黒板の怪談

星宮歌

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第二章 答えを求めて

第三十四話 参加理由

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 途端に、掴みかけていた清美の手は、闇に呑まれる。


「っ、清美!」「寧子ちゃん!」「寧ちゃんっ」「キヨちゃんっ」「清美さんっ」


 目の前で、掴みかけていた手が遠のく。それを見て、誰もが駆け出して清美へと手を伸ばすが、その手はどれも、届かなかった。
 しばらく五人で捜索をしてみても、また廊下が続くだけの空間であり、途中から懐中電灯も点き始めたものの、清美の居場所はとうとう分からなかった。


「クソっ!! これじゃあ、何のためにここに来たのか分からないじゃないかっ!」

「芦田君? それは、どういう意味?」


 壁に拳を打ち付ける芦田に対して、杉下はそう問いかける。


「……俺は元々、この肝試しに参加するつもりはなかったんだ」


 そう言った芦田は、肝試しに参加すると決めた理由を話し始める。


「あの日、俺の机の引き出しにメモがあったんだ」


『今日誘われる肝試しに参加しなければ、あなたは絶対後悔する。大切なものを守りたければ、参加しなさい』

 とても綺麗な字で書かれたそれは、いたずらとは思えず、どうしても参加しなければならないという思いに駆られたそうだ。


「えっ? それって、前もって私が肝試しに誘うって分かってたってこと??」

「……もしかしたら、その時から俺達は、ナニカに巻き込まれていたのかもな」


 誰かに提案されて、全員を肝試しに誘ったはずの望月と、予め肝試しに参加するように連絡を受けていた清美と芦田。そうなると、他の面々が肝試しに参加した理由も気になるわけで……。


「私は、寧子ちゃんが心配だったからよ。そうでなければ参加しないわ」

「ぼ、僕は……自分でも、どうして参加しようとしたのか覚えてなくて……。け、けど、多分、僕の親がこの学校に関して何か知ってるみたいだったから、それが理由で招かれたのかも」

「僕はー。うーん、普通に面白そーって思って参加を決めた気がするけどなー」


 不自然に参加を決めたのは、どうやら中田もだったらしい。


「なるほどなるほど……かのだん君、私にはこの謎は荷が重いよ」

「そっかー。でも、いじめによる呪いっていうのは当たりだと思うよー」


 いじめというものは、いつの世でも起こるものだ。そして、それを苦にして死ぬものも居るし、そこでのいじめがその後の人生にまで影響を及ぼすこととてある。
 そんな様々ないじめによる被害者の怨念が、今のこの状況を作っているのであれば、彼らは、何としてでも清美を救い出し、ここから逃げなければならない。


「……ここには、怨念があるのだとして、本当にそれだけだろうか?」

「確かに、芦田君は寧子ちゃんを守るために呼ばれてるしね」

「あっ、そうだよっ! かのだん君! あの時の声! あれは何だったの!? いや、助けてはもらったんだけど……」


 と、そこで、望月は思い出したとばかりに鹿野田へと声をかける。


「声? あー、あれかー。うん、それを思うと、僕も関係者だねー。あの声は、多分、僕の血縁者で、鹿野田恭子さんって人だよー」

「えっ!?」


 しかし、そこで思いがけない名前を聞いた望月は、思わずといった様子で固まった。
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