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第三章 第三フロア
*ブラックフォレスト
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『冒険の書
四十日目』
臓物の扉を前に、俺は自身のコンディションを確認する。
あれから、魔剣は俺の右手と一体化したかのように離れないままだったが、たしかに切れ味はよく、今まで使っていた『黒鞘の剣』がなまくらに思えてしまうほどだった。万が一に備えて『黒鞘の剣』も腰に提げているものの、使う機会はないかもしれない。
冒険の書はリュックから出して、左脇にしっかりと挟んでいる。後は、動揺せずに左手で扉を開け、中に入り、敵の姿を確認しつつ、冒険の書を読めたら、きっと勝てる。
今までも、慌てず、冷静に対処していれば、普通に勝てた可能性が高いのだから、今回も大丈夫なはずだ。
「ゴゲッ」
そして、何よりも、ゴンゲという味方もいる。一度は殺そうかどうかと悩んだモンスターだが、随分と役に立つようになってきたこいつは、まだ殺すには惜しいと言えるまでになっていた。
俺の後ろで待機しているゴンゲ。その姿に背中を押される形で、俺は扉へと手を伸ばす。
グチッ、グチンッ。
生暖かい腸らしきノブに触れた瞬間、それは動き出す。
『内臓が、内臓を喰らっている』
その光景を言葉で表すなら、そんな言葉になるだろう。
グチグチュッ、ブチンッ。
ドクドクと脈打っていた臓物は、それぞれ隣り合うモノを喰らい、そのたびごとに赤黒い液体がダラダラと扉を濡らす。おぞましい共食いの扉。今までも扉の変容には恐怖してきたが、今回も恐ろしい光景になってしまった。が、俺はそれをじっと観察することなく、一気に腸にしか見えないノブを引く。
グチュッとした音とともに、腸のノブはピンと伸び、同時に俺はその感触で全身が粟立つ。しかし、俺のその行動は正しかったようだ。
扉は、開いた。
『第三フロア 地帯区分C
■■■は地帯区分Cへ進行
これよりブラックフォレスト』
臓物の扉の向こうへと進んだ瞬間、俺は目の前を確認して、自分の遠近感がおかしくなったのではないかと疑う。そこには、墨のように黒い、百メートルほどの直径がありそうな巨大な幹が、鎮座していた。そして、そこから上に見える枝は、一番細いものでも、人の胴ほどはありそうな太さだ。
まさか……これがモンスターだとは言わないよな?
『16 ダークネスツリー
第三フロアのボス
樹木型のモンスター
固く、燃えにくく、再生能力が高いため、強力な一撃でしか倒せない
ドロップアイテム』
しかし、現実は無情だ。そんな記述を読んだ俺は、頭痛を覚えながらも、途中で顔を上げる。
ドロップアイテムまで読む間もなく、何かがこちらに接近しているのを感じて俺は慌てて魔剣を振り上げる。やけに重い手応えを感じながらも振り抜いた俺は、それが斬り落とされる瞬間を目撃することで、ようやくその正体に気づく。それは……人の胴ほどの太さを誇る、黒い木の鞭だった。
「ゴゲッ、ゴォンギョゲェエッ!!」
と、そこで、ゴンゲが自分を攻撃しようとしてきた木に対して盛大に炎を吐き出す。だが……。
「ゴッ!?」
炎に耐性があるらしいこのダークネスツリーには効果がない。そのまま振るわれた木の鞭によって、ゴンゲは呆気なく吹き飛ぶ。
「くっ!」
俺は、すぐにでもゴンゲの無事を確認したい衝動に駆られるが、それよりも先に木の枝がしなる。それも……先程斬り落としたはずの木が、襲いかかる。
横っ飛びにとりあえずその一撃をかわした俺は、次の瞬間、戦慄した。
ズゥンッという重い音を立てて降り下ろされたそれは、容易く、床を砕く。魔剣を手に入れても、精々傷つけるくらいしかできなかった床を、このダークネスツリーは容易く砕く。
もしも、あれに当たれば、無事ではすまない。
その威力を間近で目撃するはめになった俺は、気を引き締めて全方位に注意を配る。
頭を狙う枝はしゃがんでかわし、脳天を突き刺そうと一直線に降る枝の尖端はそのまま転がってかわす。剣を振るえば、その瞬間が隙になり、一つの攻撃をかわせば、これまた隙が生まれる。
圧倒的な手数を前に、俺は次々に生傷を増やしていく。休む間もない連撃。叩きつけられる枝によって壊れた床が増え、足場さらも悪くなる始末だ。
今回ばかりは、不味い。
そんなことを意識しながらも、モズの早贄にならないよう、上から突き刺そうとしてくる枝を懸命にかわす。枝を少し斬り落とせても、すぐに再生される。本体の幹に近づこうとしても、次々に襲い来る枝を捌くだけで精一杯だ。ゴンゲはどこまで飛ばされたのか分からず、声も聞こえない。
とはいえ、ゴンゲがいたところで、その攻撃手段である炎は、あまり効果がない。何よりも、それらの問題が一気に解決したとしても……倒すための決定打がない。
扉の前で、きっと勝てるとか考えていた過去の自分を殴りたい。ここまで絶望的な状況は、未だかつてなかった。
「ぐぁっ!」
枝が、俺の腕を抉る。
「づっ!?」
左足が吹き飛ばされ、どこかへ飛んでいく。
「ごぼっ!」
倒れた俺の腹に、容赦なく、枝が降り下ろされる。
「ぁ……」
視界が歪み、音という音が聞こえなくなった俺が、最期にかろうじて見たものは……。
ダークネスツリーに負けず劣らず、巨大な体となった、ゴンゲらしき姿だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さぁ、叫びましょうっ。
『ゴンゲェェェェエッ!! 何があったぁぁぁぁあっ!!』
ちなみに、この答えは次回で(笑)
ただ、ちょっと明日……ともしかしたら明後日も更新できないかもしれないので、次の更新は明明後日になるかもしれません。
どうぞ、それまでお待ちください。
それでは、また!
四十日目』
臓物の扉を前に、俺は自身のコンディションを確認する。
あれから、魔剣は俺の右手と一体化したかのように離れないままだったが、たしかに切れ味はよく、今まで使っていた『黒鞘の剣』がなまくらに思えてしまうほどだった。万が一に備えて『黒鞘の剣』も腰に提げているものの、使う機会はないかもしれない。
冒険の書はリュックから出して、左脇にしっかりと挟んでいる。後は、動揺せずに左手で扉を開け、中に入り、敵の姿を確認しつつ、冒険の書を読めたら、きっと勝てる。
今までも、慌てず、冷静に対処していれば、普通に勝てた可能性が高いのだから、今回も大丈夫なはずだ。
「ゴゲッ」
そして、何よりも、ゴンゲという味方もいる。一度は殺そうかどうかと悩んだモンスターだが、随分と役に立つようになってきたこいつは、まだ殺すには惜しいと言えるまでになっていた。
俺の後ろで待機しているゴンゲ。その姿に背中を押される形で、俺は扉へと手を伸ばす。
グチッ、グチンッ。
生暖かい腸らしきノブに触れた瞬間、それは動き出す。
『内臓が、内臓を喰らっている』
その光景を言葉で表すなら、そんな言葉になるだろう。
グチグチュッ、ブチンッ。
ドクドクと脈打っていた臓物は、それぞれ隣り合うモノを喰らい、そのたびごとに赤黒い液体がダラダラと扉を濡らす。おぞましい共食いの扉。今までも扉の変容には恐怖してきたが、今回も恐ろしい光景になってしまった。が、俺はそれをじっと観察することなく、一気に腸にしか見えないノブを引く。
グチュッとした音とともに、腸のノブはピンと伸び、同時に俺はその感触で全身が粟立つ。しかし、俺のその行動は正しかったようだ。
扉は、開いた。
『第三フロア 地帯区分C
■■■は地帯区分Cへ進行
これよりブラックフォレスト』
臓物の扉の向こうへと進んだ瞬間、俺は目の前を確認して、自分の遠近感がおかしくなったのではないかと疑う。そこには、墨のように黒い、百メートルほどの直径がありそうな巨大な幹が、鎮座していた。そして、そこから上に見える枝は、一番細いものでも、人の胴ほどはありそうな太さだ。
まさか……これがモンスターだとは言わないよな?
『16 ダークネスツリー
第三フロアのボス
樹木型のモンスター
固く、燃えにくく、再生能力が高いため、強力な一撃でしか倒せない
ドロップアイテム』
しかし、現実は無情だ。そんな記述を読んだ俺は、頭痛を覚えながらも、途中で顔を上げる。
ドロップアイテムまで読む間もなく、何かがこちらに接近しているのを感じて俺は慌てて魔剣を振り上げる。やけに重い手応えを感じながらも振り抜いた俺は、それが斬り落とされる瞬間を目撃することで、ようやくその正体に気づく。それは……人の胴ほどの太さを誇る、黒い木の鞭だった。
「ゴゲッ、ゴォンギョゲェエッ!!」
と、そこで、ゴンゲが自分を攻撃しようとしてきた木に対して盛大に炎を吐き出す。だが……。
「ゴッ!?」
炎に耐性があるらしいこのダークネスツリーには効果がない。そのまま振るわれた木の鞭によって、ゴンゲは呆気なく吹き飛ぶ。
「くっ!」
俺は、すぐにでもゴンゲの無事を確認したい衝動に駆られるが、それよりも先に木の枝がしなる。それも……先程斬り落としたはずの木が、襲いかかる。
横っ飛びにとりあえずその一撃をかわした俺は、次の瞬間、戦慄した。
ズゥンッという重い音を立てて降り下ろされたそれは、容易く、床を砕く。魔剣を手に入れても、精々傷つけるくらいしかできなかった床を、このダークネスツリーは容易く砕く。
もしも、あれに当たれば、無事ではすまない。
その威力を間近で目撃するはめになった俺は、気を引き締めて全方位に注意を配る。
頭を狙う枝はしゃがんでかわし、脳天を突き刺そうと一直線に降る枝の尖端はそのまま転がってかわす。剣を振るえば、その瞬間が隙になり、一つの攻撃をかわせば、これまた隙が生まれる。
圧倒的な手数を前に、俺は次々に生傷を増やしていく。休む間もない連撃。叩きつけられる枝によって壊れた床が増え、足場さらも悪くなる始末だ。
今回ばかりは、不味い。
そんなことを意識しながらも、モズの早贄にならないよう、上から突き刺そうとしてくる枝を懸命にかわす。枝を少し斬り落とせても、すぐに再生される。本体の幹に近づこうとしても、次々に襲い来る枝を捌くだけで精一杯だ。ゴンゲはどこまで飛ばされたのか分からず、声も聞こえない。
とはいえ、ゴンゲがいたところで、その攻撃手段である炎は、あまり効果がない。何よりも、それらの問題が一気に解決したとしても……倒すための決定打がない。
扉の前で、きっと勝てるとか考えていた過去の自分を殴りたい。ここまで絶望的な状況は、未だかつてなかった。
「ぐぁっ!」
枝が、俺の腕を抉る。
「づっ!?」
左足が吹き飛ばされ、どこかへ飛んでいく。
「ごぼっ!」
倒れた俺の腹に、容赦なく、枝が降り下ろされる。
「ぁ……」
視界が歪み、音という音が聞こえなくなった俺が、最期にかろうじて見たものは……。
ダークネスツリーに負けず劣らず、巨大な体となった、ゴンゲらしき姿だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さぁ、叫びましょうっ。
『ゴンゲェェェェエッ!! 何があったぁぁぁぁあっ!!』
ちなみに、この答えは次回で(笑)
ただ、ちょっと明日……ともしかしたら明後日も更新できないかもしれないので、次の更新は明明後日になるかもしれません。
どうぞ、それまでお待ちください。
それでは、また!
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