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第二章 第二フロア
エタモノ
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ギリギリのところでトイレ(扉がなくて酷く開放的)にたどり着き、出すものを出してしまうと、ようやく臭いが薄まったことを感じる。今回は、鼻を摘まんでいるわけでもないから、それはたしかだろう。
「酷い目に遭った」
何をどうしたら植物が育つ過程であんな臭いが発生するのかは分からないが、もう二度と、こんな臭い、嗅ぎたくない。
そうして、俺は、全ての元凶である鉢植えに視線を向け、どんな変化が起こったのかを確認しようとする。
「……天井まで伸びてる?」
真っ黒な蔦は幾重にも枝分かれし、まっすぐ、天井まで伸びていた。しかし、ちょうど天井に届いた場所で、蔦の成長は止まっている。何なのかよく分からないその状況で、俺は、自然と冒険の書へ目を向ける。
『妖花育成成功
柿村啓は『邪気』を入手した』
「邪気?」
何のことだ?
そう思って、アイテム図鑑を見てみるものの、それらしい記述はない。地図が書かれているページを見ても意味はないし、モンスター図鑑の方にも俺の疑問に答えるような記述はなかった。
ただ、まだ見ていなかった記述として、あのイリュージョンというモンスターのことは書かれていたが……。
『モンスター図鑑
3 イリュージョン
第一フロアのボス
様々な幻覚を見せるモンスター
その実体を見た者はいない
ドロップアイテム 霊水
レアドロップアイテム 妖花の種』
ペットが倒してくれた敵。俺一人では、殺されていたであろう敵。その敵のことが記されていることに、俺は始めから冒険の書を確認しなかったことを後悔する。
見たところで何も変わらなかったかもしれないが、それでも、あんなにスケルトンに囲まれている状況が幻覚だと知っているかどうかは重要だったはずだ。
次からは、ちゃんと確認しよう。
次があるのかどうかも分からないものの、俺は、そう決断した。
「やっぱり載ってない……」
決意を新たにして、冒険の書を調べた俺は、結局『邪気』に関しての記述が見つからないという結論に達する。おそるおそる、妖花とかいう植物(?)に近づいて調べてもみたが、全く成果はなかった。蔦に触れてもみたが、何も起こらない。ただ、見た目は黒くとも、触れた感覚が少ししっとりとしていて、植物であることを再確認した形だった。
「……まぁ、分からないことは仕方ないか」
そう、仕方ない。そうして諦めて、次へと進むことしか俺にはできない。
「あと、調べてないのは……『一の核』と『魔眼』か」
『一の核』と『魔眼』。それを調べようと思って、リュックから見慣れないものを取り出すと、どうやらそれが『一の核』であるようだった。
「薄緑の玉?」
ビー玉よりは少し大きいくらいのサイズのそれは、何の変鉄もないただのガラス玉にしか見えなかった。しかも、アイテム図鑑の説明を読んでも、集めるのがいいのか悪いのかはっきりせず、よく分からない。
「一応、『貴重品編』に書いてあるから、持ってた方がいい……のか?」
分からないながらも、俺はそれを持ち歩くことにする。どこで役立つか分からないものだから、当然と言えば当然だろう。
「最後が『魔眼』、か……」
そうして、調べていないものが『魔眼』のみとなる。リュックの中にはそれらしいものは見当たらない。
アイテム図鑑には、どこかに埋めたと書かれているため、きっとどこかに埋まっているのだろうが、肝心のその場所が分からない。床に埋まっていようものなら、うっかり踏んでしまうことだってあり得る。
「よしっ、床から調べようっ!」
そうと決まれば話は早い。俺は、床を調べるために、四つん這いになって、どこかデジャブを感じながらも探し始める。しかし……。
「……ない」
『魔眼』を懸命に探し回った俺は、そんな結論を口にする。床も、壁も、ベッドも机も、全て調べ尽くした。そこで新たに発見できたのは、今持っているリュックより大きめのリュックが一つ、ベッドの上にあったことと、第一フロアのA地帯に置いていたはずの薬草やら濁った水やらがベッドの下に隠れていたことくらいだろうか。
それ以外は、ベッドと机の配置が第一フロアと同じだと気づいただけで、いっこうに目的のものは見当たらない。
「……でも、見つけたところで、目玉……だよな?」
『魔眼』という言葉から想像できるものは、人間の眼球だけだ。そして、そこから、あのスケルトンパラダイスと呼ばれる場所に通じていた悪趣味な扉を連想し、ブルリと震える。
「見つからない方がいい。きっと、そのはずだ」
そもそも、『魔眼』なんてものの使い道が分からない。道具として何かに使用できるのだとしても、持つことすらしたくない。
目玉を手に乗せるなんて、絶対に無理だ。
「……全ては分からないんだ。俺は、ここから出ることだけに集中すればいい」
自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いた俺は、その言葉で無理矢理自分を納得させる。
「ここから、出る。今は、第二フロア……出口まで、後、どのくらいなんだろうな」
第一フロア、第二フロアときたからには、きっと、次があるならば第三フロアになるのだろう。が、できることなら、この第二フロアを抜けたら出口になっていてほしい。こんな恐ろしい場所に長居なんてしたくない。
「……また、モンスターがいるんだよな?」
第一フロアと同じく、きっと、この暗く、細い通路の向こうに、扉がある。そこからは、モンスターの棲息域だ。
「行くぞ、俺っ」
恐怖に震えるのは後にしよう。自身の境遇を嘆くのは帰ってから。
バンッと両頬を叩いて喝を入れた俺は、出口を求め、歩み出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何がなんでも柿村君には先に進んでもらわねばっ!
と、いうことで、恐怖に震えつつ頑張ってもらいます。
……心をポキポキ定期的に折るのも楽しいですが……。
それでは、また!
「酷い目に遭った」
何をどうしたら植物が育つ過程であんな臭いが発生するのかは分からないが、もう二度と、こんな臭い、嗅ぎたくない。
そうして、俺は、全ての元凶である鉢植えに視線を向け、どんな変化が起こったのかを確認しようとする。
「……天井まで伸びてる?」
真っ黒な蔦は幾重にも枝分かれし、まっすぐ、天井まで伸びていた。しかし、ちょうど天井に届いた場所で、蔦の成長は止まっている。何なのかよく分からないその状況で、俺は、自然と冒険の書へ目を向ける。
『妖花育成成功
柿村啓は『邪気』を入手した』
「邪気?」
何のことだ?
そう思って、アイテム図鑑を見てみるものの、それらしい記述はない。地図が書かれているページを見ても意味はないし、モンスター図鑑の方にも俺の疑問に答えるような記述はなかった。
ただ、まだ見ていなかった記述として、あのイリュージョンというモンスターのことは書かれていたが……。
『モンスター図鑑
3 イリュージョン
第一フロアのボス
様々な幻覚を見せるモンスター
その実体を見た者はいない
ドロップアイテム 霊水
レアドロップアイテム 妖花の種』
ペットが倒してくれた敵。俺一人では、殺されていたであろう敵。その敵のことが記されていることに、俺は始めから冒険の書を確認しなかったことを後悔する。
見たところで何も変わらなかったかもしれないが、それでも、あんなにスケルトンに囲まれている状況が幻覚だと知っているかどうかは重要だったはずだ。
次からは、ちゃんと確認しよう。
次があるのかどうかも分からないものの、俺は、そう決断した。
「やっぱり載ってない……」
決意を新たにして、冒険の書を調べた俺は、結局『邪気』に関しての記述が見つからないという結論に達する。おそるおそる、妖花とかいう植物(?)に近づいて調べてもみたが、全く成果はなかった。蔦に触れてもみたが、何も起こらない。ただ、見た目は黒くとも、触れた感覚が少ししっとりとしていて、植物であることを再確認した形だった。
「……まぁ、分からないことは仕方ないか」
そう、仕方ない。そうして諦めて、次へと進むことしか俺にはできない。
「あと、調べてないのは……『一の核』と『魔眼』か」
『一の核』と『魔眼』。それを調べようと思って、リュックから見慣れないものを取り出すと、どうやらそれが『一の核』であるようだった。
「薄緑の玉?」
ビー玉よりは少し大きいくらいのサイズのそれは、何の変鉄もないただのガラス玉にしか見えなかった。しかも、アイテム図鑑の説明を読んでも、集めるのがいいのか悪いのかはっきりせず、よく分からない。
「一応、『貴重品編』に書いてあるから、持ってた方がいい……のか?」
分からないながらも、俺はそれを持ち歩くことにする。どこで役立つか分からないものだから、当然と言えば当然だろう。
「最後が『魔眼』、か……」
そうして、調べていないものが『魔眼』のみとなる。リュックの中にはそれらしいものは見当たらない。
アイテム図鑑には、どこかに埋めたと書かれているため、きっとどこかに埋まっているのだろうが、肝心のその場所が分からない。床に埋まっていようものなら、うっかり踏んでしまうことだってあり得る。
「よしっ、床から調べようっ!」
そうと決まれば話は早い。俺は、床を調べるために、四つん這いになって、どこかデジャブを感じながらも探し始める。しかし……。
「……ない」
『魔眼』を懸命に探し回った俺は、そんな結論を口にする。床も、壁も、ベッドも机も、全て調べ尽くした。そこで新たに発見できたのは、今持っているリュックより大きめのリュックが一つ、ベッドの上にあったことと、第一フロアのA地帯に置いていたはずの薬草やら濁った水やらがベッドの下に隠れていたことくらいだろうか。
それ以外は、ベッドと机の配置が第一フロアと同じだと気づいただけで、いっこうに目的のものは見当たらない。
「……でも、見つけたところで、目玉……だよな?」
『魔眼』という言葉から想像できるものは、人間の眼球だけだ。そして、そこから、あのスケルトンパラダイスと呼ばれる場所に通じていた悪趣味な扉を連想し、ブルリと震える。
「見つからない方がいい。きっと、そのはずだ」
そもそも、『魔眼』なんてものの使い道が分からない。道具として何かに使用できるのだとしても、持つことすらしたくない。
目玉を手に乗せるなんて、絶対に無理だ。
「……全ては分からないんだ。俺は、ここから出ることだけに集中すればいい」
自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いた俺は、その言葉で無理矢理自分を納得させる。
「ここから、出る。今は、第二フロア……出口まで、後、どのくらいなんだろうな」
第一フロア、第二フロアときたからには、きっと、次があるならば第三フロアになるのだろう。が、できることなら、この第二フロアを抜けたら出口になっていてほしい。こんな恐ろしい場所に長居なんてしたくない。
「……また、モンスターがいるんだよな?」
第一フロアと同じく、きっと、この暗く、細い通路の向こうに、扉がある。そこからは、モンスターの棲息域だ。
「行くぞ、俺っ」
恐怖に震えるのは後にしよう。自身の境遇を嘆くのは帰ってから。
バンッと両頬を叩いて喝を入れた俺は、出口を求め、歩み出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何がなんでも柿村君には先に進んでもらわねばっ!
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……心をポキポキ定期的に折るのも楽しいですが……。
それでは、また!
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