冒険の書 ~始の書~

星宮歌

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第二章 第二フロア

ダイニノトビラ

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 疲れて怠い体で立ち上がり、リュックを背負って来た道を戻ろうとしたところで……俺は、それを見つけてしまった。そもそも、なぜ今まで見つけられなかったのかが疑問だったが…………とにかく、ソレは、禍々しい存在感を放って、そこに在った。


「と……びら?」


 それは、形状こそ滅茶苦茶なものではあったが、たしかに、扉だった。いや、正確には、目にした瞬間、俺はソレが扉なのだと理解していた。



 そう……この禍々しさには、覚えがある。








 ありとあらゆる拷問道具が埋め込まれ、かの有名なアイアンメイデンを中心に据えたソレ。そこにある、多種多様でどう使うのかすら分からない、分かりたくもない拷問道具の数々は、随分と使い込まれたものらしく、錆び付き、刃こぼれし、よりいっそう重厚感を醸し出す。

 ソレは……そんな恐怖の集大成は…………たしかに、扉なのだ。次の地帯へ進むための。おぞましい敵が待ち構える、狂気の扉。

 第一フロアでの……スケルトンパラダイスでの戦闘が、胸の奥深くにしまい込んだ記憶の中から呼び覚まされる。

 ほぼ一方的な蹂躙。どんなに抵抗したところで、所詮、お前は無力な虫けらだとでも言わんばかりの物量戦。全てが終わった後、俺は生きているのが不思議だった。全身が、激痛にさいなまれていた。もはや動くことすらままならない程、疲弊していた。しかし、そんな中でも、俺は生き残った。生きて、いられた。

 それこそ、九死に一生を得た経験。そんな経験を与えるであろう扉……あの骨の扉と同じ禍々しさを持つ扉を前に、俺はカチカチという音を聞く。


 あぁ、歯が、鳴っているのか。


 最初は気づきもしなかったが、たしかに、それは俺の歯が何度も上下して鳴らされるものだった。気づけば、俺はガタガタと情けなく震え、歯を鳴らし、自分の体をかき抱いていた。


 死にたくない。あの場所に、行きたくない。


 俺は走り出した。疲れているだとか、体が重いだとか、そんなことも忘れるくらいに、扉への恐怖は凄まじかった。

 そうして……いつの間にか、俺は安全地帯まで戻っていた。


「ゴンゲェッ!」

「っ……」


 どうやってここに戻ってきたのかはあまり、覚えていない。安全地帯にたどり着くと同時に俺を出迎えたゴンゲの姿に、ハッと我に返るまで、俺はずっと走っていたらしい。

 ベッドまで歩くだけの気力もなく、俺はその場で座り込む。目の前にゴンゲという恐ろしいモンスターがいるにも関わらず、それさえ気にならなかった。

 頭がズキズキと痛む。息は乱れ、震えが止まらない。

 予想以上に、あの、スケルトンパラダイスでの出来事は、俺にトラウマを植えつけていたらしかった。




 そして、ふと気づく。



 俺は、あの扉を潜らなければ、先に進めない。あるかどうかも分からないが、あると信じている出口に、たどり着けない。


「あぁ……うぁあ」


 呻いて頭を抱える俺は、はたから見たらおかしな人間だっただろう。しかし、今の俺にはそうすることしかできない。


 怖い、死にたくない。早く帰りたい。記憶を取り戻したい。でも、怖い。痛いのは嫌だ。怖いのも嫌だ。


 しかし、それを乗り越えなければ、未来はない。ずっと、この薄暗い空間で、戦い続けることしかできない。


 あぁ、でも……。今は……心の整理がつかない今だけは、それでも良いのかもしれない。





 この日、俺は、ここで……この場所で、長く戦い続けることを、ぼんやりと意識したのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次のボス戦、柿村君は耐えられるのでしょうかっ!

作者としては、一生懸命追い込んで、ギリギリのところまで追い詰めたいところですねぇ。

それでは、また!
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