼれていて、それに、アルムは珍しく傷ついたような表情を浮かべる。
「っ、あ……いえ、その……」
その表情に驚いて、慌てて訂正しようとするものの、こういう時に限って、口が上手く回らない。
「すまなかった。シェイラ」
深く頭を下げて謝罪したアルムに、私はますます何も言えなくなってしまう。そうこうしているうちに、私の手を包んでいた温もりは消え、アルムが立ち上がってしまう。
(ま、待ってっ)
アルムを傷つけてしまった事実がショックで、どうすれば良いのか分からないままだったものの、このままアルムを帰してはいけないということだけははっきりしていて、私は咄嗟に声を上げようとしたものの……それは、慌ただしい足音にかき消される。
「失礼します。陛下、『絶対者』様がお越しです」
「っ、すぐ向かう」
それは、お姉様の来訪を告げるもの。そして、すぐに反応したアルムを見て、再び、胸の痛みが強くなる。
(……いいえ、これで……これで良いんです……)
先ほどまでは引き留めなければと思っていたものの、この瞬間に、私は、その必要はないのだと気づいてしまった。
所詮、私は他国の人間。どんなにアルムが親しくしてくれたところで、いずれは離れる運命にあるのだ。アルムにとっても、私にとっても、お互いが近くに居るメリットなどない。ならば、今のうちから離れる準備をしていても良いではないか。
アルムが部屋を出たのを見送った私は、ギュッと枕に顔を埋めて、胸の痛みをやり過ごすのだった。
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