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第二章 第二フロア
ブルースライム
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そんな馬鹿なことがあってたまるかという思いと、やっぱりかという思いがない交ぜになり、俺は複雑な面持ちになる。しかし、それも、次の瞬間には引き締めることとなった。
『ブルースライムが現れた』
警戒を怠ったつもりはない。しかし、開いたままの冒険の書には、たしかに、そんな文章が浮き出ていた。疲れた体で素早く立ち上がった俺は、周囲を真剣に探る。
『ブルースライム』というモンスターの名前に、聞き覚えはない。最大限の注意を払うべきだ。
そして……瞬間的に全身に恐ろしいまでの悪寒が走り、俺は本能の命ずるままにその場を飛び退く。
パチャンッ!
盛大に水をぶちまけたかのような音に、俺はサァっと青ざめる。俺の選択は、大正解だった。ソイツは、俺が先程までいたその場所に、上から落下してきたのだから……。
第一フロアでスライムに腕を焼かれた記憶がよみがえり、色は水色に変わっているものの、あのスライムと同じ形状のソレを見て身震いする。ただ、ブルースライムは、そんな俺を待ってはくれない。
フシュンッ!
「っ!?」
第一フロアのスライムのようにフリュンと震えるかに見えたブルースライムは、そのゼリー状の天辺を鞭のように伸ばし、しならせて攻撃してきたのだった。足下を狙ったそれに、俺は慌ててジャンプして避ける。
スライムと言うからには、きっとあの体を構成しているのは強力な酸だ。当たるわけにはいかない。
フシュンッ!
そして、次は、上から下へとスライムの鞭が降り下ろされる。
「っと」
それに対して、俺は危なげなく横へ回避すると、そのまま鞭の先を剣で切りつけるべく踏み込む。が、それは悪手だったらしい。
パチャンッ!!
地面に叩きつけられた鞭は、その構成物である酸を撒き散らす。
「いっ!!」
もしも上からの鞭を確認した瞬間、できるだけ逃げていれば、俺はその飛沫の被害を被ることはなかっただろう。左足に感じた熱に、俺は歯を食い縛る。
これまでに怪我をしたのは一度や二度なんかじゃすまない。小さなものから大きなものまで、様々な怪我をこの場所に来てから負っている。
だから俺は、その痛みを耐えられる。来たばかりの頃では悲鳴を上げていたであろうものを耐え、次の攻撃をかわす。
フシュンッ! フシュンッ!
そんな音とともに繰り出される攻撃は、けして避けられない程のものではない。むしろ、レベルが上がるとともに動体視力やら足の速さやらも上がったのか、簡単に避けられるレベルのものだ……が、攻勢に出ようとすれば鞭に邪魔される。
たまに、横凪ぎに振るわれた鞭状のスライムを斬りつけることはできても、それ以上の大きなダメージが与えられない。いや、そもそもそれがダメージになっているのかさえ怪しい。
何か……何かないか?
さすがに避けながら、斬るタイミングを見計らいながら、リュックの中のものを探るという三つのことを同時にはできない。そこで俺は一度攻撃を諦め、帯剣ベルトに剣を戻すと、攻撃の回避とリュックの中のものを探ることに専念する。
何か、何か……ん? これは……。
後ろに手を回して、リュックの中身を探っていた俺が掴んだものは、おそらく先程回収したばかりの『赤い雫』入りの小瓶。たしか、毒消しの効果があると書いてあったはずだ。
スライムの構成物質は酸。毒消し効果のある液体を放ったところで、何かが変わる保証もない。が、もしかしたら、何か俺の知らない化学変化が起きてくれる……かもしれない。
いや、化学変化が起きずとも、これを投げればブルースライムの注意を引くことくらいはできそうだ。
フシュンッ!
上から降り下ろされるブルースライムの鞭に、俺はその場から大きく後退することで回避する。そして……『赤い雫』入りの小瓶をブルースライム目掛けて投げた。
フシュンッ!
やはりというか、なんというか、その小瓶はブルースライムの体(?)の部分に当たる前にその鞭が叩き壊す。が、そこに、致命的な隙が生まれたのを、俺は見逃さなかった。俺は一気にブルースライムの前へと肉迫する。そして、剣を降り下ろそうとした瞬間、またあの鞭がこちらを狙おうとしていることに気づき、予定を変更して回避行動へと移る。
フシュンッ!
「くっ」
その鞭は、俺の腹を目掛けて横凪ぎに振るわれ、間一髪、後ろへ跳ぶことで逃れる。
どうやら、多少注意を引き付けただけでは懐に飛び込めないらしい。バックステップを繰り返し、とにかくブルースライムから距離を取ると、次の手を思案する。
が、そこで、ブルースライムに異変が起こった。
ボコッボコボコッ。
ブルースライムが、まるで沸騰でもしたかのようにブクブクと波打つ。何が起こるか分からない俺は、それが何か恐ろしいことの前兆に思え、本能的にブルースライムに背を向けて逃げ出した。そして、その直後。
バチャンッ!!!
水風船が破裂したかのような大きな音を立てて、ブルースライムが破裂する。
「ひっ!」
チラリと後ろを振り向いてそれを確かめた俺は、迫り来るブルースライムの残骸に悲鳴を上げる。
あれに当たったら、絶対にまずいっ。
一直線にその残骸から逃れようと、通路を走り抜ける。
「っ!?」
ただ、クックドラゴンとの恐怖の追いかけっこをした影響か、足が縺れる。
全てがスローモーションに映る視界……しかし、なすすべもなく、俺は冷たい床に倒れ込む。
石の床は、けして柔らかくはない。咄嗟の判断でどうにか手をつくことはできたものの、絡まった足は強く打ちつけてしまう。
「ぐぅっ!」
そして、さらなる追い打ちとして、ブルースライムの残骸が迫って…………きたものの、勢い余って俺の頭上へと飛んでいく。
「……えっ?」
そして、その残骸は、飛んでいる最中に見慣れた黒い光を放って霧散する。
「はぁ?」
足の痛みを忘れて、俺は呆ける。
もしかして、咄嗟に伏せていたら良かった……のか?
そんなことを考えながら振り返ると、ちょうど黒い光を放って霧散していく残骸を見つける。どうやら、相当な広範囲に飛び散ったらしく、至る箇所で霧散する残骸が見える。
あのブルースライムの体液に当たらなかったのは、幸運でしかなかったらしい。
ゾォッと背筋が凍るのを感じながら、俺はうつ伏せの状態からリュックを下ろして横に置くと、ぐるりと仰向けに転がる。
どうにか……生きている。
それだけが、今、考えられる全てだった。
第一フロアで重宝していた『薬草(小)』を寝転んだまま取り出し、足の痛みを解消する。と、そこで、ブルースライムのドロップアイテムを回収していなかったことを思い出し、重い体に鞭打って起き上がる。
「あった」
目的のものは、ブルースライムが佇んでいた場所にあった。普通のスライムを倒した時のように、ペットボトルらしきものが。ノロノロと歩いてそれを手に取り、思わず観察する。
「……何で光ってるんだ?」
『アイテム図鑑
食糧編
8 キラキラの水
ブルースライムのレアドロップアイテム
何もかもが輝いて見える素晴らしい水』
七色にキラキラと輝くペットボトルに入った液体の説明を求め、疲れも忘れて冒険の書を開いた俺は、そんな文言に戦慄する。
これが……飲み物?
『食糧編』とあるからには、この、七色に光る液体は飲み物である可能性が高かった。と、いうより、それしか考えられない。が、それでも、俺は、この『キラキラの水』が飲み物であることなど、信じられなかった。信じたくなかった。
あの『黒卵』のときと同じ……いや、もしかしたらそれ以上の危機感に見舞われ、俺は必死に思考する。
どうする。コレを持ち帰るか……? もし持ち帰ったとして、緊急時に何か飲食しなければならない状態に陥ったら……コレを飲むことになる?
どう考えても、この『キラキラの水』は飲み物にあらざる輝きを放ってしまっている。
……よし、アンデットにでも投げて、安全性を確かめてからにしよう。そうしよう。
『黒卵』の例があるため、もしかしたら、『キラキラの水』は美味しいのかもしれない。見た目が駄目でも、中身はそうでもないかもしれないことは重々承知だ。ただ……とにかく、これは生理的にアウトだ。
だって、よく観察したら、この七色の光は、ドクロを形成しては霧散するというわけの分からない事象を繰り返しているのだ。
無理だ。誰が何と言おうと、コレは飲めない。むしろ、コレを飲む奴がいたら、俺はソイツを勇者だと讃えよう。
一応、『キラキラの水』をリュックに収めた俺は、フルフルと頭を振る。もう、『キラキラの水』のことは忘れて、これからを考えよう。
そんな決意を胸に、俺は冒険の書の地図が描かれたページを開く。
「ここから先は知らない場所、だな」
このフロアの地図は、まだ、三分の一くらいしか埋ってない。だから、このまま探索を続けて少しでも地図を広げるという手もあったが、今日はもう、色々と疲れた。引き上げようという決定は、すぐに下ったのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
キラキラの水、飲んだらどうなるんでしょうねぇ。
とりあえず、『絶対ヤバイやつじゃんっ!』って思ってもらえるような説明を心がけたつもりです(笑)
それでは、また!
『ブルースライムが現れた』
警戒を怠ったつもりはない。しかし、開いたままの冒険の書には、たしかに、そんな文章が浮き出ていた。疲れた体で素早く立ち上がった俺は、周囲を真剣に探る。
『ブルースライム』というモンスターの名前に、聞き覚えはない。最大限の注意を払うべきだ。
そして……瞬間的に全身に恐ろしいまでの悪寒が走り、俺は本能の命ずるままにその場を飛び退く。
パチャンッ!
盛大に水をぶちまけたかのような音に、俺はサァっと青ざめる。俺の選択は、大正解だった。ソイツは、俺が先程までいたその場所に、上から落下してきたのだから……。
第一フロアでスライムに腕を焼かれた記憶がよみがえり、色は水色に変わっているものの、あのスライムと同じ形状のソレを見て身震いする。ただ、ブルースライムは、そんな俺を待ってはくれない。
フシュンッ!
「っ!?」
第一フロアのスライムのようにフリュンと震えるかに見えたブルースライムは、そのゼリー状の天辺を鞭のように伸ばし、しならせて攻撃してきたのだった。足下を狙ったそれに、俺は慌ててジャンプして避ける。
スライムと言うからには、きっとあの体を構成しているのは強力な酸だ。当たるわけにはいかない。
フシュンッ!
そして、次は、上から下へとスライムの鞭が降り下ろされる。
「っと」
それに対して、俺は危なげなく横へ回避すると、そのまま鞭の先を剣で切りつけるべく踏み込む。が、それは悪手だったらしい。
パチャンッ!!
地面に叩きつけられた鞭は、その構成物である酸を撒き散らす。
「いっ!!」
もしも上からの鞭を確認した瞬間、できるだけ逃げていれば、俺はその飛沫の被害を被ることはなかっただろう。左足に感じた熱に、俺は歯を食い縛る。
これまでに怪我をしたのは一度や二度なんかじゃすまない。小さなものから大きなものまで、様々な怪我をこの場所に来てから負っている。
だから俺は、その痛みを耐えられる。来たばかりの頃では悲鳴を上げていたであろうものを耐え、次の攻撃をかわす。
フシュンッ! フシュンッ!
そんな音とともに繰り出される攻撃は、けして避けられない程のものではない。むしろ、レベルが上がるとともに動体視力やら足の速さやらも上がったのか、簡単に避けられるレベルのものだ……が、攻勢に出ようとすれば鞭に邪魔される。
たまに、横凪ぎに振るわれた鞭状のスライムを斬りつけることはできても、それ以上の大きなダメージが与えられない。いや、そもそもそれがダメージになっているのかさえ怪しい。
何か……何かないか?
さすがに避けながら、斬るタイミングを見計らいながら、リュックの中のものを探るという三つのことを同時にはできない。そこで俺は一度攻撃を諦め、帯剣ベルトに剣を戻すと、攻撃の回避とリュックの中のものを探ることに専念する。
何か、何か……ん? これは……。
後ろに手を回して、リュックの中身を探っていた俺が掴んだものは、おそらく先程回収したばかりの『赤い雫』入りの小瓶。たしか、毒消しの効果があると書いてあったはずだ。
スライムの構成物質は酸。毒消し効果のある液体を放ったところで、何かが変わる保証もない。が、もしかしたら、何か俺の知らない化学変化が起きてくれる……かもしれない。
いや、化学変化が起きずとも、これを投げればブルースライムの注意を引くことくらいはできそうだ。
フシュンッ!
上から降り下ろされるブルースライムの鞭に、俺はその場から大きく後退することで回避する。そして……『赤い雫』入りの小瓶をブルースライム目掛けて投げた。
フシュンッ!
やはりというか、なんというか、その小瓶はブルースライムの体(?)の部分に当たる前にその鞭が叩き壊す。が、そこに、致命的な隙が生まれたのを、俺は見逃さなかった。俺は一気にブルースライムの前へと肉迫する。そして、剣を降り下ろそうとした瞬間、またあの鞭がこちらを狙おうとしていることに気づき、予定を変更して回避行動へと移る。
フシュンッ!
「くっ」
その鞭は、俺の腹を目掛けて横凪ぎに振るわれ、間一髪、後ろへ跳ぶことで逃れる。
どうやら、多少注意を引き付けただけでは懐に飛び込めないらしい。バックステップを繰り返し、とにかくブルースライムから距離を取ると、次の手を思案する。
が、そこで、ブルースライムに異変が起こった。
ボコッボコボコッ。
ブルースライムが、まるで沸騰でもしたかのようにブクブクと波打つ。何が起こるか分からない俺は、それが何か恐ろしいことの前兆に思え、本能的にブルースライムに背を向けて逃げ出した。そして、その直後。
バチャンッ!!!
水風船が破裂したかのような大きな音を立てて、ブルースライムが破裂する。
「ひっ!」
チラリと後ろを振り向いてそれを確かめた俺は、迫り来るブルースライムの残骸に悲鳴を上げる。
あれに当たったら、絶対にまずいっ。
一直線にその残骸から逃れようと、通路を走り抜ける。
「っ!?」
ただ、クックドラゴンとの恐怖の追いかけっこをした影響か、足が縺れる。
全てがスローモーションに映る視界……しかし、なすすべもなく、俺は冷たい床に倒れ込む。
石の床は、けして柔らかくはない。咄嗟の判断でどうにか手をつくことはできたものの、絡まった足は強く打ちつけてしまう。
「ぐぅっ!」
そして、さらなる追い打ちとして、ブルースライムの残骸が迫って…………きたものの、勢い余って俺の頭上へと飛んでいく。
「……えっ?」
そして、その残骸は、飛んでいる最中に見慣れた黒い光を放って霧散する。
「はぁ?」
足の痛みを忘れて、俺は呆ける。
もしかして、咄嗟に伏せていたら良かった……のか?
そんなことを考えながら振り返ると、ちょうど黒い光を放って霧散していく残骸を見つける。どうやら、相当な広範囲に飛び散ったらしく、至る箇所で霧散する残骸が見える。
あのブルースライムの体液に当たらなかったのは、幸運でしかなかったらしい。
ゾォッと背筋が凍るのを感じながら、俺はうつ伏せの状態からリュックを下ろして横に置くと、ぐるりと仰向けに転がる。
どうにか……生きている。
それだけが、今、考えられる全てだった。
第一フロアで重宝していた『薬草(小)』を寝転んだまま取り出し、足の痛みを解消する。と、そこで、ブルースライムのドロップアイテムを回収していなかったことを思い出し、重い体に鞭打って起き上がる。
「あった」
目的のものは、ブルースライムが佇んでいた場所にあった。普通のスライムを倒した時のように、ペットボトルらしきものが。ノロノロと歩いてそれを手に取り、思わず観察する。
「……何で光ってるんだ?」
『アイテム図鑑
食糧編
8 キラキラの水
ブルースライムのレアドロップアイテム
何もかもが輝いて見える素晴らしい水』
七色にキラキラと輝くペットボトルに入った液体の説明を求め、疲れも忘れて冒険の書を開いた俺は、そんな文言に戦慄する。
これが……飲み物?
『食糧編』とあるからには、この、七色に光る液体は飲み物である可能性が高かった。と、いうより、それしか考えられない。が、それでも、俺は、この『キラキラの水』が飲み物であることなど、信じられなかった。信じたくなかった。
あの『黒卵』のときと同じ……いや、もしかしたらそれ以上の危機感に見舞われ、俺は必死に思考する。
どうする。コレを持ち帰るか……? もし持ち帰ったとして、緊急時に何か飲食しなければならない状態に陥ったら……コレを飲むことになる?
どう考えても、この『キラキラの水』は飲み物にあらざる輝きを放ってしまっている。
……よし、アンデットにでも投げて、安全性を確かめてからにしよう。そうしよう。
『黒卵』の例があるため、もしかしたら、『キラキラの水』は美味しいのかもしれない。見た目が駄目でも、中身はそうでもないかもしれないことは重々承知だ。ただ……とにかく、これは生理的にアウトだ。
だって、よく観察したら、この七色の光は、ドクロを形成しては霧散するというわけの分からない事象を繰り返しているのだ。
無理だ。誰が何と言おうと、コレは飲めない。むしろ、コレを飲む奴がいたら、俺はソイツを勇者だと讃えよう。
一応、『キラキラの水』をリュックに収めた俺は、フルフルと頭を振る。もう、『キラキラの水』のことは忘れて、これからを考えよう。
そんな決意を胸に、俺は冒険の書の地図が描かれたページを開く。
「ここから先は知らない場所、だな」
このフロアの地図は、まだ、三分の一くらいしか埋ってない。だから、このまま探索を続けて少しでも地図を広げるという手もあったが、今日はもう、色々と疲れた。引き上げようという決定は、すぐに下ったのだった。
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キラキラの水、飲んだらどうなるんでしょうねぇ。
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マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
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