冒険の書 ~始の書~

星宮歌

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第二章 第二フロア

*キョウキノブタイ

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 重い……まるで鉛の如く重い体を引きずって、俺は、あの扉の前に立っていた。体が重いのは、何も戦闘を行ったからではない。ここに来たくないと叫ぶ心が、この場所を拒絶しているためだ。

 しかし、どんなに泣こうが喚こうが、俺はここから先へ、向かわなければならない。死にたくないのに、死にそうな場所に行くなんて、本末転倒もいいところだが、実際、生き残れる可能性が高いのはこちらだ。


 ……いや、違う。何が起こるかを予測できるだけだ。


 本来は、聖母マリアを象ったとされるアイアンメイデン。しかし、このアイアンメイデンの顔は、憎々しげに顔全体のシワを波立たせ、睨みつける老女であり、聖母という言葉とはかけ離れている。その迫力は、気の弱い人間が見ようものならば悲鳴を上げ、子どもならば泣いて逃げ出すレベルのものだった。
 そして、そのアイアンメイデンを中心にして埋め込まれた拷問道具。何やら棘のついた鞭らしきものに、何かを挟んでネジで締めるのではないかと想像できる金属製の物体、錆びた鎖の先についた枷らしきもの……。それらは、見ているだけでも恐ろしさで血の気が引いてしまう。


 肝心の扉は、もちろん、この拷問道具の中心に据えられたアイアンメイデン。その胴体の部分は、取っ手つきの両開きの扉になっている。


 これが、俺の中で、何となく知識にあるアイアンメイデンならば、この扉の内側に無数の棘……というか、刃というか……そんなものがあるはずだよな。


 そこに閉じ込められるということは、それらの凶器を全身に受け、死に絶えるということ。拷問道具というより、処刑道具と言われた方がしっくりくるかもしれない。


 ……開けた瞬間、中に引き込まれて殺される、なんてことは……ない、よな?


 このフロアの地図は、すでに完成している。そして、その中で、扉だと思えるものは、このアイアンメイデンをおいて他にはなかった。


 深呼吸、深呼吸、深呼吸…………。


 怖くて恐ろしくて、震える手を胸に当て、震える息をフーッと吐く。目を閉じ、何度も何度も、根拠もなく大丈夫だと、自分に言い聞かせ、なけなしの勇気を振り絞る。まだ震えの治まらない手を、何度も開いたり閉じたりして、覚悟を決める。

 戦いの、覚悟を……。


 ただ、このときの俺は、この扉の向こうのことにばかり、注意を向けていた。扉の向こう……すなわち、強大な敵へ。冒険の書を左脇に挟み、扉を開けるべく、震える右手を伸ばす。そう、俺は、完全に失念していたのだ。









 第一フロアでの扉が、どのような変化を見せたのかを……。




「ギャアァァアァアァアッ!!!」

「ひっ!」


 取っ手に手が触れる直前に響いた耳をつんざくような叫び声。その声に、俺は思わず腰を抜かし、尻餅をつく。そして……見上げた先には、苦悶に歪み表情を変える、老女の顔があった。そう、それが、叫び声の発生源だ。

 その顔は、鉄でできているはずなのに、目から、口から、耳から血を吹き出し、叫び続ける。


「オ゛ォォォオォォオォッ!!」


 また、叫びに同調するかのように、ガチャガチャと動き始める拷問道具の数々に、俺はそれが、俺自身に届かないものだと気づきながらも、怯えずにはいられなかった。鞭がしなり、何もない地面に恐ろしい勢いで降り下ろされる。キリキリとネジが締まる音に、名も知れぬ道具同士がかち合う音。




 拷問の犠牲者を、血を、求める音……。



 ブルブルと震えることしかできない俺は、あまりにも恐ろしい音達を前に、耳を塞ぐ。


「……めろ、やめて……くれ……」


 恐怖に塗りつぶされた心で、自然と口にしたその言葉。ただ、その一言。叶うはずもない、その願望を、俺が言い終えた瞬間。



 その場が、しん、と、静まり返った。



「……えっ?」


 思わず、俺は顔を上げる。しかし……俺は、このときほど、無警戒になったことを後悔したことはない。





 そこには、赤く充血した目玉を得た、老女の顔があった。




 ソレは、ニタァっと笑い、口を開く。







「ツギハ、オマエェェェエェエェェッ!!」

「っ!!?」


 その瞬間、俺は悲鳴を上げる間もなく、勝手に開かれたアイアンメイデンの、暗い、昏い、扉の中へと吸い込まれる。体が宙を浮き、わけが分からないままに、扉の中へと、引き込まれたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回のメインはアイアンメイデンさんっ!

さぁ、どうぞ一言っ。

「イツモ、アリガトォォォオォオォォッ!!」

……はい、ありがとうございました。

読者様への感謝ですね。

私からも、いつも読んでいただき、ありがとうございます。

お気に入り登録が増えたりとか、(まだないけど)感想をもらえたりしたら、作者は狂喜乱舞します。

感想がありましたら、いつでもお待ちしております。

それでは、また!
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