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幼少期編
お母様の置き土産1
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お母様が居なくなった後、一応念のためにと、私やお父様以外で呪いの被害に遭った人が居ないかをセイ達に調べてもらったところ、それは判明した。
「みりあ・れ・かーのしゃま?」
浮かんできたのは、ミリア・レ・カーノ伯爵令嬢。その女性が、どうやらお母様の呪いを受けていて、命の危機に瀕しているという。セイの推測では、ミリア様への呪いは随分前から発動していて、そのせいでどんどん体が弱っていったのではないか、とのことだった。そして、問題なのは、お母様はもう奴隷として、魔法を封じられているはずなのに、まだ呪いが続いてしまっているということと、例え呪いが解けたとしても、その弱った体で長く生きられるか分からないということだ。
「みゅっ! ばんのーやくと、かいじゅのまどーぐっ、あちょ、たいりょくかいふくやくっ(みゅっ! 万能薬と、解呪の魔導具、あと、体力回復薬っ)」
「……えっと、一応聞くけど、ユミリアは何をしようとしてるの?」
次々に道具を出す私を見て、セイは難しい顔で私を見つめる。
「みゅ? もちろん、たしゅけりゅにょっ! (みゅ? もちろん、助けるのっ!)」
そう宣言すれば、セイは途端に頭を抱え出してしまう。
「あー、ユミリア様? 多分、それは無理かと……」
「みゅ?」
頭を抱えるセイの隣に、いつの間にかやってきたローランが立って話す。曰く、向こうは私のお母様が呪いをかけたことを知っている。曰く、私はただでさえ幼い上、容姿のこともあって信用されない。曰く、お父様もお母様を止められなかったとして、信用されていない。
つまりは、そんな状態で『お嬢さんを治してあげます』と道具を携えて行ったとしても、追い払われるのがオチだとのことだった。
「みゅうぅ……みぶんのごりおしは? (みゅうぅ……身分のごり押しは?)」
こちらは公爵家、あちらは伯爵家なら、何とかなるかもしれない。そう思って言えば、相手は、私達から何かを受けるとなれば、処罰を受けることも辞さない覚悟で断ってくるだろうとのこと。
「みゅうぅぅぅう……」
別に、私はその伯爵家と敵対したいわけではない。ただ、お母様のせいで被害を受けたということが分かった以上、何とかしてあげたいと思っただけなのだ。
(確実な手段を持っているのに、何もできないの、かな?)
少なくとも、今の私には、どうすれば良いのかが分からない。完全に行き詰まって唸っていると、そこに食事を持ってきたメリーが現れて、私が唸っている理由を聞いてくる。
「――――ちょいうわけにゃにょ(――――というわけなの)」
「なるほど、それならば、旦那様に相談なさるのがよろしいかと」
「みゅ?」
「少なくとも、貴族のやり方に関しては旦那様は熟知していらっしゃいます」
つまりは、丸め込むにしろ何にしろ、お父様の手を借りた方が早いとのことで、私は耳をピンっと立てる。
「めりー、ありあちょ! (メリー、ありがとう!)」
私は、早速お父様に掛け合うことにした。
「みりあ・れ・かーのしゃま?」
浮かんできたのは、ミリア・レ・カーノ伯爵令嬢。その女性が、どうやらお母様の呪いを受けていて、命の危機に瀕しているという。セイの推測では、ミリア様への呪いは随分前から発動していて、そのせいでどんどん体が弱っていったのではないか、とのことだった。そして、問題なのは、お母様はもう奴隷として、魔法を封じられているはずなのに、まだ呪いが続いてしまっているということと、例え呪いが解けたとしても、その弱った体で長く生きられるか分からないということだ。
「みゅっ! ばんのーやくと、かいじゅのまどーぐっ、あちょ、たいりょくかいふくやくっ(みゅっ! 万能薬と、解呪の魔導具、あと、体力回復薬っ)」
「……えっと、一応聞くけど、ユミリアは何をしようとしてるの?」
次々に道具を出す私を見て、セイは難しい顔で私を見つめる。
「みゅ? もちろん、たしゅけりゅにょっ! (みゅ? もちろん、助けるのっ!)」
そう宣言すれば、セイは途端に頭を抱え出してしまう。
「あー、ユミリア様? 多分、それは無理かと……」
「みゅ?」
頭を抱えるセイの隣に、いつの間にかやってきたローランが立って話す。曰く、向こうは私のお母様が呪いをかけたことを知っている。曰く、私はただでさえ幼い上、容姿のこともあって信用されない。曰く、お父様もお母様を止められなかったとして、信用されていない。
つまりは、そんな状態で『お嬢さんを治してあげます』と道具を携えて行ったとしても、追い払われるのがオチだとのことだった。
「みゅうぅ……みぶんのごりおしは? (みゅうぅ……身分のごり押しは?)」
こちらは公爵家、あちらは伯爵家なら、何とかなるかもしれない。そう思って言えば、相手は、私達から何かを受けるとなれば、処罰を受けることも辞さない覚悟で断ってくるだろうとのこと。
「みゅうぅぅぅう……」
別に、私はその伯爵家と敵対したいわけではない。ただ、お母様のせいで被害を受けたということが分かった以上、何とかしてあげたいと思っただけなのだ。
(確実な手段を持っているのに、何もできないの、かな?)
少なくとも、今の私には、どうすれば良いのかが分からない。完全に行き詰まって唸っていると、そこに食事を持ってきたメリーが現れて、私が唸っている理由を聞いてくる。
「――――ちょいうわけにゃにょ(――――というわけなの)」
「なるほど、それならば、旦那様に相談なさるのがよろしいかと」
「みゅ?」
「少なくとも、貴族のやり方に関しては旦那様は熟知していらっしゃいます」
つまりは、丸め込むにしろ何にしろ、お父様の手を借りた方が早いとのことで、私は耳をピンっと立てる。
「めりー、ありあちょ! (メリー、ありがとう!)」
私は、早速お父様に掛け合うことにした。
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