私、竜人の国で寵妃にされました!?

星宮歌

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第五章 襲来

第八十七話 止められないもの

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 魔法を解き終わり、あとはアルム達に任せようとその場を後にした私は、ちょうど良いからと竜珠殿を歩き回っていた。


(ほどよく、掃除はできたようですね)


 ここに来た当初は、そこかしこで私に対する陰口が聞こえていたのだが、今はそんなことはない。多くの貴族の弱みを握り、暗躍してきた私という存在は、彼らにとって恐怖の対象なのだろう。とはいえ、彼らも私が強力な諜報部隊を有しているくらいの認識で、私自身が諜報活動を行っているとは思っていないようだが……。


「シェイラ様。少々よろしいでしょうか?」


 しかし、その弊害というか、何というかが生まれてしまったのは、仕方ないとはいえ、頭が痛かった。


「何でしょうか?」


 私を呼び止めて来たのは、とある伯爵家の当主である男だ。


「いえ、実は、我が家で近々娘の御披露目パーティーがございまして、よろしければ、来ていただけないかと」


 確かに、伯爵の元には小さな娘が居るという話だ。しかし、目的はきっとそれではない。伯爵には、私と近い年頃の息子もおり、恐らくは、彼と引き合わせようという魂胆なのだろう。
 そう、私の力を恐れた貴族達は、私に媚びて、取り入って、あわよくば利用しようと躍起になっているのだ。


「そういった判断は、陛下に任せておりますので、そちらにお願いします」

「し、しかし」


 なおも食い下がる伯爵。しかし、そんなことに構ってやるつもりは毛頭ない。


「それでは、失礼します」


 私が見たいのは、これではないのだ。と、いうより、私もあまり見たいものではないのだが、確認しなければならないことがあるため、それを見るために歩いているのだった。


「さて、と。このくらいで良さそうですね」


 しばらく竜珠殿を歩き回った私は、人気がなくなったその場所で足を止める。


「部屋にお戻りになりますか?」


 青ざめた顔から復活した護衛の一人に尋ねられて、私は首を横に振る。


「この後の護衛は必要ありません。私は、少し確認したいことがあるので、外しますね」


 そう言うや否や、私は気配を消す。


「シェイラ様?」

「あなた達は別の任務に就けば良いですよ」


 特殊な歩法で歩けば、護衛である彼らは、容易く私の姿を見失う。
 目指すは、とある集会所。私の目的は、そこで行われることを止めることにある。


(頭が痛いですね……何が、『シェイラ様を見守り隊』ですか……)


 残念ながら、その存在を知ったのは今日のことで、情報がほとんどない。誰が会員なのかも不明な状態だ。


(害はない、と思いたいですが……とにかくやめさせなければ)


 いつの間にかできたファンクラブで勝手に讃えられるのは嫌だ。そう思いながら、会場となっている庭の奥まで来た瞬間、私は、後悔するのだった。


「シェイラ様が可愛いかーっ!」

「おぉぉぉおっ!」

「シェイラ様のモジモジ具合を見たいかーっ!」

「おぉぉぉぉぉおっ!!」

「ならばよし! では、本日のゲスト、ベラさんに話を伺いましょうっ!」

(何してるんですかっ! ベラ! それに、ギースっ!!)


 案外身近な裏切り者が居たことにショックを受けながら、私は集まっている面々に覚えがあることに気づく。


(……全員、影? いえ、どこかの貴族も居ますね)


 これは、一人では手に負えない。そう判断した私は、戦略的撤退を選ぼうとして……。


「シェイラお嬢様を最もお慕いしているのは私だ!」

「そんなわけないです! 私こそが、シェイラ様を最もお慕いしてますっ!」


 いつの間にか、ベラのトークへセルグが乱入するという事態に頭を抱える。


(……害は、ない、ですね。……もう、見なかったことにしましょう)


 これを止める手段など知らない。そのため、私は何もかもを見なかったことにして、スゴスゴと部屋へ引き返すのだった。
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