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第三章 第三フロア
ダークマター
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ゴンゲを殺すのは一先ず先送りにして、俺はまだよく観察していない『魔女の大釜』を見ることにする。立ち上がって『魔女の大釜』の前まで歩く。
漆黒に染まり、不気味な気配を醸し出す、『魔女の大釜』の前まで……。
それは、人一人が入れそうなほど、巨大な釜だった。そして、その大釜の中には、中に入れたものを混ぜるためなのか、長い、先端がお玉のように丸くなっている木の棒が無造作に突っ込んである。ただ……それだけだ。
別に、緑の液体がグツグツ沸騰しているとか、ドロドロとしたナニカがうごめいているとか、そんなことはなく、ただの大釜と混ぜるための棒だけ。
そんな様子に、少しだけホッとしながら、俺はどうしても、一度は何かを入れてこの『魔女の大釜』の力を見てみたい衝動に駆られる。失敗すればダークマターとあったが、それでも良かった。期待なんてしない。ただ、この中に入れたものがどうなるのか、気になった。
「多く持っているのは……『薄い皮』だな」
バットが落とした『薄い皮』。ゴンゲが仲間になってから、格段に倒しやすくなったバットが落としていったそれは、集めるうちに五百枚以上となっていた。そして、そんな大量の『薄い皮』は、安全地帯に保管していたため、ここにしっかり移動してきている。
安全地帯に置いてあるものは、次のフロアに進んでもそのまま引き継がれるのは、第一フロアでボスを倒した後にペットボトルの残骸が残っていたことから確認ずみだ。
テーブルの下に、邪魔にならないようにと置いていた、何に使うのかよく分からないアイテム。ただ、大量に集めていると良いことがあるようなことが書かれていただけのアイテム。もしかしたら、この『魔女の大釜』に入れる素材かもしれないアイテム。
俺は、一枚だけ『薄い皮』を手に取ると、そのまま『魔女の大釜』に入れる。ヒラヒラと十センチ四方の黒く、透けそうな程に薄い皮が落ちる様子を眺め、大釜につっこんである木の棒で混ぜてみる。ここに来てから感じたことのない、興奮のようなものを感じながら、グルグルと混ぜる。
そうして、グルグルと……俺は、大釜の中をかき混ぜたのだが……。
「……あっけないな」
数回かき混ぜるだけで、それは、完全に形を変えた。質量保存の法則はどこに旅立ったのやら、そこには、黒く、光沢を放つ拳ほどの大きさの石があった。きっと、これが『ダークマター』とやらだろう。
もう少し、大釜が光を放つとか、ちょっとだけ大釜の中で爆発が起こるとか、そんな変化を期待していたのだが……。『薄い皮』は、数回かき混ぜると突如としてカラリと音を立てるという、いつ変化が起きたのかよく分からない変化を遂げた。瞬きの間に変化したとしか思えないくらいの、急速な変化。
あまり面白味がなかったことにがっかりとしながら、俺は冒険の書を確認してみる。この『ダークマター』がアイテムとして換算されるのであれば、アイテム図鑑辺りに載っているはずだ。
『アイテム図鑑
??編
1 ダークマター
生成されてから、十分で孵化します
至急、潰すことを推奨しますが、できなかった場合、一刻も早い処分を推奨』
俺は、そのページを見つけた瞬間、戦慄した。
「……まともな、文章、だと?」
今まで、散々ふざけ続けていたアイテム図鑑の文章。しかし、それが今、全く別の、大真面目な文章となっている。まとも過ぎるその文章は、俺にとって、異様なものでしかない。
そして、そんな不気味さと同時に、俺はとんでもないものを生成してしまったのではないかという不安に駆られる。
「いや、待て、まだ決めつけるには早い」
もしかしたら、この警告ともとれる文章は、俺をここに連れてきた奴等にとって不味いことが起きないようにするためのものなのではないか? そうだとすれば、十分という時間を待つくらい、どうということはない。むしろ、このアイテム図鑑は、食糧編、回復編、素材・武器編、貴重品編の四つに分かれているだけだったはずなのに、こうしてわざわざそのいずれにも属さない『ダークマター』を書くくらいだ。『ダークマター』が、何か重要なものである可能性だって捨てきれない。
『ダークマター』が重要なアイテムである可能性。そして、もし、そうではなかったとしても、この文章から察するに、孵化した後でも対処が可能だ。そうと分かれば、俺は待つ。
『ダークマター』を木のお玉で掬い上げ、テーブルの上に置いて待つ。
……いや、そもそも、『孵化』という言葉から考えるに、この、『ダークマター』は、何かの卵であるようだが……。……こんなものから、何が生まれるんだ?
待つ間に、そんな不安も浮かび上がってきたが、それも抑えてひたすら待つ。どんな生き物かは分からないが、それが俺をここに連れてきた奴等にとって好ましくないものであることを祈りながら……。
ピシッ!
十分が経ち、『ダークマター』に小さく、ひびが入る。パリパリと『ダークマター』が割れていく様子を眺め、俺はドキドキと心音が高鳴るのを感じる。何が生まれるのかということに対する不安など、この瞬間には全くなくなっていた。新たな生命の誕生。ここへ連れてきた奴等へ、報復できる可能性を持つものの誕生。これが、興奮せずにいられるだろうか?
……が、それも、その正体を認識するまでのことだった。
黒い、黒い……黒光りするソレ。
生まれたソレは、『ダークマター』よりは一回り小さいものの、俺が知っているソレよりは随分と大きい。そして……。
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサッ!!
その正体を正確に、認識した瞬間、ソレは、動き出した。
「うっ、うわぁあっ!」
「ゴンゲェッ!?」
通称、台所の黒い悪魔。
カサカサカサカサカサカサ。
そう、奴は……。
カサカサカサカサカサカサ。
奴は、巨大なゴキブリだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダークマターの正体。
それは、Gだった!?
……一番嫌なパターンです。
さぁっ、新聞紙を装備して頑張りましょう(笑)
それでは、また!
漆黒に染まり、不気味な気配を醸し出す、『魔女の大釜』の前まで……。
それは、人一人が入れそうなほど、巨大な釜だった。そして、その大釜の中には、中に入れたものを混ぜるためなのか、長い、先端がお玉のように丸くなっている木の棒が無造作に突っ込んである。ただ……それだけだ。
別に、緑の液体がグツグツ沸騰しているとか、ドロドロとしたナニカがうごめいているとか、そんなことはなく、ただの大釜と混ぜるための棒だけ。
そんな様子に、少しだけホッとしながら、俺はどうしても、一度は何かを入れてこの『魔女の大釜』の力を見てみたい衝動に駆られる。失敗すればダークマターとあったが、それでも良かった。期待なんてしない。ただ、この中に入れたものがどうなるのか、気になった。
「多く持っているのは……『薄い皮』だな」
バットが落とした『薄い皮』。ゴンゲが仲間になってから、格段に倒しやすくなったバットが落としていったそれは、集めるうちに五百枚以上となっていた。そして、そんな大量の『薄い皮』は、安全地帯に保管していたため、ここにしっかり移動してきている。
安全地帯に置いてあるものは、次のフロアに進んでもそのまま引き継がれるのは、第一フロアでボスを倒した後にペットボトルの残骸が残っていたことから確認ずみだ。
テーブルの下に、邪魔にならないようにと置いていた、何に使うのかよく分からないアイテム。ただ、大量に集めていると良いことがあるようなことが書かれていただけのアイテム。もしかしたら、この『魔女の大釜』に入れる素材かもしれないアイテム。
俺は、一枚だけ『薄い皮』を手に取ると、そのまま『魔女の大釜』に入れる。ヒラヒラと十センチ四方の黒く、透けそうな程に薄い皮が落ちる様子を眺め、大釜につっこんである木の棒で混ぜてみる。ここに来てから感じたことのない、興奮のようなものを感じながら、グルグルと混ぜる。
そうして、グルグルと……俺は、大釜の中をかき混ぜたのだが……。
「……あっけないな」
数回かき混ぜるだけで、それは、完全に形を変えた。質量保存の法則はどこに旅立ったのやら、そこには、黒く、光沢を放つ拳ほどの大きさの石があった。きっと、これが『ダークマター』とやらだろう。
もう少し、大釜が光を放つとか、ちょっとだけ大釜の中で爆発が起こるとか、そんな変化を期待していたのだが……。『薄い皮』は、数回かき混ぜると突如としてカラリと音を立てるという、いつ変化が起きたのかよく分からない変化を遂げた。瞬きの間に変化したとしか思えないくらいの、急速な変化。
あまり面白味がなかったことにがっかりとしながら、俺は冒険の書を確認してみる。この『ダークマター』がアイテムとして換算されるのであれば、アイテム図鑑辺りに載っているはずだ。
『アイテム図鑑
??編
1 ダークマター
生成されてから、十分で孵化します
至急、潰すことを推奨しますが、できなかった場合、一刻も早い処分を推奨』
俺は、そのページを見つけた瞬間、戦慄した。
「……まともな、文章、だと?」
今まで、散々ふざけ続けていたアイテム図鑑の文章。しかし、それが今、全く別の、大真面目な文章となっている。まとも過ぎるその文章は、俺にとって、異様なものでしかない。
そして、そんな不気味さと同時に、俺はとんでもないものを生成してしまったのではないかという不安に駆られる。
「いや、待て、まだ決めつけるには早い」
もしかしたら、この警告ともとれる文章は、俺をここに連れてきた奴等にとって不味いことが起きないようにするためのものなのではないか? そうだとすれば、十分という時間を待つくらい、どうということはない。むしろ、このアイテム図鑑は、食糧編、回復編、素材・武器編、貴重品編の四つに分かれているだけだったはずなのに、こうしてわざわざそのいずれにも属さない『ダークマター』を書くくらいだ。『ダークマター』が、何か重要なものである可能性だって捨てきれない。
『ダークマター』が重要なアイテムである可能性。そして、もし、そうではなかったとしても、この文章から察するに、孵化した後でも対処が可能だ。そうと分かれば、俺は待つ。
『ダークマター』を木のお玉で掬い上げ、テーブルの上に置いて待つ。
……いや、そもそも、『孵化』という言葉から考えるに、この、『ダークマター』は、何かの卵であるようだが……。……こんなものから、何が生まれるんだ?
待つ間に、そんな不安も浮かび上がってきたが、それも抑えてひたすら待つ。どんな生き物かは分からないが、それが俺をここに連れてきた奴等にとって好ましくないものであることを祈りながら……。
ピシッ!
十分が経ち、『ダークマター』に小さく、ひびが入る。パリパリと『ダークマター』が割れていく様子を眺め、俺はドキドキと心音が高鳴るのを感じる。何が生まれるのかということに対する不安など、この瞬間には全くなくなっていた。新たな生命の誕生。ここへ連れてきた奴等へ、報復できる可能性を持つものの誕生。これが、興奮せずにいられるだろうか?
……が、それも、その正体を認識するまでのことだった。
黒い、黒い……黒光りするソレ。
生まれたソレは、『ダークマター』よりは一回り小さいものの、俺が知っているソレよりは随分と大きい。そして……。
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサッ!!
その正体を正確に、認識した瞬間、ソレは、動き出した。
「うっ、うわぁあっ!」
「ゴンゲェッ!?」
通称、台所の黒い悪魔。
カサカサカサカサカサカサ。
そう、奴は……。
カサカサカサカサカサカサ。
奴は、巨大なゴキブリだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダークマターの正体。
それは、Gだった!?
……一番嫌なパターンです。
さぁっ、新聞紙を装備して頑張りましょう(笑)
それでは、また!
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