私、竜人の国で寵妃にされました!?

星宮歌

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第三章 悪魔

第四十三話 外出

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(どうして、こんなことに……)


 私は今、お忍びの町娘スタイルで、同じくお忍びの商人スタイルなアルムと一緒に、街へ出掛けていた。それもこれも、私を心配したベラが手配したようなのだが、正直、今の私には逆効果だった。失恋したばかりなのに、その相手と一緒に居て、楽しめるはずもない。


「あそこは、女性に人気の雑貨を扱っている店だ。行ってみるか?」

「っ、えぇ。そう、ですね」


 さすがに、今は話さないということができないため、どうにか返事をして、胸の痛みにを無視しようと努力する。


(私でなければ、これは、デート、なのでしょうね)


 アルムの隣に、誰か別の女性が立つことを想像して、ギューっと胸が締め付けられる。
 立場がなければ、もっと楽しめたであろう今。私は憂鬱な気持ちでいっぱいだった。


「……シェイラ。ボクは、シェイラに何をしてしまったのだろうか?」


 ぼんやりと、雑貨店のものを眺めていると、ふいに、アルムからそんな言葉がかけられる。


(っ、あぁ、私は、アルムを傷つけたいわけじゃないのに……)


 アルムの言葉で、私の振るまいがアルムを傷つけた可能性に行き当たり、大きく動揺する。そして、口を開きかけた瞬間……。


「おや? もしかして、寵妃様……と、へ、陛下!?」


 前方に居た身なりの整った男の声に、私は誰だろうかと首をかしげる。


「……ドライムか」

「申し訳ありませんっ。勝手にお声がけをしてしまいっ」

「いや、今は、お忍びだ。気にすることはない」

「しかし」

「良いと言っている」


 茶髪に深い緑の瞳を持つ、線の細い竜人の男性は、随分と真面目そうだ。


(十中八九、貴族ですね)


 立ち居振る舞いの美しさを見る限り、貴族であることは確実なものと思われた。しかし、残念ながら、私はあの夜会で紹介されるはずだった貴族を見る余裕などなかった。それは全て、アルムが原因なのだが……もう、それは言っても仕方ないだろう。


(案外、私の見合い候補者だったりして?)


 ドライムと呼ばれた男は、美しい中性的な顔立ちで、声や服装を見なければ、どちらの性なのか判断に迷う顔だ。ただ、その性根は真面目そのものらしく、迂闊に声をかけてしまったことを何度もアルムに謝っている。
 どうも、彼は私が浮かない顔をしているのを見て、相手の男と揉めているのではないかと思って声をかけてくれたらしい。


(こんな優しい人であれば、私も……)


 失恋の傷を癒すには、新たな恋が一番だというのは良く聞く言葉だ。もしも、彼が見合いの候補者であるならば、前向きに検討したいと思える。


「それでは、私はこれで」

「あぁ」


 話が終わったらしく、アルムがこちらへと戻ってくるのを見て、私は再び、憂鬱な気持ちに捕らわれる。


「シェイラ、何か欲しいものはあったか?」

「いえ」


 つい、ぶっきらぼうに返してしまった私に、アルムは機嫌を損ねるでもなく、もう少し見て回るか、別の場所に行くかを尋ねてくる。


「それよりも、先程の方は?」

「あぁ、あの男は、ドライム・レンドルク。レンドルク公爵家の次男だ。……一応、シェイラの見合い相手にと見繕っていた相手でもある」


 その割には、今回、紹介も何もされなかったなと思いながら、何か問題があるのだろうかと問うと、随分と間を開けた後、『いや……ない』と答えてくれる。


「ならば、彼との見合いを前向きに検討したいと思います」

「っ、そ、うか……」


 なぜか動揺したアルムを不審に思いながら、これできっと、アルムへの想いも絶ち切れるだろうと希望を抱く。


「なら、帰ったら、ドライムへ手紙をしたためよう」

「私は、もう見たいものもありませんし、帰りませんか?」

「っ、分かっ、た」


 早く、アルムから離れてしまいたい。そう思って提案すると、アルムは少し言葉を詰まらせてうなずく。


(これで、良いのです)


 きっと、アルムを避けてしまうのは今だけだ。もう少しして、失恋の傷が癒えたならば、また、楽しくお姉様談義に花を咲かせることもできるはずだ。
 私は、必死に自分の気持ちに蓋をする。いつか、その想いがなくなってくれることを祈って……。
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